
皆さん、こんにちは!
正月も明け、普段の日常に戻った中、
いつも正月ボケな私ですが、皆さん如何お過ごしでしょうか?
さて、去年の10月30日を以って、
京阪神地区から、ある特急車両が姿を消しました。
それが、
、国鉄381系直流電車です。

●国鉄381系電車
(画像は381系通勤ライナー「はんわライナー」:2011年3月廃止)
この381系電車は、振り子式機構を備えた車両です。
ウィキペさんと被る所もありますが、
381系の歴史を・・
日本の山岳地帯の鉄道がカーブの多い線形を余儀なくされていた中で、
当時の国鉄が都市圏から山岳地帯の交通輸送でスピードアップが図れず
バスなどの交通手段に対向するために、
当時非電化区間だった山岳地帯を電化区間に改良していく中で
カーブの多い山岳地帯をスピードを落とさずに高速通過できる車両の開発を検討し、
カーブを曲がるとき、カーブの遠心力に対して反対側に車体を傾ける事で
遠心力を軽減して高速通過を実現できる自然振り子式の車両を投入することを
決定しました。
自然振子式とは、車体内側と台車の両脇の間に「コロ」と言われる装置を装着することで、
カーブにさしかかると車体の傾斜に応じて
カーブの内側に車体が台車以上に傾斜するというもので
遠心力の影響を軽減するものです。
1970年、交直流の両電源に対応した、自然振子式機構を備えた
試験車両「591系」を試験投入し、日本各地の山岳地帯で、
走行試験を重ねました。
そのデータをもとに開発されたのが381系です。
外観こそ、当時の国鉄型特急電車のデザインを世襲していたものの、
他の設備などが当時の国鉄車両の様に
共通設計、部品の共通化が出来ない部分が殆どで
車両の低重心化のため、
設備配置、下回り、車体などを全く最初から設計するというてのかかりよう、
ボディも軽量化の為にアルミ合金が採用されていて、高価格な車両でした。
車体の傾斜角ですが、最大で5度とされました。
車体はアルミながら塗装は当時の特急色に合わせた塗装がされていました。
車体は通常の車両よりも傾斜をつけてカーブを曲がる為、
鉄道法規で定められている車両限界に抵触しないように
車体の下方部分が通常の車両よりもかなり絞られており、
正面から見ると、車体が少し台形のようになっているのも特徴です。

●国鉄型485系改JR西日本183系特急電車
(国鉄型特急電車の一般的スタイル)

●国鉄型381系特急電車
1972年に落成し、1973年に、当時中央西線の電化に合わせて走行区間が電化された
名古屋~長野(内1往復は名古屋経由大阪発着)を結ぶ
特急「しなの」に
381系0番台が営業運転に投入されました。
結果それまで気動車運用だった「しなの」よりもスピードアップが実現できた反面、
思わぬ弊害が生じてしまいました。
それは、
自然振子式構造特有の現象ですが、カーブに差し掛かると、
徐々に車体が傾き始めますが、ある程度傾斜角度を超えると
車体がコロの作用で急に設定されていた最大の傾斜角度まで傾き始め、
不自然な揺れが生じ、また、その時の走行方向に対する縦方向への荷重が乗客に加わる為
列車酔いを誘発する事態が多発してしまったそうです。
乗客のみならず、運転士も列車酔いに見舞われたため、
常に酔い止めを常備し、
乗客に対しても車掌が酔い止めを常備し、
後にはバスや飛行機では当たり前のエチケット袋までが
鉄道車両では唯一座席に用意されるという前代未聞の事態がおこってしまいました。
さて、いろいろあったこの381系ですが、特急「しなの」に投入されたのが、
併結などを考慮し当時の国鉄型特急に装備されていた、
全面貫通扉を装着していた381系0番台という車両でした。
その後1978年、紀勢本線の和歌山~新宮間が電化したのを受けて、
天王寺~新宮間が完全電化になり、
当時気動車で運行されていた特急「くろしお」にも
海岸線を走り、カーブの多い線形を有することから
この381系が投入されました。

