• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+
イイね!
2020年06月09日

TOYOTA Ideal Successor 1

TOYOTA   Ideal Successor 1 前回ブログからの続きです。

トヨタのWRC開発車両 Ideal Successor (IS)。



カローラFXをベースにした、IS2。

その誕生は1992年でした。

この年はトヨタにとって、記念すべき出来事もありました。







カルロス サインツ ドライバーズチャンピオン獲得



サインツにとっては、1990年に次いで2度目の快挙です。

そして次なる目標は、マニュファクチャラータイトルとのダブルタイトル獲得!

そうなるはずなのですが、実はトヨタのWRC活動を担うTTE(現 トヨタ ガズー レーシング ヨーロッパ TGR-E)には、一抹の不安があったのです。

それは主に2つ。




グループA ホモロゲ台数の削減



それまでホモロゲ取得には、連続する12ヵ月間に5,000台以上の生産台数が必要でした。

しかしタイトルを獲得した翌年の1993年から、その数は半分の2,500台に引き下げられます。

これは何を意味するのか?

4WD+ターボのクルマを年間5,000台以上生産する為には、高い生産技術力が必要です。

生産能力もさることながら、それをあまり高価にならない様に抑える技術も必要なのです。

いくらホモロゲの為とは言え、大量な売れ残りを出す訳にはいきませんから。

高い生産技術力でクルマは開発、生産が出来て、それを完売出来るマーケットを有する国。

それは、日本くらいしかなかったのです。

90年代初め、日本車がWRCを席巻出来たのは、これが理由の1つです。

しかしホモロゲ台数が半分になると、参戦へのハードルは下がり、ヨーロッパの強豪勢が新型車の投入も可能になります。

こうなると混戦が予想され、勝利することが難しくなることでしょう。





現行市販車パッケージの限界



タイトルを獲得した1992年には、レギュレーションの変更がありました。

それは、エアリストリクターの小径化。

グループAでは、トップスピードに依存しないクルマ作りが求められて来ます。

その為、ライバルに打ち勝つには、コーナリングスピードの向上が必須です。

ですがセリカには、歴代モデルが抱え続けている弱点があったのです。

それは、アンダーステア

元々セリカは、FFから派生した4WD。

つまり横置きエンジン、横置きミッションが基本パッケージです。

2つの重量物がフロント側に寄っているので、ST185の前後重量配分は、60:40とフロントヘビー。

これがアンダーステアの要因だと、考えられていました。

もはやセッティングで対処するのではなく、根本的なパッケージの見直しが必要ではないか、TTEではそう考えていたのです。


そして1993年には、TTEの不安を具現化した様なクルマが参戦してします。







フォード エスコート RS コスワース



本来は横置きエンジンのFF車だった、エスコート。

そこにシエラRS コスワースの4WDユニットを移植しています。

これは縦置きエンジンの4WDシステムです。

その前後重量配分は、セリカ以上にバランスの良いものと予想されます。

これだけの大幅パフォーマンスアップは、ホモロゲ数が引き下げられた事によって、可能となったのでしょう。

この先、フォード以外でも新型車を投入してくる懸念が出て来ました。

対してその頃TTEでも、次期ラリーカーの開発もスタートしていました。







セリカ GT-FOUR (ST205)


基本パッケージは、ST185からの踏襲。

3S-GTEを横置きした4WDです。

参戦は1994年を目標としていました。


エンジンは小径エアリストリクター適用により、ST185よりパワーダウン。

ボディは大型化され、重量も増えています。

果たして、このST205で勝てるのだろうか?

