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2021年09月29日 イイね!

9月の読書

9月の読書今月上旬は友人Aのコロナ騒動があったので本なんか読んでる場合じゃなく、9月は読書感想文お休みにしようかと思っていたら、
下旬に驚異のハイペースで追い込みして4冊。( ̄▽ ̄;)
(やってるスマホゲームが完全放置プレイでいける週だったという話w)



あ、普段この読書感想文に興味ない人も、
最後の『狼たちの城』の所だけは読んで頂けたら嬉しい(笑)。















 スティーナ・ジャクソン 『娘を呑んだ道』 (2018)

原題『THE SILVER ROAD』


なんでワタクシが海外小説ばっかり読むのかというと、
違う世界、違う風景、違う文化を覗き見できるからというのが大きい。
その中でもアメリカよりヨーロッパの方が好きだったりしますが、今回の1冊は特に異色で、内容云々より著者の出自と物語の舞台だけで選んだもの。

ノールランドと呼ばれるスウェーデン北部。
夏は白夜で一晩中明るく、逆に冬は1日の日照時間が短く日中でも-20℃の世界。
東のボスニア湾(1年の半分以上氷結)から内陸部へは、幹線道路がたった1本。
その道が原題になっている、通称シルヴァーロード。
(白銀の大地を貫く道だから…と思いきや、かつて内陸の鉱山から港まで銀を運んだからという由来)


3年前、スウェーデン北部の村で17歳の少女・リナが失踪した。
地元の高校で数学を教える父親のレレは、今も単独で娘の捜索を続けていた。
レレがクルマでバス停まで送り届け、その後乗る筈だったバスが到着するまでの15分間にリナは行方不明になった。もっと遅く着いていれば。送り届けた後すぐに去らなければ、と自責の念がレレを苛む。妻のアネッテは家を出た。
レレは3年間休職し毎日リナの行方を探してシルヴァーロードを往復していた。

同じ頃、村に流れ着いた母娘が居た。母親が男を変える度、娘のメイヤもあちこち転々としてきたが、これ程遠く北まで来たことは無かった。
母のシリヤは精神が不安定で、男性に依存して生きていて、娘のメイヤはそんな母の生き方を嫌悪している。初めての土地での暮らしへの不安と共に、誰かの愛情を強く求めている。

その夏、リナが失踪した国道から程近い場所でまた1人少女が消えた。



周りの人間全てを疑い、不信と怒りと焦りに囚われ、取り憑かれたように毎晩シルヴァーロードを行き来するレレ。
その中で様々な人とめぐり逢い、凍りつきかけている心が明るくも暗くも揺れ動く。
成長、とは少し違うし、同じ道をひたすら往復しているだけなのだが、ロードノヴェル的な一面もある。

一方、第二の主人公メイヤは、親への反発心と他者からの愛情に飢えている。
母と、受け入れ主の男の家を抜け出して、湖の畔で出会った男兄弟の1人に惹かれていく。
その少年カール-ヨハンの家に転がり込む形で新たな生活、新たな家族に囲まれるメイヤ。
初めて “家族” というものに接して温かさを感じる一方、自分1人の時間を取れない事に苛立ちを感じもする。
(一人っ子からの一人暮らし歴10年以上なワタクシも、この感覚はよぉーくわかるw)

メイヤの存在は、レレの娘リナの影のようなもの。
同年代のリナはどんな娘だったのだろうと、メイヤを通してリナの影絵を描くこの表現は上手いなと思う。

物語後半、レレとメイヤが出会い(レレが教師に復帰し、メイヤが転入生として入ってくる)、
家族を壊された男と家族を知らない娘は、互いの中に娘と父親を見ていく。

リナ失踪の謎解きも勿論メインではあるのだが、どちらかというとこの2人、レレとメイヤの心情描写が読み応えがある。















 R・D・ウィングフィールド 『冬のフロスト』 (1999)

原題『WINTER FROST』


シリーズ5作目。
いよいよ次がラストです。

このシリーズ、ふつーの推理小説3冊分くらいの内容を1作品に凝縮してしっちゃかめっちゃかしてるのが特徴ですが、
今回、過去最高(最悪?)にフロストのおっちゃんスランプ(笑)。
下巻の半分くらいまでいってもまだ事件1つも解決しないw
ちょっとさすがに詰め込み過ぎて最後ドタバタ無理やり纏めてきた?みたいな感じがしないでもないw

