
ダイハツのすべての車種が出荷停止になるという大事件が起こりました・・・
34年前から64車種の型式認証申請において25項目の試験で174件の不正が行われていたそうです。記者会見では日常の使用に問題は無いと言っていましたがいったい何をやっていたのでしょう。第三者委員会の調査報告書を読んでみましたのでサマリーを下記します。
1 側面衝突試験(7件)
(1) 胸部変位のひずみ量の不正操作
欧州モデルで上限42㎜を超えたが同じ構造の国内モデルが37㎜だったので41.5㎜に改ざんした。
(2)エアバッグのタイマー着火不正加工
試験時にエアバックECUが間に合わなかったのでタイマーで着火した。
(3)燃料注入量の虚偽記載
試験車両の燃料が基準の90%より多かったが90%で記載した。
(4)試験車両重量の虚偽記載
試験車両の重量が範囲より軽かったが再度の衝突試験を行わず範囲内の車重を記載した。
2 ポール側面衝突試験(6件)
(1) 試験車両重量の虚偽記載
試験車両の重量が範囲より重かったが範囲内の車重を記載した。
(2) 燃料タンク注入物の虚偽記載
試験車両の燃料タンクに注入されていたものが「水」だったが他と平仄を合わせCCFと記載した。
(3) 車台番号の虚偽記載
試験車両に車台番号が刻印されていなかったことから実際には刻印されて いない虚偽の車台番号を記載して認証申請を行った。
(4)リアドア開放確認結果の虚偽記載
衝突後 にリアドア(右側)を 400 ニュートン以上の力で引っ張って開放しないか確認する必要があったが 誤って確認前に作動させてしまったので左側の試験が合格だったので合格とした。
3 オフセット前面衝突試験(4件)
(1)無断のウエイト搭載
本来、審査官にウエイト搭載の位置を説明して同意を得るべきであったが説明することなく前方の座席のドアの内部にウエイトを搭載して試験を実施した。
(2) エアバッグのタイマー着火不正加工
衝突試験までに ECU の設定が間に合わずタイマー着火の方法により衝突試験時にエアバッグを展開させた。
(3)燃料注入量の虚偽記載
燃料の注入量が容量の 90%を超えていたが90%近似値とした。
4 フルラップ前面衝突試験における不正行為(3件)
(1)頭部加速度計の校正値不正操作
あらかじめ頭部加速度計の校正値を操作して運転者席側の 頭部傷害値(HIC)が本来より 4~5%低く計測されるようにした 。
(2)助手席頭部加速度データの差し替え
立会試験時のデータではなく事前リハーサル試験時のデー タと差し替えてた。
(3) エアバッグのタイマー着火
本来衝突時の衝撃をセンサーで検知して運転者席及び助手席エア バッグ並びにプリテンショナー(シートベルト巻き取り機構)をエアバッグ ECU で作動させる必要があるにもかかわらず、タイマー着火させ申請した。
5 フルラップ前面衝突時の燃料漏れ試験における不正行為(1件)
(1) 車台番号の虚偽記載
試験に用いられた試験車両には車台番号が刻印されていなかったことから別の車両に刻印され ていた車台番号を記載してた。
6 歩行者頭部及び脚部保護試験における不正行為(38件)
(1) 車台番号の虚偽記載
試験に用いられた試験車両には車台番号が刻印されていなかったことから別の車両の車台番号を記載して認証申請を行った。
(2) 左右対称位置の打点の試験結果の流用
車両の構造上安全性に 差異はないことから左右対称位置にある別の打点の試験結果を流用した。
(3)インパクタ衝突角度の虚偽記載
衝突時の 3 つ(ピッチ、ヨー及びロール) の角度誤差の測定を求めているに
もかかわらず、ヨー及びロールの角度測定に必要なカメラの確保が困難であったため実際にはピッチしか測定していなかった。
(4) 試験速度の改ざん
実際の衝突速度が準値幅の上限を超えていたが法規よりも不利な試 験条件下で合格している以上は安全性に問題がないものと考え虚偽の衝突速度を記載した。
(5) 他の車種の試験データの流用
ヒンジボルト部の選定打点 1 つにつ き日本国内向けのダイハツ ロッキーの試験結果を、マレーシア向けのプロドゥアATIVA の試験データとして流用した。
7 後面衝突試験における不正行為(12件)
