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イイね!
2017年10月14日

10月35日




その報せは唐突だった。





平日の朝。
出勤ラッシュが落ち着いた頃、一息ついて携帯を見ると
未登録の番号からのショートメールが。





 「以前スバルにいらしたRedさんの携帯でしょうか。ドミンゴのKです。」





この一文で、その一瞬で、全てを察した。
あぁ…辛い決断をされたのですね…




















ワタクシはかつてスバルでセールスをしておりました。
新卒で入って1年だけでしたが。
早いものでもう10年ほど経ちます。

その時のお客さんで、今も印象に残っている方は何人かおられますが、
このKさんは特によく覚えております。










「スバル・ドミンゴ」

軽ワンボックスのサンバーをベースに、コンパクトなボディで3列7人乗りパッケージを実現した、
…正直に言うと、ちょっと無理矢理感の有るクルマ(爆)。
初代ドミンゴは1.0L、(Kさんの)2代目は1.2Lの、今で言うコンパクトクラスです。
クラスと定員だけ見ればホンダのフリードみたいなもんですが、…まぁ全然違いますねw
最近のスバリストはこんなクルマ知らないでしょう(笑)。







Kさんはこのドミンゴに惚れ込んで、ずっと大事に乗っておられました。
…と言っても、通勤では使わないし、遠出もそんなにせず、近場の普段使いがメインなので距離は少なめ。
ワタクシが担当させて頂いていた当時でも「壊れないからねぇ~、調子いいからねぇ~、(新車に乗り換えなくて)ゴメンね~♪」と嬉しそうにおっしゃっていたのをよく覚えています。
(でもKさんは、就職する息子さんの通勤車を増車という形で買って下さいました)










新車セールスは新車を売るのが仕事です。
新卒の新人とはいえワタクシにも毎月の目標台数があり、
当然、年式の古いクルマのユーザーほどターゲットリストの上位に来ます。
Kさんのドミンゴは今年で車齢23年、当時でも既に13年以上。
普通であれば明らかに代替え対象です。

でもワタクシは、店長に出すリストにKさんは載せませんでした。

距離が少なくて不調も無いというのもありましたが、
なによりKさんの「絶対乗り続ける!」という気持ちがヒシヒシと感じられ、
「この人に今新車の話を出すのは失礼だ」と思ったからです。





新車セールスでありながら、ワタクシはどうも “物を売り込む” という営業の仕事に苦手意識を感じていました。
人の心に土足で踏み込んで行っている感じで、強く押すことができない。

クルマを買いに来る人の中にはセールスとの駆け引きを楽しみにしている人も少なからず居ます。
ワタクシはそういうタイプの人は苦手でした。
しかし、それ以上に「そろそろ乗り換えも考えてるけど、このクルマも気に入ってるんだよね…」という、今のクルマに愛着がある人に対して “新車を勧める” という事がなんとも複雑な気持ちになって、押すところで押せずに売り逃した事もあったと思います。

自分が介入する事でその人の "愛車との思い出" を過去に葬る事。
自分が介入しなければ、その人はもっとずっと愛車と居られたかもしれない、という思い。
"人の想い出を奪う" その重さに耐えられなかった。
Kさんのドミンゴのメンテ入庫予約をせっせと手配したのも、
ワタクシの心理は、新車の商談をするのが苦手で怖かったからでした。

店長から「そういう時お客さんはお前に背中を押して欲しい気持ちもあるんやぞ」と言われ、確かにそれも理解はできたけども、自分の側にそんな余裕が無い。
当時はまだまだ自分のスタイルというものもわからず自信もなく、何もかも模索中で嫌な事ばかりに目が行っていた、新人に良くあるアレでした。
結局、不慣れな土地という要素も加わって、
「仕事が出来ないダメな自分」から逃げてきたようなものでした。




