TTEには不安がよぎっていました。



もうST205での参戦は決定事項なので、変更出来ません。

そこでST205の次を、TTE主体で提案をしていこう。

そういうプロジェクトが動き出します。

それは、まだ誕生していないラリーカー、ST205に対しての理想的な後継車 「Ideal Successor」

つまり、2世代先のラリーカーを見据えて動き出したのが、このISだったのです。




まず確認した事は、前後重量配分の改善。

その為に、こういうクルマを製作しています。








見た目は、普通の白いST185。

ですが、中身は大幅に変更されています。








搭載された3S-GTEは、縦置きに変更されています。

しかし、ただ縦置きにしただけではフォード エスコートと同じで、アドバンテージがありません。

そこで、このクルマは更に重量配分を改善すべく、ミッションは後方に搭載しています。

つまり、トランスアクスルなのです。

これにより前後重量配分は、50:50となりました。

効果の見込めるトランスアクスルによる4WDですが、デメリットもあります。

それは、複雑なパワー伝達経路による重量増です。








R35 GT-Rの写真から、パワー伝達経路を見てみましょう。

左のエンジンが発生させた動力は、プロペラシャフトを介して右のトランスミッションに伝達されます。

そこで減速された動力は、2つに分かれます。

1つはリアデフを通って後輪へ。

もう1つは、別のプロペラシャフトを介してフロントデフへ伝達され、前輪を駆動します。

つまり、プロペラシャフトが、2本必要となってしまうのです。

「軽量こそ正義」のラリーカー。

ですが、このクルマは重量増よりも重量配分を優先させ、トランスアクスル方式の4WDを採用したのです。

この縦置きエンジンセリカ、後に「IS1」と名付けられました。








このIS1とST185のラリーカーとで、走行比較テストを実施します。

ほぼ全てのテストで、IS1の方がST185を凌駕する結果となりました。

また縦置きエンジンになった事で、エンジンルームにもスペースの余裕が出来て、熱的にもメリットがあったそうです。

これで縦置きエンジン化による重量配分の改善は、大いに効果あり、と判定されました。


次は、その大きなボディ対策です。

それを対策した「IS2」については、長くなりましたので、また次回へ。
ブログ一覧 | トヨタ | 日記
Posted at 2020/06/09 10:25:35

イイね!0件



タグ

今、あなたにおすすめ

ブログ人気記事

花と花火と犬とおやじ虫
ポンピンさん

五日市 八昌
こうた with プレッサさん

WI-FIルーター変更
R172さん

2025 富良野🍛唯我独尊🍛
hokutinさん

何屋だろ⑦。
.ξさん

あのねのね/ネコ・ニャンニャンニャン
Kenonesさん

この記事へのコメント

2020年6月9日 13:08
こにゃにゃちわわにゃ(^^)♪

時代設定は新谷かおるの「ガッデム!」の頃になるのでしょうか?

オイラ自身のラリーカーに関する思考はもう少し前、ダットサンPA160Jバイオレットで止まったままにゃ。
圧倒的なパワーを誇るLZ20Bを駆り、FRの限界に挑んだ時代にゃwww
当時の日産の快進撃を阻止する為に出来たとまで言われた「年間生産5000台以上の市販車ベース」のレギュレーションにより、LZ20Bはその命を閉じる事になってしまったにゃ。
それ以降、ラリーを含むレースそのものに萌えなくなったのは言うまでも無いけど、その後 犬死にする事になったアイルトン・セナを見ても解る通り、自動車産業の発展と更なる性能向上の場として、正常な機能を果たさなくなったレース業界に存在意義はあるのか?と言う疑問は今も引き摺ったままにゃ(^^;;
コメントへの返答
2020年6月9日 15:15
こんにちは。
コメントありがとうございます。

このISは1990年代の初め、グループAの時代です。
LZ搭載の160J バイオレットだと、グループ分けがアルファベットになる前の数字時代(Gr 4)の頃になりますね。

レース公認パーツだったDOHCヘッドが使えなくなったのは、1978年。
実は、ストラトス封じの為にフィアットが仕組んだと言われるレギュレーションでした。
そのとばっちりを受けてしまったのが、LZ20Bだったのです。

思えばLZエンジン。
ラリーの他、FP(LZ14なのに1.6L)、Gr 5と、万能のエンジンでしたね。
なぜかスカイラインのシルエットフォーミュラも、RSベース風であれながら、エンジンはFJではなくLZでした。

そういえば、当時の日産OPヘッド、いろいろありましたよね。
L28のクロスフローLY28は知っていましたが、A12のクロスフローAY12なるエンジンがあった事を、最近知りました。
2020年6月9日 17:20
こんにちは。

シエラサファイア4×4の基本流用でコンパクト化されたエスコートRSコスワースに対して、同じようにST185から基本流用の205セリカはなぜか肥大化してましたね。

基本コンポーネンツをベース流用して軽量コンパクト化されたクルマっていうのは国産にもありますがつい気になって見てしまいます。

往年歴代のセリカWRカーもそこで途絶えてしまいました。
肥大化はやはりバブル影響だったのでしょうか。
コメントへの返答
2020年6月9日 17:49
こんにちは。
コメントありがとうございます。

エスコートRSは、もう完全にWRCにターゲットを絞ったホモロゲモデルです。
4WD化するにあたり、横置きFFベースで新作するよりも、既に実績のあるシエラのパワートレインを流用した方が、確実ですよね。

セリカは、そこまで尖った作り方をしていません。
WRC参戦ベース車なれど、北米で売れることを主目的としたスペシャリティカーです。
TTEよりもアメリカの意見で作られるのでしょうね。

