
穏やかな気持ちと秋の風が舞って
縁側の風鈴が季節外れの音色を奏でて揺れる
「落ちた瞬間焼きたてラブロマンスそして沼」
1892年、わたしは初めて恋をした。
......
「シロミ―、あなたにお手紙よ」
「ありがとうございます、シンディ様」
「ご両親からかしら?」
「...そのようです」
「律儀なものね」
「ご迷惑をおかけします...」
「ふふ冗談よ、お返事、書くわよね?」
「そのつもりです」
「はい便箋、これ使ってくれて」
「そんな、恐れ多い」
「その分しっかり働いてくれればいいわ」
「はい...ありがとうございます」
......
家事使用人として働く彼女の名前はシロミ―。
地方の山間にある静かな農村で生まれ育ったシロミ―は、12歳になった頃に両親の元を離れ、国家王室からほど近いいわゆる都市部、このナミローク男爵家に雇われて毎日をあくせくと働いて過ごしていた。
趣味などに費やす時間はあって無いようなもので、毎月の両親への仕送りのためだけに身体を酷使して働き続け、ただいたずらに時間が過ぎ...気が付けば16歳。心と身体がちぐはぐになるほどに年齢だけを重ねてきてしまっていた。事実、鏡に映る自分の姿を見るたびにそう思わざるを得なかった。
とはいえ、シロミ―が気付いていないだけで、心の方も時間と共に確実に大人へと成長していたのも事実。闇雲ではない、しっかりと...はっきりとした感情が芽生えるようになってきていた。
......
「シ ・ ロ ・ ミ ー !!」
「えっ?!あ、はいはい!お待ちください今行きます!」
「はやくー!シロミーこっちきてー!!」
テテテテテ...
「はぁはぁはぁ...キャンディお嬢さま...」
「おっそーい」
「はぁはぁ...も、申し訳ございません今お皿を洗って...」
「ねえねえシロミ―」
「え?えっ、なんでしょう?」
ヒラヒラヒラ
「どう思う?」
「?」
「ねえどう思う?」
「あ...えっと、何がですか?」
「もう!シロミ―ってば!ほらわからない?!」
ヒラヒラヒラ
「あ...クルクルと回られて...新しいダンスですか?」
「ちっがーう!!」
「え?!」
「ドレスよ!ド・レ・ス!!」
「あぁそちらでしたか」
「あぁそちらでしたかじゃないわよ!もぅ...それでどう?」
「とても素敵ですよ、キャンディお嬢さま」
「あ、やっぱりー?」
「ええ、お嬢さまには白のドレスがよくお似合いです」
「そっかーありがとシロミ―」
「そんな、恐れ多い」
「今日のパーティ―用なのよ」
「確かご学友の9歳のお誕生日」
「そうね」
「キャンディお嬢さま、素敵です」
「ねえシロミ―」
「はい、キャンディお嬢さま」
「あたし、おいしいパンが食べたい」
「パン...ですか?」
......
昼時、人で賑わう市場を抜けて。
日々の目が回るような忙しい毎日の中では買い出しに費やせる時間もさほどなく、令嬢の言いつけとはいえ、こんなところまで来られたのも久しぶりでシロミ―は心躍っていた。
色鮮やかで新鮮そうな魚、丸い野菜たち、塩、ソーセージ。多くの店が連なり様々なものが売られ、大勢の客が買い付けていく。その独特な雰囲気に圧倒されて足がすくむ思いの中、ふいに風にのってやってきた香ばしい匂いにつられ、市場を抜けた先に最近できたばかりのおいしいと噂のパン屋の前にシロミ―は立っていた。
シロミ―を見て微笑む好青年な店主と、顔を赤らめてぎくしゃくとした動きを見せるシロミ―。
......
「いらっしゃい」
「...」
「どれにします?」
「...」
「お嬢さん?」
「あ...あ、あの!!」
「はい?」
「パンをください!!」
「ふぇ?!」
「おいしいパンをください!!」
「...」
「あ、ダ...ダメ...です...か?」
「...あはははは!」
「え?」
「お嬢さん、おもしろいね」
「な、なんで笑うんですか...」
「あーごめんごめんなんか分かんないけど笑えた」
「おいしいパンを買わないと帰れないんです...」
「それならお嬢さんうちに来て正解だね」
「?」
「だって俺が作るパンは全部うまいから」
「ほんと?!」
「今日はとりあえずおすすめを買っていきなよ」
「はい!はい!はい!」
「はは、ほんと笑える...はい、これとこれとこれ」
「ありがとうございます!」
「あとこれ...ほら手出して」
「え?」
「はい、サービス」
「これ...かわいいパン...」
「帰りにでも食べてみて」
「...」
「気に入ったらまた買いにきてくれよ」
「はい...また...来ます」
......
ナミローク男爵、男爵夫人、男爵令嬢。
シロミ―が腕によりをかけた料理とお酒ととっておきのパンで始まった一日の終わりの晩餐。その一日が無事に終わり、胸を撫でおろした表情でキャンディ令嬢の後ろに少し離れて立つシロミ―。
