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2015年01月28日

Mr.Xからの依頼 FILE.04 〜Deja Vu〜






















ピッ














それは、ともすれば聴き逃してしまいそうな小さな音だった。
事実、私はその時は気に留めていなかった。


新たな“訓練”メニューをこなすべく
前日とは違うstageを目指して北方の山岳地へ向かい、
いよいよwinding roadに差し掛かろうという地点。
私はSI-DRIVEをS#にシフトしようとダイヤルを回し、
そこで初めてその異変に気付いた。




































恐れていた事が遂に来た…

“機関”の罠だ…





 エンジンチェックランプ 橙点灯
 VDC 橙点灯
 SI-DRIVE 点滅






私の“プロの素人”としての勘が教えている。
この状況は危険だ。

それ単体で点灯しても厄介なエンジンチェックに加え、更に二つのエラー。
しかもVDCとSI-DRIVEは、私の愛機には備わっていない機能。
私には対応しきれない可能性がある。
増してや、此れは私の機体ではない。他人の機体である。
依頼任務中にクライアントの機体にエラーを発生させた、という事態に
少なからぬ動揺を覚え、すぐに機体を路肩に停めて状況確認に入る。
















…しかし、一方で私の頭の中には
どこか冷ややかにそのエラー点灯を眺める…
…その、何と表現したら良いのだろうか、
自分ではない自分が居るかのような感覚があった。


 “私はこのエラー状況を識っている”


いや、そんな筈はない…
私は今迄、このGVB型の他に、GRB型数機、GVF型一機、付け加えればGH型も数機、
少なくはない数の“同系列機体”を操縦した経験はあるが、
このような警告灯が点いた事は一度も無い。
このような状況は私は経験が無い。


…なのに此の 既視感~ディェジャヴュ~ は何だ…?


何故かはわからないが、
この状況が、“深刻なものではない”と思っている自分が居る。
思っている?
いや、“知っている”と表現する方が近いように思う。
しかし、いつ?どこで?



不意に…
















 『…メタキャタ…ブーストアップ…触媒エラー……』

















そんな言葉が脳裏に浮かんだ…ような気がした。




……なん…だ?


…今のは?


…何…だ?








しかし、問いかけても何も返っては来ない。
奇妙な居心地の悪さだけが在る。






遠くから近づいてくる一般車のエグゾーストが微かに聞こえた。
それはやがて近づいて、ゆっくりと脇をすり抜けて行った。

気付くともう先程の奇妙な感覚はなかった。
まるで夢でも見ていたように。
…いや、私は本当に白昼夢を見ていたのかもしれない。

そう思う方が楽である。








私は“プロの素人”として、“任務”の途中だ。
しかもアクシデントの最中にあるのだ。

今やるべき事をやらねば。
考えても答の出ない不確定事項は後回しにするのが“任務”の鉄則だ。

とにかく、ここで呆然としていても何も始まらない。
試しに一度エンジンを切り、再始動してみたが、
淡い期待はあっさりと裏切られ、警告灯は変わらず橙色に灯っていた。
…となると、私一人で対処できる問題ではなさそうだ。







直近の昴工廠支部は15分程の距離だ。
私はMobile Phoneを取り出し、昴工廠支部との回線を開いた。勿論、暗号回線だ。
相手はすぐに出た。
極めて簡潔に経緯を説明し、エンジンの反応やアイドリング等に異常は見られず、通常走行に支障は無さそうだった為、今から向かう旨を伝えた。

そして続いてMr.Xに暗号電文を送った。
現状の説明と、この症状に覚えが無いか。

……その時の私には、何故か
“Mr.Xはこのエラー症状を把握している”
という確信めいた予感があった。
なぜそう思うのか、が解らぬまま。




















私は昴工廠支部に白い機体を滑り込ませた。
突然の訪問にも嫌な顔をせずに迎えてくれたスタッフには頭が下がる。

彼らも、Dr.hに勝るとも劣らぬ賢者達だ。
私はこれまでにも度々此処を訪れて、彼らの力を借りていた。
しかし、先程の通話での私の声色から事態の重さを察したのか、
いつもよりも幾ばくか彼らの表情に硬さがあった。

エンジニアに、コンピューターが書き換えられている事を伝えたが、
「とりあえず、エラーの中身を調べてみます」と、PCを接続して画面に見入っていた。

まぁ…、エクテックのプログラムにはプロテクトが掛かっている筈なので
昴工廠の強制リプロに怯えることも無いと思うのだが。


























……………



……まて…



…私は今何と言った……?






エクテック?
プロテクト?
リプロ?

…何の事だ?

この機体のコンピュータは「いーしーゆーてっく」ではなかったのか?
確か表記は「ECUTEK」


……「エクテック」…だと?


