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イイね!
2020年06月12日

TOYOTA Ideal Successor 2

TOYOTA  Ideal Successor 2 またまた、前回からの続きです。


2世代先のラリーカーを目指していたプロジェクトは、続きます。

ST185が抱える問題点、それは前後重量配分の適正化。

それを検証すべく、縦置きエンジンのIS1は製作されました。

その結果、前後重量配分は50:50に近づけるべき、という結論に至ります。

続いては、もう1つの懸案事項、大型化したボディの対策です。








サーキットを使用するレースとは異なり、一般公道を使用するラリー。

道幅も狭く、ブラインドコーナーも多数あります。

そんな環境の中をハイスピードで駆け抜けるには、道幅を目いっぱい使い切りたいところです。

そこで気になってくるのが、オーバーハング。

ここが長いと、クルマをコースサイドギリギリまで寄せきれなくなってしまうのです。

トヨタのラリーカーは、歴代セリカを使っています。

このクルマは流麗なデザインを売りにしているので、車高は低く前後オーバーハングが長めです。

折角、最適駆動パッケージを投入するのですから、よりオーバーハングの短いものをベースにしたいものです。

その結果、このクルマが選ばれました。






カローラ FX (AE92)


当時、ライバルの動向。

三菱は、ギャラン VR-4からランサー エボリューションへ移行すべく、エボIを限定販売。

スバルも、レガシィを移行させる為、インプレッサを販売。

両メーカーとも共通するのは、ダウンサイジングです。


トヨタも、もちろん追従します。

しかも、より小さなボディへ。






まずは、ベース車のバルクヘッドより前を切断。

そこにパイプフレームを介して、3S-GTEを縦置きにマウントします。

しかもその位置は可能な限り後ろに寄せて、フロントミッド化。

前後重量配分と共に、重量物を重心近くに追い込む、マスの集中化も併せて行なっていきます。

続いて、元々FXはFFなので、4WD化で必要となったプロペラシャフトを通すべく、フロアにセンタートンネルを新設。

ここまでやるのであれば、サスペンションも見直しします。

このクルマ、前輪をよく見ると、本来あるべきスプリングとショックがタイヤ横にありません。

それは、パイプフレーム化に伴い、ストラットからダブルウィッシュボーンへ変更をしていたからなのです。

しかもスプリング、ショックをエンジン前方に配置した、プルロッド式。

フロント周りだけ見れば、往年のGr 5の様です。

当然リアも、ストラットではありません。

ツインショックを採用した、マルチリンクに変更されています。

これこそ正に、TTEが考える「理想的な後継車」

このクルマは、「IS2」と呼ばれることになります。






IS2も、現役ワークスカーST185と比較テストを実施します。

IS2にはワークス仕様よりも60ps低いエンジンが、搭載されていました。

ターマックのテストフィールドで比較をすると、最高速ではエンジンの差が現れ、ST185の方が優っています。

ですが、それ以外の項目では、IS2の方が速く、特にコーナリングに至っては格段の違いを見せていました。

この結果に満足したTTE、次期ST205にはIS2を採用すべきと、トヨタ本体にプレゼンをする事になったのです。



当時のWRCは、Gr A規格。

TTEは、IS2を2500台生産する様に迫ります。

いくらなんでも、このままの仕様で生産するのは、非常に困難。

とても採算が合いません。

多少は生産車に合わせて譲歩したとしても、それでも莫大な投資が必要となりそうです。

流石にこれにはトヨタ本体も難色を示し、結局、ISプロジェクトはIS2完成をもって終了となりました。




その後参戦したST205は、TTEの悪い予感が的中し、重く大きなボディが災いし低迷します。

そして最後は、エアリストリクター問題を引き起こし・・・

そのまま現役から退く事になりました。



2年間の活動休止を経て、あの時TTEが思い描いた「理想的な後継車」が参戦する事になりました。






カローラ WRC



当時はGr Aだった規格は、より改造範囲が広いWRカーへ変更。

ベース車も長年のセリカから、やっとコンパクトなハッチバック、欧州カローラにスイッチしました。

しかしエンジンは縦置きではなく、セリカを踏襲して横置きのまま。

但しマスの集中化を狙い、25度後傾して搭載されていました。


参戦初年度の1998年、開幕戦優勝と幸先の良いスタート。

このままタイトル獲得かと思われましたが・・・

最終戦、最終ステージの残り300m、まさかのエンジンブロー。

誰もが獲得したと思っていたタイトルが、この時、滑り落ちてしまったのです。

カローラ WRC がマニュファクチャラーズタイトルを獲得するには、結局あと1年待たされることとなったのです。



TTEが何度かタイトルを獲りつつも、相当苦労をしていた歴代セリカ。

その経験から生まれたIS2は、残念ながら実戦投入されませんでした。

これが、もう少しカローラ FX寄りのクルマでGr A ホモロゲ取得し、ST205に代わって参戦していたら、トヨタWRCの歴史は、どうなっていたでしょうか。


それに「カローラ FX GT-FOUR」がもしも2500台限定発売されていたら、それは魅力的なクルマだったでしょうね。
ブログ一覧 | トヨタ | 日記
Posted at 2020/06/12 10:19:30