微笑み振る舞い、体は一日の疲れを感じながらも、今日のパン屋の店主の顔が頭に浮かんで気持ちが高ぶってくる。そして、妙に幸せでふわふわとした不思議な気持ち。
なんでだろう...。
若すぎるシロミ―にはその答えは出せなかった。
......
「いやあ酒がうまい」
「随分と楽しまれたご様子ですわね」
「わかるかい?」
「顔に出てらっしゃいますもの」
「はは、実は今日デッミモンド男爵にお会いしてね」
「あら」
「実に愉快な方でね、いい友になりそうだ」
「だれー?アーモンドってー?」
「キャンディ、デッミモンド男爵よ」
「はははシンディ、よいではないか」
「あなたはキャンディに優しすぎますわ」
「ははは、まあそう怒るな」
「シロミ―もそう思うでしょ?」
「え、あ、は...いえ、その...」
「こらこら、シロミ―が困っているではないか」
「キャンディにもナミローク家としての誇りを...」
「あーそれはそうとシロミ―、このパンだが...」
「...え?!あっ、はい!」
「実にうまいではないか」
「またそうやってはぐらかして...あら、悪くないわね」
「ムフフ」
「どうしたのキャンディ変な笑い方して」
「へへ、あたしがシロミ―に買ってきてって頼んだの」
「そうなのシロミ―?」
「え?!あっ、あー...はい!」
「さすがはキャンディだな」
「また!すぐに褒めるのはあなたの悪い癖です」
「褒めて何が悪いのだ」
「訳も聴かずに褒めるのが悪いと言っているのです」
「パンがうまければそれでよいではないか」
「まーまーまーおちついて」
「キャンディ!大人の真似ごとをするんじゃありません!」
「こわーい」
「はははシンディ、よいではないか」
「まったく二人とも...」
「さてと...それでだがシロミ―」
「え?!あっ、なんでしょうナミローク男爵」
「このパンはどこで手に入れてきたのだ?」
「あ...あの、市場を抜けた先に最近新しくできた...」
「ほぅ、で、パンの種類はほかにもあるのか?」
「はい、わたしが見た限り沢山ございました」
「それはいい!是非ほかのパンも食べてみたい!」
「は、はい、仰せのままに!」
......
また...会える...。
街の灯りが消える頃、幸せな眠りが訪れる。
...恋の始まりに気付ける人などいない。
気が付いた時にはすでに落ちてしまっているのだから。
あ、ロンパメです。
てっきり貴族と家事使用人との禁断の恋的な既視感モリモリ物語かと思ったらまさかのパン屋の店主と家事使用人との極普通過ぎる恋的アリキタリ物語だったから『いやこれそもそも貴族設定とか必要?』って感じでほぼ全員が思っちゃったけどそのほぼ全員の中の恋をしたくてしょうがない女子という女子がパン屋の好青年店主を狙って街中のパン屋を手あたり次第に漁りまくった結果『ただいまクリームパン焼きたてでーす』って言って奥から出てくる店主という店主が軒並みヒゲモジャおじさんっていう残酷ゲンジツ物語の主人公になっちゃって『終わった...』って心底思って2週間くらい落ち込んで家にこもっていそうでしたが、今日は最高のロケーションに行ってきました。
最高の天気、最高の景色、そして誰もいない駐車場。これは最高のロケーションですよね。これまでのクル活人生史上(言い過ぎ)、トップをねらえるくらいの最高さ加減でした。で、そんなトップをねらえるくらい最高なロケーションに到着したしろデミちゃんは『え?!うそ!これってなにやだそういう感じもしかして?!』ってなって最高のロケーションには最高のかわいさも必要だよねって感じでそれってつまりトップをねらえ!!(語彙力)
こんな風にね!

(確かに誰もいないね)
果てしない大空が味方してくれていますよ。

(悪天候極まりない)
景色に溶け込むかわいさ。

(溶け込みすぎててもはや行方不明)
落ち着くことも必要です。

(それな)
さて、今日は雨降りでした。梅雨入りした以上、これからしばらくは雨クル活を強いられます。雨が降っていても、しろデミちゃんはかわいいです。なのでこれからは、梅雨入りして雨続きだけどそれでもかわいいしろデミちゃんの写真を撮影する活動を引き続きしていこうと思います。あ、略すと雨ちゃん(略し方)ですね。
それってこんな感じかも!

(こ...これが...雨ちゃん...?!)
まさかですよね。

(夢かと思った)
でもね...。

(?)
これが雨ちゃんトップってこと!!
(なんとぉー!!)
“焼きたてのパンと笑顔の君
それはもう幸せの予感しかない”
駅近に最近できたパン屋さん知ってる?
噂だけどシナモンロールだけがおいしいらしいよ。
やっぱりね、それでもしろデミちゃんはかわいいです。
ロンパメバーグ
Posted at 2024/06/30 20:08:42 | |
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