
カナディアンカーディガン
秋風纏って走り出す花月橋通り
「恋のシグナルはニュースキャスターに」
「それでは本日のゲスト」
「...こ、こ、こんにちは~」
「出実大学准教授の城実先生です」
「あっ...はーい、こ...こんにちは~」
「わ~!城実せんせ~い!ぎゅーっ!!」
「なっ?!ああっ!...きゅ...急になに~?!」
「すっごく会いたかったんです~」
「ぽっ...」
「あれ~?」
「...」
「先生大丈夫ですか~?顔赤いですよ~」
「...へ、平気...平気です」
......
『オッケー!ちょっと一回休憩入れようか』
......
「城実、リハーサルだからリラックス」
「あ...だ、だよね...リハッサス...」
「あははリラックスだし♪」
「あ...リ、リラックス...」
「そうそうはい深呼吸!息すって~」
「え?あっ、えっと...すう~っ」
「はいて~」
「ふゅろろろろ~ん」
「え~なんか城実の深呼吸変じゃない?」
「え?...で、でも...物心ついた時から...」
「こわれたインターホンみたい」
「え?!...わ、わたしこわれてないし!」
「わあ~...城実って怒った顔もかわいい」
「ぽっ...」
「あれ?」
「...」
「先生大丈夫ですか~?顔赤いですよ~?」
ガタッ
「...わたし、帰る」
「はっ?!うそでしょ城実?!」
「わたしやっぱりこういうの向いてない」
「あ~っ!ごめんごめん待って城実~!」
「テレビ出演なんて最初から断ればよかった」
「そんなこと言わないで~!」
「やだったらやなの」
「番組...ううん、私を助けると思って~!」
「...どういう意味?」
「城実とりあえず座って!」
「もう...しょうがない...で?」
「実は私ね...」
「うん...」
「今の番組の司会交代させられそうなの...」
「...ふうん」
「視聴率悪いの私のせいみたいになってて」
「そんなの...番組も勝手ね」
「でしょ?!だから城実だけが頼りなの!」
「わたし...何の役にも立たないよ?」
「そんなことないって~」
「そんなことあるもん」
「はい謙遜発動中~」
「け...謙遜じゃなくって...事実だもん」
「城実が配信してる動画大人気らしいよ?」
「そんなことない」
「また謙遜発動~」
「それはいいから!それで...なに?」
「だから城実人気に乗っかって~」
「うん」
「司会者として一気にスターダムを...」
ガタッ
「わたし帰る」
「?!...あーっ!うそうそ違う違うごめん!」
「何が違うのよー?」
「利用するとかそんなんじゃなくって~」
「言い訳はやめて」
「最後に城実との思い出を作りたかった」
「え...?」
「番組とか司会とかはどうでもよくて...」
「...うん」
「ん...大好きな城実と一緒にって思って」
「えっ...」
「今度ごはんおごるから、一緒に、ね?」
「ぽっ...」
「あれ?」
「...」
「先生大丈夫ですか~?顔赤いですよ~」
「う...ほ、ほらもう時間!行くよ!」
「やったー」
『はい本番5秒前!...4...3...2......』
タータタタター♪
タッタラタッタラタッタター♫
「それでは本日のゲスト」
「...こっ!こんにちは~!」
「出実大学准教授の城実先生です」
「あのっ...えっと、し、城実です~」
「先生、お会いできて光栄です」
「え?」
「先生が配信される動画、人気ですね」
「あ、そ...そう...ですか」
「動画配信を始められたきっかけは?」
「え?」
「動画ですよ、きっかけは何ですか?」
「...え...着の身着のままっていうか...」
「はい、それで?」
「へっ?あ...その...勢いっていうか...」
「ええ、それで?」
「えっ?!いや...だからその...」
「その、なんですか?」
「な...なんかリハーサルと違...」
「勢いというとどのような?」
「どのようなって...台本にそんなの...」
「それはつまり?」
「うっ...いやそんな特に深い意味...」
「深い意味がおありなんですね」
「いや違...」
「CMの後その意味をお聞かせください」
「ちょ...そんな...困...」
タータタタター♪
タッタラタッタラタッタター♫
-この番組は
ご覧のスポンサーの提供でお送りします-
『オッケーCM入った!セカンズ60で!』
「城実いい感じじゃん」
「ありがと...っていやおかしい絶対」
「ん?どした?」
「ん?どした?じゃないよ何今の進行?!」
「え?なんか変だった?」
「リハーサルの無意味さよ」
「ああ...あ、ADちょっと水持ってきて」
「ちょっと...聞いてる?!」
「え?なんだっけ?あ、城実も水いる?」
「あ、もらおっかな...っていやちょ...」
「あ!CMあけるよ!」
「え!もう?!」
「セカンズ60はね、業界用語なのよ」
『はいCMあけるよ!...4...3...2......』
タータタタター♪
タッタラタッタラタッタター♫
「さて先生、動画の話の続きを」
「だ、だから続きもなにも...」
「動画のタイトルを教えてください」
「タイトル?」
「ええ」
「あの...恥ずかしいんだけど」
「“あの...恥ずかしいんだけど”ですか」
「え?!違う違う違くて」
「違うんですか?」
「タイトルは...」
「はい」
「“ひとり上等たこパで孤独を紛らわす”」
「ふ...深い」
「いや別に深くないし恥ずかしいし」
「では動画の内容を教えてください」
「内容って...タイトルのままっていうか」
「せ...切ない」
「いや別に切なくないしたこパ楽しいし」
「で、先生はおひとりなんですか?」
「うっ...悪かったわね...っていうかそこ?!」
「な...泣ける」
「泣かれると切なくなってくる」
「たこパというのはどういったものですか?」
「逆に聞く、まさかたこパを知らんのか」
「“かたことパリ住人”の略ですか?」
「初耳!!どんな略よ?!表現揺れすぎ」
「“見たことのない景色inパリ”の略ですか?」
「またパリ!!いっかいパリから離れよっか!」
「“きたこれパイン入り酢豚”の略ですね?」
「自信ありげ!だが完全に違う」
タータタタター♪
タッタラタッタラタッタター♫
『オッケーCM入った!セカンズ60で!』
「いい調子だね城実」
「またセカンズ60...」
「城実、それでたこパって何?」
「えっ?!まさかほんとに知らないの?」
「うん」
「よくそれで司会やってたね」
「すごいでしょ私?...で?たこパって?」
「 “たこやきパーティー” の略」
「た...たこやき」
「幻滅した?ひとりパーティーなんて」
-ここで緊急ニュース速報です-
『ごめんみんな今日の番組収録中止!』
「城実、ごめん」
「なになに何が起きたの?」
「番組がね...」
「もうセカンズ60なの?!」
「ううん、ニュース入っちゃった」
「中止?」
「そう」
「そっか...」
「それより城実」
「なに?」
「これから城実んち行っていい?」
「えっ?!やっ急にちょっちょっ...?!」
「だめ?」
「だ、だ、だめ...じゃないけど」
「たこパ」
「えっ...?」
「これから一緒にたこパしよ?」
「ぽっ...」
「あれ?」
「...」
「先生大丈夫ですか~?顔赤いですよ~」
「...」
「あれ?もしかして泣いてる?」
「...見ないで」
「なんか困らせた?私?」
「...ううん」
「城実?」
「嬉しくて泣いてるの」
これはたこやきが結ぶ浮ついた恋の物語。
しがない司会者と、
孤独から抜け出せない准教授。
現実での接点を探し求める二人は、
片手に千枚通し、
片手にお玉、
そんな風にじゃれあいながら、
距離を縮めようと探り合う。
そんなたこやき物語。
あ、ロンパメです。
緊急ニュース速報で中止になってしまったとはいえ動画配信サイトのチャンネル登録者数8000万人を誇る超人気者が出演したとあってその視聴率の上昇は凄まじく『番組史に残る神回』とまで呼ばれはしたもののその番組そっちのけで人気急騰したのは当然たこパであって「ひとりでやるもよし、みんなでやるもよし、いつでもおうちで楽しいそれがたこパ」とか「たこやきは“買う”から“作る”時代へ」とか「たこパが家庭円満への近道!上手に焼けるたこやき講座受講生募集中」っていうキャッチが巷に溢れかえった結果タコ漁を営む方々や家庭用たこやき器とそれに付随する調理器具等の製造販売に関わる方々の生活が潤う一方でショッピングセンター内やお祭りに必須だと思われていたたこやき販売の店舗が軒並み姿を消していってしまっていそうでしたが、先日はクロミちゃんと一緒に砂利に行ってきました。
この場所はひと言で言えば砂利ですが、メルヘンな感じで言うとすれば『チョコレートみたいな高架と青りんごジュースの色にそっくりな森の間のちょっと不思議な砂利広場』って感じです。これがどういうことかと言うと、その言葉の通りです。
で、そんなメルヘン砂利広場(言い方)に到着したしろデミちゃんとクロミちゃんはさっそく遊び始めていましたが、しばらくして、しろデミちゃんのルーフに座って遊んでいたクロミちゃんがわがままを言い始めました。
うーん。