(1) 衝突速度の虚偽記載
実際の衝突速度が法規で定められた基準値幅の上限を超えていたが法規よりも不利な試験条件 下で合格している以上は安全性に問題がないものと考え虚偽の衝突速度を記載した。
(2) 試験車両重量の虚偽記載
実際の車両質量に 10 キログラムから 20 キログラムを加算した数値 を試験成績書に記載した(将来のマイナーチェンジの際に試験をやり直さなければならなくなる事態を避けるため)。
(3) 車台番号の虚偽記載
試験に用いられた試験車両には車台番号が刻印されていなかったため別の車両の車台番号を記載して認証申請を行った。
8 ヘッドレスト衝撃試験における不正行為(2件)
(1) 試験結果の虚偽記載
助手席側の試験結果しか存在しなかったにもかかわらず運転者席と助手席では 性能に大きな差はないと考え運転者席側の試験結果 として記載した。
(2) シート素材の虚偽記載
レザー製シートを使用した試験結果を提出するところファブリック製シートを使用した試験しか実施していなかったにもかかわらず性能差はないと考えレザー製シートを使用して実施した試験結果とし て記載した。
9 ヘッドレスト静的試験における不正行為(1件)
(1) シート素材の虚偽記載
レザー製シートを使用した試験結果を提出するところファブリック製シートを使用した試験しか実施していなかったにもかかわらず性能差はないと考えレザー製シートを使用して実施した試験結果として記載した。
10 シート慣性荷重試験における不正行為(3件)
(1) 試験結果の差し替え
社内試験の波形データの校正値が審査官 が確認している計測器で測定された他の波形データのものと大きく異なっていたため別の波形データと差し替えた。
(2) 試験未実施項目の試験結果の記載
助手席の座席位置を最前方からノッチ1つ後方の試験結果を提出するところ最後方からノッチ1つ前方の試験しか実施していなかったため最前方からノッチ1つ後方の試験結果として記載した。
(3)試験未実施項目の試験結果の記載
シートリフターを有するシートを使用した試験結果を提出するところシートリフターのないシートを使用した試験しか実施していなかったためシートリフターを有するシートを使用した試験結果として記載た。
11 積荷移動防止試験における不正行為 (9件)
(1) 試験結果の差し替え
試験速度が法規上限を超過していたにもかかわらず、試験速度が速いほど試験上は不利であり安全性に問題はないものと考え法規上限を超えない速度で実施された他の車種の社内試験結果を記載した。
12 ヘッドフォームインパクト試験における不正行為(1件)
(1) ステアリングホイール素材の虚偽記載(虚偽記載
レザー仕様のステア リングホイールの社内試験データを提出するところウレタン仕様のステアリングホイールに対する試験しか実施していなかったためレザー仕様のステアリングホイールの試験結果として記載した。
13 とびら開放防止試験における不正行為(1件)
(1) 試験未実施項目の試験結果の虚偽記載(虚偽記載類型)
左方向に荷重を入力する試験を実施するところ右方向の試験しか実施していなかったため左方向の試験結果として記載した。
14 座席ベルト試験における不正行為 (5件)
(1) 試験未実施項目の試験結果の虚偽記載
後席の左右両側席の試験結果を提出すると記載していたところ片側席の試験しか実施していなかったが左右両側席の試験結果を記載した。
15 ヒップポイント試験における不正行為 (12件)
(1) 室内安全試験の評価項目として実施される試験における座席加工
ヒップポイントが法規で要求される範囲の上限よりも10 ミリメートルから20ミリ メートルほど高くなって不合格を連発したため立会試験の前日夜にシ ートのクッションをはさみやカッターで切り取るなどの加工を加え範囲に収まるように調整した。
(2)衝突試験の前提条件として実施される試験における座席加工
ダミーのヒップポイントが法規で要求される範囲の上限又は下限よりも数ミリメートル程度高く又は低かったため、電動カッターやハサミで座席シートの一部を切り取ったりシートに切れ目を入れたりして着座位置を低くしたりシートパッドの下にウレタンを敷いたりシートに切れ目を入れウレタンを挿入したりして着座位置を高くした。
