
カーシェア借りてみた番外編、ホンダ・WR-Vを取り上げます。
軽自動車を3台イッキ乗りしてみた時に「今の普通車だったらどうなのか?」という確認と「SUVってそんなにイイモンか?」と気になり、確認のために乗ってみた一台になります。
ホンダ・WR-Vはタイで企画・インドで生産される東南アジア向けの車種「エレベイト」の別名になります。タイ向けにはWR-Vという名前の別の車種が生産・販売されています。ベースになったのは本国のホンダ・シティ(日本未導入車種)で、このシティがセダン・ハッチバックのみに対してエレベイト(WR-V)はSUV型となります。
日本に導入されるWR-Vはすべて純ガソリンエンジンの1.5LにCVTが組み合わされた、前輪駆動車のみとなります。
ホンダにはこれとは別に「ヴェゼル」という車種がありますが、全長・全幅・全高ともに極めて近いサイズ車種が2車種あることになります。
ただし、ヴェゼルは基本的にハイブリッド車が基本(1.5L純ガソリン車は4WDのみの設定)になるのに対し、WR-Vはガソリン車のみとなります。
※価格は1万円未満を四捨五入
今回お借りした車両は現在のラインアップでは中間のZグレードになります。
借受時点での走行距離は900kmのド新車(ちなみに先月('25年4月)登録のクルマでした)、タイヤはブリヂストン・トゥランザでサイズは215/55R17、空気圧は指定空気圧が前230kPa/後220kPaに対してピッタリで試乗しました。
カーシェアはいつもの「三井のカーシェアーズ」でお借りした車両になります。

借りたステーションから1kmも走らずに首都高速に乗ったのですが、パッと乗った感覚ではあまりパワー感がありません。1.5Lのガソリン車というよりも、1.3Lのガソリン車という感覚のパワー感です。Dレンジでブレーキペダルを離したときのクリープ感覚とか、アクセルを最初に踏み込んだ時のクルマの出方は穏やかと言えば聞こえはいいですが、トロいとも言える微妙な境目という感覚を受けました。
すぐに高速に乗ったのですが、中間加速という面でもエンジン音がうなる割には加速しづらい印象を受けます。
ステアリングの印象も、先日のハスラーほどではないにせよハンドルを大きく切らないと曲がっていかない印象を受けます。ただし、これはいわゆる「クイックなステアリング感覚に慣れている」ことも一因としてあると思います。
試乗の始終で「少し多めに舵を切らないといけないんだ」と認識を持てば、クルマ自体は素直に、そして安定して旋回してくれる、ちゃんとしたハンドリング特性を持つ車に違いありません。

乗り心地に注目してみると、いささか「ホンダっぽい」と思う要素が薄い、というかほとんどないことに気づきます。
先ほどのハンドリングからも「穏やかなクルマ」という印象を受けましたが、ロードノイズもそうなのです。ホンダのクルマってフィット・ヴェゼル・先代フリード・N-BOXの小型車シリーズは「前がうるさい」クルマが多い印象を持っているのですが、WR-Vは静かです。路面の舗装状況によっては「ゴーッ」と一気に音が変わる他のホンダ車に対して、路面状況が変わっても「サーッ」と静かなままです。
クルマの揺れに対しても同様で、小さなピョンピョン感が抑えられていて、穏やかに、ちょっと重量の重い車のように路面を押さえつけて走ってくれます。
正直に黙って乗っていると、いい意味でホンダっぽくない、すごく上等な乗り心地のクルマに感じます。
高速のジャンクションでステアリングを切りながらそこそこの速度で旋回しても同様で、穏やかに、しっかりと路面に踏ん張りながら曲がってくれます。
いきなり「カクン」とクルマが傾いたり、妙にカーブの外側に行きたがる傾向もありません。とにかくしっかり、穏やかに、堅実に仕事をしてくれます。