(クロミ様?)
うぅーん。

(どうされました?)
ルーフのうえはあついわね。

(でしょうね)
あたいボンネットにはさまりたい。
(は?)
クロミちゃんの発した言葉が謎めきすぎていて、希望する移動先がどこだか分かりませんでした。なのでよくよく聞いたところ、ワイパーとボンネットの間に入ってヒンヤリしたいという希望でした。クロミちゃんのわがままはいつものことなので、ワイパーとボンネットの間に移動させてあげました。
おもったとおりね。

(え、どういうことですか?)
わるくないわ。

(え、そうなんですか?)
アンタもたまにはやくにたつのね。

(なんだか知らんがありがたきお言葉!)
ほうびをとらすわ!!
(ははぁーっ!!)
さて、来週の日曜日、9月1日、しろデミちゃんは北陸マツダ開発本店で法定12か月点検を受けてきます。しろデミちゃんも9年目に突入するわけですが、今のところ特に異常は感じられずいい調子です。まあつまりは、9年経っても色あせないかわいさがすべてを忘れさせてくれてこのままかわいくハッピー20thアニバーサリー目指して爆裂ラブリー街道まっしぐら!!(語彙力)
それってこんな感じかも!

(そ、そんな...)
そのままの君でいて。

(だがあえて言わせてもらおう)
いつも見てるからね。

(爆裂ラブリー街道まっしぐら)
ゴーゴー!ファイトー!!
(なんとぉーっ!!)
“え?声がどっかいった?!風邪?
大丈夫安心して、僕が治してあげる”
昨日の夜花火見てたんだけど、
紫色と黄色の花火が一番きれいだったよ。
ね、やっぱりしろデミちゃんはかわいいです。
あ、もちろんクロミちゃんもね!
ロンパメバーグ
Posted at 2024/08/25 22:16:48 | |
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