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2018年01月08日 イイね!

新春 福来タル 東ノ刺客 西カラ来タル

新春 福来タル 東ノ刺客 西カラ来タル
私だ。“プロの素人” RedXIII だ。



俗世間では、年が変わったとかどうだかで騒いでいるようだが、プロの世界はそのような浮わついた話とは無縁なものだ。
もっとも、世間が浮わついていればそれだけ警戒の目が緩み、我々の隠密行動が容易になるというメリットはあるが。
いや、こんなことをあまり喋っては今後の仕事に影響が出かねん。
誰が何処で何を見聞きしているかわかったものではない。この回線は通常回線であるしな。
壁に耳あり庄司とメアリーだ。
…庄司とメアリーとは誰の事だ? 日本語のイディオムは難しい…





本題だ。




















<<1月某日 夜>>










我が阪神防空圏へ向けて、隠密行動中の友軍機が高速接近中との情報。
当該機が補給の為に我が防空圏内に留まる間、対空警戒の要請が入った。





友軍とはいえ隠密行動中なので通常無線は使えない。
接近ルートから位置を予測し、高速航路周辺を警戒。
事前に設定されたランデヴーポイントの補給施設前で駐機している所を発見し、後方をカバー。











友軍識別信号確認、 EG6型 機動戦闘機。
身元誰何(すいか)、箱根防空圏所属 J'sTrace 一等空曹。
彼方、西の出雲防空圏からの帰還任務中である。










隠密行動中という事を考慮し、速やかにレーダーから潜るべく山間部へ移動する。





































我が訓練空域で束の間の休息をとって貰う。

この任務、対空警戒というのは名目であって、他部隊との交流が暗黙の主旨である。
流行り言葉風に言えば「忖度」というヤツだな。
どうでもいいが、この「忖度」という言葉、未だに三國志か何かの人物名に思えてならない。










なにはともあれ、EG6型である。











J'sTrace 一等空曹がジャンクヤードから拾ってきて、
自分でコツコツ仕上げたというこの個体。











扉を開けばギィギィ音が鳴り、アクリルの窓はパタパタする。
リアハッチの固定はその都度、安定のタイラップ式だ。











当然の如く、内装は剥ぎ取られ配線も剥き出し。
マットの無いフロアはオイルで滑る。
ロールケージに巻き付けられた三点ベルト。
暗すぎて役目を果たしていない前照灯。











B18C換装の快音はダイレクトに車内に響き、
20kg超え激硬サスペンションのハーシュネスが身体を貫く。
機械式LSDにハイグリップラジアル、そして “勘” ライメント
スパルタンである。










我が訓練空域を訪れるのが初めての一等空曹の為に、
先ず私の機に同乗してパトロール飛行を行う。

曰く
「こんなに良くできた機体に乗った後だと、自分の機体は…少し危ないかもしれません」

その若さに似合わず、既に私のそれに迫る程の生涯飛行時間を数え、高い技量と鋭い状況判断力を持つ一等空曹。
じゃじゃ馬乗りとして名を馳せる彼の率直な言。私自身も同じ感触はあった。











先ずは一等空曹の操縦でEG6の動きを見極める。











薄氷を滑るが如し。
確かに、私の愛機とは全く方向性の違う機体である。
これはもう駆動方式がどうとかいう領域では無い。





初見の訓練空域で戸惑いながらも数回往復すれば大体の感覚は掴んだ様で、
偶々居合わせ、こちらが余所者と見て模擬戦を仕掛けてきた訓練機を逆に手玉に取る辺り、
流石は箱根防空圏の Ace である。
















そして、最後に私がEG6の操縦悍を握って飛ばしてみる事に。
正直、ここまで乗り手に専用特化して(しかも極めて粗削りに)カスタマイズされた機体、上手く操れる自信は無い。
しかし同時に、非常に興味深く好奇心をそそる。
これも一つ、良い経験、良い訓練になるであろうとスロットルを開ける。





先ず驚いたのが、
我が愛機と同じ銘柄を履いているとは思えない、接地感の稀薄さ。
激硬サスペンションのお陰で荷重移動が難しく、ヨーイングだけで曲がっているような、滑るような感覚。
かと思えばスロットルONでリアがブレイクし、同時にトルクステアと格闘する。
なんだこれは。
慣れたら楽しめそうだが、なかなか慣れない。
それに、どちらにせよ乗り手にも体力の要る機体だ。
よくこんな機体で豪雨の筑波を飛んだものだ…















それはその時起こった。




















或る右ターンの直後、右フロントから
ガリガリガリガリ
と金属が擦過する轟音と共に、視界の隅に火花が散る。










只事ではない。
機体を真っ直ぐに安定させ緩やかに停止させる。
同時に一等空曹が飛び出し、機体右前部を確認する。










「車輪(ギア)が無いです」










そうか、車輪が無いか。
無いということは取れたということだ。
取れたということは存在しないということだ。
ということはつまり、この場から動けないということだ。
うむ。




















………はい?( ゚д゚)




















まさか敵の闇討ちか!!?
将を射んと欲すれば 先ず脛をかじれと言うからな…
私を恐れるのはわかるが、借り物の機体の脚回りを狙ってくるとは卑怯な奴め。
いや、そんな事よりまず訓練空域のド真ん中に不時着しているこの状況に対処するのが先だ。





とにもかくにも。
私の機体を取りに駐機場へ戻らねばならない。無論、徒歩でだ。
まだ敵が潜んでいる可能性の高い暗闇の中を身を低くして移動する。
しかし、夜間の狙撃では消音器を付けていようが発砲炎で居場所が知れるので一発必中が theory だ。敵が professional なら二射目は無いだろう。
一発で私を仕留められなかった未熟を悔いるがいい。

途中、訓練機が1機通過し、状況を把握してくれたようだった。
これで敵も迂闊な手出しはできまい。私が狙撃手であれば速やかに撤収する。





程なく駐機場に辿り着き、置いてあった一等空曹の装備を私の機体に詰め込み、すぐに引き返す。

不時着現場に戻って、先ずは三角板を設置。後続機に回避を促す。
幸い、この夜は他に訓練機は見当たらず、数機の民間機が物珍しそうに遠巻きに通過していっただけだった。











すぐにジャッキアップして被害状況を確認する。
流石は箱根の Ace、焦ること無く淡々と手際よくこなす。
このような緊急時にこそパイロットの器が見えるというものだ。










結局、機体のダメージは “ワイドトレッドのボルトが折れた” だけであった。











ハブボルトそのものは無傷だったので積んでいた予備の車輪を装着。
自力巡航可能になった。
ただ、飛んでいった元の車輪は影も形も見当たらない

この暗闇の中では捜索も事実上不可能だ。
明るくなれば或いは…とは思うが、一等空曹はこの夜が明けるまでに箱根防空圏に帰投しなければならない。
彼は潔く「回収は諦めます」と言う。
この辺りの判断の早さも軍人として非常に重要だ。
感情で動いては作戦が崩壊し身を滅ぼす。