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この記事へのコメント

2020年6月12日 12:50
こんにちは
今回のブログも興味深くかつ楽しく拝見いたしました。FFはどうしてもフロントオーバーハングが長くなりますね。ルノー5は縦置きエンジンの前側ミッションでしたので、極端に短かいでした。それを後部に移して5ターボが出来たかはわかりませんが、逆に置くという発想が出来たんでしょうね。トヨタでは出来ない発想かも。あっTTEはEUでしたか。
「誰もが獲得したと思っていたタイトルが、この時、滑り落ちてしまったのです。」トヨタってこの手の事がよくあるんですね。トヨタのラジオCMに「この世の中に絶対と言うことはないんだよ。絶対にな」という台詞がありますが、変に繋がる感じがします。あと、どこかの女史が言ってた「2番じゃダメなんですか?」が脳裏をかすめました。
コメントへの返答
2020年6月12日 17:09
こんにちは。
コメントありがとうございます。

通常の横置きですと、前車軸にエンジンが来ますから、致し方ないですね。
それを嫌って、直5を縦置きFFにしたクルマもありましたが、どうにも接地荷重が足りない感じがして、私は苦手でした。
あんなことするなら、普通にFRにすれば良いのに。

ほぼ勝利が確定しているのに落とす、本当になぜかトヨタには多いですね。
この他に、ルマンの「I Have No Power」だったり、タイヤバーストだったり。
いずれまとめようかと思い、構想だけ書いて下書きに入れてあります。

2016年のルマンは、まるでマンガの様な結末でした。
2020年6月12日 12:56
こにゃにゃちわわにゃ♪

レースの世界に限らず、現実の世界と言うのはタラレバが通用しない結果が全てと言われるのですが、この手のタラレバ話しはイイですね?(^^)
実際、趣味で車を弄っても、車体を切り刻んでパワートレーンや足回りも別物に交換するとか、そこまでやる人はまず居ないし、しかもワークスファクトリーの仕事で有りながら日の目を見なかった話しとなれば、もうコレはタラレバのカテゴリーその物!
ワクワクしますにゃ♪

最近、ふと思う事が有るのですが、せめてコンピューターの書き換えがお手軽に「出来れば」!(笑)
コメントへの返答
2020年6月12日 17:27
こんにちは。
コメントありがとうございます。

このIS2、タラレバの話がしたくなる程の完成度ですよね。
でもさすがにパイプフレームを組んでのマルチリンク化は、TTE内部でも意見が分かれたそうです。

これ、どう考えても、ターマック専用仕様ですよね。
グラベル対応、ホモロゲ取得を考えると、本当はカローラFXを流用して、センタートンネルだけ追加くらいにしておけば、まだ良かったのでしょう。

それくらいだったら、「カローラFX GT-FOUR RC」なんてエボリューションモデルも販売出来ていたかも?
2020年6月12日 13:37
こんにちは。

IS2、現場の熱い思いが詰まった試作車だったんですね。知りませんでした。
現場の願いが叶わなかったのは残念ですね。

なんとなく当時のトヨタっぽいなと思って読ませていただきました。

カローラFX、次期主力戦闘機の意味合いもあるネーミングですが、AE82は周りでも結構見たものの、92以降はほとんど見かけたことはなかったですね。

グループAも92からはレビンに戻ってましたし。
コメントへの返答
2020年6月12日 17:32
こんにちは。
コメントありがとうございます。

IS2、最近まで全く知りませんでした。
開発車両だった為か、全く表舞台には出ていませんでしたよね。

今回のISは、2011年に「WRC PLUS」で取り上げられていました。
書籍は絶版でしたので、電子書籍版を今回購入しましたよ。

そういえば、サーキットのGr A。
元々AE86で参戦していたのに、途中からAE82にスイッチしたのは、なぜなんでしょうね?

販売戦略?・・・でもない気がします。

AE92からは、ちゃさんの書かれている通り、レビン/FXとどちらもFFになったので、レビンに戻したそうです。
2020年6月12日 21:18
こんばんは。
計3回の記事、とても興味深く読ませて頂きました。
スバル・三菱・フォードがダウンサイズをしていったのに対し、トヨタはアップサイズしていましたからね。
TTEがボディのダウンサイズを求めていた事は知っていましたが、AE92をベースとした試作車を作っていた事は知りませんでした。

Gr.AでのWRCでダウンサイズを仕掛けた一台である日産パルサー。今のヤリスと同等サイズですけど、改造範囲の狭いGr.Aでは小さ過ぎだった様で、ラリーの日産復権とはならなかったのは残念でした。
コメントへの返答
2020年6月13日 7:51
おはようございます。
コメントありがとうございます。

本当は初回だけで「こんなクルマがあったよ」で終わる予定でした。
それが調べて見ると、IS2への思い入れ、セリカへの苦悩が見えてきて、だいぶ回数が増えてしまいました。

タイトルを獲ったST185でも大きいと思っていたTTEですから、ST205が来た時の落胆振りは、想像に難くないです。

もしもカローラFXだったら・・・と書いた時、私もパルサーを思い出しました。
タイヤハウスが小さいのは如何ともし難いですが、エンジンの冷却は、縦置きする事で改善されるそうです。

ですが、フロアトンネル新作し縦置き換装したFXを2500台作った時、採算が合うのかな?
かと言って、横置きのままだと、パルサーの二の舞?

