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トヨタ~のブログ一覧

2018年10月05日 イイね!

【プレテク】タイヤの空気圧・一問一答

【プレテク】タイヤの空気圧・一問一答最近、私とお友達登録をさせて頂いている皆様のネタで空気圧の話題が増えております。
そこで私も便乗して、タイヤに関する簡単な「一問一答」ネタをいくつか紹介します。







Q:なぜタイヤから空気は抜けるの?
A:(1)ゴムは気温が高いと空気を通しやすくなるから
  (2)気温が下がると空気圧が下がるから、です。

解説(1):ゴムには「気体透過性」という概念があります。タイヤに例えれば「タイヤの空気がタイヤに浸み込んで外に出ていく性質」です。
気体(酸素、水素、窒素など)ごとに抜け出ていく割合を示す「気体透過率」があって、タイヤの主材料(スチレンブタジエンゴム)が25℃と50℃で比較すると…
酸素は50℃のとき25℃のときより2.65倍、窒素は2.91倍多く抜け出します。(出典
つまり、気温が高くなると空気が抜け出る量が増えます。

解説その(2):物事を単純に考えるとき、空気を「理想気体」と例えて考えることができます。
理想気体では、

と例えることができます。ここで「体積」は同じと仮定(※)すると、圧力÷気温=一定と考えることができます。
ここで例えると、気温25℃のときに220kPaに調整したタイヤは20℃に気温が下がると216kPaに下がります。
2017年7月から12月の東京の平均気温で考えると(出典)、7月(平均27.3℃)に220kPaに調整したタイヤは12月までに…(カッコ内平均気温[℃]:気圧[kPa])
7月(27.3:220)→8月(26.4:218)→9月(22.8:217)→10月(16.8:212)→11月(11.9:209)→12月( 6.6:205)へと下がっていきます。
※補足:厳密には体積一定ではありません。(空気圧が下がればゴムの張力が下がり、その分の体積減少は考慮すべき事項ですが、説明の都合上簡略化しています。)

Q:なぜタイヤの空気圧は走り出す前に調整しなければ
                                 いけないの?
A:タイヤの設計者は「人間が暮らしている温度」で空気圧を
                            決めているからです。

解説:私のタイヤの実例です。駐車場で走り出す前の空気圧240kPa(その日の気温25℃くらい)、ガソリンスタンド(約2km先)まで走っていって、同じ空気圧計で測ると255kPa位を指します。
さっきの「圧力÷気温=一定」で考えると、タイヤの内部温度は計算上45.8℃になります。
つまり、ちょっと走るだけでタイヤの中の温度と人間が暮らしている温度は変わってしまいます。また、補充する空気は人間が暮らしている温度とほぼ同じ温度を足すのです。それは走った後のタイヤに冷たい空気を足すので、正確な空気圧は分からなくなるからです。
だから設計者は「人間が暮らしている温度」を基準に設計しているのです。

Q:タイヤはなぜ走ると温度が上がるの?
A:タイヤが路面をとらえる力が熱になるからです。

解説:タイヤは出っ張り(ブロック)一つごとによじれる力、路面の出っ張りを包み込む力を持っています。
これが「グリップ」の正体なのですが、タイヤは回転するので一つのブロックに注目すると、グリップを持っていない→路面に接してグリップを持つ→路面を離れて仕事していない、の繰り返しです。
人間に例えると、ダンベルを持ち上げて降ろし、またダンベルを持って降ろし…の繰り返しです。人間だって熱くなって汗をかくように、タイヤも熱を持つのです。

Q:空気圧で乗り心地が変わるのはなぜ?
A:タイヤは空気バネ、エアサスと同じだからです。

解説:タイヤは空気によってクルマの重さ、路面からの衝撃力を支えています。これは空気バネの特性と同じで、空気バネの書き方をすると

となります。これを微分するとバネ定数が出てくるのですが、微分する気分ではないのでここでは省略します。
(単純に、タイヤを模した時のバネ定数を計算したことがないという理由もあります…。)