駐機場まで戻り緊急メンテナンスを行う。












機体外装に軽度の損傷は認められるが、巡航速度であれば支障無しと判断。
既に予定の出立時刻を過ぎている。
速やかに高速航路に乗らなければならない。
不時着直後から警戒支援を行ってくれた訓練機が見送ってくれた。
名も無きパイロットよ、君の機体は覚えておこう。





















箱根防空圏まで無補給で飛ぶ為に最終給油を行う。












僅かな時間ではあったが、
そして思わぬ accident に見舞われたが、
この J'sTrace 一等空曹とのランデヴーは今後のとある作戦の為にも非常に大きな意味を持つであろう。











Semper Fi!








































<<翌日>>





私が其処に向かったのは全くの気紛れだった。



“世を忍ぶ仮の職務” の貴重な空き時間、
そもそも最初は、私が敬愛する作家ミチハル・クスノキの新刊を購入しに書店へ向かうつもりだった。



しかし、ふと前夜の事を思い出したのだ。
若き一等空曹は「回収は諦めます」と言い切ったが、
私は、彼があの装備に想い入れが有ることを知っていた。
出来ることなら回収してやりたい。
気付けば私は、12時間前に居たあの不時着地点へ向かっていた。











幸い、昨夜、あの暗闇の中でボルトを一本だけ発見していたのだ。
それに因って車輪が飛んでいったおおよその方向は推測できた。
恐らく、崖下だ。
発見だけでも出来れば、後々改めて回収作戦を立案する事も出来るだろう。










そして私は鬱蒼とした人外魔境のジャングルへと踏み込んだ。










想定される捜索エリアまでひたすら谷を降りていく。
ぬかるんだ土の上に濡れた落ち葉が降り積もり、非常に滑りやすい。
谷底に落ちていれば良いのだが、崖の途中に引っ掛かっていたりしたらお手上げだ。











ふと後ろを振り返ると、もうかなりの距離を降りてきている。
そろそろ辺りを捜索しながら進まねば。











…あっさり見つかった。
もう少しドラマ性を考えて空気を読んで欲しかった。

…いや。
ここからでは裏側しか見えない。
近寄って確認してみなければ。











ゴクリと生唾を飲み込みながら引っくり返してみる。











これぞ、選ばれし勇者にしか引き抜けない伝説の聖剣、
スプリントハート・コンペティション!






…いかん。
どうやら疲れているようだ…
頭の中で厨二病的な囁きが響いている。



思ったよりも簡単に見つかったものだが、
これは模擬戦で勝利した時よりも込み上げる達成感があるな。
一等空曹の喜ぶ顔が目に浮かぶ。










谷川から引きずり上げて崖の上に停めている愛機まで運ぶ。





そう、
ここまで降りてきた道のりを戻らねばならない。
この重量15kg以上の聖剣を持って。











見たくなかったのだが見てしまった。
上を。私の前に立ちはだかる現実を。
















絶望感しか無かった。
現実に打ちのめされそうだった。

やはりこの聖剣、見なかったことにして置いていこうか…










だが、私がやらねばならんのだ。
他には誰も居ないのだ。
それに、これは軍の任務ではない。
私個人の行為だ。
私が彼の為にやろうとした事なのだ。
“プロの素人” である私にしか出来ない事なのだ。










その時私を突き動かしていたものは意地だけだったのかもしれない。
何度も立ち止まり荒い呼吸を整え、言うことを聞かない脚を必死に前に出す。
泥まみれの手で車輪を掴み、転がし、持ち上げる。
砕けそうな痛みを訴える腰を自分のものと思いたくなかった。










だが私はやり遂げた。











私は勝ったのだ。



























奇跡的に、
損傷は皆無と言って良い状態だった。
エアバルブキャップの損失など些細な事だ。



後日、無事、箱根防空基地 J'sTrace 一等空曹 宛に送り返される事になるだろう。






























 ~ Director's cut ~



FF車で、機械式LSD・ハイグリップラジアル・20kg超えのスプリング・高負荷BAXOWを繰り返す、という環境で
20mm級のワイトレを咬ましていると…
これも当然の結果でしょうかね。( ̄  ̄;)
完全に金属疲労ですな。







「走るクルマにワイトレやスペーサーはご法度」とよく耳にはしますが、実際に身を以て “勉強” した今回。
Jr.君も「もう二度とワイトレは着けないっす」と。
このワイトレ、決して安物ではないです。それでもこうなった。

それに、たまたまワタクシが運転しているときに発生したとは言え、
筑波アタックからこっち、ずっとこの状態で走り続けてきた蓄積な訳ですから、遅かれ早かれ同じ結果になってたって事ダヨネ…
数日前に父上がBNYしてる時になっていたかもしれないし、一人で高速走ってる時になっていたかもしれない。
そう考えると、(交通量が極めて少なく、高速に比べて速度域も低い)夜のお山で、且つ二人で居る時でむしろ良かったかもしれない。
高速でタイヤ飛んでったらエライ事になりますよな。(´Д`)

結果的にこうして、二次被害も無く、うまいことホイールも回収できたから笑い話で終われますけど、
ほんまに、走りのクルマにワイトレはやめましょう。
良い勉強させてもらいましたww

シビック、ちゃんと乗れなくて残念やった。( ̄▽ ̄;)










てーか…
今年始まってまだ一週間なのに







既に三角板の出動回数 2回www










あ。
父上ことインディさん、お土産アザーッした!┏○



大風呂敷を広げる、の図…シランガナw








Posted at 2018/01/09 01:00:23 | コメント(9) | トラックバック(0) | Mr.Xからの依頼 | 日記
2017年04月22日 イイね!

