
連続投稿2日目、今回は商用車メーカー編です。
今回の東京モーターショーではいすゞ自動車・スカニアジャパン・日野自動車・ボルボトラック・三菱ふそう・UDトラックスの各社が出展していました。
また、日系4社は大型トラックのフルモデルチェンジが重なった時期ということもあり、ほぼすべてのブースで最新型トラックが鎮座しているというかなり勢いを感じる一帯でした。
このブログでは、トラックブースで見た・聞いた話をまとめてご紹介したいと思いますが、乗用車とは考え方が全く違うことも新鮮に映ることと思います。その点もご紹介できれば良いな、と思いながら以下ブログを進めます。
【いすゞ・エルフEV(世界初公開)】

いすゞからは小型トラックのエルフをベースにした電気自動車を取り上げます。
展示してある車両は最大積載量3,000kg級の車両です。
説明員さんから話を伺いつつ、エルフEVのポイントを以下にまとめます。
・車両重量としては旧来ディーゼル車+150kg。エンジンがなくなった分でモーターとバッテリー2つを搭載し、バッテリーが単独で300kgほどの重量。
・バッテリー本体はリチウムイオン電池を採用。
・航続距離は120kmほどを予定。急速充電で2~3時間。交流200Vで10~11時間ほどの充電時間を予定。
・来年度からのリース販売を予定している。
ここでいくつかの質問をしてみます。
私:メイン駆動用バッテリーを交換する必要性はあるのですか?
説明員(以下、説):そのためのリース販売で、リース料金の中にそれらメンテナンス費用も含んで
います。
私:リチウムイオンバッテリー部に車両が衝突した時の安全性は?
説:バッテリー内の骨格を頑丈に作ることで対応している。万が一の感電・液漏れなどの対策は
それで対応。
私:車両の航続距離が短くないか?
説:個人向けの宅配業者、あるいはコンビニ配送などの用途で使われる車両は一日あたり
80~100kmほどの走行がメイン。そこを狙ってバッテリー容量を決めた。よって航続距離は
小型トラックとして必要十分な性能を確保している。
私:リチウムイオンは外気温による充放電性能の低下があるが、対策はあるか?
説:北海道などの寒冷地では若干の航続距離低下は考えられる。
現在のところ、北海道などでも十分な性能が確保できるであろうと考えてはいるが、バッテリー部
にヒーターを設置し、充電中にヒーターで温めることも検討している。
電気トラックの口火を切ったのは、いすゞと同時に日本初公開を果たした三菱ふそうのeキャンター、つまり小型トラックからはじまる訳です。
もっともこれについては後ほどまとめます。
(余談)【いすず・ミューエックス】
いつ売るの?…売りません!

毎回毎回、いすゞブースの隅に飾ってあるSUV・ピックアップトラックシリーズ。
タイ生産の車両で右ハンドル、絶対いつかは出ると思っていたのですが説明員さんに聞いて確かに納得の理由がありました。
それはつまり「ポスト新長期規制への対応」と「乗用車ディーラーネットワークがなくなった」こと。
前者はディーゼル機関の車両を多数擁するいすゞにとっては難しい話でないと個人的に考えますが、後者は…どうしようもない話です。
ちなみにタイトル下の話は私がズバリ聞いて、説明員がズバリ答えた様をそのまま書いたもの。
(説明員さんも苦笑いしていました…閑話休題)
【三菱ふそう・eキャンター(日本初公開)】

こちらは説明員さんがあまり詳しくなかったため、プレスリリースから情報を転載します。
車両総重量(GVW)7,500kg、最大積載量3,000kg予定、乗車定員3人、航続距離100km、充電時間は急速充電で1.5時間、交流200Vで11時間。
公式サイトから、ドライバン・3t積車両・従来ディーゼル車の車両総重量を書き出すと6,200kg~6,500kgとあります。およそ1,000kgも車両重量が増えたことになりますが…もしかしたら展示車は冷凍バン車両かもしれません。
【日野・ポンチョEV】

