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イイね!
2023年10月29日

名機「睡蓮」の大型タイプ 芝浦製作所 C-7061 昭和9年頃 (おまけ:シュレッダーのギア修理)

大正・昭和初期と昭和40年代を行き来する、当方の扇風機レストアコーナー。
今回はまた古い方へ戻ります。



今回のお題はこちら。
「睡蓮」の名で知られる芝浦電氣扇の16吋タイプ、C-7061です。
特に珍しいかと言えばそうでもない、けど持っていなかった一台。
睡蓮系を充実させつつあるので、基本を押さえる意味で買ってきました。
…なのに一番基本の黒いC-7032を持っていないという珍事よ。

さて、この機種は何度かマイナーを繰り返して長期間販売された睡蓮の一種です。
故にそっくりな見た目のマイナー違いが存在するのですが、恐らくこれは二期型。
芝浦製作所の名前で日本語銘板でありながら、逓信省型式認定が無いためです。
同じC-7061でも英語銘板があり、それが一期型と見て良いでしょう。
この辺の流れは12吋の睡蓮(C-7032)と同じだと思います。

16吋型のモデルチェンジの流れとしては、大正期の2000番台に始まり、本機の先代に当たるのはC-7018(ガードネット、通称「鳥籠型」)と推測します。
が、番号にある程度乖離があるため、その間に別のモデルがあったかもしれません。
芝浦のガードのデザイン変遷としては、鳥籠(大正14年7月)→煽風型(大正14年9月)→睡蓮(昭和2年11月)で合っているはずですが、こと16吋に関しては煽風型ガードの存在を確認できていません。
鳥籠と睡蓮はそれなりの頻度で見かける一方、「煽風型ガードの16吋」という個体は未確認なのです。
恐らくは煽風型が12吋向けにしか展開されなかったのかと思いますが、もしかするとごく少数存在するのかもしれません。

そしてこの個体の年代特定ですが、上記の通り一度マイナーが入った後のC-7061だと考えています。
まず、「認定制度の始まる昭和10年よりは前で、且つ睡蓮ガードが誕生した昭和2年よりは後」と範囲が決まります。
加えて日本語銘板タイプには型式認定のあるものと無いものがあり、時期的に隣り合っていると見て間違いないと思います。
結果、昭和2年よりは昭和10年に近い、認定制度開始近辺の製造ではと予想が付くのです。
という事で…昭和9年頃と推定してみました。





こちらは昭和9年のカタログで、型式も同じC-7061として掲載されています。
なのでこの個体もそうだ、とも言えますが、銘板を始めとする差異の有無は分かりません。
ですが一応…カタログ掲載機種がまた一つ揃ったと言えるのは確かかと。

で、よく見ればこのカタログイラストの睡蓮、電源プラグがセパラボディかアタッチメントプラグ(通称アタチン)になっていますね。
銘板が英語か日本語かは…小さすぎて読めなぁい!
某ルーペが入用か。


はい。それではここからレストアコーナー。
特段変わった点の無い芝浦扇なので、正直に言えばあまりやる気が出ない(失礼)。
予想としては、モートルへ行く線がカッチカチなのと塗装がイマイチでしょうから、その対応が必要でしょう。
漆塗りじゃなくなった年代の機種なので…塗装面の磨き込みもまた少々テンション低めなんですよね…





とにかく分解。
結構固着の酷い個体のようで、ファンは軸が強力にロックされた状態。
ファンに積もったホコリも中々の量でした。
更にファン自体の固定がイモネジのずれた位置になっており、ファンだけ回せてしまうようになっていました。
CRCを吹いて取外し。



ガードの背面を外す前に一枚。
この辺りの睡蓮は、ガードを止める4か所のビス穴の内、向かって右下だけ四角くカットされています。12吋も同じです。
睡蓮ガードは表裏を合わせるビス穴位置が決まっているため、背面の向きを間違うと前面のエンブレムの向きまで変わってしまうのです。
それを防ぐための工夫なんですね。当時から品質管理や生産効率が意識されていたのを感じ取れるポイントです。



いつものマイクスタンド。
セオリー通り裏蓋へ行きます。



電源線がユーザ取り付けから出荷時取り付けへ変わった後の機種のため、スライド窓はありません。
固定ビスも2か所に簡略化されています。



碍盤は奇麗ながらホコリが中々。
モートルの方も凄そうなので外でエアブローかな。



見慣れた芝浦の碍盤。
外すと電線被覆も奇麗に残っていました。ただし定番のゴムカチカチ状態。
首振りを考えると余りに固いので、少々残念ですが交換します。
碍盤上面と基台の間に入る紙ワッシャも全箇所残っていたので、分解歴無しかも。



