なかなか、見て・触ってみた印象は良いなぁ。
7月10日に新型発表・発売されたトヨタ・カムリを見てきました。
カムリとは、1980年にセリカ・カリーナの派生車種(セリカ・カムリ)としてデビューし、1982年に横置きFF車として発表・発売されてから、主に世界戦略車として設計・発売されてきたクルマです。
1991年からは北米向け・日本向けでボディを別に作り、北米向けは日本名セプター、1996年のモデルチェンジでカムリグラシアと名乗っていましたが、1998年に日本向けは兄弟車のビスタのみになり、それまでのカムリグラシアをカムリと名乗り、北米・日本同一ボディになりました。
現行型はFFカムリから数え出すと8世代目になります。(北米ボディベースで換算。)
今回の新型は、先代と同じく日本導入される仕様は2.5Lハイブリッド車のみ、生産は日本のトヨタ工場で行うモデルとなっています。全世界的には北米向けのアメリカ・ケンタッキー生産もあるはずです。
今回のモデルチェンジに当たり、キモとなるポイントは主に2つに集約します。
(1)トヨタの新世代ボディ設計「TNGA」に基づく、ミドルクラスFFシャシーの開発。
(2)世界的な環境規制に対応する新エンジン・トランスミッションの開発とシャシー全体での効率化。
まず一つ目、トヨタの新世代ボディ設計「TNGA」について、見た印象と考察を述べます。
(すみません、中古車の画像から同じようなものを加工しました…。)
サイドビューはXグレード、ブラックボディのそれを用います。
本当ならば旧型と比較すべきですが、旧型の資料を現在一切持っていないので印象のみで述べます。(どなたかフォローお願いします…。)
ボディサイズとしては、全長×全幅×全高が新型は4885mm(+35mm)×1840mm(+25mm)×1445mm(-25mm)となります。カッコ内は旧型との比較値。
新型のサイドスタイルのそれは、フロントのボンネットが長くなった印象を受けます。ただし、旧型のサイドスタイルとプレス資料をよく見比べてみると、ワイパー位置(スカットル)とフロントタイヤハウスの位置関係は新型の方がわずかにリヤタイヤ側に寄っていて(青線)、フロントオーバーハングは先代比-15mmとあります。またボンネットの位置が40mm下がっています。対歩行者保護対策でボンネットからエンジンまでの空間が規制されている現在の法規制では、エンジン搭載位置が下がり重心が下がったことを示唆するものになります。
また、リヤスタイルはハイデッキとなり、リヤガラスの上端が車両後端に移っています(黄緑線、旧型はリヤタイヤハウスから一直線上にリヤガラスの上端があるが、新型はタイヤハウスより後ろにリヤガラスの上端がある。)。これにより、リヤの空力性能を確保しつつ後席の居住性を確保していることがうかがえます。
なお、全高が低くなったことに伴い従来型に比べシート位置を下げていることもプレス資料には記載があります。(数値は不明。)
また、パッケージングとしてはリチウムイオン電池の全車採用を行い、冷却システムの小型化を図ってリヤシート下への搭載を行っております。これは走行性能の向上に寄与する(主に旋回性能)ものであると考えられます。
ボディの印象としてはぱっと見そういう視覚トリックが、ロングノーズ・ショートデッキっぽい古典的なスポーツカー風スタイルを形作っています。
では座ってみるとどうなのか。

フロントシートはプリウスやC-HRとどことなく似たような雰囲気を持つシートになっています。肩回りがややなで肩で、これは後席に座ると視覚的な「広さ感」を演出しています。これはプリウスやC-HRよりも効果的な印象を覚えますが、サイドウィンドウの下端位置が低く肩口ぐらいにあること、楕円形状を描くリヤウィンドウスタイル、撮影車両のブラック内装でもグレーの天井内装色を用いていることが理由として考えられます。

フロントシートに腰かけ、あちこちを揺すったり叩いたり押してみたりしても、ステアリングコラムの剛性感も高く、ステアリングホイールのリム剛性も高いので揺れたりしなったりしません。ただし、内装トリム(ドアトリムとかメーターの日よけとかセンターコンソールとか)の取り付け剛性は高くないです。
個人的経験上、運転している印象に寄与するのは運転中に体に触れるもの(シート・ステアリング・ペダル)、ボロっちい印象に寄与するのはそれ以外という体感があるので、運転者にとっては良いクルマでも、5年・10万km走って運転する印象の劣化は少ないと思いますが、ガタピシ音の落差はそれなりのクルマかもしれません。

あと、エンジンルームを見て疑問に思うところが二つあり、一つはエンジンマウントの固定ネジが紫色?であること。これはネジに何かしらかの締結技術が使われているのではないかと考えられるところです。
(参考:マークXのフロントサスペンション固定部。3本ネジになっている。)
もうひとつがフロントサスペンションの固定ネジが4本あるように見えることです。(もしかしたら違うのかもしれません。)それだけ締結力を挙げているという目的が、カムリ単独で考えて「走行性能の向上」なのか、それともいずれ登場するであろう派生モデルのRVやミニバンをもくろんだ設計なのか…といったポイントが気になります。
二つ目のポイント、世界的な環境規制に対応する新エンジンとトランスミッションの話です。

エンジンのカットモデルが展示されていたのですが、今度のエンジンは吸気ポート噴射と燃焼室内直接噴射の2ポート式、それからロングストローク化を図って圧縮比を見直していることが気になったところです。単純に考えればロングストローク化は1気筒当たりの容積が同じ(=同じ排気量・同じ気筒数)ならば摺動面積が増えるので抵抗になる=効率の悪化を生み出すのですが、そう至らないのは低粘度オイルの指定とシリンダー内壁の形状工夫が考えられます。

それからオイルポンプがずいぶん小さい気がするのですが…昔からでしょうか?

ハイブリッドトランスミッションは、これまでの遊星歯車機構を廃止しギヤ配列のものに変更されています。これによりそれまでのベルト駆動による損失がなくなり、高効率化を図っています。


結果的にJC08モード燃費で、新旧の悪い燃費ベース比較+20%、カタログ値もっともよい燃費ベースで+30%の向上を図っています。勿論、これ以外のところも見直されていることが考えられます。(低転がり抵抗ベアリングとか…。)
さて、技術的側面で見てきたカムリはどうなのか。
個人的には新機構をたくさん詰め込み、それらの目指すところは機械の効率化と人間のフィーリングアップの両立を目的としている印象を受けます。そしてそれだけの中身が詰め込まれていると思います。試乗は生憎できていませんが、相当印象良いクルマではないかと期待できます。
Posted at 2017/07/12 22:28:24 | |
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