このように、空気圧によってタイヤが受け持つことができる荷重が決まって、その親戚にバネの硬さを示す係数が出てきます。可変サスペンションの車で硬さの好みがそれぞれあるように、空気圧によって乗り心地の調整をすることができます。だから乗り心地が空気圧によって変わるのです。

(最後だけ、個人的な考えに基づく回答)
Q:空気圧は車が規定する値より高い方が良いのか、
                             低い方が良いのか。
A:高い方が良いと思います。

考え:上に書いたように、走り出すとタイヤの中の空気は50℃くらいになります。この時、中の空気は駐車場に止めているときよりも外に出やすくなります。
言い換えれば、空気圧を減らそうとする力が働きます。空気圧が多少高くても、タイヤ(のゴム)側で少し減らしてタイヤは破裂しないように自己調整します。(能力の限度はあるにせよ。)
一方で、タイヤの空気圧が低い場合、クルマが持つ荷重を受け持つことができません。これで走り出せば、ゴムはよくたわむのでグリップは多少上がるでしょう。(実際、泥道などで空気圧を下げて緊急脱出する方法があります。)
が、グリップが上がることで温度が上がって空気圧を高くする方向に作用しますが、低すぎるとたわんで仕事をして(←スタンディングウェーブ現象)ゴムの温度がどんどん上がっていき、中の空気は透過しやすくなって、さらにゴムが温度の限界に達すればゴムが壊れてタイヤは壊れます。これがバースト現象です。
タイヤ(ゴム)は高すぎる空気圧を放出して下げる能力はあっても、低すぎる空気圧を補正する能力は持っていません。だからこそ、空気圧は多少高い方が「安全のために」適切であると考えます。

…なるべくわかりやすく書いたつもりですが、もしかしたら読解に困るような表現をしていたり、間違った表現をしていることも考えられます。
その為、気になる方は下に書く本や論文、本文中の(出典)をクリックしてより深く理解して頂ければ、と思います。

参考文献:
タイヤ 自動車用タイヤの知識と特性、馬庭孝司、山海堂、1979年8月
超クルマはかくして作られる、福野礼一郎、二玄社、2003年1月
空気バネ、相沢謙一、環境技術Vol.11 No.5、1982年
Posted at 2018/10/05 23:01:45 | コメント(1) | プレ・テク | 日記
2015年01月28日 イイね!

【プレ・テク】タイヤってナニモノ?…空気圧は大切

最初に:
本記事(群)は興味を持ったら詳しく調べて頂く…ための前口上と思って頂ければ幸いです。
(かくいう私だって、基本的には右から左に書き写す…状況で、勉強途中でこれを書くという大バカ者です…から、質問には答えられないかもしれません。予めご了承ください。)
もう一つ、本記事(群)では機能の紹介を目的に特定メーカー・製品のイラスト等を用いて紹介することがありますが、特定メーカーや製品を肯定・否定するものではありません。
また、本記事にコメント等を頂く場合についても、特定メーカーや製品を肯定・否定されませんようお願いいたします。
(ご理解いただけない場合、当方の独断においてコメント等を削除させて頂く場合があります。予めご了承ください。)


タイヤのお話、第1テーマは「空気圧は大事」から入ります。

本題に入る前に、タイヤにはどのような機能が求められるのでしょうか?
大きく4つの分類をしてみると、以下のように区切ることができると考えられます。
・車両の重量を負担する機能
・乗っている人や荷物を揺さぶらないようにする、ばねの機能
・クルマを前や後ろに進む力を路面とやり取りする機能
・クルマを操縦し(=右へ左へ進み)やすくする機能

これら、いずれの機能を満たそうとするために必要な最低限の物質が「空気」なのです。
では空気がどういう役割を果たすのか?を簡単に、そして上記4つの機能に分けて紹介します。

