MINI原人のブログ一覧

本日は原人蔵書の２冊の本を元に、色彩の美とはいかなるものなのかをお話ししましょう。 １冊は、美を感じる脳の進化を論じたThe Aesthetic Brain: How We Evolved to Desire Beauty and Enjoy Art（美的脳： いかに我々は美を求め、芸術を楽しむよう進化したか）。もう1冊は、美を感じる脳に何が起こるかを論じたFeeling Beauty: The Neuroscience of Aesthetic Experience（美を感じる： 美的体験の神経科学）です。



人が色を美しいと思うのはどのような時でしょうか？　純粋な単色ならばそれを美しいと思うことはまれです。しかし、同じ単色でも、美しさを想起させる概念や言葉といっしょになったときには美しいと感じることができるようになります。
フランスの伝統色より
そして、連想される概念や事物は人の個人的体験や知識により異なり、その人が属する地域の分化に大きな影響を受けます。
下の図は、同心円上のA～Jの文化地域に色が1～84の概念とどう結びついているかを示しています。例えば、Bの日本では、赤は怒り・危険・欲望・興奮・愛・情熱・邪悪へ導く・力、黒は不運・死・邪悪・スタイル・不幸、青は冷たい・生命・忠誠・お金・平和・合理的といった概念と結びついています。もちろん個人的な嗜好も重要で、フェラーリファンなら赤を美しいと感じ、サッカーファンなら青を美しいと感じるかもしれません。

Jackrabitt WhitePaper "Neuroscience and Design"よりおかりしました。

では、どういう車の色を人は美しいと思うのでしょうか。単色はそれだけでは美しくはありません。下の図をみていただくとわかりますが、車のボディの輪郭に沿って、色が微妙に変化していますね。美しい形によって色調や彩度、明度に連続的な変化が起きます。これを人は美しいと感じるのです。
車の写真をとるカメラマンはもう１つマジックを行います。車の色と同系統の色の背景といっしょに写真をとるのです。そうすると、車体に背景が映り込み、さらに深みのある美しい表面となります。

		おかりしました。

人は下の左の図のような色のカオス状態よりも、右図のような色のグラデーションのほうを美しいと思います。同系統の色の集合体は、森や湖沼のように豊かな環境を表わし、それは生存に有利だからです。

おかりしました。

人の顔や身体は左右対称で、各パーツの配置が平均的であることが美しさの条件です。それは健康であり、長寿と繁栄を間接的に示しているからです。「美的な脳 AESTETIC BRAIN」の著者は、均整がとれ、調和を持つものが生存に有利であり、それを美しいと思うことにより、人類は生存競争にうちかち、繁栄してきたのだとしています。

おかりしました。

こうした人間が本能的・進化的に選ぶ美的基準は古来から経験的に黄金比や遠近法、色彩理論として美学の基礎となっていました。現在は脳科学の応用として「美」を測定可能な客観的対象として扱えるようになってきています。車のデザインに脳科学が応用される日も近いと考えられます。

次回はそうした美的体験が、いったい人の脳にどのような変化をもたらすのかについてお話いたします。

PS: これが勝色です。


「MINI原人色彩論」関連ページ：
色彩論1 （車の塗装色） (2016.12.18)
色彩論2 （特殊な視覚能力） (2016.12.21)
色彩論3 （立体視の光と影） (2016.12.22)
色彩論4 （色覚の進化史） (2016.12.24)

MINI原人から皆様へクリスマスのご挨拶です。いつも大変ご愛顧いただきありがとうございます。皆様によいことが起きますよう、ベルベルランプを一生懸命こすっておきます。このブログをみたひとには幸せが訪れますように。

光そのものには色がなく、色は目によって知覚されて生じるものであることに最初に気づいたのはあのニュートン（Sir Isaac Newton、1642-1727）でした。彼はその著、光学（Opticks、17041)にてそう述べています。現在では色は波長の違う光を識別するために脳の中で生じた知覚であることがはっきりしています。　すなわち、光には色はなく、色は脳内にあるのです。