Kさんからのメールの続きは、やはり予想通りの内容で。



 「Redさんに連絡するのも迷いましたが…
 いよいよドミンゴを手放す事になりました。。゚(゚´Д`゚)゚。

 去年の暮れにレッカーのお世話になり、その後もオイル漏れが続いて泣く泣くです…」




…いつかは来る事ではあるけども。
気に入って大事にしていた姿を覚えているぶん、
ワタクシも寂しさを覚えます。
いや、それはたぶん、悔しさ



ワタクシも、“1台のクルマに長く深く愛情を注ぐ” 側の端くれとして。
「どうしようもならなくなるまでできる限り乗り続ける。生かし続ける。
コイツが死ぬ時まで面倒見る」と、自分のクルマに対して思っていますが、
Kさんも同じように思っていたハズです。
でも、今回、Kさんは新車代替えの下取りとしてドミンゴを出しています。
まだ9万km以下という走行距離からも、おそらく海外に売却されて生き続けると思われます。



まだ生きられるクルマを手放す悔しさ。
護ってあげられなかった悔しさ。
最期を見届けられない悔しさ。
それはどこか、見捨ててしまうような負い目。
そして、知らないどこかで知らない誰かがそのクルマに乗っているという悔しさ。




ワタクシも去年、そんなことを真剣に考えたのでよくわかります。

嫌な話ですが、クルマに対する愛情とは結局のところ、お金。
そのクルマにどれだけお金を掛けられるか。
そのクルマが苦しんでいるときにどこまでお金を出して治せるか。

クルマは、想いだけでは治せない。
だから、悔しい。


 「理想を言えば、損得勘定抜きにしてエンジン載せ替えて乗り続けたいです。
 でもね…やっぱりね…」



Kさんのその言葉に、締め付けられる。










野暮な事とは思いながら、次のクルマを訊いてみました。

今の流行りの、軽のスライドドア車。他銘です。


 「今回スバルにしなかったのは、今の担当さんはRedさんみたいな人じゃないからです」


…複雑な気持ち。嬉しさと半々。
悔しいような、申し訳ないような、居たたまれない気持ちになります。
でも、認めて貰えたという嬉しさがある。
自分みたいなセールスでも良かったんだと。
自分みたいなセールスだから良かったのかもしれないと。

辞めて帰ってきてすぐの時から、
「そういうタイプのセールスも必要なんだ」と自分に言い聞かせていましたが、
自分で思っているだけでは結局それは自分を慰める方便にしかならない。
理屈では納得しても、自分自身の "負けて逃げてきた" 認識は変わらない。
今までずっと、スバルでの1年の職歴をどこか自嘲的に捉えていました。

しかし、このKさんの言葉で、スーッと楽になった。
ああ、良かったんだと。















スケジュールは厳しいだろうけど「最後に一目会いに行こうかな」と思い、
いつまで手許にあるのか訊いてみたところ


 「今日これから持って行くんです。号泣しそう。゚(゚´Д`゚)゚。」


…なんてこった…





最後のその日に、ワタクシに連絡してきてくれたというその事。
その一番辛い時に、昔たった1年だけ関った若造に知らせてきてくれたというその事。





 スバルでセールスしていて、良かった。





と。初めて、心底思った。
Kさん、ありがとうございます。

…今なら良いセールスになれるのかもね。




















Kさんのドミンゴ。
一つ、素敵なエピソードがあります。





希望ナンバーなんか無い時代に。











 10  3  5
   とお みん ご











 「運命のクルマだったんです。」





その言葉は寂しそうでもあり、誇らしそうでもある。




















 【2017年 10月35日】 を忘れない。









ブログ一覧 | 思う事 | 日記
Posted at 2017/10/14 21:00:24

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この記事へのコメント

2017年10月14日 21:05
スバルのセールスの経験があったとは・・・・

泣かせるストーリーですね。
コメントへの返答
2017年10月15日 12:11
あれ?
言ってませんでしたっけ?( ̄▽ ̄;)
別に隠してるワケではないですよ。わざわざ言わないけど(笑)。
2017年10月14日 23:37
こんばんは

とても感動するお話を聞かせて頂き、ありがとうございます。
素晴らしいつながりですね^ ^
コメントへの返答
2017年10月15日 12:14
いつもイイネありがとうございます♪