なかなか難しいところですね。
2020年6月13日 15:45
こんにちは。
またまた投稿します。
カローラWRCはセリカのコンポーネンツをカローラに移植したモデルなので、3SGも鋳鉄製ブロックで重く、前後重量配分はガソリンが空の状態で前60:後40というノーズヘビー、さらにリアサスペンションのトラベル量も不足していて、トリッキーな挙動を見せて苦戦していました。ワークス撤退後、サスペンションセッティングを一からやり直したら、非常にドライブしやすくなり、結果としてサスペンションストロークの問題ではなくセッティングの問題でした。
いずれにしても2000年に登場するはずだった大幅改良したモデルの活躍を見てみたかったです。
コメントへの返答
2020年6月13日 19:37
こんばんは。
コメントありがとうございます。

よくよく比較すると、カローラWRCとIS2の相関性は、意外にも少ない気がします。
あれほど気にしていた前後重量配分も、エンジン後傾にしたものの、セリカと大差なかったし。
それでも僅か参戦2年目でマニュファクチャラーズタイトルを獲得したのですから、やはりTTEの開発力は相当なものなんでしょうね。

カローラWRCに2000年モデルがあったとは、知りませんでした。
まだまだ開発途中での撤退だったのは、残念ですね。
2020年9月26日 15:17
初コメント また 遅いコメントですが失礼いたします 。

90年代初期 「 スバルや三菱がインプレッサ ・ ランエボ を出すに至り今は良くてもトヨタが今後のWRCでも勝ち続けていくにはカローラ FX を 4WDターボ化するしか無い 」 と感じていて、当時のラリー雑誌の中には 「 トヨタ がカローラ FX ベース のモデル も検討 」 などとする記事もあって大いに期待していた一人で 、自分もたまたま4~5年前にネットで写真を見かけ WRC PLUS 誌に特集記事があることを知って読み 「 実際に開発 ( 正確にはTTE側で検証用のプロトタイプ を作った ということですが ) されていたのか ・・・ 」 併せて その内容のトンデモさ にも驚いたものでした 。

WRC PLUS 誌には書かれていませんが トヨタ 側でもこのカローラ FX Gr A ( 仮? ) は検討されていたようで 2年程前の ベストカー 誌 中ほどのモノクロコラム ページ に当時トヨタ側で量産計画を担当されていたと思しき方の手記が掲載されていて 、 詳しい車の仕様は確か書かれていなかったもののおそらくはご指摘にもあるように より現実的にサスは4輪ストラット エンジンも縦置きでは無く トランスアクスルも無し ・・・ セリカ のコンポーネンツ をよりコンパクト な カローラ FX ( 三代目FX が92年に出ていることから時期的には四代目として ? ) に搭載する形になった と自分も思いますが この計画はコスト の問題等により中止になった とされていました 。

エンジニア の方曰く 「 途中 役員等に対する何回かのプレゼン での感触は悪く無かった 。 コストが高くなるのは当初からある程度分かっていた筈で 、 それで中止にするならもっと早く言って欲しかった 。 非常に悔しい思いをした 」と書かれていましたが 当時に現在の章夫 社長がいたならば どうだったろうか ・・・ とも感じます 。

最近のGR ヤリス はユーザー側が購入可能な 3ドアハッチバック ボディ ハイパフォーマンス 4WDターボ モデルとして IS2 の再来 或は IS3 ? としての復活 なのかもしれませんね 。
コメントへの返答
2020年9月27日 0:45
こんばんは。
コメントありがとうございます。

IS2からのカローラFX GT-FOURは、技術的にはそんなに非現実的ではなかった様に思えます。
IS2では、4WD化によるフロアトンネルの新設に、かなり苦労をされたそうです。
確かに2代目FXに4WDは未設定なれど、4ドアには設定ありです。
調べてみると、FXと4ドアはホイールベースが同一。
という事は、FXの4WD化も可能ではなかったのか、そう思えるのです。
ちなみに、3代目FXのAE100系も同じでした。

もしFX GT-FOURを投入しようとすれば、ST205以降なので、1995年頃。
当時の日本はSUVブームだったので、スポーツモデルは売りにくい、そんな思惑があったのかもしれませんね。

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