愛すべき冴えないオッサンキャラが奮闘し、空回りし、自己憐憫し、それでも強引に突っ走り、最後にはなんとか解決する。
そんな等身大の人間臭さが人気の秘密なんでしょう。

…毎回複雑&ごちゃごちゃで、2回読もうと思わないけどww

今回の “相棒” 坊やは、これまた過去最悪にスカタンな田舎者。
何をやらせても肝心な所で失敗するw
それでも言い分を聞いてできる限り尻拭いして庇ってやるフロスト。
こういう人情オヤジ的な “上司像” もイマドキ少なくなったような。















 アレックス・ベール 『狼たちの城』 (2019)

原題『Unter Wölfen』


ナチス×潜入スパイ×推理ミステリー。
やっぱりワタクシはナチスドイツものが好きなようだ。
舞台は42年春のニュルンベルク。


ユダヤ人古書店主イザーク・ルビンシュタインと家族のもとに、ポーランドへの移送の通達が届く。
彼は絶望のなか、レジスタンスに関わっているとの噂を聞いたかつての恋人クララを頼る。
一度は断られるも、クララはイザークとその家族全員の逃亡を手引きする。
しかしイザークだけ家族とは別ルートになると言われ、ドイツ人らしい風貌の髪型と服装にされ放り出された駅のホームで、渡された偽造パスポートを初めて確認したイザークは呆然とする。
そこに書かれていたのはナチス親衛隊少佐でありゲシュタポの犯罪捜査官、アドルフ・ヴァイスマンなる人物だった。
間をおかず親衛隊の若い士官が迎えに現れる。イザークは混乱と葛藤のままゲシュタポ本部へ案内され、ナチス施設内で起きた殺人事件の捜査に当たることになる。
イザークは正体がバレずに生き延びられるのか。クララの思惑は。



なりすまし潜入スパイ。
しかも、権力ピラミッドの最下層から(ほぼ)頂点への180度逆転。
最初こそ戸惑いと恐怖で萎縮していたイザークだが、生き延びる為には “ナチス的振る舞い” が重要と気付き、階級をタテに強引に押し通す “官僚的” な交渉術を身に付ける。
正に権力であり、ユダヤ人のイザークがそれを行う構図が色々と暗示的である。
細かい揚げ足を取れば色々とツッコミ所はあるものの、一気読み出来る痛快な作品。

(ただ、日本語訳版校正の問題が幾つかありイタダケナイ。
日付が重要な意味を持つ場面で当の日付が間違って表記されているし、「ラグナレク計画」を「レグナレク計画」と誤字ってるのが(発音の違いだけの問題で意味は通るから良いのだが)同じ間違い方が複数箇所あるから敢えて意図的にミスリードさせるためのトリックなのかと思った。
一昔前までの本はこういうミスは1作に1ヶ所有るか無いかくらいだったのに、最近の刊行本では増えているように感じる。
また、元のドイツ語がそういう癖なのか、訳者の手際なのかわからないが、指示語が誰を指しているのか分かりにくい箇所もちらほら有り)



ニュルンベルクが在るバイエルン州フランケン地方の大管区長官はユダヤ人排斥に特に熱心な人物で、バイエルン州はユダヤ人にとってこの世の地獄と言われた。
ナチスNo.3 ラインハルト・ハイドリヒによる “ユダヤ人問題の最終解決” が呈示・発動されてから2ヶ月後。
全ドイツの中でも先駆けてユダヤ人移送が始まった地である。
本作はフィクションであるが、時代背景や施設、時勢の出来事等は史実に忠実である。
本作の舞台は42年3月、その3ヶ月後の6月に当のハイドリヒはプラハで暗殺される。(『HHhH』参照)
こういった縦横の繋がりがわかってくると歴史モノは俄然面白い。


(最近、国内のサブカルコミックを中心にこういう「異世界に行ったら○○だった」的な、所謂 “チート(ゲーム用語で、不正なデータ改造を行ってゲームを有利に進めること。ニューゲーム直後に最強状態等)” モノが流行っているような気がしますが、そういうのがウケるという事は、潜在的劣等感の蔓延という社会的側面があるのだろうと思うし、コロナ禍も少なからず影響しているんでないかとも思う)

もうひとつついでに言えば、
このナチス→ユダヤの弾圧、市民間での密告等の構図が、今のコロナワクチン騒動と重なるように感じる。
ワクチン否定派がユダヤのように扱われる。問題の本質から一人歩きし、世論・風潮に流されている点も同じ。
ワクチンパスポートや飲食店の認定シールは逆ダビデの星。安倍~菅長期独裁政権が遺したモノとして象徴的だわね。






Posted at 2021/09/29 20:00:16 | コメント(0) | トラックバック(0) | 活字部 | 日記
2021年08月30日 イイね!