こういう事って一生残っていくんだろうなと思いました。
いつかどこかで何か返ってくる。そう思って生きていかなきゃですね。( ̄▽ ̄)
2017年10月15日 0:45
初コメ失礼します。

拝読して最後には目頭熱くなりました。
オーナーさんのドミンゴ手離す辛さ
Redさんへの思いがあったんでしょうね。

私もスバルとお付き合いして十数年ですが
本当にそういうベテラン、中堅所の営業さん
本当に皆無なんですよね。
ほとんど現場を離れられたり退職されたり
で。
1人STIしか乗り継がない本当に車好きな
若い営業さんいますが、最近よく話するよ
うになりました。


コメントへの返答
2017年10月15日 12:18
ありがとうございます。┏○

僕自身、辞めて帰ってきて1ユーザー側の立場になってみて、
やはりフィーリングの合う担当者というのはなかなか居ないものだと思いました。
幸い今の担当さんは僕が「ずっと乗る人」とちゃんと認識してくれていて心地よい関係を築けていますが、担当に恵まれずにディーラーを転々とする方の話もよく聞きますしね…

…ちなみにワタクシ、
スバルの次、今の仕事の一つ前は、しげおさんが時々写真を撮ってる赤いバスに乗ってましたw
2017年10月15日 15:46
Redサン、全米が泣いたっ

いやはやソンナコンナde酸いも甘いも感動てきなお話ではないですかっ!!
ドミンゴのオーナーさんの無念 × Redサンへのショートメール × 10 35・・・
まさにノンフィクション小説が書けるハイレヴェルwww
てか、よくドミンゴの画像データを持っておられたコトかと♪

2017年10月35日、こらもう忘れられない日ですナwww
コメントへの返答
2017年10月16日 13:45
あぁざぁっす!┏○

こらもう居ても立ってもいられないネタでしたので、一気に書き上げました。
ほんのちょびーっとだけ盛ってますが、ほぼノンフィクションw

あ、写真はKさんに送って頂いたモノです…( ̄▽ ̄;)

インディさんも最近はE46分のアップが続いてますね(笑)。
3月46日に何か起こるのか…!
2017年10月15日 16:43
気持ちが温かくなりましたよー(*^▽^*)
ええ話や-(T_T)
コメントへの返答
2017年10月16日 13:46
普段ヒネクレまくりなので
たまにはイイ話もしておこうかと(笑)。

ありがとうございます♪
2017年10月17日 11:54
コメ失礼します。
強く強く申し上げます。
父親の代からスバルファンです。
貴方のようなセールスなら
今頃は、レガシィとインプレッサを
新車で購入していたでしょう。
レガシィが発売する前
REX4WDからレオーネSTターボ、
レオーネGT IIに乗っていました。
当時、本社から出行していたI氏から
担当が変わり、レガシィ買いたい表明すると
高いですよと言われてむっとした自分は、
ハイラックスサーフSSR Gに乗り換えました。
その後ランドクルーザー80を3台乗り換え
沢山乗りました。
車乗り換えるたびに、スバルの選択肢は
ありませんでした。
担当が命です。
今のスバルには、それが決定的に欠けています。
あなたのセールス姿勢をお手本にするべきだと
誇りを持ってお買い上げいただき
そして自分にも感謝することが大事だと
思います。

コメントへの返答
2017年10月18日 8:53
ありがとうございます。┏○

実はこのKさんの他にも
「ガツガツ押して来ないRedさんだから買いました」と言って下さったお客さんも居ました。
でもその1回だけではまだ自信にはならなかった。
営業職って人それぞれスタイルがあると思いますが、それを確立するまでの最初の期間に、良い上司と良いお客さんにどれだけ恵まれるかだと思います。
セールスの側から見ても担当が全てです。

よく、「融通が効かない」とか「入庫拒否された」と言う “ディーラー嫌い” な方がおられますが、
そういう話はその人の側が “面倒な客” になっているからという可能性もあると思います。
そういう人には反感を持つのが人情ですし。
相手に恵まれるかどうか、はお互いさまかなと思います。

プロフィール

「@あすきー いらっしゃぁ〜い♪」
何シテル?   08/05 11:23
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