・車両の重量を負担する機能
クルマというのは、4つの車輪で自動車の重さと、人や荷物を乗せた状態の重さを分散して受け持っています。ではどのようにして受け持っているのか?
タイヤを簡単な空気袋に例えてみると、下記の単純な式に表すことができます。
(タイヤ1本が受け持つ重さ:荷重)=(タイヤの接地面積)×(タイヤの空気圧)
この式からは、タイヤの一つの性能は
・タイヤの接地面積を増やす
     ⇒タイヤのたわみ量を増やす or タイヤの外径や接地幅を大きくする
・タイヤの空気圧を増やす
ことで向上することができる、と言えます。
…現実的には、上記の式は厳密な式とは言えず、またどういう定義なのかが曖昧ではあります。しかし非常に簡単に関係性を紹介できるため、これを引用します。

・ばねの機能
自動車に乗っていて、路面の継ぎ目や段差を乗り越えても、人間が揺さぶられないようにタイヤそのものが衝撃吸収する能力もあります。
これは式で紹介するのが難しいため、参考文献よりタイヤの空気圧とバネ定数の関係性をグラフ化したものを紹介します。

これより、タイヤの空気圧を上げるとバネ定数も上がることが分かります。
この資料は古いのでラジアルタイヤとバイアスタイヤの両方が記載されていますが、ラジアルタイヤの方がバネ定数は低い(=よく撓むので、バネとして衝撃を吸収できる)ことが分かります。

・力を路面とやり取りする機能
タイヤは、クルマと路面をつなげている唯一の部品です。タイヤは路面をつかむことで車軸の回る力を路面に伝え、クルマが走ったり止まったり曲がったりできるようにできる機能です。
主な機能はゴムの物質とタイヤの構造で議論することができますが、ここでも一つ空気圧が関連することがあります。-それはハイドロプレーニング現象です。
ハイドロプレーニング現象は、タイヤが水たまりの上で滑走する状態になってハンドル操作もブレーキ操作も、もちろんアクセル操作も一切できなくなることです。(浮いているから路面に力が伝わらない。)
このハイドロプレーニング現象の「臨界速度(=ハイドロプレーニングに陥る限界速度)」を求める式に、なんと空気圧が入っているのです。式は
(ハイドロプレーニング臨界速度)=(定数)×√(空気圧)
という極めて単純な式です。この式でもいろんな条件で試したグラフを載せておきます。

これより、ハイドロプレーニング現象を回避するためには単純に「空気圧を高くすること」ことが有効だ、と言えます。

・クルマを操縦しやすくする機能
自動車がタイヤを用いて旋回するとき、タイヤの力はどっちに働いているのか?
…答えはタイヤの横方向です。この力を「コーナリングフォース」と呼びます。

ではコーナリングフォースと空気圧との関係性は?というと、下記のグラフで紹介します。
コーナリングフォースが、タイヤが進行方向に対して1度傾いた時にどれだけ力が増すか?という比率で考えます。この時の比率を「コーナリングパワー」と呼びます。
ある空気圧まではコーナリングパワーが増えますが、空気圧も高くし過ぎるとタイヤの接地面積が減ることなどから徐々に減ってしまうことが、このグラフから読めるかと思います。


****************************************************
つまり、どういうことなのか?
空気圧を適正に保つということは…
・タイヤにかかる重さを程よく分散して負担することで、タイヤが長持ちする
・コーナリングに差し掛かった時、より多くの力を発揮することができる
    =ちょっとオーバースピードでコーナーに入ってしまっても、何とか曲がることができる
・雨の日でも安心して運転することができる
・(車両との相性問題ではあるものの)バネがポヨンポヨン跳ねる印象がなくなる

事につながるということです。本当は乗る前に確認するのが一番でしょうが、せめて月に1度、ガソリンスタンドに行ったときでも構いませんから空気圧を確認してみてはいかがでしょうか。

余談:なぜ月一回なのか?
水は、沸騰すると水蒸気になって体積が膨張する…ことはご存知かと思います。
実は空気も、その時の気温によって体積が変わってしまうのです。(本当は空気に限らず、どんな物体でも温度と体積には関係性があります。)
日本には四季があり、ひと月経つと肌寒く感じたり、温かく感じるようにタイヤの空気もわずかではあるものの体積(=空気圧)によって季節を感じるのです。
ですので、ひと月に1度は空気圧の点検をしてみてください。