8月の読書

8月の読書お盆の間1週間、本に触れてなかったんで今月は2冊だけ。( ̄▽ ̄;)

いい加減今シーズンはちゃんとサーキット走れるようにしたいけど、その為にはそろそろメンテし始めないと…
いけないのだが…( ̄  ̄;)…
おきゃね無いw どうしたもんかw










 セバスチャン・フィツェック 『乗客ナンバー23の消失』 (2014)

原題『PASSAGIER 23』


これは面白い!(・∀・)
クルーズ船という閉鎖空間で人が消える、というだけならよくあるパターンの話と思いきや、
この作品はそこから話が二層三層掘り下げられてひっくり返って「そーきたか」的な。

序盤で感じるほど陰惨な話ではなく、むしろ終わってみたら爽快…とまではいかなくとも、スッキリとポジティブな気持ちで本を畳める。


警察官のマルティン・シュヴァルツは、5年前に妻と息子をクルーズ船のツアー中の事故で亡くした。
それ以来自暴自棄になり、勤務態度は不真面目ながら、危険な囮捜査にも抵抗なく参加するという点で重宝されていた。
そんな捜査中に、クルーズ船に住んでいるという老婆から「貴方の息子の遺品を見つけた」との電話を受け、不審に思いながらも捜査を放り出して船に向かう。

5年前の事件の裁判で衝突した船長の姿を見つけて殴りかかるマルティン。しかし船長は「今それどころではない。乗客23号が乗船している」と言う。
乗客23号とは、航海中に行方不明になる者を指す隠語だが、2ヶ月前に行方不明になった少女が今になって見つかったのだという。少女は重度の心的外傷を負って何も喋らないという。
心理学の博士号を持つマルティンは、事態を隠蔽したい船の所有者から少女が今までどこで何をしていたのか調べるのに協力して欲しいと言われる。
そんな時に更に別の “乗客23号” が発生したとの報が入る。

妻と息子を呑み込んだ船の中で、マルティンは5年前と、2ヶ月前と、現在の3つの事件の真相を探る。



とまぁ、なかなか複雑なプロットなんですが、
そこまでのややこしさを感じさせずサクサク読ませてくれるのが上手い。
こういう密室系スリラー?ミステリ?だと、当然「犯人は誰だろう、どれがトリックのヒントだろう」とか思いながら読むワケですが、
本作はそれを更に先回りして、先入観をガッチリ作り上げてから裏をかいてきたり、2回3回のひっくり返しもあり、
なかなかすんなり予想できる人は居ないんじゃないかなと。

被害者が復讐する側に立場が逆転し、それでいてスッキリさせてくるという、なかなか出来そうで出来ない絶妙なバランス。
黒幕が最後に義理人情を見せる辺りもニヤリ。















 スティーヴン・L・トンプスン 『A-10奪還チーム 出動せよ』 (1980)

原題『RECOVERY』


みんカラ的に面白い!(・∀・)


時は1982年。冷戦下のドイツ。
二次大戦終結後、米ソの間で秘密協定が結ばれ、アメリカ軍・ソ連軍双方が、それぞれ相手側の支配地域内に軍事連絡部を設置していた。
アメリカは東ドイツ領内に、ソ連は西ドイツ領内に “部隊” を置き、しかも基本的に行動の自由が認められていたという。
(これは著者のフィクションではなく事実らしい)

一方の行動を妨害したり文句をつけると、全く同じ事が自分の側にもブーメランで返ってくる為、余程の軍事的政治的事情が絡まない限り積極的な干渉はしない、いわゆる “紳士協定” 。
とはいえ、お互いに相手領内で情報収集活動をしているのは公然の秘密なので、車両を発見された場合はそれなりに追跡は受ける。が、あくまで “事を荒立てない” 範囲。衝突や発砲はご法度。相手が軍事連絡部内に逃げ込んだ時点でゲームオーバー。

(…というのが “史実” も含めた基本情報。
恐らくは以下がフィクションの部分)