『Operation HEAT OF EMOTION』 〜愛惜の岡国〜 2017.4/20

『Operation HEAT OF EMOTION』 〜愛惜の岡国〜 2017.4/20
私だ。





“プロの素人” RedXIII だ。





約10ヶ月振りの任務報告になるが、私がその間何もしていなかったとは思って欲しくない。
(どういう事かわからない者は、ブログカテゴリを確認したまえ)
“プロの素人” として、日々隠密諜報活動に従事していたのは言うまでもなく、隠密諜報活動であるから公表できないのだ。
よって、私の近況について今ここでこれ以上語れる事は無い。
早速本題に入るとしよう。










今回の任務はかなり特殊な依頼だ。

…いや、やっている事自体は「代行運転」なのだが、
何処でそれを実行したかが問題なのだ。

この依頼は、ある意味 “タブー” ともされる内容を含んでいるが、
“プロの素人” である私は、あくまでプロとしてクライアントの希望に応えた。





 希望
 夢
 叶わぬ想い






クライアントのそういった “emotion” を、
僅かな一時、私が預かり、代わりにステアを握らせて頂いた。















その地は、










岡山国際サーキット





通称、OKA-KOKU















“他人の愛機でサーキットを走る” という行為に違和感を覚える者もおろう。
「責任の所在が…」やら「道義に反する…」やら、そういう声があることは理解している。


しかし、一方で(これは私の屁理屈かもしれぬが)、


プロのチューンドカーの世界では、チューナー(或いはビルダー)はあくまで車両制作のみで、
アタックはプロのドライバーに頼むケースも少なくない。


また、例えば競馬の世界では。
オーナー(馬主)と、チューナー(調教師)と、メカニック(厩務員)と、ドライバー(騎手)は全て違う。
それぞれが役割り分担し、その領域に於いてのprofessionalとして最善を尽くす。


我々、素人のクルマ遊戯(私はプロとは言え、所詮は素人なのだ。Soco'n'Toco YOLOshic!!)に於いても、そういった事は有りではないのか?と。










つまるところ。










今回のクライアントは、
長年、自身でサーキット走行を楽しんできたものの、
最近ある種の “壁” に直面し、自らの在り方を思い悩み、
今後の可能性を模索する手段の一つとして、私に “テストドライバー” を依頼したのだ。



「愛機の実力を知りたい」と。




…勿論、背景にあるのはそれだけではない。
それだけの理由では、私も「プロの素人として、仕事の道義に反する」と思ったであろう。
しかし、クライアントの抱える様々な胸の内に耳を傾け、
何より「“プロの素人 RedXIII” にだから託したい」という言葉が私の心を打ったのである。
プロの素人、冥利につきる。





いわば、今回の任務は “emotion” に関わるモノであり、
「明確な達成目標・成功基準が無い」という点が過去の任務と大きく異なる。

「想いを乗せて走る」というのは些か気取りすぎかもしれないが、
つまりは、そういう事なのだ。















 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜















当日朝、クライアントと某所にて落ち合う。

















実は、ここで合流するまでに早くも一波乱あったのだが、
作戦遂行に支障の出る程の事態にはならなかったので割愛する。











同じ昴型ということでカムフラージュになると思ったのか、さりげなく並んできたSVX。
騙された振りをしておいてやったが…私の目を欺く事はできんぞ、どこのスパイだ?
真横に並んでくるというその大胆不敵さは褒めてやるが、
トイレに行く演技などは、私を監視するつもりならば逆に命取りだと知れ。
貴様が戻ってきた頃にはもう私の影も踏めぬだろう。ぬぁーっはっはっは。















道中の報告は割愛する。
現場の話をしよう。





















































OKA-KOKUには過去何度か潜入作戦を行っているが、
正面ゲートから突入したのは今回が初めてだ。
我が愛機をOKA-KOKUのパドックに、=衆人環視の下に晒すというのは
機密保持の観点からは懸念が多いが、任務の為には仕方あるまい…
今回、我が愛機は、あくまで此処へ来るまでの移動手段に過ぎず、
此処に着いてしまえばもはや "脇役" である。





今日、この場に於いて、私の愛機はコイツなのだ。

















クライアントがわざわざこの日の為に用意したというタイヤ。
申し分無しである。
事前に下調べし、空気圧は迷いなく冷間1.8。
(ZII☆は空気圧高めがセオリーだったが、このZIIIは他銘柄と同等の特性となった)



































































いよいよ1本目の走行である。
まずは様子見。この機体の性格やご機嫌を伺うのも勿論、
周りの車両達の動向も充分に観察して、 "譲るべき相手" と "パイロン" を覚えておく事も重要である。

















結果から言えば、1本目は終始 "安全BNY" でクルマに無理をさせずに
走行枠30分丸々を慣熟に使ったようなものであった。
丁寧に、忠実に、探りながら。
"本番" の2本目へ向けての長い助走のようなもの。
ドライバー自身の "emotion" を暖めていく。





















とはいえ、今日の私はただ走るだけが仕事では無い。
"クライアントの愛機を私が駆ることで、何かを感じてもらう" のが今日の任務の目的である。
直線だけ見ていたって、得られるモノはさほど無いだろう。
やはり躍動感溢れるシーンを見て欲しい。

1本目の間、ピットウォールからストレートを見ていただけのクライアントに
より "emotion" に訴えかける光景を焼き付けてもらうべく、
2本目のギャラリーポイントをいくつか提案する。


























これは…盟友 Mr.Orange が出入りするアジトの所属機体ではないか。



















幸い、2ヶ所ほど納得のいく観測ポイントが見つかったようだ。




















いよいよ2本目のスタートが迫る。

















その瞳は何を見るのか。










いざ。

RedXIII with “Spirit of MAPLE” Attack on OKA-KOKU










充分なインターバルがあった為に、空気圧はすっかり1.8に戻っている。
先ずはタイヤを温めるべく、7割程度のペースで3周ほど周回する。
先頭から数台目のポジションでコースインしたが、この間に何台かに先を譲り、クリアを取りやすそうなポジションを探る。











自分の気持ちのスロットルを踏み込み、徐々にペースを上げていく。
1本目よりも大胆にaggressiveに遠慮無く、しかしあくまで丁寧に、マシンの声は聞き漏らさぬよう。
タイヤのたわみを、リアが路面を蹴るのを、車体の沈み込みを、全身で感じ、確め、踏み込む。











クライアントは、この依頼を持ち掛けてきた時から終始、
「ATで申し訳ない」
「バケットシートも入っていないし」
「思い通りにならない機体で走らされて、 “プロの素人 RedXIII” のプライドを傷付ける事にならないか」
と、しきりに気にしていたが…

私はプロだ。
与えられた条件下で最善を尽くすのが任務であり、流儀であり
それこそが私のプライドである。
馴れない機体を操れないというならば、それは所詮私がその程度という事だ。











それにこの機体。
なかなか見事なモノだ。
チョイスされているパーツの多くも、クライアントが拘りを持って吟味したものであり、
私個人の価値観としても信頼の置ける物である。

私とて “見込み” の無い依頼など請けない。

その中でもP-981 純正モノブロックを収めるブレーキシステムは特筆すべきパフォーマンスを見せる。
これのお陰で、“ブレーキングで詰める” 楽しさを存分に堪能させて頂いた。
「ATだからこそちゃんとしたブレーキを」というクライアントのチューニング方針に拍手を送りたい。











「私ではこの子を活かしてあげられない」と語ったクライアント。
愛機の “駆け抜ける様” を見たいというその “emotion”
それに応えるべく、それを叶えるべく、私自身の “emotion” をそこに重ねていく。
I have control.











