• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+
イイね!
2012年05月07日

テンロク・エンジンという美学

テンロク・エンジンという美学 日本人はよく、モノマネ技術が上手い国民と言われる。

今はそれは過去形で、だったという方が、正しい。
なぜかというと、日本は経済と技術力で、一時世界のトップクラスに位置しかけたことがあり、もう諸外国に学ぶものは無いという発言も聞かれた。
しかし、本当は少し違うと思う。
きょうはそれを書くことで説明する。

おそらく昔の日本人は、もの事の本質を見抜く力に今より長けており、外国の技術と文化まで理解し、良いところは積極的に取り入れた。
明治維新後の蒸気機関車や戦艦の建艦技術がそうであり、盲目的なコピーでなく、「なぜ、それが良いのか」という、本質的な意味を含めたところまで、短期間に理解する能力を兼ね備えていた。
それがいま、どうなったかということを含めて、書いていってみよう。

1.6リッター=1600ccという排気量のエンジンに思い入れのある人は、最近かなり減って来たのではないか。
私が子供の頃は、セリカ1600GT、カローラレビン、スプリンタートレノ、
三菱ギャランGTO、ランサー1600GSR、ブルーバード1600SSS(P510型)、
ベレットGT(前期)、同GT-R、117クーペ(ハンドメイド時代前半)など高性能スポーツカーの代名詞は「1600cc」であることであった。

子供の頃には家に自動車が無く、税金も払ったことが無いのに、なぜ1500cc以下と、それを超えた上のクラスで1600が持て囃されるかの意味が半分くらいしか判らなかった。
当時1500以下はマイナーツーリングカー(レース)と呼ばれ、そのクラスのチャンピオンは110サニーとパブリカ(2代目)スポーツ、トヨタは後を受け継いだKP47スターレットがずっと2強であった。

1600の往年のスポーツカーというと、今の日本人はたぶん、アルファロメオ・ジュリアスプリントのエンジンと、ロータスエランの熟期のエンジンを思うであろう。コルチナにも積まれた1600である。

日本の1600エンジンの名機が出揃った理由も、実はヨーロッパのツーリングカーレースに対する「憧れ」からきている。1500や1400のエンジンをボアアップして「良く研いだ刃物」を作るように、1.6リッターエンジンを完成させて行ったのである。
まずトヨタの2T-Gは、T型1400が基本形で、これはカローラに積まれて人口に膾炙した。
20系カローラは1400のツインキャブ、SRとSLが兎に角良かった。ツインキャブは形式にBがつくのでT−Bである。この時代は基本形に1が付かなかったので1Tとはならなかった。1が付いたのはクレスタ(1980年)の1Gエンジンからである。

このT-Bをベースに2T(1600)が作られた。そしてトヨタは「お家の事情」で高性能エンジンはヤマハに技術を頼らざるを得ない貸し借りがあった。日産が伸び伸びと技術志向だったのに対し、トヨタは「より売れる車」作りが使命だったのである。
ちょうど買って来た「オールドタイマー」124号171頁のブルコロ戦争の記事に、トヨタ技術者の屈折について載っているので、お持ちの方は読んで欲しい。

ヤマハはT型OHVの技術に「屋根を貸す」形で見事なツインカムを作り上げた。
R型でも1600GTとマーク2GSSで9Rを作って、2000の18R-Gという完成型を見事に作り上げた。それは後にセリカLBに積まれたが、1600の2T-Gの方がエンジンとしては、夢や広がりがある。
このエンジンは最初セリカ1600GTとシャーシが共通のカリーナ2ドアGTに積まれ、セリカは人気を博す強力な武器となった。

同時期に三菱は、サターンOHCエンジンの名機4G32型を作った。
セリカと真っ向勝負したギャランGTOは当初1600で、シングルキャブ、ツインキャブ、ツインカムの3段仕掛けのエンジンバージョンで対抗した。
MRのDOHCは三菱としては「早過ぎた背伸び」で、三菱が実力を付けたのは普通のSOHCのツインキャブである。ランサーはラリーフィールドで大いに暴れ、GTOの不名誉を雪辱した。

快進撃ランサーGSR(1600)に「ちょっと待て!」と凄みを利かせたのが1400SR(デラックス仕様はSL)が最上級であったカローラに2T-Gを積んだレビンと、スプリンターの兄弟車トレノである。
本当のことを言うと順番はレビトレは47年9月の発売だから、ランサーの48年初頭より早い。しかし売れなかったので、人気が出たのはカローラ20系マイナーチェンジ後の48年後半からであろう。
国内ラリーはブルーバードが610(ブルーバードU)で、車体が大きくなり、まだ510の人気が長かった。510は昭和43年に登場の車だから、そろそろ古くさい印象も有り、捻った人は三菱ギャランのA2GSでもラリーをしていた。
ランサーは基本が1200と1400(実際は1450cc程度)なので、1600を積むとそれは速い車に変身する。ツインキャブのグロス110PSでも、800kgちょっと、全長4m弱なら、これは面白かろうと今でも想像出来るであろう。