そして、この軍事連絡部の役目には情報収集や大使館のようなものに加え、
相手領内に不時着・撃墜された航空機から、味方の乗員や機密装備を敵の手に落ちる前に回収する、というものもあった。
さすがにこれに関しては双方全力で実力行使に踏み切る。
その為に軍事連絡部が使用する車両は高度にチューンアップされたモンスターマシンばかりで、配属されたメンバーもクルマの運転や整備に明るい者ばかり。


…と、なかなか事前説明が長くなりましたが…
邦題だとA-10というタイトルに引っ張られて紛らわしいんですが、
これは迫真、白熱のカーチェイス小説です。(・∀・)
ちなみに、著者は元レーシングドライバー。


主人公側アメリカの車両は
フォード・フェアモント
…と言われてもピンと来ないんですがw





こんなクルマ。
アメ車としてはコンパクトな部類で、パワートレーンは2.3ターボ、3.3直6、4.2V8の3種類?
決してスポーツカーではない。どちらかといえばファミリー向けのお手軽車。に、とりあえずV8も積みましたよ?的なヤツ?
作中ではエンジンを5.0に載せ換えてターボ化し、レーシングパーツ山盛りでカリカリにチューニングしてブースト1.0で500馬力という。
絶対アシが負けて乗りにくいやろ…w( ̄▽ ̄;)


対する東ドイツ警察側は
BMW・2002の群れとメルセデス・450SEL





作中の2002は、エンジンに関する言及が無く(&役回り的に)ターボではなくNAと思われる。

一方450SELはボスキャラ的なポジション。
型式で言うとW116、初代Sクラスですね。
4.5リッターの方なのか6.9リッターの方なのか、作中では特定できないんですが、6.9の方は(シトロエンの)ハイドロサスらしいのでハードなカーチェイスとなると4.5の方?


あと、雑魚というか端役で、ソ連兵の乗るラーダと、東ドイツの自警団が乗るヴァルトブルグなるクルマも出てきます。
ラーダは年式が絞れなかったけどたぶんコレ。↓青い方





ヴァルトブルグ? ナニソレ( ゚д゚)ポカーン…だったので調べましたら…
“高級ファミリーカー” というなんともニッチなwコンセプトの、東ドイツの小規模メーカー。当然、今は御座いません…
作中に出てるのは恐らく年式的に↑の写真の「353」というモデルなんですが、これのどこに高級要素があるんだ…w
…と思ったら、先代の311というのを見たら納得。
カルマンギアに通ずる流麗なデザインでカッチョイイ!
それがいきなりこんな弁当箱みたいな形になるなんていかにも東っぽい←
こういうマニアックなクルマを登場させてくるあたり、さすが元レーサー。


まー、魔改造フェアモント vs 450SEL というと、
現代的に解釈すると 「マスタングのエンジン積んでターボ化したフォーカス vs S63AMG (orマイバッハ)」ってなもんかしら?
実際はベンツとのガチンコではなく、色んな相手が入れ替わり立ち替わり出てくるので飽きません。
し、ヘリにも追われますw




Posted at 2021/08/30 22:00:26 | コメント(0) | トラックバック(0) | 活字部 | 日記
2021年07月29日 イイね!

7月の読書

7月の読書さーて…
過去一盛り上がらないオリンピック。



…と、言いつつ
開幕前は散々叩いていたメディア関係も
始まってしまえばふつーに五輪報道一色。
そーいうとこやで。



しかし、このオッサンのこの芸風は
有りか無しかで言ったら有りw








泣きの野々村君もこのメンタル見倣ってユーチューバーなったら良いのにw















 セシル・スコット・フォレスター 『駆逐艦 キーリング』 (1955)

原題『The Good Shepherd』


二次大戦中期、大西洋でのアメリカからイギリスへの物資輸送船団を護衛する連合艦隊(とUボートの戦い)のお話。
37隻の輸送船団を、たった4隻の軍艦(駆逐艦2、コルヴェット2)で護衛するという無茶な話だが、
当時は実際そのレベルのケースが珍しくなかったらしい…

アメリカ本土とイギリス本土からの航空機が届く範囲は航空支援が受けられ、ドイツの潜水艦も大人しいが、
大西洋の中央部は、当時(作中の設定は42年3月?)はUボートの独壇場。
まだアメリカが参戦して間もなく連合軍の戦力も整っていない時期、
作中の護衛艦隊の4隻も、アメリカ・カナダ・イギリス・ポーランドと寄せ集めの艦隊。