16 車外騒音試験における不正行為(2件)
(1) ASEP スロープ法における車速の虚偽記載(
規定値は時速 44.6~50.6 キロメートルであるところ実験結果が51.0kmだったため50.5kmと記載した。
(2)試験車両重量の虚偽記載
当初の仕様書では車両重量が885 キログラムであったがその後880キログムに変更されているところ、実験車両の重量が 884.5キログラムであったため 880.5キログラムと記載した。
17 近接排気騒音試験における不正行為 (1件)
(1) 騒音の試験結果の虚偽記載
対象車種は2 本出しマフラーを搭載しており左右の開口部それぞれで計測しなければならなかったが作業負担を惜しみ片 方の試験結果を参考に残りの片方について架空の数値を記載した。
18 制動装置試験における不正行為 (13件)
(1) 制動初速度の虚偽記載
法規で定める条件(最高速度の 80%)に達していなかったが再試験を実施する時間的な余裕がなかったため虚偽の値を記載して申請した。
(2)タイヤ空気圧の虚偽記載
タイヤの空気圧(前後輪ともに250キロパスカル)が法規で定める数値に達していなかったにもかかわらず法規に適合する空気圧の数値を記載して申請した。
(3) ABS 装備車両における操作力及び制動初速度の虚偽記載
法規に規定さ れる操作力に達しない数値が記載されていたにもかかわらず法規に規定される操作力に達したことにするため虚偽の数値を記載した。
(4) ABS 故障時制動装置試験における操作力の虚偽記載
法規上65 ニュー トン以上で検査するところ60ニュートンだったが5ニュートン不足だけでは再試験の必要性が乏しいため「70N」と記載して申請を行った。
(5) 制動初速度の虚偽記載
制動初速度が法規で定める条件(基準速度の 98%)に達していなかったが開発日程の都合上再試験を実施する時間的な余裕がなかったため条件を満たす値を記載した。
(6) 粘着利用度の算定に用いる計測値の虚偽記載
3つの計測値をその最小値の1.05 倍に収まるように取得して試験成績書に記載しなければならないところ虚偽の計測値を記載して認証申請を行った。
19 ヘッドランプレベリング試験における不正行為 (33件)
(1) 後軸重量の虚偽記載
後軸 451キログラムとなっていて法規上は後軸450 キログラムに達する重量であれば問題がなかったにもかかわらず450キログラムと虚偽の数値を記載した。
(2) 積算走行距離の虚偽記載
積算走行距離が一定の範囲内にある自動車を使用して実施する必要があるところ試験に利用できる車両が十分でなかったことから必要な慣 らし走行を行っているかのように虚偽の積算走行距離が記載された試験成績書を作成して申請した。
(3)試験実施回数の虚偽記載
必要な回数の試験を実施する時間的な余裕や試験に利用できる車両が十分でなかったこと等から回数を水増して申請した。
(4)積算走行距離の虚偽記載
ロービーム用ヘッドランプの照射光線の垂直傾斜の変動の測定は積算走行距離が一定の範囲内にある自動車を使用して実施する必要があるところ、実験報告書上の積算走行距離が空欄等で不明であったため架空の積算走行距離が記載された試験成績書を作成して申請した。
(5)測定結果の虚偽記載
実験報告書とは異なる数値を記載した試験成績書を作成して申請した。
(6)確認結果の虚偽記載
試験車両にはレベリング機構がないため実験報告書上は斜線が引かれていたにもかかわらず当該試験へ の理解不足から適否欄に適正との確認結果を意味する「適」に丸印を記載して申請した。
(7) 確認結果の虚偽記載
実験報告書上は適否欄が空欄で適否が不明であったにもかかわらず問題はなかったであろうと考え「適」 に丸印を記載して申請した。
20 デフロスタによるデミスト試験における不正行為 (3件)
(1) デミストされた領域の面積の虚偽記載(虚偽記載類型) ア 不正行為の概要
届け出た A 領域及び B 領域の面積の数値が社内試験実施 時の数値と異なっていたにもかかわらず届け出た数値を記載して申請した。