この車両は既に実証実験車両として3台、一般の道を走っているそうです。
近くの説明員さんに話を伺い、ポンチョの特徴を以下にまとめます。
・コミュニティバスとして開発されたポンチョの性能をそのままにEV化している。
(性能とは輸送可能定員が同じということです。)
・航続距離は50km、充電時間は30分ほど。
・運航事業者に一般販売しているが、標準車に比べて数倍の車両価格。
・一方で航続距離が短く、充電時間は早いものの輸送効率はおよそ半分。
(補足:標準車が2周できる時間でEVは一回りしかできない。充電時間分だけ稼働時間が減る。)
・以上のことから、事業者からの評判はあまり芳しくない。
(補足:つまり車両導入コストが高い割に車両稼働率が低く、採算が取れない車両ということ。)
小型コミュニティバスをほぼ独占で作っている、日野自動車らしい車両です。
ただし、その性能についてはかなりの疑問点が多いこともここで分かった話です。
運航事業者にとって、稼働率の向上(=生産性・利益の向上)は対外的な環境保護イメージよりも優先されるもので、もっと進化する余地があると考えているのが日野の説明員さんの話しぶりから受けた印象です。
【UDトラックス・クオン トラクター】

最後に紹介するのは今年フルモデルチェンジしたクオン。
こちらも説明員さんから話を伺い、新型クオンの特徴を以下にまとめます。
・新型クオンは環境性能の向上、安全性・快適性の向上、車両稼働率の向上を図ることを目的に
フルモデルチェンジを行った。
・耐環境性能の向上はディーゼルエンジン、トランスミッションの改良で達成した。
・安全性・快適性は衝突被害軽減ブレーキの性能向上、LEDヘッドライトの採用、キャブのインテリア
を新設計することで達成した。なおキャブ本体は旧型キャリーオーバー。
・車両稼働率の向上は各部品の信頼性・整備性の向上と包括的なサービスを提供することで
達成した。
一方で、説明員さんからは今後の話も出ていて…
・今後はハイブリッドなどの電動化技術を取り入れていくことが必要。
・そのためには軽量・高性能なバッテリーの開発が必要。
・大型トラックという性質上、高い耐久性(補足:数100万km走ることが普通)と信頼性が求められる。
とのこと。個人的な見解として
〇電動化技術は必要と考える。なぜなら積み込み待ちや休憩時間中のアイドル時間を電動化技術
で対応することができれば、燃料代の節約と騒音の低減、排出ガスのカットが図れる上に振動も
減る。ドライバー、事業者、周辺住民、地球の環境全てにとってメリットがあると考える。
と伝えました。
さてまとめます。
トラックにとって必要な物とは
「軽量なシャシー」「頑丈すぎるほどの堅牢性」「運転者の快適性と安全性」であると、私は考えています。
「軽量なシャシー」とは、つまり運転できる大きさが車両総重量で決められる(シャシーと免許によって決まる)ので、同じ総重量で軽いシャシーほど、荷台の架装バリエーションが増え、また最大積載量が増えることになるためです。1度に運搬できる量が増えるほど効率がいいわけです。
「頑丈すぎるほどの堅牢性」は言わずもがなで、モノを運ぶことで利益(=給料)を得るわけですから、ずっと働き続けられる丈夫な車ほど高性能(高い収益を得る事ができる)、ということです。
「運転者の快適性と安全性」は、大きなものを長距離・長時間運転するのですから疲れて間違った判断をすれば事故を呼び、労働者の身の危険と荷主・バスなら乗員の信頼を損ない、加えて修理に入ることで利益も減ってしまうことになります。
一方で、人間とはいつか間違うものであるという前提に立てば、間違った時に安全にする技術も必要です。これがつまり衝突被害軽減ブレーキや人間工学の必要性、というわけです。
この3つに立って今回の展示物を眺めると、まだまだEVの時代は遠いと考えます。
それはつまりバッテリーの性能向上、技術進歩の早さが商用車に使われるほどのレベルに至っていない事が理由です。
大きなバッテリーを積めば、重量もスペースも使ってしまい積載性能が減ります。
未熟なバッテリーを積めば、こまめな整備が必要になり稼働率が下がります。
かといって、小さいバッテリーを積んでも充電時間が必要で稼働率が下がります。
その解決策は、エルフEVやキャンターの場合で車両総重量7.5t級のシャシーを使い、3t積みにすることで対応するという方法です。つまり無理やりのEV化です。
それでもやらないよりはずっと良い…という判断でしょう。確かにその通りでやらないよりはやった方が良い。だが搭載機器はもっともっとの進歩が必要、それが私の結論です。