これを足の遅い商船に合わせてゆっくり東進すると、
航空支援空白地帯を抜けるのに丸2日掛かると。
本作はその約48時間の間のお話。
原題は『良い羊飼い』。
商船船団を羊の群れに喩え、作中でも「群れからはぐれた羊の世話をしろ」というシーンがある。


駆逐艦、というのは元は「水雷挺(魚雷攻撃を仕掛ける小型船)を駆逐する艦」として、対艦船用の魚雷も積んでいるが、
実質的には対潜の爆雷攻撃を行う船
軍艦の中では一番小型で機動力に優れる。

海の単位として、1海里=約1.8km。1ノット=時速1海里。
なので、10ノットは約18km/h。
作中の駆逐艦キーリングの最大戦速は24ノット(約43km/h)。
原速(一番燃料効率の良い速度?)で12ノット前後。
商船は “急ぎ足” で12ノット程。原速となると7~8ノット。
対し、Uボートの洋上最大戦速が12ノット、潜航中は6ノット。(つまり、潜水艦は潜っていると船団を追えない)
駆逐艦が如何に機動力に優れた船舶かという比較。

だからといって、駆逐艦vs潜水艦の戦闘が駆逐艦有利かというとそうでもなく。
確かに攻撃の手数は駆逐艦の方が多いのだが、
ソナーという機器の特性上、潜水艦の位置がわかってもそれは数秒前の位置であり、そこから爆雷を投下し、爆雷が沈下し爆発するまでのタイムラグを含めると、その間に潜水艦が動き得る範囲はかなり広い。しかも爆雷で掻き乱された水が落ち着くまで次のソナーは打てない。
「引き金を引く2秒前から、撃った30秒後まで目を閉じて鳥撃ちをしているようなもの」とは上手い喩えだなと。


一つ面白いなと思ったのが、
駆逐艦が旋回を終える時にほぼ必ず「当て舵」というのを切る。
例えば「面舵、取舵に当て」という。
これは旋回で傾いた船の姿勢を修正する為に、一回逆に舵を切る事。
カウンターステアやん(・∀・)w


ちなみに、史実では、この作品の舞台から1年後くらいから
船団護衛に小型空母が随伴し、空の死角が無くなった事で、Uボートの活動は下火になっていった。そうです。
















 ピーター・ワッツ 『6600万年の革命』 (2018)

原題『The Freeze-Frame Revolution』


地球を出発して6500万年。もはや故郷の存続も定かではないまま、ワームホール構築船〈エリオフォラ〉は任務を続けていた。
小惑星を改造し、通常運航は全てAIによって管理され、3万人の乗員は、単純な論理的推論では解決できない問題が発生した時だけ冷凍睡眠から覚醒させられる。
AIは勝手にシンギュラリティ(被創造物が自己進化して創造主を超える時点)を迎えて計画を歪める事がないように、“ほどほどのスペック” に設計されていた。
乗員もまた、任務から逸脱しないように遺伝子改編と教育が施されていたが、
気が遠くなる程の長大な時間が経過し地球との連絡が途絶え、自分達の使命に疑問が浮かびはじめていた。



時々定期的にガチのSFが読みたくなるルーチン(笑)。

宇宙船(孤立した環境下)で運航AIと乗員の対立…
というと真っ先に浮かぶのが『2001年』のHAL9000。

しかし、このお話では主人公サンディとAI “チンプ” との間には一種の親近感が芽生えており、両者の関係は良好である。
というのも、仲間に叛乱を持ち掛けられたサンディは「銃と戦うのではなく、銃を持った人間と戦わなければならない」という喩えで、
AIそのものではなく、AIを作った存在の裏をかかなければならないと説く。
その “存在” というのが、6500万年前にプログラミングした技術者達なのか、6500万年を経て進化した “元人類” の超越存在なのか。
読了してもイマイチその辺が見えてこなかったけど、
著者は本作と同一の世界観で他にも短編を幾つか出しているので、それも読んだら全体像が掴めそうな気はする。

あくまで “中編” と著者が言い切るサイズであり、
同世界観のシリーズの一エピソードということもあり、
ぶっちゃけ よくわからんw(・∀・)
最後に出てくる “超人類” みたいなのの正体が気になるけど、他の作品なぁ…w















 コルソン・ホワイトヘッド 『地下鉄道』 (2016)


