
今日はあんまし気合いが入らないんで、乱筆乱文ご容赦ください。
まあ、今日は全国1000万のミセガワ研究室ファンの皆さんにはあんまり興味のない、タイヤの転がり抵抗や燃費についての事なのでいいでしょう。
最近日本のメーカーのタイヤみていると、凄く気になるのが浅溝化している事です。
浅溝化と言っても、RE-71Rみたいにサーキットのラップタイム改善を狙って1本釣りでやってくる浅溝化ではなくて、普通に街乗りしているいわいるエコタイヤという奴は、20年前のタイヤとかに比べると浅溝化しているんですよ。
何でそんなことするのか。
ズバリ低い転がり抵抗値を達成する為なんです。
タイヤの転がり抵抗の発生源というのは、ほぼ総てがゴムの変形による発熱(ヒステリシスロス)なので、その発生源のゴムの量を減らせば、転がり抵抗も下がると言う訳。
溝の有るトップトレッドの部分は大体全体の転がり抵抗の50%くらいのヒステリシスを持っていると言われているし、サイド部とかカーカスやベルトのトッピングゴムとかは元々ラベリングの話が出る前から相当攻められているし、タイヤの耐久性の本質にかかわる部分なのでそうおいそれと変えられないんで、まあトップトレッドのゴム配合を工夫したり、そして禁断の溝を浅くして量を減らして低転がり化する訳。
新品溝深さが例えば1mmくらい減ったって、ウエットにはあまり影響がないです。これも事実。JAFとかの資料とか探すと、残溝3mm以下くらいまでならないと目に見えてウエットが悪化したりはしないデータが出ています。
また摩耗も日本のメーカーのタイヤなら溝が減った分をほぼ補てん出来る位配合やパターンを工夫して持つようにはなっているはずです。
で、実際どんなもんか。
おいらが現役だった頃は軽のタイヤとかじゃない乗用車用なら溝深さはざっと8mm。
それが証拠にちょっとだけ走ったちょっと昔の設計のスポーツ系タイヤ。ラベリングはC/C。
ちょっと減っても7mm。まあ新品だと7.5~8.0mmくらいでしょう。
こちらはあんまりアコギじゃないエコタイヤ。ラベリングA/C。
ほぼ未使用です。7.5mmほど
そしてAAA/
A⇒C(訂正)のバリバリエコタイヤ。こちらも0.2mmも減っていないはず。
6.0mmやっとというところです。
でも、さっきそんなに目に見えてウエットが悪くなるわけじゃないと言っていたじゃないか。
そう、JAFにしてもラベリングにしても、ある決められた条件下ではあまり変化がないというだけなのです。タイヤの場合はクルマの燃費よりもある意味もっと悪くて、試験法としては多少水温や気温、路面等が変化しても試験結果の序列が変わらないよう、補正する方法に注力されているだけで、色々な条件下でロバストな特性を示すものではないと言う事です。
つまりタイヤの性能はこのテストで良いデータを出すためのスペシャルになっているんです。
以下にラベリングのテスト条件の抜粋を記載します。
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路面は,勾配が2 %以下で3mストレートエッヂでの偏差が6mm以内の,密粒度アスファルトコンクリートであること。
路面は,均質な履歴,構造及び摩耗状態で,障害物などがないこと。
骨材の最大粒径は,8 mmから13 mmとする。
路面の湿潤時の摩擦特性を検証するため,a)又はb)の何れかの方法を用いること。
a) 英国式振り子抵抗試験機を用いる表面摩擦特性(BPN)の測定法
表面摩擦特性BPN(ASTM E 501に規定したパッドを用いて,ASTM E 303で規定した試験法)の平均値が,温度補正後の値で42から60の範囲にあること。
パッドに用いるゴムは,その成分表や物理特性が要求される。
BPNは,ウェット路面温度で補正すること。英国式振り子抵抗試験機の製造メーカーの推奨する温度補正法がなければ,次の補正式を用いてもよい。
()温度補正値測定値+=BPNBPN ···················································· (1)
6.1-t0.34t-0.00182×+×=温度補正値··········································· (2)
ここに,
t:
ウェット路面温度(℃)