配線が外れたのでモートルを開けましょう。
軸が固着しているので注意しつつ。



開きました。予想通り細かい塵が積もっています。



エンドベル内側も中々。



それからエアブローして、固まってるネックピースに注油しながら梃子とパワーで動かし…として全バラに。
全バラ状態の写真って、案外載せた事が無かったかもしれません。

以降はちょっとダルいけど終わると気持ちいい、清掃・再生パートに入ります。
羽根磨きが無いのが助かりますかね…





まずはロータです。
埃は少なく軸の変な摩耗も無さ気。
あれだけ固着してたのに…単に油の固化でしょうか。



活躍の歴史を物語る真鍮ワッシャ。
あるあるですが、段摩耗が出ています。
軸の潤滑は何とかなっていた一方、こちらは文字通り身を削っていた訳ですね。
逆向きにして組もう。



スクリューギアのグリスも除去して奇麗になりました。



お次はギアボックス。
今回のグリスは生チョコ並の硬さで、むしろ奇麗にボコッと取れてくれました。
清掃も楽に終わって何より。



この通り。
ギアボックス内は特に異常無しでした。
ギアの谷には固化したグリスが残りますので、それは粉末パーツクリーナで漬け置き洗い。



エンドベルは清掃と塗装面の磨きを行いますが…





あまり変わりませんね。
というのも、C-7032やこの7016、またその直前の7017辺りもそうだったと思いますが、塗装が2コートになっています。
2000番台の機種は漆焼き付け1コートらしく、錆での剥がれはあっても、残った箇所はしっかりと艶が出ます。
しかしこの辺りの機種では上塗りが劣化しやすいようで、細かくクラックの入った状態のものが多数。
今回の個体はまだ良い方で、こんな感じに若干の艶が出てくれました。

なお、下地にあるのはどうも漆に似た硬い塗装なんですよね。
パーツクリーナで拭くと上塗りが溶けるのですが、下塗りはちゃんと残るし磨けば光る。
しかし全体の上塗りを落とせば良いかと言えばそうでもない…オリジナル塗装を剥ぐわけですから。
なので「これもまた味なのだ」と捉え、敢えて光らせ過ぎないよう仕上げて行きます。

しかし今回のエンドベルは、ゴムブッシュ穴の肉厚が薄いですね。
これなら普通のブッシュが無理なく使えそう。



こちらはモートルケース。
上記のようにパーツクリーナで塗装が溶けるため、何処までが油汚れなのかイマイチ分からないのがスッキリしない。



キャリーハンドルを外したところです。
よく見ると塗装面が細かい皹に覆われているのが分かるかと。
しかしポロポロ落ちるレベルではないので、このまま軽く磨いて済ませます。
どうしても研磨剤が皹に残るので、そこは油で誤魔化します。
それで良いのかい。



こんな感じでしょうか。
一部上塗りが落ちて艶が出ています…これを見てしまうと全剥ぎしたくなる。
三越の茶色や高能率型の深緑など、特殊仕上げなら割り切って手つかずに出来るのですが…
ちなみに、C-7032睡蓮には「銀狐色」なるレアカラーが存在するようです。
羽根はシルバーメッキだとか…三越仕様の7017型と同じ要領ですかね。



次はモートルへ行く電線を交換します。
正直ここは替えたくないのですが、睡蓮系はカチカチになっている事が多く、変えざるを得ないのがパターン化しています。
この個体はギリギリ実用に耐えそうでしたが…付け根付近で芯線が露出しているのが決定的でした。残念。
内部のゴム被覆が固まるのと同時に、外装の布巻きも固まってしまうのが原因のようです。

大正期の2000番台だとこうはならないのですが、一体何が違うのか。
外装の布が黒っぽいので、ワックスか何かで染めてあるのかしら。
大正期のはベージュ系で何も塗られていないので。



最近はここを奇麗にオリジナル再現するのにハマっています。
まずは結線部を留めている紐を切って、外装の絶縁シートを取ります。



取れました。
続いて線の色を間違わぬよう、1本ずつ交換していきます。
まずは手前にあった赤から。



絶縁シートをさらに剥がせばハンダ部が出てきます。
捩った上にハンダ上げしてありますが、しっかり熱すると意外な程アッサリと引き抜けるんですよ。
これが結構気持ち良い。
気持ち良すぎだろ…という程ではないですが。



残り2本も交換するとこうなります。
線長はオリジナル+αにすると、碍盤との結線が楽で良いでしょう。



後は各線に絶縁処理を施してエンパイヤチューブを被せ、オリジナルの外装だったシートを巻き直せばOK。
黒い糸で縛って完了。
中々オリジナルっぽくなったと思います。



続いては基台。
16吋なので大きいですが、改良された結果か肉厚が薄くなっています。
よってブッシングも加工無しで取り付け可能。
大正期のものより軽いような気もします。



塗装が幾分か良好でしたので、ある程度の艶が出ました。
銘板は…やはり磨くと薄くなってしまいますね。方法をもう少し工夫すべきか。
補修法はとりあえず確立できたのでまぁ良いとも言えますが、そのせいで磨きが雑になってる説。



碍盤も特に問題無しなので、清掃と接点グリス塗布でササっと。

ここからはファンとガードを洗いつつ、組み立てれば終了…だったのですが、急遽シュレッダーの修理が入ってしまいました。
以前、リレーのハンダ不良で不動品だった業務用を自分が修理したもので、家族が仕事で使っていたのです。
それが「詰まって逆転もできなくなった」との事で見てみれば…ギア鳴りと共に空転しておられるご様子。