スタンドから見つめる瞳に、
私の走りはどう映っただろう。


























完璧、とまではいかずとも
それなりに “納得のいく1周” も組み立てられたので、
この数字が今回の私の仕事と思ってもらって構わない。
(更に言えば、これは私の “OKA-KOKU 初走行” の数字でもある)

まぁ…本音を言えば…
すべての要素がうまくハマれば、まだあと2秒は行けたと思うが、
他人のクルマでそこまでプッシュするほどプロに徹する事も出来ない私は、やはり所詮素人なのだろう。
自分のクルマで走るときよりもかなり多めのマージンを取っているのは走りながらも自覚した。
今回の目的は数字ではないのだ。
私の走りを見て、クライアントが何を感じ、何を思ったのかに意味がある。






























後にクライアントは語る。










「自分のクルマなのに “Redの動き” をしているのが遠くから見てもわかって、
あのクルマもこんなに速く走れるんだと感動したし、凄く納得できた。
これでいいんだと納得できた。
気持ちが満たされて満足した。…ありがとう」































誰かの気持ちを乗せて走ること。
何かを託されて走ること。

そんなことをしたのは勿論初めてであった。

期待と責任を感じると同時に、
やはり信頼あってこそだと強く感じた。

ただ速く走ろうと遮二無二突っ走るよりも
難しく、奥深く。
故に走り終えた時の心地よい疲労感、穏やかな達成感、僅かな喪失感は、今までに無いものであった。

自分は主役でもなく、脇役でもなく、不思議な感覚。
全てが別々で、全てが一つ。
何か一つが欠けたら成り立たない。

人生の縮図を見たような気がした。

今回の依頼を終えて、
クライアントは満足を覚え、納得してくれたが、
…私自身も、得たもの、学んだ事が多くあったように思う。
感謝、である。





















私は“プロの素人” RedXIII
私は走り続ける。
いつまでも、どこまでも。
私が私で居るために。





また次の舞台が私を待っている。



Posted at 2017/04/22 19:00:22 | コメント(5) | トラックバック(0) | Mr.Xからの依頼 | 日記
2016年06月07日 イイね!

『宿命のObsidian 』 ~arrival at maipeco's POLO~ 《後編》

『宿命のObsidian 』 ~arrival at maipeco&#39;s POLO~ 《後編》
の機体を回収する為、
 地上も地下もあらゆる道を駆使し、
  敵の目を欺き、
   銃弾の雨をかいくぐり、
    時に傷付き倒れ、
     生死の境を三日三晩彷徨い、
      長い道程の果てにようやく辿り着いた取引場所。












そこに佇んでいたのは
VolksWagen Polo4 GTI







かつてGolf3を駆った事のある私としては、愛着を禁じ得ない。
だが、今は未だそのような個人の感情を云々言う段階ではない。
此処は未だ敵地のただ中、先ずは任務だ。










そう。
速やか、且つ確実に現状を把握せねばならぬ。





この個体、破格とも言える value price なのである。
それは当然、裏返せばそれなりに理由が有るのだろうし、
実際の所、先立って が調査に訪れた際に一悶着したという話も聞いている。
制動装置の不具合を指摘し、引き渡しまでに前部の制動装置を総交換したという経緯だが…
他にも色々と交換が必要な箇所が有ろう事は想像に難くない。
から、そのチェックを現場で入念に行ってくれとの依頼があり
私が今回召集されたのはその為と言っても過言ではない。


その責務を果たすべく、 が担当整備士から引き渡し説明を受けている間、私が機体のあちこちを舐め回すように眺め、発動機周辺を覗きこんでいると、
「それ以上見るな」と言わんばかりに整備士がボンネットを閉めて、そそくさと説明を終えて話を纏めに入った。
粗捜しされるのが気に食わないのか、はたまた何か後ろ暗いところでもあるのか。
この男、一度も私と目を合わせない。
…まぁ、「海外製の機体を整備した経験が乏しく…」などと言っていたらしいし、
取引相手方の指揮官(私の事だ)が前回と違うとなると警戒する気は解るが…
そこであからさまに挙動不審になっているようでは、工作員としては三流だな。


走行距離からすれば何らか色々と “お疲れ” であろう事は容易に想像がつくので、別に完璧に整備して引き渡せ、などと言う気は毛頭無いのだが。
“auctionで仕入れてそのまま売っている店” に、そこまで期待するほど素人ではない。
何と言っても私は “プロの素人” だからな。
発動機とハコさえ達者であれば後は此方でどうとでも面倒見る、というものだ。





しかし、この時点で私が気付いた小さくない懸念材料が一つ。
「整備点検記録簿が白紙」の為、過去の整備状況が全く以て不明な点である。
全くの白紙というのは、想定よりも悪い状況と言わざるを得ない。
少ない手掛かりから推測するに、おそらく2owner機と思われるが、どうも前ownerはmaintenanceにあまり熱心ではなくcost cut方針だったらしく、
タイヤは(ある意味予想通りの)東南アジア製、
engine oilのステッカーに至っては某ホームセンターのもの、だった。

…これは思っていたよりも手強いトラップが仕込まれているかもしれん…










10分も経たずに、半ば追い出されるような流れで取引場所を立ち去った。
もう訪れることは無いだろう。
ここで敵の工作員に弱みを見せては付け込まれると思い、
離脱する最初の操縦は私が担当した。
尾行探知軌道で敵の観測員を撒いた後、
物陰に機体を停め、探知機や爆発物が無いか入念に調べ、差し当たって脅威は無いと判断。
ようやくそこで に操縦桿を渡した。










ここからが事実上の作戦開始であり、 新兵 M 、試練の刻 である。
















初動は悪くない。
私の愛機で少なからず経験を積んだ成果か、

「え? なにこれ! Redぃ号より言う事聞いてくれる!」

…私としてはなんとも複雑な心境のコメントが飛び出したが…
強化クラッチ+前後LSDの我が機をそれなりに動かしていたのだ、
コレくらいは朝飯前で動かせて当然だな。
より厳しい条件で訓練しておけば本番に余裕を持って臨めるという、
実に理にかなった私の指導方針が見事に実を結んだというわけだ。
褒めても良いぞ?
無論、私をだ。










としては、自分の専用機とはいえ今日初めて操縦する機体。
欧州機独特の湿ったシフトフィールや、左側にある指示器など、慣れない事ばかりの筈だ。
更に、右も左もわからない - 兇斗 - の道。



…落とし穴の予感しかしない。















片側1車線の街路から、片側2車線の大通りへ出て左車線を進行。
前方に例の200番台のバス。
バス停に停車。左車線が塞がれる形。
当方、バスの直後でほぼ停止速度。
右車線への進路変更を企画する
左手で指示器を押し上げ、緊張の面持ち。
私がタイミングを指示した。「Fire!」





「ガコーーーーーン!!」





………まぁ、こんなものだ。





完全にパニック状態の
“使い物にならなく” なっている。
なぜ焦る?
まさか、一度もエンストせずに行けるなどという
根拠の無い自信でもあったのか?