パッドの摩耗の影響:パッドは,ASTM E 303:1993の5.2.2及び図3に記述してあるように,スライダーの接触線の摩耗量がスライダー面で3.2 mm又は面に垂直で1.6 mmに達したら,交換しなければならない。
実車法での試験路面のBPN均一性の確認:試験結果のばらつきを抑えるため,BPNは全ての制動距離範囲で一様でなければならない。BPN測定は制動レーンの10m毎の各位置で5回繰り返し,その平均値の変動係数が10%を超えてはならない。
b) ASTM E1136基準タイヤ(SRTT14”)を用いた測定法
速度65 km/hでのASTM E1136 SRTT14”1)の平均ピーク制動力係数μpeak,ave(箇条7を参照)が,0.7±0.1であること。
トレーラ法においては,制動中に路面が使用される部分は,2 m以内である。
ASTM E1136 SRTT14”の平均ピーク制動係数μpeak,aveは,ウェット路面温度で補正すること。
()温度補正値測定値μμ+=peak,avepeak,ave ············································· (3)
()20-t0.0035×=温度補正値······························································ (4)
ここに,
t:
ウェット路面温度(℃)
注1) ASTM E1136のタイヤサイズはP195/75R14。
5.2 散水条件
路面散水方式は,路面側からの散水又はトレーラ又はタイヤ試験車両に装備された自己散水システム
4
のどちらを用いてもよい。
もし,路面散水を用いるときは,路面温度と水温を均一にするため,少なくとも試験を開始する30分前に散水すること。路面散水は,試験の間は連続的に行うこと。
試験路面の範囲において,水深は1.0±0.5 mmであること。
5.3 気象条件
風の状態により,路面散水状況に支障をきたさないこと。場合によっては,風除けを用いてもよい。
ウェット路面温度及び気温は,次に示す範囲内でなければならない。
- スノータイヤは,2 ℃から20 ℃。
- ノーマルタイヤは,5 ℃から35 ℃。
更に,試験中のウェット路面温度の変化は10 ℃を超えてはならない。
また,気温とウェット路面温度の差も10℃を越えてはならない。
5.4 基準タイヤ(SRTT 16”)
試験に用いられる基準タイヤ(SRTT 16”)の仕様は,ASTM F 2493に規定している。
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タイヤやクルマは色々な環境下で走り、その中で極力安全で有る事が最重要であると思います。最初から溝が浅いと言う事はいくら摩耗を遅くするよう工夫したとしても、溝の深いタイヤの溝深さと同じになるまでの長い時間は溝の少ない状態で走り続けることになります。
もしテストした時よりずっと大雨が降ったら?
もしテストした時より冷たいウエット路面を走らなければいけない状況になったら?
日本人は特に情報の見える化に弱いです。
だからラベリングもそうだし、燃費もそうで、すぐにカタログで比べられる点に目が行きがちです。
しかし本当にタイヤに求められるのはロバストな安全性を有する事ではないでしょうか?
少しくらい音がうるさくっても、燃費が悪くても、シッカリ溝の入ったタイヤをお勧めします。
やはり溝が深いと言うのは、より外乱に強くなるための最大の要因ですから。
ちなみにヨーロッパのメーカーはここをちゃんと踏まえている場合が多いです。
ついでに。
タイヤエンジニアはラベリングに血眼ですが、そんなの気にしているのユーザーは一部のマニアだけですよ。
最初から溝の浅いタイヤは新品や8分山でも、タイヤにあまり関心のない人からは「溝の少ない減っているしょぼいタイヤ」としか受け止めてもらえていませんよ。
摩耗を工夫して寿命は負けない事や、ウエットも頑張っていることを販売の前線の売り子が上手く説明できるとも思えません。大体摩耗なんて、最後に結果が分かるんだから、「ゴムが」とか言っても分かりづらい。
てな訳で、ちゃんとガッツリ溝入れて、そんなにうるさくない、売り易いタイヤ、開発して下さいね。