カーシェア走行中の燃費も、138.9kmの走行で18.8km/Lの車載コンピューター表示で、この表示がそっくり正しければカタログ燃費よりもよく走ってくれます。
(カタログ上の表示はWLTC複合モード燃費で16.2km/L、高速モード燃費で18.0km/Lの記載です。)
ただし、カーシェア試乗コースは夜間の首都高中心のため燃費は伸びやすいことに注意が必要ですが、カタログ値超えをアッサリ叩き出すのは結構レアケースです。
いつもならここで「まとめ」に入るのですが、試乗してみて気になったので後日ディーラーでの実車確認+カタログ入手にも出向いてきました。
さすがにディーラーの展示車はパチパチ写真を撮るわけにいかないので一部写真ナシでの「気になる」点を紹介します。

人によっては、今どき電動パーキングブレーキがないことを気にする人もいるかもしれません。もっとも、このタイプということはホンダセンシングの「トラフィックジャムアシスト」(渋滞運転支援機能)が付いていません。よって渋滞中の完全停止がしないタイプになります。

同じく、人によっては前席シートベルトのアンカーが上下調節タイプでないことを気にする人がいるかもしれません。

後席に回ると、センターコンソールからエアコンの吹き出し口があることに気づきます。普通はこのクラスどころか、かなり上級クラスにならないと後席エアコンの吹き出し口は付いてきません。考え方の違いがこういうところにモロに出てきます。

ただし、シートベルトのバックルを途中で保持するボッチは付いてきません。よってバックルがベルトの下側までベローンとずり落ちてしまいます。
ほかは昼間にディーラーさんの展示車を眺めて気付いたのですが、塗装品質はあまり良くないです。塗装厚の薄い、ちょっと凸凹の目立つ仕上げになります。ただし、ボンネットの裏側やエンジンルームの中側までしっかり塗装が塗ってあることはイイところだと思います。(フィットだとボンネットの裏側の塗装を省略していることがあったはずです。)
また、フロントフェンダーのプレス向きとボディ面の作り方の問題から、とてもすき間が大きく見える箇所があること、面が左右で等しく合っていない(ボンネット側が若干引っ込んでいる?)ように見える箇所があります。
これは生産技術面での問題と言いますか、フロントフェンダーのプレス向きを工夫する、ボンネットの金型の造りがちょっと粗かった、フェンダーとボンネットのパネルの区切り方を工夫すれば「そう見えなかった」箇所になると思います。

最後にまとめます。
乗った印象としては穏やかな乗用車としてかなりマトモなクルマだと思います。
クルマを見栄の対象として「いいクルマでしょ?」と自慢するにはいろんなところの造りが甘い印象は確かにあります。しかし乗ってみるとちゃんと中身は作っているし、開発方針にブレが無くて一本スジが通ったクルマの印象を受けました。
それが「ホンダっぽいクルマですか?」と聞かれると「ちょっと違うかな…」と思うところもあります。(もっと色んな動作がハッキリしていて、良くも悪くも快活なクルマではない、という意味です。)しかし、いい乗用車が欲しいんだ!という中身を重視する方には一度検討の余地があるクルマだと思います。
ただし、買うならXグレードにした方がいいと思います。今回の試乗車、Zグレードに装着してあるナビ(ホンダ用品ナビ以外の選択ができない仕様なのです)を加えると総額290万円近くになります。ヤリスクロスのハイブリッドGグレードにLEDヘッドライトを加えると総額305万円です。+5%でハイブリッドが買える、となるとヤリスクロスを選ぶ人が増えると思います。ならXグレードでおよそ30万円安くなるグレードの方が、WR-Vの全体的なバランスとして良いところに収まると思います。
乗り心地や使い勝手で「いい乗用車」と思えても、ライバルと見渡すと「あれ、割高かな?」と思うところが出てきてしまうのは、このクラスの難しさだと思います。
個人的な独断と偏見のコーナーです。ヤリスクロスのHV、Xグレードにもカーシェアを借りて試乗しました。そのうえでWR-Vとどっちを選ぶか?と聞かれると、私はWR-Vを選びたくなります。ただしXグレードに限ります。ヤリスクロスHVもいいクルマですが、全体的な開発方針の「スジが通っている感覚」はWR-Vの方が強いです。
ただしヤリスクロスの恐ろしいところは「HVの中間グレードが他社純ガソリングレードの上位機種と同じ値段で買える」ところ、かつ国産品の細かい造り込みが非常によく出来ていることです。コストパフォーマンスという意味では他社を寄せ付けない恐るべき商品力です。
Posted at 2025/05/25 22:28:28 | |
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