いや…私は知らない。
知らない筈だ。
私はプロとはいえ、所詮はタダの素人だ。
そんな事を知っている筈が無い。








……本当に?


“そんな事を知っている筈が無い”という事がなぜ言える?


解らない…


解らない…


自分で自分が解らない…


私は…私だ…


……違うのか?


私は…誰だ…?


……………



………



……



























「出ました」

不意に耳元で聞こえた声で世界に色が戻る。
先程PCに見入っていたエンジニアが、4枚つづりの紙を差し出していた。

「触媒ですね。
“空燃比不正”と出ていますが、
…この機体、非正規のキャタライザーが入っていますよね。
それで更にブーストアップもしていると…まぁ…よくあるんですよ。
抜けが良過ぎて排気温が高くて、熱でセンサーがヤられちゃうって訳ですよ。
エラー点灯はしていますが、特に異常はありません。
コンピュータの学習を初期化すれば消えるので処置しておきました」










………なんだろう…この既知感は……


初めて聞いた話の筈だ。
しかし、知っている話のような気がした。
同じ話をどこかで聞いたような気がした。




















フッ……










……面白い。










“エメラルド色のブレーキパッド”にしてもだ。
何故かは解らぬが、どうやら私には“封印された記憶”が在るようだ…
そう考える方が現象に符合する。

私が知らない事を私が知っている。
この奇妙な状況に在って、私は不安よりも好奇心が上回っていた。

自分が何者か、ということより
自分の知識・力にextra zoneが存在する可能性に興奮を禁じ得ない。
…私にもmad scientistの素質が在るのやもしれぬ…

知っているぞ。日本の電網住人達はこういう時の “魂の昂り”






 みwなwぎwっwてwきwたw!!






と表現するのだろう?
フゥーーーハハハハハ!


私は“mad scientist的なポーズ”を取って、無声高笑いをあげた。
私ほどの“プロの素人”ともなれば、0音量で笑うことなど容易い。
本来ならば適切な音量で華麗なる高笑いを轟かせたい所だが、
此処は他組織の敷地。ましてや屋外。
そう、私は空気の読める男だ。
紳士〜Gentleman〜 を生業とするこの身にとって、
周囲への気遣いは息をするよりも自然な行為だ。





何故か…

エンジニア達の生温かい視線が突き刺さるのだが……

気のせいだ。…断じて気のせいだ。

















その時、Mobile Phoneが震えた。
Mr.Xからの暗号電文だ。



『…やれやれ、また出てしまったのか。
ソレが出ないように職人に細工させた筈なのだがな。
案ずるな、その現象は把握している。君のミスではない。
そのままにしておいてくれて構わん。後日こちらで対応する』


「昴工廠支部の有能なスタッフが対応してくれました。
プログラムの中身には手を付けず、エラー表示は消えました」


『ふむ…
今回のエラー情報はコンピュータに蓄積されているのかね?
後でそれさえ吸い出せれば問題無いが』


「は、恐らくは問題無いかと。
ただ、その過程で学習機能を初期化しているので…」


『それは君にとって逆に好都合なのではないのかね?
その機体を君好みに調教し直せるではないか、フッ…』


「お戯れを…」


『別に構わぬよ。気にせず“任務”を続けてくれたまえ』


「御意」

















私の胸中は晴れやかだった。

私は昴工廠支部のスタッフ達に一礼して、白い機体へ乗り込んだ。
まだ“世を忍ぶ仮の職務”まで時間はある。
先程途中で引き返した“北方の山岳地”で、当初予定していた“訓練”を行おう。



私はギアを1stに滑り込ませ、クラッチをゆっくりと上げた。
微かにクラッチが駆動を伝え、その白い機体がスルスルと動き出す。
アクセルペダルの上に置いた右足に力を込め、スロットルをジワリと開ける。



その瞬間、私は戸惑った。ある種の衝撃を受けたのだ。
「なんだこれは…!?」












未だ、つづく!!
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Posted at 2015/01/28 13:10:28

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この記事へのコメント

2015年1月28日 13:20
まだ終わらないwww
♪ガンバレーヽ(=゚ω゚)人(゚ω゚=)ノチャチャチャ♪
コメントへの返答
2015年1月28日 15:00
まだだぁっ!!
まだ終わらんよっ!!(☆∀☆)



今回は、一度7割方書いてからボツって構成し直しました。(´Д`)

プロフィール

「@あすきー いらっしゃぁ〜い♪」
何シテル?   08/05 11:23
派手な赤い車なんで、どこ行ってもすぐバレますw 死ぬまでMT宣言。 _/_/自分で運転した事あるクルマ_/_/ スバル インプレッサ...

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