●381系・
特急「くろしお」(JR西日本更新色)
この時投入された381系は、当時の状況から、
併結や、分割運転の必要性が薄くなったという事で、
特急「しなの」に装備されていた貫通扉が廃止され、同時に381系100番台と言う
新しい区分で製造、投入されていき、徐々に車両も増備されて
完全に381系で運行されるようになりました。
1982年には、岡山~出雲市を伯備線、山陰本線の一部を経由して走る
特急「やくも」にも「くろしお」と同じ381系100番台が投入されました。
これは紀勢本線同様、走行区間がそれまで非電化区間で、電化され、
山岳地帯を走る為カーブが多い線形を走行していた事もありますが、
当初は、381系ではなく、車両コストの面などがら
上越新幹線開業で過剰になる、関東~信州を走っていた関東地区の
特急電車
183系1000番台が投入される予定でした。
しかし、この事態を知った地元が団結して、
当時、島根県内に新設される予定だった車両基地を早期に完了させたこと、
さらに予定よりも上越新幹線の開業が遅くなったことも重なったこと、
走行区間を考慮すると183系電車でのスピードアップが期待出来ない事から、
結果381系が新車で投入されることになったそうです。
その後国鉄が無くなり、1987年にが発足すると、
管轄の関係で、「しなの」はJR東海、「くろしお」、「やくも」はJR西日本に継承されていきました。
JR東海に継承された「しなの」は、1995年に、JR東海の車両、
383系に置き換えが始まると、徐々に運用から離脱、
1996年には臨時列車の運行のみになり、2003年には完全に引退して
JR東海の381系は、先に姿を消した初期型の0番台も含め、
完全になくなってしまいました。
一方、JR西日本に継承された381系は車内更新工事やリニューアル、
更には展望付先頭車化改造を受けた車両も登場して、
「スーパーくろしお」、「スーパーやくも」、「ゆったり・やくも」なども設定もされ、
殆どの車両が現役を貫いていました。
ただ、車体の更新工事を受けた「くろしお」や、「やくも」は、それぞれイメージカラーをまとった
更新色に塗色変更され、国鉄時代の特急色は一部を除いて消えてしまいました。
しかしながら、JR西日本の一部の381系は国鉄色に戻され、
2011年3月までホームライナーとして、
大阪~奈良間を走った「大和路ライナー」、天王寺~和歌山間を走った「はんわライナー」にも
使用されていました。
しかし、車両の老朽化には勝てず、
「くろしお」運用では上位種別にあたる
283系「オーシャンアロー」、
2012年には、最初に北近畿の特急「こうのとり」で利用されていた
287系を381系「くろしお」の置き換えに投入、
この時「オーシャンアロー」、スーパーくろしお」をすべて「くろしお」に統一、
徐々に381系は「くろしお」から運用を離脱していき、
定期運用終了時は、1日5.5往復を残すのみになっていました。
しかし、「くろしお」から離脱していた381系は、国鉄色に戻されて、
北近畿を走る特急「こうのとり」や、「きのさき」、「はしだて」に転用されていきました。
これは、287系登場当初、北近畿地区の特急として投入されたものの、車両の製造数の関係で、
当時、国鉄時代の特急電車、485系を改造してJR西日本183系とした車両も
多く使用していたのですが、
この車両の老朽化による、
置き換えで「くろしお」を離脱していた381系が投入されたためです。

●381系・
特急「こうのとり」
さて、381系の振子機能ですが、
振子装置が作動すると、車体が通常の車両よりも傾斜が付き、
集電するためのパンタグラフが架線を押し上げるため、
架線がたわんで、集電不良を起こすことがあるため、
電化工事時に架線を強化してあった区間以外では使用されておらず、
全区間で「振子装置」を使用していた特急「やくも」と違い、
特急「くろしお」は、阪和線内の「鳳」~和歌山間内、
紀勢本線の和歌山~新宮間内の一部でしか振子機能は使用されていなかったそうです。
あいかわらず列車酔いの誘発は止まらなかったようで、
各車両の手洗い場にはエチケット袋が用意されていたそうです。
一部のマニアは、この現象をもじって、「くろしお」を特急「げろしお」と揶揄していました。
また、「こうのとり」、「はしだて」「きのさき」に投入された381系は、
この現象を避けるため、振子機能を最初から封印していたのですが、
一部の乗客の方からは、287系と比べると乗り心地がよくないなどの
意見が相次いだため、結局最大傾斜角を3度として、振子機能を復活させました。
381系電車は「やくも」、「こうのとり」、「くろしお」、「はしだて」で運行されてきましたが、
「やくも」以外の車両は殆どが1978年に「くろしお」に投入されたもので車齢もかなり経っており、
今年2015年3月に北陸新幹線開業で、
特急「しらさぎ」で使用されていた
683系2000番台という特急車両が運行区間短縮による減便で過剰になり、
この車両の一部を老朽化した381系の置き換え用に289系として車両形式変更の上、
置き換えに投入することが2015年の始めに決定、
その為、「やくも」運用以外の381系は全車10月30日を以って
定期運用を離脱しました。
また、「くろしお」以外の381系は国鉄時代の特急色で運用されていましたが、
この運用は全国のJRでも唯一定期運用をしていた国鉄特急色の車両だったそうで、
この運用離脱により、完全に定期運用の国鉄色の特急は姿を消したことになるそうです。
これにより、京阪神地区からは381系が姿を消し、
岡山~出雲市間を走る「やくも」運用のみで残る形になりました。
現在、数本が臨時列車などの運用用に残されていると思われますが、
運用離脱した381系は徐々に解体による廃車が進んでいると思われています。
一部の車両は、「やくも」運用の381系が所属する車両基地に回送されています。
「振子列車」は今でこそ、各JRで、乗り心地が改善された機械制御式の振子車両が
使用されていますが、
日本で初めての振子列車であった381系は、
登場時は、中部、近畿、中国地区でしか乗れなかった車両でした。
私は小学校の時に旅行で白浜に行った時に特急「くろしお」、
中学時代の修学旅行で特急「しなの」、
数年前に「はんわライナー」で3度、381系に乗車しています。
ただ、実際に振子現象を体感したのは、特急「くろしお」の時だけで、
カーブに入ると実際、普通の車両よりも傾斜がきつく感じられましたが、
遠心力による横Gは確かに少なかったのを記憶しています。
元々乗り物酔いは滅多にしないので、この時も列車酔いはしませんでしたが、
うちのオフクロが姉妹旅行で「くろしお」に乗った時は
酔いそうになったといっていました。
いろいろなエピソードを持つ381系ですが、
特急「やくも」に使用されている381系も老朽化が進んでいるため、
いつ381系が運用を離脱してもおかしくない状況ではあると思います。
国鉄型特急が次々に姿を消していくのは仕方ないですが、
日本から国鉄型の車両が姿を消すのはそう遠くない話かもしれません。