追記:'15/ 1/31
コメントに頂いた「空気圧と操縦感覚への影響」ですが、手持ち資料から少しは役に立ちそうなものをご紹介します。
内容は空気圧と横バネ定数の関係です。横バネ定数については下記グラフ内に「どういうものか」をイラストで紹介いたします。

この関係性より、空気圧が高くなると横へたわむ力も大きくなることが分かります。
*****ここから下、個人的推測に基づきます。また少し専門用語を使います。*****
タイヤのグリップというのは後述しますが、大きくはゴムの柔らかさとタイヤの構造に依存します。
空気圧を高くするということは、タイヤのサイドウォール剛性が高くなるということにもなりますので、横バネ定数が高くこととも符合することになります。
よって、空気圧が高い事はコーナリング時において、「タイヤのゴム質に依存する走り方」と言い換えることができそう…に思います。
この欠点は「ゴムの限界を超えると路面と自動車が切り離される=制御できなくなる」ことです。
(ちょうどいい空気圧ならば、タイヤの構造でもグリップする力が生まれる…とも言えます。)
現実には、車両のサスペンション関係(アライメント、アーム類の長さや配置、アーム支持部分の構造など)にもよりますが、タイヤ単品では上のように言えるのではないか…と思います。
*****ここまで、個人的推測に基づきます。また少し専門用語を使います。*****
Posted at 2015/01/28 20:34:10 | コメント(4) | プレ・テク | 日記
2015年01月25日 イイね!

【プレ・テク】タイヤってナニモノ?

【プレ・テク】タイヤってナニモノ?【注:この文章は繰り返し使用予定です。】
最初に:
本記事(群)は興味を持ったら詳しく調べて頂く…ための前口上と思って頂ければ幸いです。
(かくいう私だって、基本的には右から左に書き写す…状況で、勉強途中でこれを書くという大バカ者です…から、質問には答えられないかもしれません。予めご了承ください。)

もう一つ、本記事(群)では機能の紹介を目的に特定メーカー・製品のイラスト等を用いて紹介することがありますが、特定メーカーや製品を肯定・否定するものではありません。
また、本記事にコメント等を頂く場合についても、特定メーカーや製品を肯定・否定されませんようお願いいたします。
(ご理解いただけない場合、当方の独断においてコメント等を削除させて頂く場合があります。予めご了承ください。)


自動車が唯一、地面と接している部品はタイヤです。
そして、タイヤについては様々な評判や噂が飛び交っております。一例では…
・インチアップすると性能が上がる
・インチアップしたら乗り心地が悪くなった
・タイヤを変えたら静粛性が上がった(下がった)
などなど…。
ここでは「なぜタイヤを取り換えるとそうなるのか?」について説明をしたいと思います。

しかし、タイヤの資料を数点読んでみると、その奥深さは想像以上(!)で、とても私の文章センスでは1つの記事に収めることが難しい…ことも分かりました。(情けない話ですが。)
そこで、いくつかのテーマ別に区切って紹介していきたいと思います。
この前口上では、テーマごとの誘導も目的として掲載することとします。
(タイヤの全体的紹介が終わり次第、同じ文章を最後にもう一度掲載します。これは最新記事から過去記事にさかのぼりやすくするため…とお考えください。)

第1テーマ:空気圧は大切
第2テーマ:タイヤって、どうやって地面と接しているの?(予定)
第3テーマ:インチアップって何がいいの?(予定)
第4テーマ:タイヤの騒音ってどうして起こるの?(予定)
第5テーマ:タイヤの交換・装着ってどういうものなの?(予定)
番外:タイヤの賞味期限ってどのくらい?(カテゴリ:メカ考にて予定)

以上の区切りを当面の予定として掲載します。(変更の可能性あり)

【この文章は繰り返し使用予定です。】
Posted at 2015/01/25 21:40:00 | コメント(0) | プレ・テク | 日記
2014年11月09日 イイね!