19世紀、アメリカ。
南部の農園で過酷な生活を送る奴隷の少女コーラは、新入りの少年シーザーから奴隷を逃がす “地下鉄道” の話を聞き、共に逃亡を決意する。
冷酷な奴隷狩り人リッジウェイに追われながらも、コーラは地下鉄道に乗り、さまざまな州を渡り、人に助けられ、また裏切られながら、自由が待つという北を目指す。



奴隷制を巡る対立からアメリカが南北戦争に突入し、北軍の勝利→奴隷制撤廃に至るのが1860年代。
作中の時代設定は1830年代。南部の奴隷制が全盛期の時代。

“地下鉄道” という言葉は当時実際に使われていた暗号だが、
(先月読んだカッスラーの『大破壊』から逆算すればわかるように)当時はまだ地上の鉄道が開発され始めた初期の時代。
本作の “地下を走る鉄道” は100%フィクション。
(だいたい、そんなひたすら地下を走り続ける線路に蒸気機関車なんか走らせるには、超高性能・超大規模な換気装置が要るぞw)
だが、このテーマに対してはある程度のフィクション性を取り入れた方が確かに分かりやすく、象徴的表現としても良い効果を出している。

コーラが渡っていく各州もおそらく実際よりもデフォルメされて描かれていると思われ、
こっちの州では黒人擁護が進んでいるが、隣の州では徹底的な弾圧があり、はたまた別の州では自由黒人による避難所が運営されている、等、
“地下鉄道” という船に乗り、新しい島へ渡る度に全く違う世界があり、それぞれの問題に直面する、ガリバー旅行記的な演出。

“敵” として描かれる奴隷狩り人リッジウェイも、
冷酷というよりはプロフェッショナルであるだけで、彼自身も時代の矛盾を内包した存在として、非常に人間臭く憎み切れない良いキャラクター。
リッジウェイが相棒として連れている黒人の少年も、シルクハットに燕尾服というルックスと芝居掛かった不気味な言動とでこれまた良い味を出している。

一見ユートピアに見えた世界が、実は裏で形を変えた鎖に繋いでいただけのディストピアであったり、
徹底した黒人弾圧を行う白人コミュニティの内幕は、恐怖で支配された監視社会で、言わば白人が白人に飼われているとも言える世界であったり、
自由黒人と逃亡奴隷が集う避難所の農園でも、“黒人” と一括りに言っても全てルーツの違うアフリカ人種の集合体であり、決して一枚岩では有り得ず対立や思想の違いが表面化する。


アメリカという国が出来た時から抱え、現在も、この先も永遠に続くであろう “人種問題” “人種差別” 。
本作は18世紀のファンタジーではなく、今も未来にもそれを投げ掛け続ける為の小説だと思う。
(ちなみにこの時の日本は江戸時代末期で、まだ黒船も来ていない)




Posted at 2021/07/29 21:00:28 | コメント(1) | トラックバック(0) | 活字部 | 日記
2021年06月28日 イイね!

6月の読書

6月の読書こないだの週末、久しぶりにヌメダの服屋へ行きまして。
GW前からろくに営業してなかったので2ヶ月近く振りで。

店が開いてない間にも新商品は出てるわけで、
(都市部は某宣言のアレで閉まってるけど、営業してる店舗もどっかにあったわけで)
営業再開した途端Sale期間突入という、「定価って何…原価って何…( ゚д゚)」状態。

まぁソンナコンナデ、久々に行ったら見たことない新商品がいっぱい。
しかも大抵の物が3割~5割引きとくりゃ、
気が付いたら爆買い勃発w
5着買って、うち4つがSale品にも関わらず、5万Yen近く逝ってもーてた(爆)







経済効果 経済効果( ̄▽ ̄;)















 クライブ・カッスラー 『大追跡』 (2007)

原題『THE CHASE』


3年前に読んだカッスラーのノスタルジックシリーズ1作目。
2作目を古本屋で見つけたので再読。

カッスラーはメカギミックが大好きで、ともすればそれに凝りすぎて “やり過ぎ感” があるのだが(現代ベースの作品を読んでやはりそう思った)、
20世紀初頭を舞台にするこのシリーズでは、最先端の技術は蒸気機関車や自動車、バイク、電信等。
宇宙ロケットを船の上に落とす等という無茶なネタはやりようがないw
今の我々からしたら牧歌的なローテクの世界なので、幾らやり過ぎ破天荒なカッスラーといえどやれることは知れている(笑)。
これが結果的にちょうどいい案配になってると思うのですわ。