実はカローラ20系の方が、ちょっと重いのである。1600ccでも、4m強ではツインキャブのままでは対抗できない。(実際にレビンジュニアという1600の非DOHCモデルも一時期存在した)
だから、2T-Gが要ったのである。セリカGTでもラリーは走ったのだが、当時の三菱の「じゃじゃ馬ぶり」には歯が立たなかった。だから「レビン」「トレノ」なのである。

ここまで長い文を読んでいただくと、「じゃ、なぜ『テンロク』エンジンがそれほど良いの?」と素朴な疑問が、半分理解出来ていただいたと思う。そう、当時の車は、エンジンの出力アップも命題だが、エンジン本体はできるだけコンパクトに。プラス車体の軽さが命だったのである。
そのギリギリのかけ算引き算で出て来た答えが、1600cc、今で言う「コンパクト」スポーツなのである。自重は700〜900kg台。全長は4mまで。エンジンは100PS〜120PS、ただしグロスである。

この「千六百」にこだわったレスペクトは、1983年のカローラ86や1989年のユーノス・ロードスターまでは、なんとか続くことが出来た。CRーXやファミリア4WD-GTまでそうだったかな。
なぜテンロクスポーツは省みられなくなったか。
ご想像の通り、車体の大形化と安全基準の際限なき引き上げの繰り返しである。
スカイラインが3500や3700でGTという時代に、苦々しさを感じている人も、きっとかなり居るだろうと思う。あれでは、GTでなくただの「ファットカー」だろうと。


日本人は、ジュリアスプリントや、ロータスコルチナあたりをみて、1600の良さに開眼した。
より小さなクルマにギリギリの排気量を積めば、大きな2000ccクラスをカモれる「イーター」が作れるのである。その走りっぷりをみて、きっと「すばらしい」と思ったに違いない。
テンロクは税制上はメリットが少ない。
なのになぜテンロクのスポーツカーはカッコ良かったのか。
それは「テンロクで十分」という禁欲さが、日本人の心情にフィットしたからである。

私も初めて乗った車は、ランサーの1600、シングルキャブである。
360ccの軽自動車の中古でも良いと言ったが、親がもうちょっと大きなのにしなさいといい、もちろんカッタルイ大きなセダンにする訳が無く、迷うこと無く1600の2ドアセダンとした。
その後2000年頃に、オペルカデットの1.6、自重1トン以下、全長4mというのにも乗った。
今でもふと思うのだが、クルマに乗ると言うことで、一番大切なのは、余分なスペースは持たないという、必要最小限の「思想」ではないだろうか。






ブログ一覧 | 思うこと | クルマ
Posted at 2012/05/07 00:15:13

イイね!0件



タグ

ブログ人気記事

12月のからあげクン
MLpoloさん

対向車にパッシングされる! 冬はラ ...
ウッドミッツさん

今週末は初老トリオで…
Takeyuuさん

号外】今週の国土交通省発表:大雪に ...
かんちゃん@northさん

ちょっと体調がイマイチなので・・・ ...
pikamatsuさん

愛車と出会って5年!
s-k-m-tさん

この記事へのコメント

2012年5月7日 17:39
わたしも1600という数字、特に「1600GT」という字面と響きの良さが好きです(なかでもべレット)。
ユーノス(マツダ)ロードスターも、1600の伝統性にこだわっていたと思います。

自動車税の区分が1500ccでなく、1600だったらいいのにな、と思っております。
程よいぜいたく感もあるので仕方ないかな?