【プレ・テク】エンジンオイルの交換周期

始めてみますシリーズの2弾。1弾目の「クルマ+α」は主に私の金欠で滞っておりますが(苦笑)、今回やるのはある意味「元手がかからない」シリーズです。
やる内容は自動車の技術的説明です。技術を英語で「Technology(テクノロジー)」、説明を「Explain(エクスプレイン)」というので、略して「プレ・テク」と名付けます。
ちなみにもう一つ意味として、「プレオープンイベント」の「プレ(pre-)」の意味も込めていますので、興味を持ったら詳しく調べて頂く…ための前口上と思って頂ければ幸いです。
(かくいう私だって、基本的には右から左に書き写す…状況で、勉強途中でこれを書くという大バカ者です…から、質問には答えられないかもしれません。予めご了承ください。)

今回紹介するのは、石油精製メーカーの論文でエンジンオイル寿命に関する研究についてです。
「なぜエンジンオイル交換は必要なのか?」
「エンジンオイルの交換時期はいつがいいのか?」
「エンジンオイルを交換して××kmでうるさくなるのは何故か?」

…この辺について、今回は紹介したいと思います。

まずはエンジンオイルがなぜ劣化するのか?について説明します。
エンジン内部では、燃料と酸素を燃焼して熱エネルギーを作り、そのエネルギーを取り出して動力としています。問題は燃焼というキーワードで、化学では燃焼のことは酸化の一種としてとらえることができます。
つまりエンジンオイルが劣化する理由は、エンジンの機能上必要な燃焼(=酸化)によって劣化するのです。
もちろん他の理由でもオイルは劣化が促進されるのですが、他のオイル類(たとえばオートマチックトランスミッションオイル・通称ATF)とは環境が違うことがポイントになります。

もちろん、エンジンオイルの酸化を防ぐためにベースオイル(基油)を改良することや、エンジンオイル内に味付けを行う(添加剤を混入)させることでオイルの酸化に対する寿命を延ばす試みがなされています。

上記グラフは、エンジンオイルの基油を変更した場合の酸化防止剤がいつまで効果を保つものか実験したグラフになります。グループ1からグループ3まで、いずれも石油精製による基油を用いています。(つまり、合成油ではないってことです。)
グループ1から順に新しい生成方法に代わっているのですが、グループ3では酸化剤残存率が数%になるまでの時間が長くなっていることに注目してください。
なぜこうなっているのか?
それは基油の中に混入されている不純物の成分と温度による粘度変化の少なさが理由になります。グループ1よりグループ2、3の方が不純物の量は少なく、グループ2よりグループ3の方が温度による粘度変化が少ないのです。
合成油ならどうなるのか?
合成油はグループ4、グループ5で規定されており、主に温度による粘度変化がより少なくなっています。(が、合成方法により千差万別です。)
合成油が高性能である理由は、高温でも粘度が低くなり過ぎない、油膜を保ち続けることが理由になります。


上記のグラフは、エンジンオイル内部の添加剤の時間変化と、生成された有害物質の推移について示したものになります。このうち「連鎖停止剤」が酸化防止の添加剤と読み替えてください。硝酸エステルは燃焼生成物として、つまり酸化することによって生成される有害物質として読み替えてください。連結停止剤が効果を失った頃(エンジン運転時間 400h、走行距離1.5万kmあたり)から急速に生成が増えています。不溶分とは、つまりスラッジとして考えてください。このグラフより、不溶分の生成はおよそエンジン運転時間500hから始まり、急速に増加していることを注目してください。
以上の内容をまとめると、エンジンオイルの劣化メカニズムは下記グラフのように表すことができます。

酸化防止剤が有効に作用する段階はおよそ1.5万kmまでの距離で、この間はエンジンオイル内の有害物質もほとんど発生しない期間となります。1.5万kmから3.0万kmまでの間は、酸化防止剤の期間が切れ有害物質が発生しますが、エンジンオイルの内部で溶かし切ってスラッジが発生しないようにする清浄分散剤が機能します。清浄分散剤の機能が切れる3.0万km以後は、有害物質同士が結合することによりスラッジが発生する…というメカニズムになっています。
日本の自動車メーカーがエンジンオイルの推奨交換時期として1.5万kmと記しているのは、主に酸化防止剤の期限が切れる頃で設定されていることになります。

…ではシビアコンディションは何故設定されるのか?