21 デフロスタによるデフロスト試験における不正行為 (4件)
(1) デフロストされた領域の面積の虚偽記載
届け出たA領域及び B 領域の面積の数値が社内試験実施時の数値と異なっていたにもかかわらず届け出た数値を記載して申請した。
(2) 水の噴霧量の不一致
「560ccで試験を実施する必要があったところ「552cc」であったが試験の結果には影響を及ぼさないと判断して「560cc」と記載して申請した。
22 速度計試験における不正行為(2件)
(1) タイヤ空気圧の虚偽記載
諸元表に記載された指定値に20キロパスカルを加えたタイヤの空気圧で試験を実施するように法規で規定されているところ実験報告書では指定値に20 キロパスカルを加えた空気圧が記載されていなかったにもかかわらず 20キロパスカルを加えた虚偽のタイヤ空気圧を記載して申請した。
23 インストルメントパネルの衝撃吸収試験における不正行為 (1件)
(1) 衝突速度の虚偽記載
法規で定められた衝突速度を超過する速度で試験が実施されており法規よりも不利な試験条件下で 試験を実施している以上は安全性に問題がないと考え範囲内 に収まるように虚偽の衝突速度を記載して申請した。
24 排出ガス・燃費試験における不正行為(5件)
(1)走行抵抗測定試験における断熱材等の不正加工
冬季の試験時に駆動系内のオイル油温が低下するのを防ぐため車両の駆動系に断熱材を巻いて外気の影響を受けにくくしたりガムテープをエアロパーツのように 車体下部に貼り付けるといった加工を行い走行抵抗の値を良化した。
(2)燃費消費率試験における排出ガス分析計の取付け部品の不正加工
有利な試験結果を得るため試験車両のテールパ イプに排出ガス分析計のホースを取り付けるボルトを緩め加速時に微量の排出ガスが漏れるようにした。
(3) 排出ガス試験直前の触媒交換
排出ガス試験について規制値を超える可能性があると考えたため、認証試験の直前(慣らし走行後)に試験車両の排出ガス浄化装置の触媒を新品に交換した。
(4)排出ガス・燃費試験直前の触媒交換
試験車両の触媒は慣らし走行を行った状態にしなければならないが基準値を超える可能性があると考えたため認証試験の直前に触媒を新品に交換した。
(5) 走行抵抗測定試験における不正加工
本来は試 験車両の空気抵抗値を空気力学的に最も悪い仕様とすべきところそのような仕様になっていないことが直前に発覚したが時間的な余裕がなく本来の量産車の仕様では付属しない板状のパーツを取 り付けて空気抵抗値が悪く出る方向に調節して試験を実施た。
25 原動機車載出力認証試験における不正行為 (3件)
(1)エンジンに対する不正加工等
開発目標とされていた諸元値に達する試験結果が得られるよう、エンジン 出力を向上させるために、シリンダーヘッド吸気側ポート研磨/インテークマニホールド空気通路研磨/シリンダーヘッド下部を面研磨して燃焼室の容積を縮減といった量産時には行わない加工等を行った上で試験を実施した。
(2) エンジンに対する不正加工等
開発目標とされていた諸元値に達する試験結果が得られるよう、エンジン 出力を向上させるために、シリンダーヘッドの下部を面研磨して燃焼室の容積を縮減/スロットルボディのボア径を拡張/作動角が大きいカムシ ャフトを特注し使用/シリンダーヘッドの吸気側及び排気側のポート研磨/ハイオクガソリンの使用/ロムの書き換えといった量産時には行わない加工等を行った。
(3) エンジンに対する不正加工等
開発目標とされていた諸元値に達する試験結果が得られるよう、シリンダ ーヘッドの吸気側のポートを研磨するという量産時には行わない加工を行うとともに、立会試験において「目読み(刻々と変化する計測機械に表示された計測値の中央値を読み上げること)」ではなくメモに書かれた数値を読み上げた。
いずれも開発スケジュールに追われ当初の仕様・予定どおりに型式認定を取るために試験結果を偽装したものですが皆さんどう思われたでしょうか。小さいものから大きいものまであり確かに日常使用には影響しないものかも知れませんが、ここまで安全基準を無視するとは自動車メーカーとしての体をなしてませんね。