
「潰れるまで乗る」とか「いずれエンジン載せ換える」とか、
別に理想の話とか、ロマンの話として言ってる訳では無いんですが、
かなり現実的に色々考えさせられる事態がすぐ身近で発生しておりまして、
なかなか実際シビアな話だよなぁ…と真顔になっております。
んま…その話は後日改めてしようと思います。
むーん(・ε・` )
ビル・シャット & J・R・フィンチ 『地獄の門』 (2016)
ナチス・日本軍・ロケット爆撃機・731部隊・伊400潜水艦・アマゾンの奥地・霧に包まれた秘密基地・チュパカブラ。
もー、厨二病臭しかしないB級映画全開のキーワードw
古本だったのでネタとして笑いながら買いました。
が。
読んでみたら、時代考証や事実の裏付けがめちゃくちゃしっかりしていて、恐れ入りました。
実在人物や史実、科学的データをカキ集めた所に遊び心を混ぜ合わせて、抜群の “歴史のif” を作り上げ、且つエンターテインメント性も際立っている。
そして、史実・事実を使って組み上げるということは、ちゃんとそのあとの史実に繋げなくてはいけない。
(宇宙世紀ガンダムシリーズは正にこの難しさと面白さで成り立っているw)
ここの手腕も見事だなと思う。
小道具として使われる “事実” は、戦争のみならず文化面、社会面にも多岐に渡り、
WW2中のアメリカ国内で、ドイツ系の養父母から養子を引き離す誘拐が国家主導で行われた事や、
複数の大学がユダヤ人学生の学位の格下げや剥奪、入学規制を行った事など、
あまり知られていない黒い歴史をしっかりと扱っている辺り、派手なパッケージに反して意外と丁寧に緻密に練られた作品と思う。
また動物学の知識も存分に活かされ、メインテーマとなる吸血コウモリの生態は勿論、絶滅した動物が “実はアマゾンの奥地で生存していたら” の if も見せてくれる。
とは言っても、キャッチーなアイコンを多用した盛りだくさんドタバタ展開で、やはりB級映画感は否めないがww
インディ・ジョーンズとかが好きな人にオススメ。
ダグラス・リーマン 『キール港の白い大砲』 (1989)
原題『The White Guns』
“大砲” だったらgunじゃなくてcanonじゃねーの?w
第二次大戦を船乗りとして生き抜いた著者は、海における第二次大戦の様々な戦いを多くの著作で描いてきたそうですが、
<本作は “終戦” にスポットを当てた集大成。
いわゆる “戦争もの小説” としても珍しい切り口と思って手に取りました。
ナチスドイツが崩壊し、降伏文書が調印された1945年5月。
英国海軍のマリアット大尉が指揮するガンボート〈801〉は敵地キールに入港した。
つい昨日まで、情け容赦ない敵に立ち向かい、仲間の船が沈められていくのを目の当たりにし、多くの仲間が勇気の代償を支払うのを見送ってきたが、
未だ黒煙たなびく港で彼らを待ち受けていたのは、憎むべき敵ではなく、戦いに疲れた人々の姿だった。
最恐の敵Uボートを次々と送り出してきた軍港キールは、破壊し尽くされ、瓦礫と破船の山の死の世界。
そこで目にしたナチスドイツの敵兵達は、階級章も記章も剥がされた軍服姿の疲れきった男達だった。
そんな “昨日の敵” を働き手として雇い、緊張と疑心暗鬼の中で占領軍の任務が始まる。
ソ連領からの難民船、機雷の除去、沈船の引き揚げ、毒ガスの海上処理、犯罪者の処刑、ドイツ市民への食料援助、闇市の摘発、潜伏SS将校の捜索…
戦争は終わったのに、まだ戦争は続いている。戦争の余波で更に命が失われていく。
『戦争が終わったら勝者も敗者もいない、いるのはただ “生存者” だけだ』
英国海軍と元ドイツ兵、敵も味方も男も女も、一緒に戦争の後始末をするうちに、更にその傷を深める者もいれば、人々を食いものにして甘い蜜を啜ろうとする者もいる。
しかし、やがて敵味方の垣根を越えて理解が生まれ、友情が育ち、そして愛が芽生える。
この作家、上手い。
それぞれのエピソードが個別に展開していくようで、大きく一つの流れに繋がっていき、縦糸横糸が綺麗にギュッと組み合う感覚。
〈801〉を中心とした船の任務で水兵の日々が存分に語られる前半が、閉鎖的環境の “内なる仲間” の話なのに対し、
〈801〉が退役し、乗員それぞれがバラバラに地上勤務になる後半は “外への巣立ち” 。
巣を無くした鳥達はそれぞれの生き方を模索するが、そこで明暗分かれるドラマ性が見所。
そして、個人的にこの著者の作風で気に入ったのが “無駄に語らない” ところ。
ある程度、読者に想像させて補わせる部分がある。
いちいち全部説明されるより、こちらの方が好きだ。
ドンパチ派手な戦争スペクタクルよりも、リアルで丁寧で
じっくり沁みる感動大作。
最後に出てくる「白い大砲」が意味するものも、なるほど見事な描写だなと思う。
こういう作品こそ映画化してほしい。
Red13指定 必読図書
R・D・ウィングフィールド 『フロスト日和』 (1987)
原題『A TOUCH OF FROST』
シリーズ第2弾。安定の面白さ。
相変わらずのだらしなさ、行き当たりばったり、思いつき行動、面倒くさがり、下品な冗談ばかりだが、義理人情はまぁまぁ大事にする、デントン署の問題児フロスト警部。
前作以上の “同時多発” で襲い掛かる難事件の数々に、今回は更に人員不足という背景もあって、益々カオスな捜査活動を強いられる。
堅物のエリート署長の説教をのらりくらりと受け流し、ロンドンから左遷された素行不良の若手巡査を相棒に従え、顔見知りの街の小悪党から情報を仕入れ、独自の推理で真相を追う。
まぁ、こんなにいい加減な主人公の警察小説も珍しい(笑)。
前も言ったけど、両津勘吉的な雰囲気。
フロストも両津と同じく、上司からの覚えは悪いが部下・同僚からは案外評判が良い。
組織の一員でありながら、規則・規律などどこ吹く風。
自由きまま勝手に生きる姿は、現代社会の閉塞感へのアンチテーゼ的オアシスであるかもしれない。
常識に囚われない、型に嵌まらない事の大切さ(善かれ悪しかれ両面はあれど)を示してくれる “愛すべきオッサン” である。
Posted at 2020/02/29 15:15:17 | |
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