えーー……
つまりは…
イワユル…
多いに多忙が忙しく(©individualさん)…的なアレで…
2冊読むので精一杯でした…(;ノд`)=з
ロバート・A・ハインライン 『月は無慈悲な夜の女王』 (1966)
アイザック・アシモフ、アーサー・C・クラーク、と並んで
“ハードSF御三家” と称されるロバート・A・ハインラインの代表作。
とはいえ。
もう半世紀前の作品であり、現代の視点で見ると“ハードSF”と評するのは少し苦しいかな、という感はある。
アシモフは読んだ事が無いけど、クラークの作品も、このハインラインの『月は無慈悲な夜の女王』も、
21世紀の今の基準から触れると、どこか牧歌的でロマンティックである。
“御三家”の時代はそのまま“冷戦”の時代。
この『月は無慈悲な夜の女王』には、その背景が色濃く出ていると思う。
作中での月は、地球から追放された罪人の終身流刑の地である。
表向きは「移民」として「自由意志」に依って月へ来たとされる人々も、事実上は追放された人であったり難民である。
地球連邦の出張所である「行政府」が置かれ、月の経済は“共産主義的な”管理の下に運営、搾取されている。
その月での公用語はロシア語なのである(という表立った設定は無かったけども、ほぼそういう向きで演出されている)。
当時の西側諸国にとって東側は“異世界”。“相容れない価値観が支配する謎の地”。
それが作中の、地球政府と月の関係にそのまま落とし込まれている。
空気も水も有料・有限の資源であり、穀物栽培はそのほとんどを地球への上納品として行政府に買い叩かれる。
男女の人口比率が極端な為、多夫一妻やそれに似た結婚体系が普通になっている。
月の重力に慣れた月世界人が、地球へ降りる事は、6倍の体重に押し潰される自殺行為に等しい。
…という世界観の作り込みは説得力はあるものの、世界史や文化史、人類学のどこかから拾い集めて来たミックスのようにも感じる。
物語は、月でフリーの機械技師として行政府のマザーコンピュータを管理している男が、
「独立運動」に巻き込まれて、「革命」の中心人物になっていく物語。
ぶっちゃけ、それほどSF要素は無い(笑)。
が、物語は非常にスムーズで単純に読み物として面白い。
著者も(時代背景の事情も有り?)そのあたりには気を使って、あくまで“エンターテインメント”として書いているようです。
物語の始まりであり、鍵であり、ある意味もう一人の主人公ともいえるのが
意識を持った“行政府のマザーコンピュータ”。
まぁ、今でこそありふれた設定ですが、半世紀前ですよ。
その行政府(=地球政府側)のコンピュータが、反乱側の人間と結託して(というか、“彼”は単に面白がってやっているだけなのだが)月独立へ向けての戦略・戦術両面で活躍する、という
…あぁ、この辺りがSFかもしれない?(笑)
反乱・革命という“極秘行動”が命題となる組織の運営として
「組織としてスムーズな意思決定ができ、リスクも最小に抑えられる最大の人数は3人だ」という理論や、
その組織図を二次元図ではなく、正三角錐でモデリングするなど、組織マネジメントについては色々と頷ける点が多かった。
構成員はその属するピラミッドの階層によってアルファベットのコードネームが与えられる。
主人公は「B」の同志。Bは3人しかいない。その下Cの階層は9人。Dは27人…と、“構成員”が繋がって行く。
(なぜ平面図ではなく三次元の三角錐なのか、というのは本編中で説明されるのでお読みくださいw)
…その正三角錐のピラミッドの頂点「A」に立つのが、件のマザーコンピュータなのだ。
革命側の万能・最強の指導者「アダム・セレーネ」が、コンピュータの作り出したバーチャルな存在で実在しない人間だというのはBの3人しか知らない。
さてさて、とはいえ、牙を抜かれた流刑地である月は兵器も宇宙船も持っていない。
そんな月が地球連邦にどうやって独立戦争を仕掛けるのか。
なるほど確かに、本作はSF史に残る名作です。
デイヴィッド・ダフィ 『KGBから来た男』 (2011)
原題『Last To Fold』
上の本↑といい、これといい、なぜか最近“ロシア”が続く不思議(笑)。
もうロシア系の人名に全然違和感が無くなってるワタクシです。(;´∀`)
コレ、面白い!!(・∀・)
めっちゃ緻密に複雑に練り込まれたシナリオ!!
ソ連の強制労働所・グラーグで生まれ、KGBに拾われ、癇癪持ちの妻と最悪な別れ方をし、今はニューヨークで探偵の真似事をしている主人公、ターボ・ブロスト(我ながら、なんつーいい加減な説明ww)。
とある誘拐事件の捜査から、
別れた元妻、元KGBの同僚で現ロシアマフィアのボスで元妻の2番目の夫、ターボをKGBに引き入れた恩人、口の悪い女判事、謎多き雰囲気の隻眼のイケメン星人等々、因縁浅からぬ相手が次々に現れ、
あちこちで勃発する事件、謎、過去の記録。二転三転する推理。そして全てが一つの陰謀に束ねられていく。
“若い娘っこを助けるオッサンヒーロー”な面もあるので、その辺も安心して楽しめるかと(笑)。
上で紹介した『月は無慈悲な夜の女王』が冷戦のソ連を漠然としたモチーフにしているのに対して、
この作品は実際にあった事件を用いて(しかしそこにフィクションを混ぜ込む匙加減が絶妙)
ソ連崩壊後のロシアに対する痛烈なアンチテーゼが主題であると思います。
ソ連がロシアになっても中身は変わらず、陰謀を組織的に正当化する世界である、と。
まぁ、そんな事は今更ですがね。
そういうイデオロギーは抜きにしても、
この小説は
シナリオがめちゃくちゃ練り込まれているので、面白い!!(・∀・)
登場人物が多くて関わる組織も多いので、かなーりこんがらがりますが
だからこそ糸が繋がった時のカタルシスがキモティイィィww
…なんか続編が有る雰囲気バリバリですし。
皮肉に富んだロシアのことわざや、マフィアや癇癪女が口走る“ロシア人的罵詈雑言”も良いスパイスになっている。
グレイマンが良かった人はコレも好きだと思う。
原題は、作中でターボが述べる
『重要なのは勝つことではなく、可能な限り勝負を降りないことだ』という台詞から。
人生の真理かと思う。