TTEもST185の次モデルについて、「前後オーバーハングを減らす事」と「Aピラーを立てる事」を要望したそうです。
その後渡されたST205をみて、むしろ悪くなったパッケージに失望したそうです。

なのでTTE主体で開発すると、カローラFXになるのでしょうね。
2020年6月9日 22:08
こんばんは(^o^)

トヨタのラリー技術秘史おもしろいですね。ラリーに限らずモータースポーツでは「相対的」に一定期間優位に立てれば技術的に理想的で「絶対的」である必要はないと思いますがその相対的がなかなかの曲者ですよね…どこかの国のどこかの時代の軍拡競争のように相手が見えないと疑心暗鬼できりがありませんね。まあそれで時にはトンデモ発明があったりするので何とも言えませんけど(^^;

ちなみにST205登場時には何も知らないワタクシですらオリオールがST185から乗り換えを渋る気持ち分かるなぁ(笑)と思ったものです。
コメントへの返答
2020年6月10日 8:00
おはようございます。
コメントありがとうございます。

「相対的」「絶対的」という観点、非常に新鮮に思えました。
そういう観点で書かれる方を、あまり見たことがないもので。

トヨタ ラリーベース車の変遷は、必ずしもベストな選択ではなかった様です。
少なくともTTEにとっては。
ST185でダブルタイトルを獲得しましたが、それはかなりの苦労があった様です。
ST165と比べても大型化しましたからね。
そこへ来てのST205、そりゃ落胆したのでしょう。

その後、休止を経て登場したWRカーがカローラだったのは、やっとTTEの要望が通ったって事なのでしょうね。
2020年6月10日 9:02
おはようございます。
オヴェ・アンダーソンは常日頃カローラに2リッターエンジンを搭載した車を要望していましたが、トヨタは営業戦略にセリカを選択したため、グループ4時代から苦戦続きでしたね。
グループAの時代になってからご承知の通りの強さを発揮しましたが、なによりも組織力が強くなりましたね。
残念なのはようやっとカローラに2リッターターボエンジンを搭載したカローラWRCが出たにもかかわらず、わずか2年のワークス活動で終わって、F1にシフトしたことかな。
コメントへの返答
2020年6月10日 10:11
おはようございます。
コメントありがとうございます。

そもそもGr Aベース車両が、トヨタだけ違いますよね。
スバル、三菱を見れば、たぶん不利なクルマだったんだろうと想像出来ます。
日産だって、Gr 4時代、バイオレットからシルビア(240RS)になる時も、ドライバー陣からはかなり抵抗されましたし。
事実、メッタは82年のサファリでワークスシルビアを拒んだ事で、セミワークスサポート(非ワークスカラー)になりました。

逆に言うと、あのセリカでここまで頑張ったTTEの努力は、並々ならぬものだったと思います。

トヨタF1ですか・・・
冷静に思うと、あれはトヨタにとってどうだったんでしょう?
そこでの経験からLFAが誕生しましたが、WRCを撤退してまで参戦する意味があったのかな?
厳しい言い方をすると、そうも思えます。

プロフィール

「@中島乗り さん 片山さんって、渡米前から有名人だったんですね。」
何シテル?   08/21 21:22
クルマ、バイク、自転車と、自分でコントロール出来る乗り物が好きです。 それも日本製が好きです。 (自分で買えそうもないものには、興味が持てなくて) ...

ハイタッチ!drive

みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2025/8 >>

     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      

リンク・クリップ

エコからオフ in 呉 追加情報 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2023/10/06 17:02:28
【告知】令和5年、那須合同ミーティング開催日決定♪  
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2023/02/27 12:42:29
ダァ〜イアトーン♬ ポップスベスト10っ♪ 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2022/03/14 12:53:29

愛車一覧

ホンダ N-ONE ホンダ N-ONE
2019年購入 インサイトが追突事故により修理不能となり、代替えしました。 購入候補 ...
ヤマハ YSR50/80 ヤマハ YSR50/80
1999年購入 当時RZ250Rに乗ってましたが、ビビリィな私、とても性能を使い切って ...
スバル スバル360 スバル スバル360
2019年購入。 ヘッドランプリングの黒塗装、大型のテールライトから、1968年の52 ...
スズキ ジェンマ スズキ ジェンマ
2017年購入 「購入」と言っても、物々交換で入手しています、スバル最中と。 友人がお ...
ヘルプ利用規約サイトマップ

あなたの愛車、今いくら?

複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!

あなたの愛車、今いくら?
メーカー
モデル
年式
走行距離(km)
© LY Corporation