作家のAli Binazir博士の計算によると、あなたの両親が出会い、卵子が受精して生まれた子が生き延びるという一連の出来事を経て、あなたが今ここに存在している確率は

とのこと。
あなただけではなく、どのような生命も奇跡的な存在なのだ。
このような偶然の重なりで自分自身が存在するなら、運命というものはとてもコントロールなどできないように感じられる。
一方、そうは考えない人たちがいる。
"Le hasard ne favorise que les esprits préparés".
「チャンスは用意のできた精神にのみ微笑みかける。」これは細菌学の開祖、ルイ・パスツール
(Louis Pasteur, 1822 - 1895) が1854年の講演で言った言葉だ。
正しい時と場所にいれば、運は向こうからやってくるという考えだ。
本日は
マイケル・ブルックス著:「偶然」と「運」の科学 (
Chance. The science and secrets of luck, randomness and probability)という本を紹介しよう。この本は運命について思索していたときに偶然にも留萌市図書館の新刊書の棚で見つけたものである。
その前にこの写真をみていただこう。これは原人が、運を引き寄せるために使っている道具である。この中で最も役立つ2つのものはなにか?
① 高性能ノートパソコン
VAIO S1511
② パーカー万年筆
③ ベルベルの石器ランプ
④ 原人制作のスカラベ・サクレ
⑤ サイコロ2つ
正解は③ベルベルの石器ランプ と ⑤ サイコロ2つ である。
①
Core i7-6700HQ(2.60GHz)を4コア搭載し、1秒間に数百億回の浮動小数点演算を行う
ノートパソコンとしては世界最高水準の
Vaio S1511は魔法の演算結果を出力することはない、原人の操作に忠実に従うのみである。従って原人に幸運をもたらしはしない。
VAIO S1511の実力
② 万年筆は原人が書き物をするのに好んで使用するものであるが、原人の指のとおりに動いて、文字を紙面に残すのみであり、原人に幸運をもたらしはしない。

原人が好んで使う
Bleu myosotis 忘れな草ブルー。
④ スカラベ・サクレはリゾート地の陶芸教室で余った粘土でいたずらで作っただけである。出来栄えは気に入っているが、何の効用もない。

おかりしました。
ではなぜ、③ベルベルの石器ランプ と ⑤ サイコロ2つ が原人の幸運の素なのか、この本の2つの章を引用し説明しよう。
○ 幸運になる方法。 (ベルベルランプの効用)
ハートフォードシャー大学心理学教授のリチャード・ワイズマン(
Richard Wiseman)はこう述べる: 運とは、ランダムな出来事を自分の得になるように使う準備ができているかどうかにほかならない。実際に自分の運を高めることができるのだ。
運の良い人は、決まって正しい時に正しい場所にいて、ほかの人より多くの機会を手にし、“楽しい生活”を送っていた。運の悪い人は、失敗や苦しみばかりに遭い、決して抜け出せないように感じていた。運の良い人は、人脈を作ったり、おおらかな心構えで生活したり、新たな経験を受け入れたりすることでチャンスを作ってそれに気づく能力に長けていた、また、厄介で重大な問題に直面したときには、自分の直観に耳を傾けてより効果的な決断を下す傾向があった。 運の良い人は、未来は幸運な出来事に満ちていると信じている。
ワイズマンは、ふつうの運が良くも悪くもない人たちに上記のような「運が良い人」のポジティブな考えができるようになる訓練を施す実験を行った。そうすると数ヶ月後、被験者たちは実際に、より幸せに、より健康に、より運がよくなっていたという。
原人は、ベルベルランプが原人に幸運を招くと信じ、上記のようなポジティブな考えを持つようにしている。そうすると実際に運が向いてくるのです。


○ 気まぐれな類人猿 (サイコロによる最適戦略)
科学作家のディラン・エバンズ(
Dylan Evans)はヒトが競争者(多くは同じ種のヒト)に打ち勝つために身につけた優れた能力として、「ランダムな行動をとる気まぐれさ」を指摘する。
進化における競争においては、競争者に打ち勝つために相手の行動を予測するという認知能力を発達させることが必要である。競争者同志がこの認知能力を高めていくと際限がなくなる。この予測が高度に発達した者どうしの争いにおいては、全くランダムな行動が最適戦略となる。相手に予測を許さず、相手は予測不能の行動に恐怖心を抱くからである。ヒトはこのランダムな行動をとる能力(プロテウス的能力)に磨きをかけることで、「気まぐれな選択を予測不可能な形で素早く行うという能力」を身につけた。厳しい競争においてはゲーム理論でいう「混合戦略」が最適な戦略となるのだ。
未来が予測困難なとき、へたに予測して結局間違った戦略を採用するよりも、サイコロを振って行動を決めるほうが期待利得を最大化できる場合がある。こんなとき原人はサイコロを振るのである。


今回も難しい話、原人のくせにすみません。
「MINI原人の運命論」関連ページ
MINI原人の運命論 1
MINI原人の運命論 2
Posted at 2016/12/06 18:36:06 | |
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