先代V6スカイラインの「250GT」には苦笑(狙ったのかな(笑))。

コメントへの返答
2012年5月9日 7:07
コメント早速いただきありがとうございます。
ベレットは日本にGTという言葉を持ち込んだ一番乗りだと思います。プリンススカイラインのGTBと同時期でしょう。
今回の記事は「忘れていた記憶」を呼び覚ましていただこうと書いてみました。
たくさんの「イイネ」ありがとうございます。

税区分は、確かに四捨五入なので、1.6が2リッター並に扱われることは「損」と考えても不思議ではありません。しかし性能的に同等であれば、道を走る時に肩を並べられる「優位感」があります。車体は小さくても、「これは小型でなくエンジンが1600あるのだ」というプライドを保つための、日本人好みの背伸び感が、好まれたように思えるのです。
2012年5月7日 19:52
軽さに勝るものはないですね。

AE86も軽かったし、KPスターレットも軽かった。

私が乗ってたシャレードターボも軽かったし、VISAなんか本来30ps程度の空冷2気筒?600ccを載せる車だったので、ブリキのおもちゃかと思うほど軽かったです。それに1600cc、115ps(プジョー205、1.6エンジンのデチューン版)がFFで載ってたもんだから、エンジンだけが走ってるようなものでした(笑)

カデットの素の1.6Lも英国のレンタカーでよく乗りました。
衝突安全性の問題でもうあんな軽くて楽しい車には乗れないんだろうなぁ・・・
コメントへの返答
2012年5月9日 7:18
軽い=剛性、安全性が低いという一般論。
それと30年ほどの間の死亡事故の減少、その論拠がクルマの安全性の向上と言う認識が、強かったです。メーカーもいたずらにクルマを大きくし、エンジンも大きくした。燃費の改良で、こなせているように思わせた。
モノの見方が一旦傾斜すると、小さなクルマは貧相に見えるし、売れない。今5ナンバーのクルマを見ると、ビックリするくらい小さく見えます。
そろそろ、その考え方を払拭しないと、若い世代はクルマに乗ることがすごく愚かで、反社会的な行為だと、体質的に悟っているのではないでしょうか。

僕らが思い出のクルマを語れるような、牧歌的な時代に戻すことはかなり難しい。
今のでかいクルマを淘汰することすら、不可能に近い。でも戦前は車が大きく、戦後小さくなりました。
何かのきっかけになれば、です。
2012年5月7日 20:15
直4・1600ccって軽さとパワーのバランスが取れてて分かりやすくスポーツしてますよね。今でも2台持てるならユーノス・ロードスターが欲しいです
「直線が何百kmも続く国でもあるまいし」とよく言ってるんですが、友達には「大きい方が楽だろ」って反論されるんですよ…

とは言え、やっぱり個人的には小柄できゅっと引き締まった車が好きなんですよねぇ
コメントへの返答
2012年5月9日 7:24
ありがとう。貴方のような20代の人に読んでもらいたくて、こういう記事を書いております。
成長しないこと、禁欲、すべて、肯定か否定かという二元論で議論するのも、考えものという時代になってきております。
日本人の体格が大きくなったので、という説も今は説得力がありません。
ダウンサイジングという言葉も30年古い。
コンフォータブルサイジング、と今は言うべきでしょう。
人口も少しずつ減っていってますからね。
2012年5月7日 21:53
おじゃまします
NB6のロードスターに乗るたび感じる、バランスの良さと楽しさ。
初めて運転するクルマがNB6だった息子たちは幸せ者かな。
NB6ロードスター、もしかして国産最後のテンロク?
コメントへの返答
2012年5月9日 7:35
初めまして。NB6という選択がありますね。
マツダのロードスターもヒストリーを20年以上かけて創って来たことは、現代の自動車社会の中で、誇れる視点を持っていると言うことですね。
今残っているテンロクスポーツの思想に一番近い存在だと思います。
2012年5月8日 19:17
kotaroさんもご存知の通り、私のクルマ生活の始め10年はテンロクエンジンと一緒でした。
ゴルフ1、カローラFX-GT、バラードスポーツCR-X Si。特に後者二つは4A-GELUとZCエンジンという当時の名機を立て続けに経験できたことを感謝しています。今でもCR-Xは私の所有したクルマの中でベストハンドリングマシーンだと思っています。

当時もう一台迷っていた車がありました。AW11ですね。いまでもMR2のNAは欲しい車の一つです。
コメントへの返答
2012年5月9日 7:47
ゴルフは1500でなく1.6のEでしょうか。
「テンロク」で検索すると、2T-Gは古過ぎて、4A-Gの思い出を語る記事が多いですね。
ZCは、思い出が有り、京都のホンダSFに二輪の部品を取りに行っていたら、見慣れぬワンダーシビックが置いてある。Siのバッジに「これひょっとしてホンダ久々のツインカム?」と聞いたら、「そう」。ヤードの奥で見せてもらいました。
80年代のワクワク感というのは、誰でもが、偶然芸能人や有名人に遭遇できたら友達になれるようなフレンドリーさでした。今は何か「うっとうしさ」のようなマイナス面ばかり考えてしまいますね。