最初に「エンジンオイルが劣化する理由は燃焼(=酸化)が理由」と書きましたが、何の処理も施されていない鍋やヤカンで、空焚きをすると焦げ付きを起こす…ことを想像してください。
酸化する現象は温度によって、より酸化速度が速くなるのです。

また、エンジンオイルの面白いポイントは「想定温度より低くても劣化は促進する」ことです。これはエンジンオイル内に燃え残りの燃料などが混入することなどが原因として挙げられています。
一般に、油温80℃がエンジンオイルの基準温度として考えられており、これより低くても高くてもオイルの劣化は進む…と考えてください。


オイルを早いスパンで交換する人の意見として、一部で言われている
「数千km走行すると、エンジン音がうるさくなってくるから交換する」
という意見についても、興味深いグラフがあるのでご紹介します。


このグラフの「粘度」にご注目ください。
エンジンオイルを交換して、およそ100時間までの間でオイルの粘度が落ちていることです。
“エンジン音がうるさくなってくる、旧式の車には硬い(粘度の高い)オイルを入れてください”という人がいますが、その前提条件を信じるとするならば、エンジン音がうるさくなると感じた人のセンサーは非常に正確だ、と私は考えます。本当に粘度が下がっているのです。
しかし、エンジン運転時間(走行距離)から考えると、スラッジの生成にいたるまでの約1/6、スラッジの前哨体である有害物質の生成が開始されるまでの約1/3のスパンでオイルが交換されることになります。
「音が静かになるから有効だ」と考えるか、あるいは「オイルの機能はまだ残っているのに交換するのは無駄だ」と考えるか、はお読みいただいた皆様の判断に任せます。

この論文では、燃焼によるオイルの劣化を理論化することを目的としています。以上の内容は、研究結果に至るまでの「前哨戦」であります。研究結果では
エンジンの排気量
オイルパンの容量
エンジン回転数

などによってオイルの劣化速度が変化することが述べられています。

以上の内容をまとめると、ポイントは5つ。
1. エンジンオイルは燃焼することで劣化する。
2. エンジンオイルの劣化はオイルの温度によっても劣化速度が変わる。
3. 国内の自動車メーカーが推奨するオイル交換スパンは、スラッジの前哨体が生成される前に交換することを考えて設定されている。
4. エンジンオイルは、使用過程で粘度がいったん下がるためにうるさく感じる場合がある。
5. エンジンオイルの劣化はエンジンのスペックと運転状況で表すことができる。

…となります。

ここからは私の思うところです。
エンジンの油量を確認するためのレベルゲージで、量と共に色を確認して劣化度合いを判断する…と考えている人もいると思います。(私もそうでした。)
しかし、エンジンオイル内の添加剤を色で判断することができるのだろうか?と今の私は考えます。
それと共に、ドイツの一部メーカーではレベルゲージを廃し、コンピューターでエンジンオイルの交換サイクルを表示する車もあります。これはつまり、エンジンオイル油温やエンジン稼働時間、エンジン回転数をそれぞれモニタリングして表示していることになります。
つまり、レベルゲージよりもコンピューターの方がより正確にエンジンオイルの状態を管理していることになる…と私は考えます。(ある意味では当たり前だ!とお叱りを受けそうな話ではありますが。)

エンジンオイルの一般的な話を少し打ち壊すような話題でしたが、ご興味を持った方はより詳しく調べて頂きたいと思います。
そして
「いつぞやのブログで見たあの話、本当だったんだ…」とか…
「あのブログに書いてあることなんて嘘っぱちじゃねぇか!」とか…
皆様それぞれが調べたこと、学んだことから考えを持っていただけると幸いです。

参考文献)
五十嵐仁一(1999. 5)「エンジン油の長寿命化に対する理論的取り組み」『日石三菱レビュー』第41巻第2号、pp.54-64
Posted at 2014/11/09 17:59:11 | コメント(3) | プレ・テク | 日記

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