嫌だなぁ、怖いなぁと分解すれば、ピニオンと咬むプラギアが見事に歯欠け。
更にギアが妙な傾き方をしていたのですが…Φ7の鉄軸が摩耗で折れてました。衝撃。
で、どうせダメならと修理してました。

軸は同じΦ7のSUSパイプで代用し、欠けた歯は脱脂してプラリペアを盛って削り出し。
すると見事に直ってくれました。
刃を回す各軸もかなり重くなっていたので、スプレーグリスを吹いてモンキーで回しつつ潤滑。
まだまだ活躍してもらいましょう。

余談のついでに書いておけば、RCもそうですが金属のピニオンに咬むギアは大抵樹脂なんです。
今回のシュレッダーもそこだけ樹脂ギアだったので、「そういえばいつか理由を読んだ事が…」と調べ直しました。
すると、摩耗度合いを偏らせて定期交換部品を減らす意味と、過負荷時に破損する事で重大事故を防ぐ意味があるとの事。
摩耗関係だったなぁとぼんやり記憶していましたが、もう一つ意味があったのですね。
で、シュレッダーは構造的にも後者でしょう。しかもちゃんと機能しましたよ。

とりあえず、驚きの摩耗を見せてくれた軸と再生したギア、テスト動作中の4枚だけ載せておきます。









最初の写真、軸の出ていないギアの左に米粒みたいなのが映っていますが、それが軸受けと摩擦し続けた軸の成れの果て。
旋盤にかけたみたくなっています。
3枚目の再生した歯は結構適当ですが、ピニオンが削って当たり出ししてくれると思いザックリで済ませました。
他の軸もグリスアップして抵抗が減ったので、その分負荷は軽くなっているはず。
グリスは高負荷と摩耗を意識してモリブデンを驕りました。他にはあまり使わないし。

…なんて事をしておりましたら一週間ほど放置してしまいました。
組み立てに入りましょう。
と思えば今度は家族が怪我からの感染症で緊急入院してしまい、またまた一週間放置…
当然そちらが優先なので、睡蓮さんは珍しく全バラ&組み立て直前でのサスペンドとなりました。



ようやく組み立てに入りました。
碍盤取り付けは元の線色を再現してあるのでそのまま素直に。



電源線はオリジナルと思しく、端末処理も綺麗でしたので加工せず再利用。



背面ガードまで付きました。
あと一歩です…何だか長かった。



前面ガードを付ける前にエンブレムを磨きます。
イマイチかと思えばオリジナル塗装がしっかり残っている模様。
これは期待できるか。



おー。イイ感じじゃないの。



ガードの固定ビスは4本かと思えば5本でした。
16吋の睡蓮はそうなのですね。
で、これが全箇所失われていたので、それっぽいマイナスビスで補修。
上手い事JISのビスで良かった…手持ちのJIS M3ナットが使えました。



一方こちらはプラグですが、オリジナル…なのかなぁ?
というのもスギモトの茶色(認定番号付き)なので、認定無しのマツダじゃないの?と思った次第。
マツダじゃない個体も無印だったような。





とはいえケーブルはオリジナルっぽいので、プラグも交換せず再生します。
ケバケバな端末処理をちょっと切り詰めてやり直し、プラグは清掃と酸化膜落とし。
すると何とクロームメッキの端子じゃないですか。
これは珍しい。
スギモト自体は結構ありますが、大抵は黒で真鍮無垢端子です。



という事で完成しました。
最初の写真から2週間半…意外と経ってないな。



モートルの固着が酷い個体でしたが、かなりの高速で動作するようになりました。
本来の性能が蘇ったようです。



「睡蓮」たる所以の花辯型電氣扇保護枠の模様。

しかしながら、黒一色の睡蓮というのもド定番ながら良いものですね。
真鍮羽根の煌びやかさや雷光ガードのストレートなレトロ感からは一歩引きますが、端正で上品な雰囲気が良い。
それが16吋だと重厚感も加わって…つまりはイイ。



最後は当時のライバル、三菱電機の16吋型(名電製、乙型ギア仕様)と2ショット。
どちらもガードが細かくなり羽根が塗装仕上げになった、昭和初期の代表的スタイルです。
真鍮の輝きはありませんが、その分外観の維持が楽なのがいい所でしょう。

安全面でも雷光ガードとは比較になりません。
もう90年も前の機種ながら、ちゃんと指の入らない細かいガードになっています。
一応実用的…とは言えますが、細身4枚羽根の豪快なサウンドと16吋の強風は、現代の家庭にはちょっとオーバスペックかも。
コンデンサの入る前の機種なので、3段(三菱)・4段(芝浦)変速もあまり変化はありません。どれも強風です(笑)
とはいえそれもまた味の一つ。三菱ジープやスーパーセブンみたいなものだと思えば良いのです。


さて…次回は何をしましょうか。
まだまだストックはあるのですが…趣の違うものも扱ってみたい気分です。
と言いつつ、いつもの通り昭和40年代に行きそう。
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Posted at 2023/10/29 22:04:06

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