「発動機、再始動。前方クリア、進路を維持」



後に が述べた。
「Redぃが横から言ってくれなかったら絶対あのままパニクって何もできなかったよ〜…(;´д`)」



…そんな事では困るのだがなっ!
まぁ…この日 がエンストしたのは結局この1回だけだったので、
初陣としては上出来も上出来だろう。
褒めるとすぐ油断してまたやらかすので言わなかったが。











↑一見、余裕綽々に見えるカットだが…
エンスト直後、冷や汗全開の瞬間である。
ドジっ子萌えの紳士諸君、ハァハァ(*´Д`)するが良いぞ?
※「1ハァハァ(*´Д`)」につき500円を のブッシュ交換基金にお振込ください。










このアクシデントの後、すっかり士気が落ちた











私の出番だ。

I have control.

この地点で、次の目的地までの丁度中間ほどであった。
向かう第三中継地点は、敵支配圏の - 兇斗 - を脱し、西の山を越えた先にある。
そこまでの道程は機体のコンディション確認には丁度良い。



敵勢力圏の外縁まで辿り着いた時点で、第三中継地点へ暗号電文を打つ。
『ワレ ダッシュツ ニ セイコウ セリ ウケイレキョカ ヲ モトム』
すぐに返答が返ってきた。
問題無く予定通り整備と補給を受けられそうだ。




















第三中継地点。
私の馴染みの整備基地 Dr.hのラボ に到着、手早く機体を収容する。







ここに立ち寄る事は最初から私の飛行計画に組み込んでおいた事なのだが、
機密保持の為、 Dr.h には直前まで伏せておいた。
万が一情報が漏れて脱出経路を潰されては生死に関わる問題である。
プロは時に非情に徹しなければならない。
だが、ここまで辿り着けば一安心である。





出自が定かでない上に、過去の整備記録も白紙の機体となると、
やはりその分野に明るい信頼出来る人間に任せるべきであり、
Dr.h に診てもらわねば話が始まらない。
いくら “プロの素人” とは言え、所詮私は素人なのだ。

道中、操縦していて幾つか気掛かりな事もあったので
ここは、第三者の厳しい目でしっかりと精査して貰うとしよう。













下回りは全体的に綺麗である。







ブーツ破れ無し。













ロワアームブッシュは要交換。













リアブレーキローターが波々なのでこれも要交換。
パッドはまだいけるか。








一通り下回りを精査し終えたが、
走行距離を考えればブッシュ類の劣化は想定の範囲内。
だが全体的には意外に綺麗であった。

ただ、ここまで操縦して来た間に強く違和感を覚えた点があり、
私は確信をもって Dr.h にある作業を依頼した。







ミッションオイルである。

は全く気付いていなかったようだが)シフトの感触がザラザラしていた。
時折、変速時に妙な振動が出たりギア鳴りもするので、おそらくミッションマウントも替えないと根本的には直らないだろうが、
案の定、抜いたミッションオイルは酷い状態だった。










更に続けて、エンジンオイルも交換。







操縦席横に添付してあった “交換時期目安” によると、まだ2000kmほど余裕はあったが、
そのステッカーが 某・ホームセンター の物である事が不安を煽る。
十中八九、鉱物油であろう…
しかもあの調子では、取引相手の整備士がオイル交換しているかはかなり怪しい。
因って、この際同時にリフレッシュしておけば憂いも減るし、今後の整備サイクルを組み立てやすくなるというものだ。














これらの整備指示は全て私の独断であり、専任者である の意向を無視したものだが、
今回のような、作戦本部との連絡が途絶した潜入作戦行動の状況下では、
現場での最高階級者(私と しか居ないので私だ)が全指揮権を持ち、その指示が絶対とされるので、何も問題ない。

I have control.


そもそも、私もまだこの機体に命を載せて基地まで戻らねばならんのだ。
最善を尽くすのは我が身の為でもある。















応急の整備を終え、Dr.hのラボ から離陸する。
ここから先は作戦本部まで無補給で一気に飛ぶ。
経路の大部分は山岳地帯だ。
ラボから山裾までの短距離を が操縦し、山岳部は私が操縦する事になった。



ミッションオイルを交換した効果は にも解ったらしく、
maintenanceの重要さ、奥深さを知る上で良い経験になったに違いない。
しかし、マシになったとはいえ、やはり未だシフトに違和感がある為、
マウントやブッシュ等、各部消耗部品の交換は早めに実施せねばなるまい。











山岳路でこの機体の機動性を確かめる。
150ps / 22kgm というspecの発動機は、低回転からトルクを発揮する瞬発力型。1.2t余りの重量には程よい塩梅で、登坂路でも不満は感じない。
6速crossでも入っていれば尚楽しめるのではないかと思う。











途中、所属不明の 『昴 VM型 -Re:暴狗- 』 と遭遇。
此方が後方から接近すると、振り切ろうと加速していった。
…面白い。
VMGかVM4かは判らぬが…相手にとって不足無し。
この『VW 9N型 GTI』の戦闘力、見せてもらおうか!










…結果から言おう。










“ 道 を 譲 ら れ た ”



私自身初めて体験する東南アジア製タイヤ 『P』の性能を慎重に探りつつも、
昴の最新機に “付いて行ける” 以上のパフォーマンスを発揮した9N GTI。

“戦闘機” としての潜在能力は申し分無い。

いずれ鋭い輝きを放つ原石である。
差し詰め、
高価ではないが、加工が容易で、磨けば切れ味鋭い刃にもなる、

黒曜石 ~ Obsidian ~ だろうか。










…しかし、
石を磨くのは私ではない。全ては 次第。

先ずは石より先に腕を磨いて貰わねばならんが、
乗り手も機体も、磨けば切れ味鋭く輝くことは間違いない。
今後が非常に楽しみである。






























実は が興味深い発言をしている。



「Polo良いね~! 探してた物に巡り会えたって感じするよ~♪」



半年前までは豊田製『HV水』を買おうとしていて、
三ヶ月前まではAT限定免許だった者から
このような言葉が出てくるとは…

と共に、手動操縦の愉しさを説いて洗脳しこの世界へ誘った責任者として
感無量である。





以上を以て、2016年6月5日 機体回収作戦の報告とする。












Operation『宿命のObsidian』

幕は上がったばかりである!





Posted at 2016/06/09 13:13:14 | コメント(6) | トラックバック(0) | Mr.Xからの依頼 | 日記
2016年06月05日 イイね!

