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毎年この時期になると、もう死んでから10年以上経つ、以前飼っていたネコを思い出す。

飼い始めたのは俺がまだ小学生のとき。チャッピーと名付けられた野良ネコを、近所の人達で可愛がっていたのだけれど、1つ下の奴が当時流行していた空気銃の的として至近距離から撃ちまくり、瀕死の重傷を負わせた。目も撃たれたらしく、片目は視力も殆ど無かったんではないかと思う。

一応近所の動物病院に連れて行ったけれど、もう長くないだろうとの事。このような状態で外に出しておくのは可哀想なので、我が家は住み込みで寮の管理人をしていた事もあり、屋内の目立たないところで飼って最期を見届ける事に...と思ったら、驚異的な回復力で徐々に元気を取り戻してくれた。

しかし、水とミルク以外は一切口にせず、困り果てた父親が食べていた酒の肴を口から手のひらに出して差し出したら、ようやく食べ物を口にしてくれた。酒の肴なら食べるのかと思ったらそうではなく、人間が口でモゴモゴしたものしか食べないという感じだった。

でも、そうしないと食べてくれないので甘えさせていたら、人が口から出した物は食べるけれど、普通に皿に置いた物は一切食べないネコになってしまった。さすがに成ネコ？になってからは、皿の餌も食べたけど、人が口の中でモゴモゴしていると、必ず近寄ってきて「口の中の物をよこせ」と言わんばかりに、ミッキー・ロークのようなパンチ(謎)をしてきた。笑

刺身やカニ風味蒲鉾などは勿論の事、梅干し、納豆、野菜、カレーなど、普通のネコが食べない物でも、人が噛めば何でも食べると言う...まぁ、こちらも楽しんでたんだけど。笑

元々あまり人に媚びるネコではなかったけれど、空気銃で撃たれた事で人間不信になったのか、他の人には一切なつかなくなってしまい、結局チャッピーはウチで引き取る事になった。

普段はテレビの上の定位置に収まっていたけれど、基本的に野良ネコなので、外に出たい時は勝手にサッシを開けて出て行き、帰ってくる時はサッシの前で「ニャオー」と鳴いて、開けて貰うのを待っている感じ。当然ながら、出て行く時はいつも開けっ放しなので、開けられるなら閉めていけよと思って、芸を仕込もうとしたけれど無理だった。笑

また、野生が残っているのか時々ネズミを咥えてきては「誉めて～」といった感じで家族の元に見せに来た。ネズミは食べずに遊び、動かなくなると放置してしまっていたけれど、鳩や雀の場合は悲惨だった。

鳩や雀は待ちきれないのか一部を食べてしまうので、口の周りを血だらけにして、内臓デロデロ状態で家の中まで持ってくる。帰ってくる時サッシの前で鳴かずに、ガラスをガリガリ引っ掻く時は危険信号。何かを咥えている可能性が高かった。

まだ鳥は良かったけれど、あるとき錦鯉を咥えて帰ってきたので、証拠隠滅？すると共に、叩きながら厳しく叱った。それ以来、錦鯉を獲ってくることは無かったけれど、多分、近所のお大尽の家の池から持って来たんだろうなぁ...

なめネコブームの頃は、真似しようと色々とポーズを取らせようとしたけれど絶対無理。引っ掻かれたり噛まれておしまい。汗

そのうち俺がバイクに乗るようになり、メットを被った状態で歩くと怖いらしく、逃げ惑うので面白がって追い掛け回していた。笑

バイクの音もVTZの時は怖がらなかったのに、CBRになったらセルが回る音ですら異様に怖がったっけ。Vツインと空冷インライン4の違い？か、CBRの音にはネコの嫌いな周波数でも含まれていたんだろうか？

そんなこんなで月日は流れ、ウチに来てから14年を過ぎた頃、段々と衰弱していくのがわかった。一応医者に連れて行くと「癌」との事で、今度こそ本当に最後を看取ることを覚悟した。

まぁ、健康管理もせずに好き勝手な半野良生活でココまで生きたのは珍しい方らしく、言ってみれば大往生か。

ある時、チャッピーがヨタヨタしながら寮の大きな風呂場に行って鳴き始め、風呂場で上を見上げながらウロウロしている。何がやりたいのかと不思議に思ってたんだけど、よく考えるとこの場所は...

寮は建て直しをしていて、この場所は昔の管理人室。しかも、位置的にチャッピーがいつも出入りしていた中庭に通じる窓のあった辺りだ。当時の記憶が残ってたんだろうか？

ネコは死に場所を探すなんて話を聞いたことがあるけど、過去の記憶に残っている窓から出て、死に場所を探しに行こうとしたのかな？父親が「わざわざ死に場所探しに行かなくていいから。」と言って抱きかかえ、寝床のダンボール箱に戻した。

最期はその数日後だったか。会社に行こうとCBRのエンジンを掛けたらチャッピーが鳴き始めた。母親が「アンタ、チャッピーが呼んでるよ。」と言うので部屋に戻ると、チャッピーはダンボール箱から這いずり出てきて、いまにも倒れそうにヨタヨタしつつ、声を振り絞って鳴きながらこちらに歩いてくる。

が、すぐに倒れてしまう。立ち上がり、鳴きながらこちらに向かってくるのだけれど、また倒れる。今度は立ち上がれず、俺はメットを被ったままなのに怖がらず、こちらを見て必死に鳴いている。

なんか見てられなくなったので、抱きかかえてダンボール箱に戻し、後ろ髪を引かれる思い？で会社に行ったが、嫌な予感は的中。会社から戻って来たらやはり死んでいた。自ら死期を悟って、最期に挨拶をしたかったに違いない。

元は野良ネコだけど、14年も一緒にいると家族同然、結構ショックで死体のそばで泣きながら酒飲みつつ、そのまま寝てしまった。俺だけではなく、自分の親が死んだ時にも泣かなかった父親まで泣いていた。

死体は翌日清掃局に連絡して手数料2000円を払って清掃車の係員に預け、火葬してもらったのだけど、しばらくの間は耳鳴りと言うか、どこからともなく首輪につけていた鈴の音が聞こえたような気がして、ふと振り返ってしまう事が多々あったかな。

寮が閉鎖になって、普通の借家に移った事もあり、それ以来動物は飼ってないけれど、時々ニュースにもなる、猛獣珍獣なペットを持て余し、むやみに捨てたりしたのが原因で、市街地で捕獲されて大騒ぎだとかいうのを見ると、なんか無性に腹が立ちます。

大自然で自然の摂理に則り弱肉強食で生きていくのと、人間に飼われて至れり尽せりで長生きするのはどっちが幸せか？なんて難しい事は自分には判断できないけど、飼うんだったら最後まで面倒見てやるのがスジってもんじゃないかなと。

でも、今はペットだけじゃなく赤ちゃんまで匿名で捨てる事が出来てしまう時代。止むに止まれぬ事情があってどこかに預けるのは仕方ないにしろ、公的なところに相談して正規の手続きで対処せず、匿名で対処というのは、あまりにも無責任すぎるかなと...

って考えるのはオッサンの証拠かな？苦笑