図１．ニュートンと光学Opticksの表紙。

MINI原人色彩論2では色の見え方には網膜レベルでの個人差があること、色彩論3では立体・光・影との関係で色の見え方に脳レベルでの個人差があることを述べました。そうした事実は特に2次元画像に関わる人たちが知っておいていい事実です。本日は色というものが生まれた理由、その進化史についてお話しましょう。ヒトが今の３色型色覚を獲得したのは、実はナサケナ～イ理由があるのです。

　高等な脊椎動物としての魚類は広い光の波長帯域を４つに均等に分けてカバーする光受容体（オプシン）を進化の結果獲得しました（図１)。魚類が水に上がって両生類から進化した爬虫類、恐竜、そして恐竜から進化した鳥類も同様に理想的な光受容体を持ち、４色型色覚を持っています（図２）。４色型色覚を持っているからといって、人間と同じように色彩溢れる世界を知覚しているかというとそれは判りません。色彩を認識する大脳の発達が悪いからです。でも彼らはこの４色型色覚でエサとなる昆虫、小動物、植物などを効率的に発見し、見分けていたと考えられます。

　ところが哺乳類になるとこうした優れた色覚はオプシンを２つ失うことによって退化します。初期の哺乳類は、恐竜から隠れてコソコソと暗いところに住んでいる夜行性動物でした。彼らにとっては色を識別する錐体細胞よりも高感度な桿体細胞による暗視カメラのほうが重要だったのです。

図２．各種動物のオプシン（光受容分子）の波長感受性。鳥類・爬虫類（右下）はほぼ均等に分布する４つのオプシンを持つが、霊長類では偏った分布のオプシンを持つ。（おかりしました）		図３．光受容分子オプシンの進化の歴史。はじめ脊椎動物の祖先＝魚類は４つの均等に分布するオプシンを持ち、鳥類や爬虫類はそれを受け継いだが、哺乳類になると一旦２つのオプシンを失い、類人猿になる段階で１つ新たなオプシン（緑色に反応）を獲得した。

図４．トマトの成熟と色の変化（原人畑）

哺乳類の進化が進み、霊長類特に類人猿になると、緑色の波長帯域をカバーするオプシンを新たに獲得する進化が起こりました（図３）。これにより、緑・黄・赤がよく区別できるようになったのです。のこの進化的理由としては当初「フルーツ説」が有力でした。果物は熟すに従って緑→黄色→赤へと変化します。熟したフルーツをより効率的に発見するためだとされたのです。しかし、この説は実験により熟した果物の発見は2色型も3色型もあまり変わらないことが判って否定されました。

　ところが2006年、米カリフォルニア工科大学のマーク・チャンギジ教授、下條信輔教授らは、「仲間の顔色を知るコミュニケーションのために進化した」と主張し、学会を驚かせました。ヒトの色覚がどんな波長の光を鋭敏にキャッチするかを調べると、顔色の変化を読み取るのに非常に適していることがわかりました。また様々なサルの顔面の皮膚の露出度と色覚の発達を見比べると、毛が少なく皮膚が良く見える種類ほど、3色型の色覚を発達させていることもわかったのです（Changizi MA, Zhang Q, Shimojo S: Bare skin, blood and the evolution of primate colour vision. Biol Lett 2006; 2: 217-221）。



つまり、原人や人間の色彩感覚は美しい自然を楽しむためではなく、実は、

上位個体（上司、ボス、オクサン）の顔色をうかがうために発達したのです。

なんというナサケナイ理由でしょうか。　いつも顔色をうかがって生きている皆さん、がっかりしませんか？

「MINI原人色彩論」関連ページ：
色彩論1 （車の塗装色） (2016.12.18)
色彩論2 （特殊な視覚能力） (2016.12.21)
色彩論3 （立体視の光と影） (2016.12.22)

一昨日まで原人の平和(Pax MINIpitheca)を楽しんでいたが、昨日午後から雪が降り始め、夜中降り続いた雪が朝、少なからぬ積雪に達した。　原人は家のなかでぬくぬくしてみんカラ・ブログ執筆など楽しんでいたが、今朝出勤するため、やむなく敵との交戦状態に入れり。