『宿命のObsidian 』 ~arrival at maipeco's POLO~ 《前編》

『宿命のObsidian 』 ~arrival at maipeco&#39;s POLO~ 《前編》
私だ。

“プロの素人” RedXIII だ。





諸君、久しぶりだな。
そうだ。
私がこうして報告書を提出しているということは、
また駆り出されたわけだよ。
雇われ素人の辛い所だ。





今回の任務も
敵地潜入・機体回収・脱出生還
といういつもの内容だ。





だが。





今回は新兵の練達訓練を兼ねるという点が、この任務に特殊性を与えている。
要は私にヒヨッコのお守りをしろという事だ。

しかもこの新兵… 仮に と呼ぶが…
本来の所属としては、私ではなく の指揮下にあるのだが、
がアレコレ理由をつけて度々私に押し付けてきて、既に何度か私の愛機を使って機体操作の慣熟訓練をしている
…まぁ私は構わんのだが、 の監督責任というのはどうなっているのだか…
「別の任務が…」とか言いながら、どうせ畳の上でゴロゴロしながら昼のワイドショーを最初から最後まで眺めて欠伸しているのだろう。
私が知らないとでも思っているのか。






まぁいい。





任務だ。





今回の作戦は一言で言えば、新兵 用の機体を入手することである。
“初陣” というわけだ。

作戦指示書は私宛だが、主役は新兵の であって、
私は複座で搭乗しての補助(まぁ、場合に依っては私が主導する必要も出てくるだろうが)という立場である。
本来このような作戦は、新兵一名での単独任務になることが多いのだが、
今回の新兵は、まぁ… その… 不確定要素が多いとでも言うか…
手動操縦の練度に不安があると言うか…
兎に角、単独での作戦達成が困難な状況に陥る可能性が少なからず見込まれるということで、
が “使い物にならなくなった” 時の為に私が指揮を執る事になった。
勿論、 は例によって「別の任務が…」といういつもの言い分だ。




















作戦決行当日の朝、 と合流し
コードネーム 《マルーンの疾風(かぜ)》 で作戦領域へ向かう。










車内で息を潜めること小一時間。





降り立ったその地は…
















 魑魅魍魎が跳梁跋扈する

 魔都   - 兇斗 -






かつて数多の任務を受けて、我が愛機や大型母艦でこの空域を泳いだ事は数知れないが、
こうして地上からこの街の空を見上げる事は、おそらく幼少以来である。









敵の目を欺く為、目標地点へ直接向かうわけにはいかない。
かといって、無計画に動く事も危険だ。
そういう状況での行動指針を新兵に手ほどきする事も今回の作戦の一部である。

そこで、まず に近隣の補給可能ポイントを調べさせ、それを元に私が会敵確率の低いルートを算出した。











「木を隠すなら森の中」とも言うように、
敢えて人の多い所を通るという事も一つの戦術である。
決してミーハーではない。











敵の目を欺く為、











一般観光客に溶け込むという手法で、











このような潜伏施設をchoiceした の着眼点は、











初陣としては上出来ではないか。











言うまでも無い事だが。
これは全て作戦行動に必要な事であり、
決して「バニラ 小豆 きな粉の溶け合ったこの甘美なハーモニーうまーーー♪」などとは思っていない。











決して「うーわ何この抹茶わらび餅、めっちゃ濃厚でぷるるんヒンヤリ最高ーーー♪」などとは思っていない。
言うまでも無い事だが。











後ろ髪引かれる思いで補給ポイントを足早に離脱し、大通りを避けて北上する。
次の中継地点は、新兵達がゲン担ぎに訪れるという或る施設だ。
だが、其処へも真っ直ぐ向かっては敵に察知される恐れがある為、
camouflageの経由地を設定する。











くどいようだが、











決してミーハーではない。











「木を隠すなら森の中」である。











言うまでも無い事だが。











決して「うーわ何この御朱印!めっっさ達筆!超カッコエエやん!うっわーーーーーー!!」などとは思っていない。
私は常にcoolな “プロの素人” だからな。










そして辿り着いた第二中継地点。























ゲン担ぎとは…実に新兵らしくて初々しいではないか。
私のように薄汚れたハードボイルドともなると…











「突っ込んでくれた方が保険金ウハウハやんけ!!」

…などという下衆い思考に走るものだから始末が悪い。
口調まで俗っぽくなってしまうのだから困ったものだ。










さて。

ここで、これもまた敵の目を欺く為に、公共交通を利用して高速移動を行う。
決して「歩き疲れたから楽がしたい」というわけではない。
全て作戦達成の為に必要な事であり、仕方なくなのだ。
Soco'n'Toco YOLOshic!











200番台は正規公務員が乗務する路線である。
それ以外は基本的に私鉄への外注路線である。
即ちコレは、関西のバス乗務員としては間違いなく最高水準の報酬を受け取っている運転手が乗務するバスである。





納得であった。
運転操作、接遇、全てに 持てる者の余裕 が感じられる。
格差社会万歳。
合掌。










朝は小雨が降り注いでいたが、それは逆に
人目を簡単に遮る 傘 という装備を怪しまれずに使用する事ができて好都合だったのだが…











いつの間にやらこの有様である。











いよいよ目標地点に到達する。
これだけ地上を這いつくばって活動したのはとてつもなく久しい気がする…
戦闘機乗りの身分の有り難さを実感した。











…なんだこの凄まじく surréalisme な光景は…
奥の邸宅と手前の菜園とが完全に別の世界ではないか。
そこに次元の狭間が横たわっている。
このstructure… 何かとてつもない陰謀を秘めている予感がする。










と、その異様な建造物に気を取られていた私に が背後から声を掛けた。

「着いたよ〜♪」










………もうちょっと空気を読んで欲しいモノだ…
人がせっかく無理してハードボイルドを演出しているというのに。
女が読めないのは地図じゃなかったのか?

















まぁいい。
こうして目標に辿り着いた事は事実だ。
作戦の第一段階は達成された。
私は束の間、ささやかな安堵を覚えた。










しかし、本当の戦いはむしろここからだった!















《後編》へ続く!




Posted at 2016/06/07 14:14:48 | コメント(6) | トラックバック(0) | Mr.Xからの依頼 | 日記
2015年09月20日 イイね!

