「心地よい」にはちょっと離れている…かな。
今更ながらではありますが、ホンダの現行型フィットにじっくり乗ることができたので感想をご報告いたします。
ホンダ・フィットは2020年2月発売開始の現行モデルで4世代目となり、プレスリリースによると開発のコンセプトは、4つの「心地よい」を目標としているそうです。視界が開けている「心地よい視界」、シートの「座り心地」、快適な「乗り心地」、荷室スペースや収納スペースなどのパッケージングの「使い心地」の4つを向上させること、だそうです。
グレード構成も分かりやすく5種類となり、基本装備の「BASIC」、ちょっと上級装備を加えた「HOME」、見た目をポップにした「NESS」、昨今流行りのSUV風外観の「CROSSTAR」、本革シートを採用した上級機種の「LUXE」となります。
パワートレインは1.5Lガソリンエンジン+モーターのハイブリッド「e:HEV」と1.3Lガソリンエンジンの2機種、駆動方式はそれぞれに前輪駆動と4輪駆動が設定されます。
今回お借りした車両は、ホンダのカーシェアサービス「everyGO」を使用して手配しました。
借受時間15分ごとに200円+距離料金(1kmあたり17円)が加算され、今回は4時間15分のレンタル時間を確保して3,400円の基本料金+距離料金となっております。
借り受けた車両はハイブリッドのHOMEグレード、前輪駆動のモデルとなっています。
借受時点で約10200kmを走行していたもので、今回は高速道路を中心に130kmほど運転してみました。ちなみに装着タイヤは前後共にヨコハマタイヤのBluEarth AE30でサイズは185/60R15となっています。(空気圧は未計測)
今回このクルマを評価するポイントは走行性能、主に首都高速道路での巡航領域を中心に乗り心地と操縦感覚を中心に評価します。比較対象はマイカーのトヨタ・プロボックスです。
(つまり、借りた目的は「プロボックスNEXT」を考えて乗ってみたかった…ということです。)
カーシェアステーションから首都高ランプまでの一般道走行中に気づいたことは1点あります。
路面状況が比較的良いところではメチャクチャ静かです。ロードノイズがほとんどカットされています。EV領域をバッテリー残量が許す限りギリギリまで使う特性も合わせて、エンジン音がほとんどしません。(そもそも「掛かっていない(=EV走行モード)」のですが。)
これが少し荒い路面になると、ガラッと変わってガーガー音が凄いです。遮音材の設計度がちょっと足りない気がします。「静かでいいクルマだなぁ」と思っていると突然裏切られます。(そういうクルマと思って乗っていると…やっぱりうるさいかも。)
最寄りのランプから高速道路に乗って、都心環状線からレインボーブリッジ、湾岸線西行を通って大黒PAを目指します。

パワートレインはプロボックスのように「カツーン、カツーン」と小気味よく…とはいきませんが、滑らかに、かつ必要十分なパワーを供給してくれます。EVモードからHVモード(エンジン始動)に切り替わっても、メーター表示を見ていない限り気付きません。
我が家にあるプリウス(現行型)と比べても滑らかで、気に障る振動・騒音がドライバーには伝わってきません。このパワートレインは他のハイブリッドシステムと比べても、切り替わりの滑らかさでは現時点でベストと言えるくらいよく出来ていると思います。

一方でサスペンションについては、良い点と悪い点がはっきりと分かれます。
個人的に良いと思えたのはサスペンションのセッティングで、コーナリング時にもクルマが傾くロール感がほとんど感じられません。つまり体が左右に揺さぶられません。またアクセルをガツンと踏み込んだ時のリアサスが沈む感覚(専門用語で「スクワット」と言います。)や、ブレーキを強くかけた時のフロントサスペンションがつんのめる感覚(同「ダイブ」または「ノーズダイブ」と言います。)がほとんど感じられません。
足回りのロール、アンチダイブ・アンチスクワットに関するセッティングはよく出来ていると思います。
引き換えに、首都高の高架継ぎ目を乗り越えるときのショックはマイカーと比べてもやや大きいです。特にリアサスが超えるときは、最初にショックアブソーバーが縮もうとする力が働かないのか結構ダイレクトに体へ伝えてきます。
もうひとつはコーナリング中に継ぎ目を超えると、ステアリングの操舵感覚が少し「暴れる」感覚があります。また同じく、やや大きい段差では直進状態でもステアリングがごく僅かに取られます。おそらくはフロントサスペンション・ステアリング機構・エンジンを止めているフロントサブフレームの取付剛性が甘いと思います。あるいはサブフレーム自体の振動や衝撃を吸収するための衝撃緩衝部品(ブッシュ)が、特に縦方向の衝撃に対して設計が甘い(受け止めきれていない)印象を受けます。
ですので、乗った印象としてやや硬めの乗り心地でクルマが少し跳ねるような印象があります。開発の狙いである「広い視界」は満たされていますが、目線の安定がちょっと取りづらい印象を受けます。事実、ドライビング中にほんの少し車酔いを起こすような感覚を覚えました。
他によかった点は2つあります。

一つはシートの座り心地です。開発の狙い通りで小一時間座りっぱなし、乗り心地も先述のように「それほど…」という中でも、体をしっかりとホールドしてくれますしどこかが痛くなるような感覚はありませんでした。パッと座った印象ではやや硬めのクッション感覚ですが、長時間座る分には問題ありません。

もう一つはエアコンの操作系です。ダイヤル操作で風量・風向・設定温度を調整できるので手探りで操ることができます。表示が見づらいことはご愛敬ですが。

ひとつ気になるポイントとして、用品設定のサイドバイザーが大きくて側方視界を妨げることがあります。これは用品を装着しなければ特に問題になりません。

返却前に走行距離とメーター読み燃費を報告しますと、129.2kmの走行で26.9km/Lの表示でした。プリウスに比べるとちょっと分が悪いかもしれません。(家族3人乗車、ほぼ同じコースを約150km走行でメーター読み30.0km/Lの表示を出したことがあるため、ですが。)
フィットの印象をまとめます。パワートレインとサスペンションの動きに対するセッティングはよく出来ていると思います。またパッケージングは歴代、4m程度の全長を持つ「コンパクトカー」としてよくまとまっている美点をそのまま引き継いでいます。ただし横から見た時の「タマゴ型」から想像できる通り、フロント左右の角までの感覚はつかみづらいです。それを差し引いても短い全長、広い室内、どこでも停められる全高、小さい旋回半径などのパッケージは美点と言えると思います。
ただし乗り心地とロードノイズについては割り切っているのか、あるいは「テストコース育ち」の弊害(?)か、実際の路面をよく知らない人がまとめてしまったような印象を受けます。今後の商品改良やマイナーチェンジでおそらくここも良くなっていくと思います。
現時点で乗り心地・操縦感覚について「どうなの?」と聞かれたのならば、開発の狙いである「心地よさ」にはちょっと離れていると思います。
購入を考えている人にお勧めできるか?と聞かれたのならば、十分にお勧めできると思います。あるいは他と迷っている…となったとしても「乗って気に入ったのならばいいと思う」と言えるクルマだと思います。
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Posted at
2021/01/06 21:45:49