それでも、再読して前は気付かなかったツッコミどころが…
作中でサンフランシスコ大地震があり、街は焼け野原、ケーブルカーの線路が蛇のようにヒン曲がり…みたいな描写がありながら、
その直後、蒸気機関車同士のカー(?)チェイス勃発。
その線路は大丈夫なんかいwww

あとねー…
これは日本語訳の校正の問題やけど、誤字多い。
1作品で4~5箇所ってのは出版社としてどーなの。(¬_¬)










 クライブ・カッスラー 『大破壊』 (2009)

原題『THE WRECKER』


というわけで↑の続編。
1作目以上に鉄道を前面に押し出した作品。

ボストンの大銀行の御曹司でありながら、父へのわだかまりから家を出て、〈ヴァン・ドーン〉という全米規模の探偵社に籍を置くアイザック・ベル。
前作では凶悪な銀行強盗を追い詰めた彼が、今回はサザン・パシフィック鉄道に対して執拗な破壊工作を仕掛ける “壊し屋” と対決。
前作では西海岸から中部までが舞台だったが、今回は東海岸ニューヨークまで活動範囲を広げ、広大なスケールで繰り広げられる捜査活動。
その大陸横断に掛かる時間は、“貸切列車を手配し(単線区間の優先通行権を得る)、最速の機関車でリレーして4日半” という。

“壊し屋” は、トンネル工事現場の崩落工作から、急行列車の脱線工作、電信線を傍受して偽の電信を送り単線区間で正面衝突させる、枕木にダイナマイトを埋め込む、橋脚工事の上流にダムを作って決壊させる、等々、ありとあらゆる破壊工作を仕掛けるが、その狙いは何なのか。
脅迫で金銭を要求するでもなく、他の鉄道会社には目もくれず、ただひたすらサザン・パシフィックに損害を与え続ける。


この時代(20世紀初頭)にアメリカ大陸を縦横無尽に駆け回りどうのこうのするというのは、ぶっちゃけ “金持ち” でないとできませぬ。
前作でもそうだし、たぶんこのシリーズは全てそうだと思うけど、敵も味方も基本、“一握りの特権階級” の人間達です。
主人公アイザックが「大銀行の御曹司」という設定なのも、それくらいの金持ちでないとこのスケールの物語は動かせないというアレ。
そういう意味で、やはり良くも悪くも “カッスラー節全開の大冒険活劇” に変わりはない。
いつも通りの安心品質という意味でもありますけどね(笑)。
Posted at 2021/06/28 21:00:15 | コメント(1) | トラックバック(0) | 活字部 | 日記
2021年05月31日 イイね!

5月の読書

5月の読書相変わらずクルマの調子がよろしくないっす。(・ε・` )
どっかのセンサーがアレでブースト不調 “になる時がある” 。
常にじゃないから始末が悪いw
診断機繋いで調べても「燃調リッチ」なのはわかっとるわぃw
何が何処が原因でリッチになってるか知りたいんじゃいw

マジで維持費捻出の為に激安の軽買ってきて日常使いはそっちにしようかとか思い始めた(遅いw)。














 アンドレアス・グルーバー 『夏を殺す少女』 (2009)

原題『RACHESOMMER』


5年前に初読した時はエラい感激して太鼓判を押した覚えがあるんですが、
今再読してみたら…それほどでも…?( ̄▽ ̄;)(笑)
まー、5年の間にそーとー色々読んできたので、こっちの舌(?)が肥えて評価がシビアになってきたのか、
トリックが分かっているからストーリーを追うよりも細かい部分に気がいって粗探しをしてしまうのか、皮肉なモンだなぁと思った。

んで、なぜ再読したかというと、
コレの続編を読もうと思ったので復習で。

組織的な児童性的虐待の問題と、その被害者はそれを生き延びたとしても精神的に深刻な後遺症を残す。
本作のメインテーマはそれをスリリングに、被害者の復讐という切り口でカタルシスを与える一方、狩られる側(元加害者)の報復行為で、読者の心にスッキリしない爪痕を残す。

続編は、メインキャストとなる2人の捜査関係者がそのまま登場。
どんなシナリオなのか事前情報無しでいきなり読んでみるので楽しみ。









 アンドレアス・グルーバー 『刺青の殺人者』 (2015)