AW11ですか。あのトヨタの紙細工みたいなデザインが、Kポップ以前の韓国を思わせる、安手の風俗みたいですね(爆)。
僕ら「リア80」ですもんね。(爆爆)
2012年5月8日 22:12
確かに。。
テンロク、と云うフレーズには意味深、な所がありますよね。
当時の車好きには。

BMで云うと、初期の02でしょうか?
やはり、車重は900kg位が、
取廻し考えて、ベスト? でしょうか。
と云う私は
現状、1.2tもある2000CSは
1600ccエンジンで限界を模索中です (笑
コメントへの返答
2012年5月9日 7:56
ビーエム党のtypeさんからみると、あまり該当車が少ない。これもクルマの文化ですね。
グラースボディの1600GTも大きいし、1602や1502でも、2002の入門車という感じです。
個人的には初代3に2灯の316というのがありました。あれが好きです。
2000CSは友人が持っているのでよく乗りましたが、車体は昔の5ナンバーいっぱいに近い。大きいです。レーススポーツカーではなく、豪華なヨーロッパ特急だと思いました。
キャビンの雰囲気は「豪華ヨット」に近いと思います。でも。3.0だと高速過ぎる感じですね。
2012年5月9日 15:59
はじめまして

プジョー(自転車)繋がりでブログを見させていただきました。

 ☆奥の深~いブログに感心…

1600ccにこんな経緯があったとは…
学生時代Rallyに参戦~ギャラン110サニー・1600GS・27レビン・サニーEXなどに乗っていました。

1200cc A型EG バラシテ組立 OHC/プッシュロッドでも軽量を生かして下りでは結構1600を追詰め楽しんでいました。

当時のランサー1600GSR(OHC/ツインキャブ)の快進撃!篠塚健次郎&サザンクロス・サファリ・かっこ良かったですね~♪
コメントへの返答
2012年5月10日 23:14
記入ありがとうございました。
私のプジョーは1970年代モデルです(笑)

いろんなクルマに実際に乗られてたのですね。
これに80年代の入口のジェミニZZがあれば、ラリー車全制覇になるのでは、ないでしょうか。

サニーのA12エンジンは、日産らしいまじめで完成度の高いOHVエンジンだと思います。
1400からL型(本当は1300のL13があった)になり、OHCエンジンになります。
OHCの方が方式が新しく、高級になると普通、購入者は考えます。ところがほんの少し鼻先が重くなります。サニー110のような自重600kg台(軽量化すると)のクルマに取り、5PS程度の軽いチューニングより、鼻先が10kgでも軽い方が戦闘能力が高いから、あのA型エンジンを「高崎チューン(ダートラ)」とか「東名エンジニアリング」の各チューナーがこぞって名エンジンに仕立て上げたのです。
ここがサニーのサニーたる所以で、1400のサニーエクセレントより、1200GXの方が「速かった」のです。面白いでしょ。こんな話、これからもどんどん書いて行きます。

ちなみに私の愛車は未だにOHVです。(笑)

プロフィール

「やっぱり。言わんこっちゃない。「トヨタ、センチュリーを独立ブランドに クーペ開発でラグジュアリー市場拡大」https://x.com/i/trending/1977788758218219921
何シテル?   10/14 09:32
車は殆ど処分して、1971年登録のフィアット850クーペに 1987年以来、乗り続けています。 住居は昭和4年築の、古い日本家屋に、現状で住んでいます。
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2025/12 >>

 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031   

リンク・クリップ

趣味とかその対象はどうなっていくのか 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2020/04/01 18:15:22
タイ製L70ミラ・ピックアップのすべて 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2015/02/22 10:52:34
春の1200kmツーリング・中国山地の尾根を抜けて 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2014/05/11 05:49:46

愛車一覧

ホンダ スーパーカブ50 プロ ホンダ スーパーカブ50 プロ
中古のスーパーカブを買いました。 原付に乗るのは40年ぶりです。
フィアット 850 車の色は空のいろ。 (フィアット 850)
2016年10月、三年半かかった車体レストアが完了し戦列復帰、その後半年、また以前のよう ...
プジョー その他 26インチのスポルティーフ (プジョー その他)
高校の時から乗っているプジョーです。1975年購入。改造歴多数。数年前に自力でレストアし ...
シトロエン ベルランゴ ゴールデン林檎 (シトロエン ベルランゴ)
還暦過ぎて、最後の増車?!。 見たこともなかった人生初のRV車を、九州生活のレジャーのお ...
ヘルプ利用規約サイトマップ

あなたの愛車、今いくら?

複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!

あなたの愛車、今いくら?
メーカー
モデル
年式
走行距離(km)
© LY Corporation