ダルマを求めて3000秒


灰色の空模様をそのまま落とし込んだような、蛍光灯を切った薄暗い店の中はランチタイムと呼べる時間が終わろうとしていた。
最後の一組が箸を置き、思い出したように窓の外を気怠げに眺めている。
一瞬とは言え、またあの雨の中をクルマまで走る事を思っているのだろう。
その最後の一組が出て行き、店の中は雨音と、油が切れてキィキィと悲しげな鳴き声をかすれさせる天井からぶら下がった扇風機と、どこからか入り込んだカメムシが時折飛ぶ時の硬質な羽音が微かに響くだけになった。
厨房は既に火が落ちて、奥の冷蔵庫の前で黄色いビール箱をひっくり返した上に大股で座ったコックが紫煙を燻らせながら新聞を読んでいる。

朝からの雨のせいか今日は客が少ない。
とはいえ、多い日でもここのテーブルの半分も埋まる事は無いけれど。と、重ねた食器を片付けながら女は自嘲した。
観光地の近くではあるが、中心からは離れた場所。
田舎の幹線道路沿いに立つ、よくある寂れたレストランだ。
高度経済成長のモータリゼーションの盛り上がりと共に、全国で一斉に立ち並んだ「ドライブイン」の成れの果て。
何十年も前には連日、街道を行くドライバー達で賑わっていたと聞く。
だが女がこの店で働くようになった頃には、既に時代に流された抜け殻のような今の状態だった。
しかし、同様の店の多くがもはや廃業している中、まだ細々とながら続いているのは良い事なのだろう。と思うようにしていた。

店の外でエンジンの始動音がした。さっきの最後の客だろう。
耳障りという程ではないが、普通の車に比べると大きな音だ。
反射的に視線が音の出所へ向いた。黒い平べったいクルマだった。
女は車の事はあまりわからない。自動車メーカーの名前など10個も言えないかもしれなかった。
だが、その車の顔(というか“鼻”)に付いていた大きなマークは知っていた。
ベンツだ。ガイシャの高級車だ。それ以上は知らない。
田舎の生活でそれ以上の情報は必要無かった。
女にとってはそれ以上の興味を誘うものでもなかった。
こういう場所で働いていればそう珍しいものでもない。平凡な日常の背景の一部でしかなかった。
既に頭の中では、今日の仕事がこのまま終わって少し早めに帰れるかどうかの皮算用が弾かれていた。
週末からの連休は少し忙しくなるかもしれない。今の内に少し楽をしてもバチは当たらないだろうと思った。



だが、どうやら今日はツイていないらしかった。
“黒い平べったいベンツ”が出て行った数分後に
入れ替わるように“白いずんぐりした車”が入ってきた。
女は内心舌打ちした。

“白いずんぐりした車”から男が一人降りてきた。
女は何かどこか損したような恨めしい気持ちで、新しいおしぼりを取り出し、
個人的な心情としては“招かれざる”と言えるその客が店のドアを開けて入ってくるのを、貼り付けたような愛想笑いで待ち受けようと視線を戻した。
しかし男はそこに居なかった。一瞬、虚を突かれて視線が泳いだ。
だがすぐに見つけた。
その男はなぜか道の向こう側に居た。傘も差さずにこの建物を見上げている。
手にしたカメラかスマホか、この距離では判別できないが、とにかく写真を撮っているようだった。
女は、網膜に映ったその映像が電気信号となって脳へ送られ、その映像に意味付けが成された瞬間、自分の中にささくれ立った感情が起こるのを感じた。
この寂れたレストランがそんなに珍しいか。
もしかしたら「田舎の潰れかけメシ屋マジヤバいww」なんて文章を添えて、今まさにネットに投稿しようとしているのかもしれない。
昨今はそういう“程度の低い”輩が多いと聞く。
ちょっと都会に住んでいるからと、こうやって田舎に来ては笑い者にしようとする。
そういう目をしている客も週に何人か程度は現れるので特別珍しいというわけでもなかったが、目の前でその振る舞いを見せられるとやはり心中穏やかではなかった。
記録写真の撮影に満足したのか、何喰わぬ顔でこちらへ渡ってくるその男の表情はサングラスに隠れて読めない。
そんな相手でも客は客である。今日の最後の仕事がこんな客かと思うと嫌気が差した。



だが、その男は遂に店には入って来なかった。
どうやら隣の自販機コーナーに入ったようだ。
まったく…紛らわしい所に車を停めて…と女は内心毒づいた。
しかし、隣の自販機コーナーも女の働く店が管理しているのだった。
そして、その自販機コーナーにはちょっとした秘密がある。
もしあの男が、その“秘密”を嗅ぎ付けて来たのだとしたら、あの行動にもいくぶん納得が行った。
女は胸騒ぎを覚え、レストランと自販機コーナーを隔てている「従業員専用」と書かれた木目の扉へ大股で、しかし音を立てぬようにつま先立ちで近付き、蝶番が嫌な音を立てぬように気をつけながら扉を少し開いて、隣の部屋の様子を窺った。









 ~ ~ ~ ~ ~









「ダルマ」「うどん」という僅かな手がかりから推測されるのは、
おそらく目標は飲食店であり、となると「ダルマ」が指すのは店名である可能性が高い。
そう結論づけた私はカーナビゲーションアプリという文明の利器を駆使し「ダルマ」という単語を近隣検索してみた。
Hitした。
…だが、どうだろう。
こんなに簡単に推測できる目標を J が指示するだろうか?
…罠の可能性がある。

だが今の状況では情報が少な過ぎて他に手掛かりは無い。
他に選択肢が無い以上Hitした地点に向かうしか無いが、何かしらのトラップがあると思った方が良さそうだ。
幸か不幸か、Hitした目標地点は近かった。一時間と掛からず到達できるだろう。
… J の狙いは何だ?
送信者は J を装っている別人である可能性も考えられる。
目標へのこの近さ。明らかに私の位置を把握した上で誘導しようとしている。
わからない…

私は心中の不安を拭うようにワイパーの動作を一段階早めた。
雨は降り続いている。
まして、今日の機体はいつもの愛機ではなく勝手が違うのだ。

 昴 BS9型、通称 -遺産- 。

今日はこの新型機の評価試験の為に、夜明け前から極秘任務に当っていたのだ。
どこで情報が漏れたのだ…?
いや、だが今考えるべきはそんな過ぎた事ではない。
今現在の状況分析と、直近の事象へのシミュレーションに注力すべきだ。
しかし…冷静になればなるほど状況は悪い。
小回りの利かない大型機。土地勘の無い場所。悪天候。
チェックメイトだ…
これでは自分から狩られに行くようなものではないか。
私自身が -遺産- になるのは御免こうむりたい。



不意に、ブラインドコーナーの向こうから爆音と共に黒い影が躍り出た。
鼓動が一気に跳ね上がる。脳内に覚醒成分が分泌され、情景がスローモーションで見える。
脳が映像を処理するより早く、ソレが “アヴナイ車” である事を直観した。
今最も出会いたくなく、出会ってはいけない相手であると悟った。
ワイド&ローなシルエット、明らかにアフターパーツと見えるLED装飾灯を備えた威圧的なマスク、煌びやかな大径ホイールに薄いタイヤの組み合わせ、そして何よりとりわけ存在を主張し嫌でも目に入る大きな Silver Arrow Emblem 。

 Mercedes-Benz R230 SL !