原題『RACHEHERBEST』


というわけで、続編。
といっても、メインの登場人物数名が引き継がれるだけで
扱われる事件は完全新規なのでこれから読んでも問題なし。


ライプツィヒの池で、若い女性の他殺死体が見つかった。
全身の骨を折られ、血を抜かれ、手足の指を接着剤で固められていた。
身元を確認した母ミカエラは、犯人と、殺された姉と一緒に家出した妹娘の行方を捜そうとする。
事件を担当する上級警部ヴァルターは、ミカエラの行動に手を焼きつつ捜査を進める。
一方、ウィーンの弁護士エヴェリーンは、当該事件の女性殺害嫌疑をかけられた医師の弁護依頼を受ける。



原題は『復讐の秋』。
この “復讐” テーマが前作はハッキリ鮮やかに出ていたけど、
今回はちょっとわかりにくい。

ヴァルターとエヴェリーン2人のメインキャラが軸になるも、本作は更に3人目、被害者の母ミカエラが中心になって話が進む。
DVの夫に虐げられ、そこから逃げ出した2人の娘。
娘を殺した犯人を追おうとするミカエラに、そんなことは良いから働いて俺に金を持ってこいという夫。
もはや我慢ならず、夫の下を去る決意をするミカエラ。

まずここで一つの復讐。DV夫への復讐。
そして、大きな流れとしては娘を殺した犯人への復讐。
また犯人の側にも、他人からは理解し難いものではあるが、他者への復讐心が犯行の動機となっている。
そして後半ではエヴェリーンも個人的な復讐の為に粉骨砕身する。

正直、ストーリーの切れ味は前作の方が上。
いくつか細かい謎が放ったらかしなのも気になる。
犯人が信奉する存在としてアレイスター・クロウリーの名が出てきた所は思わずニヤリしたけどw














 スタニスワフ・レム 『ソラリス』 (1961)


再読。
なんですが、読んだのはこの読書感想文シリーズをやり始める前だったようで、ログを遡っても見当たらず。

SFファンでこれ読んでなかったらモグリってくらいの有名作。
ですが、ちょっと難解でとっつきにくく、SF要素もかなりハードな部類。
映画化されてはいるけど、それはそれで原作とかなりズレた解釈だからオススメできない。という難儀なシロモノw


“惑星ソラリス” は地球から遥か遠く、赤と青2つの太陽を持ち、ほぼ全域を海に覆われた星。
長年の研究により、この “海” が実は一つの有機体である事がわかっていた。
星を丸ごと覆い尽くす、ゼリー状の “モノ” 。
しかし、何十年にも渡る研究にも関わらず、“海” とコンタクトは不可能なままだった。

研究所を兼ねるステーションに地球からの補充要員としてやってきたケルヴィン。
彼が到着した時、ステーションの中は無人の廃墟かと思うような荒れ方だった。
先任者と接触するが、ケルヴィンの師でもあったギバリャン博士が半日ほど前に自殺したという。
そう告げたスナウトという男はケルヴィンに奇妙な警告をする。
現在、ステーション内のスタッフはケルヴィンを含めて3名のみ。
3人目のサルトリウスという男もケルヴィンは写真で見て知っているので見ればわかるだろう。

「もしも、別の誰かを見掛けたら…、その時は何もするな。冷静さを保つことだ、どんなことがあっても取り乱すな。そんなことが出来るわけないとはわかっている。でも試みるんだ。それが唯一の助言だ。これ以外は何も言えない」



と、ホラーサスペンスのような始まり方をする本作。
実際、初めて読んだ時の序盤のホラー感は凄かった。
“別の誰か” が初登場するシーンは、なんとも言えない不気味さ。
そして、2日目にはケルヴィンにも “お客さん” がやってくる。


しかし、ちょっとネタバレすると、
この “お客さん” (作中のスナウトの言葉)は、
“海” が、ケルヴィン達人間の脳を読んで、その中の “最も強い記憶イメージの人物” を再現して作り出した存在。
ケルヴィンの前に現れたのは、死別した恋人ハリー。(に酷似した存在)


件の映画版は、このハリーとのラブストーリー染みた内容になっているそうですが、
この物語はそんな陳腐なものではない。
ありふれたファーストコンタクトモノと違い、“海” とのコンタクトも成立しないまま。
やはりメインテーマは哲学的なアイデンティティの問い掛け。
何を求め、何をして、何の為に生きるのか。
そこに他者の存在が在るのか否か。

…ワタクシがソラリスに行ったら、
目の前に現れるのは誰なんだろうねー。




Posted at 2021/05/31 10:00:46 | コメント(1) | トラックバック(0) | 活字部 | 日記

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