月末恒例の読書感想文でござい〜(・∀・)
このBGMは、最後に紹介する作品のイメージ。
ジェイムズ・P・ホーガン 『未来からのホットライン』 (1980)
「60秒過去の自分へ、6文字までのメッセージを送るプログラム」
…なるほど、これが『
シュタインズ・ゲート』の元ネタですかww
先月の『プロテウス・オペレーション』に続き、同じくホーガンの時間SF。
でもこっちの方が『プロテウス』より前の作品。
『プロテウス』のタイムパラドックスは、
“多元宇宙”という無限の枝分かれ世界で、
イメージとしては電車の線路。のポイントですね。
過去(ポイント)を変えても、元の未来(レール)は元のまま存在し、自分が進む線路が変わるだけ。
そのポイントの選択は常に起こっていて、宇宙は“可能性”(というポイント)の数だけ膨大な広がりを見せ、全てが独立した世界である。という考え方でした。
↓イメージ
YYYY
YYY
YY
Y
対してこの『未来からのホットライン』でのタイムパラドックスは
“直列宇宙”をベースにしています。
(厳密には完全な直列解釈でもないのですが)
こっちはいわば、テープの巻き戻し。
録音したモノが気に入らなかったら、ある時点まで戻って録音し直す。
当然、その前に録音されていた内容は消え去る。
という概念の上で展開される物語。
……というより、
一冊丸ごと“思考実験”してるような感覚でした。
途中、読み進んできた2〜300頁分の物語が
巻き戻されて“無かった事になる”のは、なかなかショックです(笑)。
この物語のテーマは、“バタフライ・エフェクト”なのかな?
些細な選択・行動の違いが、後に重大な結果を左右する、という。
とはいえ、“巻き戻せない現実”に生きている我々には、結局それを知覚することはできないわけで。
これぞ
Science Fictionの醍醐味であらんか。(・∀・)
ジェイムズ・P・ホーガン 『内なる宇宙』 (1991)
8月に読んだ『星を継ぐもの』シリーズの4作目です。
3部作+1 的な、当初の構想には無かった作品という事で、
正直、過去3作から比べるとワクワク感が少し落ちるかな?
話の山場での「なるほど!そうきたか!」感が薄かった(笑)。
あ、でも、心理描写は一番よくできてるかも?
続編だけど、なんとなく外伝的な感覚。
物語的には3作目の『巨人たちの星』の後日談というか、もう一つ突っ込んだ所。
現実世界とのリンクとしては、“神話はどこから来たか”みたいな。
んー、でも
“現実と区別のつかない超リアルな仮想空間を脳に直接感じさせる”というモノを「仮想」だと認識できるのか?とか、
その仮想空間=理想の世界に逃げ込み、現実を生きる逞しさを失い主体性も自主性も無くなった人々、が
指導者の思いのままの駒になる、
というのは、…あながち今の世の中に通じるんじゃないかと思ったり。
個人情報をツイッターで公開するovacaな方々を見るとねぇ。
ケアリー・ボールドウィン 『ある男 ダンテの告白』 (2014)
「連続殺人犯は僕なんだ」
心を病んだ青年から精神科医への告白 それは真実か、妄想か。
…という帯の文句からイメージすると、謎解きサスペンスかと思いきや、
読者には真犯人が別に居る事が早い段階からわかります。
また一方、“真犯人”も精神的に不安定で、とあるキッカケでの過去のフラッシュバックにより
殺人犯なのに“血液恐怖症”に陥る、というギャグみたいな流れ。
でもこれ、著者は心理学と薬学の博士号という“専門家”で、
症状のディティールがしっかり書き込まれているのでウンウンとなる。
正直、帯の文句と著者のプロフィール見てそれだけで「ハズレではないだろ」と買った本(笑)。
コレが予想以上に「ハズレではなかった」(笑)。
専門家が書いた文章だと、ディティールに迫りすぎて物語性が損なわれる、ってパターンもありますが、
これはむしろ物語の作りが良い。
構成力というのかな、エンターテインメント性をよく考えてあるという印象。
潔癖性や被害妄想等の症状の描写でリアリティを深め、病んだ殺人犯の狂気や、アクションシーン、男女の色気(エロ)話も入り、最後に待っているどんでん返し!
物語としての完成度が高い。(・∀・)
あと、個人的に密かにポイント高かったのが、
主人公の移動手段として「トライアンフ・スピットファイア」が出てくる点(笑)。
コレは、あんまり本読んだ事ない人でも読み易いし、入っていき易いと思う。
ヨアキム・サンデル 『スパイは泳ぎつづける』 (2013)
「気をつけろ、おまえを見張っている連中がいる」
という旧友からのメールで始まる、不可解で理不尽な逃避行。
陰謀に巻き込まれた若い男女3人の運命は?
著者はスウェーデンの法律関係のお方で、コレがデビュー作。
偶然ながら、上の『ダンテ』とは対照的に、物語上の“お約束”や“サービス”が少なく、
淡々と進む物語はノンフィクションの感覚に近い。
北欧の風土がそうさせるのか、敢えてそういうスタンスで書いたのか、それだけ明確に“伝えたいテーマ”があるのか。
というと、どうも後者のような気がします。
過去の回想と、現在の進行がオーバーラップし、徐々に追いついて最後に重なる、という展開のスムーズさは良かったけども、
主人公だと思っていた人物が途中で交代したり、重要人物だと思ったキャラが出てきていきなり死んだり、
なかなか予想外な展開が続きます。
根底のテーマは、“現代の戦争の姿”とか“情報社会で報道されない事”とか“政治の中での情報の価値”とか。
また、そういった情報をコントロールしようとして、逆に翻弄される世界のやるせなさ、のような。
でもちょっと、テーマを絞り切れていなくて、色々詰め込もうとした結果
どれも中途半端になってしまってる印象も。
「そのキャラのその過去の話、必要だった?」ってのもあったり。
物語に深みを与える為の描写、と取るか、
要らん情報で話の焦点がボヤケる、と取るか、ビミョーな所かも。
「父と娘」も一つのテーマなんだけど、もうちょっと掘り下げて終盤で盛り上げたら良かったんじゃないの?と思ったけど、
敢えて淡々と語ったコレもハードボイルドで有りかなぁ。
読後のやるせなさといい、良い意味で北欧の冷たい空気を感じる作品(笑)。
あ。
タイトルの「泳ぎ続ける」は比喩表現だと思ったのに、
そのものズバリ「スイミング」だったのがちょっと残念だったり(笑)。
しかもその設定もイマイチ活きてない!
色々と惜しい一冊でした。デビュー作だからこんなもん?と思えばそうなのかもだけどね。
とりあえず11月の1冊は
SFの超有名・超定番・超古典なヤツいきますよ。( ̄ε ̄*)