それもおそらく 65AMG
万事休す。
罠だ。刺客だ。「オワタ\(^o^)/」だ。
こんなものが相手ではBS9型など、スズメバチに狙われた芋虫のようなもの。
私を消す為にこんな刺客を送り込んでくるとは…
過大な評価を頂戴しているということで名誉と受け取っておくか。
だが、私とてやすやすと殺られる気は無いさ。

左手の指先でパドルシフトを軽く一度引き上げる。
カコッと小気味よい音の後、低い唸りをあげリニアトロニックがその駆動比率を変動する。
チェーン式とはいえ所詮CVT。このダイレクト感の無さは、好き嫌いどうこうの話ではなく戦闘機としては問題外である。瞬発力のカケラも無い。
だが今は此れの性能に頼るしかない。
幸い相手は対向だ。サイドターンして追撃してくるにしてもコンマ数秒の内に広げられる相対距離は小さくない。
ましてやウェット路面。
最低限のロスでのスピンターンはもちろん、最適なトラクションでの加速にも相当の技量が問われる。刺客の操縦に綻びが出る事を祈った。

最初にして最大の突破口であるこの数コンマの間に、出来得る限りのマージンを得るべく右足を床まで踏み込むが、なんとも呑気な反応を見せるBS9型である。
「後ろから蹴り飛ばしたくなるような」という陳腐な形容詞が脳裏に浮かんだ。
黒いMercedes-Benz R230 SL と最も接近するその刹那に相手のコクピットを見やるも、薄いスモークを貼った相手のウィンドウと、私と刺客の間を隔てる二枚のガラスの表面に踊る水滴に阻まれ、相手の表情はおろかシルエットも定かではない。
一呼吸の間に後方へ流れ去る黒い影。
その黒い影に赤い光が灯り、影がいびつに形を変え、やがて二つの白い光りがこちらを向いて輝くその様を見届けようとサイドミラーを凝視した。
ミラーの中の影が小さくなってゆく程、それは私が生き残る可能性が大きくなっていく事を意味していた。

…おかしい。
一流の刺客であれば、スレ違うより前にいち早く追走体勢を取るべく反転動作に入る筈だ。
黒い影には遂に赤い光が灯る事なくミラーから消えた。
…なぜだ?
刺客ではなかったのか?
そんな馬鹿な。あれほどまでに禍々しい瘴気を放つ機体が一般市民であるなどと…
いや、私を油断させる為のfakeかもしれぬ…
しかし、訝しみが消えぬ心とは裏腹に、私の躰は緊張の糸が切れてだらしなくシートに沈んでいた。
安堵とも自嘲とも思える乾いた笑いが無意識に漏れ、アクセルペダルを踏み込んでいた右足が脱力した。










 ~ ~ ~ ~ ~









約束の地で私を待ち受けていたのは『昭和の衝撃』だった。

ナビゲーションが示す地点に「ダルマ」は在った。







『昭和』の空気満載のこのフォントはむしろ斬新にすら見える。
「本当に営業しているのか?」と思わせる薄暗さ。
そのただならぬ雰囲気に気圧され、ひとまず遠巻きに偵察することにした。







…しまった…あんな場所に機体を停めては中から丸見えではないか…
Mercedes-Benz R230 SL との戦闘で気力を使い果たし、考えが回らなかったようだ。
こんなことでは“プロの素人”失格ではないか。このミスが命取りにならなければ良いが。

しかし、外観を観察しただけでは中の様子は読み取れない。
やはり潜入するしかないのだろうか。

意を決して踏み込んだ「ダルマ」の中は、人影が無いにも関わらず騒々しかった。
周囲の壁に並んだヴィデオゲーム、スロットマシン、クレーンゲーム等が自己主張する音が重なり合った喧騒だ。







『昭和』臭著しい、荒いドットの麻雀ゲーム。“いかがわしい機能”を搭載した仕様かどうかが重要だが、確かめる気にはならなかった。







既に“使用”された形跡があったからだ。
























そして私は見つけた。

「うどん」を。









J が指示した目標はこれに違いあるまい。

恥ずかしげもなく筐体全面に『昭和』感を押し出し、あまつさえ公然と対価を要求するとはなんと傍若無人な Vending machine だろうか。
もう少し慎みというものを持ってほしいものだ。
だが今はそんな個人的な感情に惑わされているような時ではない。
これは任務だ。最優先指令だ。そして今正に私の目の前に最終目標が在る。
仕方あるまい、私とてプロフェッショナルだ。貴様の要求する対価を呉れてやろうではないか。
「べ…べつに、アンタの為じゃないんだからねっ」
…どこかで変な声が聞こえた気がした。

私は “自分の財布” を取り出して250Yen分の硬貨を探った。
なんということだ。この SHO-WA Vending machine め、領収証ボタンが無いではないか。
これでは J に経費の請求が出来ない。
さては J め、全てわかった上で私を嵌めたのか。やはりあの男は信用ならんな。






…む
10Yen足りない…







Ohhh!! Fxxk'n bitch!!
この SHO-WA Vending machine め、1000Yen Bill を don't accept だと!?
こんな融通の利かない PONKOTSU machine 今すぐ破壊してやる!!

私が衝動的に “獲物” を掴もうと、上着の下に潜ませたホルスターに右手を伸ばした瞬間、
奥の扉が開いて店員と思しき女が不安げに顔を覗かせた。
私は上着の内側に右手を入れたまま静止した。
この女、…出来る。
自信無さげの小心な使用人を装って申し訳無さそうにおずおずとしているが、冷たい視線で私の動きを縫い付けている。
それに、状況に介入したこの的確なタイミング。偶然にしては出来過ぎている。
ここは下手に動いてはいけない。女の出方を待つしかない。

「あのぅ…そちらに、両替機がありますので…」

あくまで私を “客” として扱ってまだ泳がそうという事か…
その一言だけ告げると女は扉の向こうへ消えた。
ふむ。監視されているのは明白だが、“客” 扱いされている内は安全だろう。
そう判断した私は、女が言った両替機の正面に立った。




…どう見ても『昭和のゲームセンターにある両替機』だった。




もはや監視されている事などどうでもよくなるくらい脱力した。
何かに打ちのめされた私は、もはや作業的に Vending machine に250Yenを投入し、
27秒よりは短い時間で出て来た “最終ターゲット” と対峙した。
















 蒲鉾キレテナーイ

















だが、意外に、案外、予想より美味かった。









































































この文章はフィクションです。




















 ー 解説 ー


このドライブインダルマは、その筋では「自販機の聖地」として有名。
このうどん自販機は「川鉄自販機」という物で、1970年台から稼働しており、
2015年現在、営業稼働しているのは全国でここだけだそうです。



…なーんて知った風に説明してますが、
「宮津行ってるならダルマ行っとかな」と、じょじょから言われて今回初めて知ったんですけどね(笑)。


詳しい情報はこちらをどうぞ



Posted at 2015/09/20 22:25:41 | コメント(4) | トラックバック(0) | Mr.Xからの依頼 | 日記

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何シテル?   08/05 11:23
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