朝5:28 ちゃべさんは原人にエサをもらい、いつもと同じ姿勢で睡眠を開始した。		5:35 一晩で積雪約20cm。けっこう積もった。

5:39 まずFITさんの前の深い雪を排除する。		5:47 ＦＩＴさんを道路に出した後の状態である。かなり雪の量は多い

7:18 仕事から帰ると、マダムが既に起きて除雪を開始していた。敵はどっさりある。 こしゃくな奴ばらめ。		7:27 ふふふ、きさまらはもう死んでいる。非人道的重火器ボウの蓋が開いた。

7:32 覆いかぶさる敵雪を振り払い、重戦車ユキオスを始動。		7:34 敵雪の死骸の山、モンブランへの道を拓くため、敵を蹂躙する。

7:35 モンブラン造山中。		7:37 ジュジュジュと悲鳴をあげる敵を容赦なく死の釜ボウにくべる重戦車ユキオス。

7:59 重戦車ユキオスの雄姿。まだ戦いは続く。		8:47 ようやく残兵を駆逐。朝の戦いは終了した。

今朝のたたかいは誠に激戦であった。２時間に及ぶ死闘であり、ボウ稼動時間１時間２０分、灯油消費量20Lである。　見事な勝利であったが、本日夕方、また戦闘が予想される。

追伸：　夕方までにすこしだけ雪が降りました。

16:04 少しだけ雪が積もっています。		16:24 20分後きれいになりました。

「雪とたたかう」シリーズ：

MINI原人雪とたたかう 1 (2016.11.23)	MINI原人雪とたたかう 2 (2016.11.30)
MINI原人雪とたたかう 3 (2016.12.07)	MINI原人雪とたたかう（限定戦略） (2016.12.11)
MINI原人雪とたたかう（戦車戦） (2016.12.11)	MINI原人雪とたたかう（とどめ） (2016.12.11)
MINI原人雪払い呪文 (2016.12.13)	MINI原人雪とたたかう（モン・ブラン） (2016.12.16)
MINI原人雪とたたかう 9 (2016.12.17)	MINI原人クリスマス休戦 (2016.12.18)
MINI原人休戦終了(T◇T) (2016.12.21)

本日はMINI原人色彩論第３回目。人間の目で見たものは、大脳で処理され修飾されて最終的に認識されます。その処理過程は人により異なっているので、同じものが同じように見えないことがあります。




Voici mon secret. Il est très simple: on ne voit bien qu'avec le coeur. L'essentiel est invisible pour les yeux. (Le Petit Prince)
　さあ、ぼくの秘密。とっても簡単なんだ――心で見ないと、ものはよく見えない。そのものが何なのかってことは、目で見ても分からない。 (星の王子さま）

人間の眼の網膜で受容された光の信号は複雑な経路を伝わり、まず大脳の最後部にある後頭葉一次視覚野に入り、そこで処理が開始されます。 そして、並列処理された視覚信号はさらに複雑な認知を行うために、２つに分かれて上方の頭頂葉後部、下方の側頭葉下部にて処理されます。 上方：後頭頂皮質では空間認知つまり動きと空間的位置関係の認知を行うための処理を行います。 下方：下側頭皮質では物体認知すなわち形態と色の解析・認知が行われます。

左のドレスを見てください。このドレスはインターネット上で話題になったので、もう既にみたことがある人も多いと思います。このドレスは ①　青と黒の縞模様に見えるひと（下図中央）、　 ②　白と金の縞模様に見えるひと（下図右）、 の2種のひとびとがいることがわかっています。約半々のようです。

あなたは青黒派でしょうか、それとも白金派でしょうか。

それを説明する前にまず、右の立体図形を見てください。AとBのマス目がありますが、どちらの色が濃いでしょうか？よっぽどひねくれ者でない限り、Aのほうが濃く、Bのほうが明るい色であると答えるでしょう。 でも本当はAもBも同じ濃さの灰色なのです。 どうしてこんなことになるのでしょうか？　その鍵は「人間は立体視ができる動物である」ということと、「光と影の世界に住む動物である」ということです。そしてもう一つの鍵は、「人間は文明の発達により紙の上やディスプレイ上に描かれた二次元の”立体物”の光と影を見るようになった」ということです。

いちばん最初に述べたように「立体」に関する認知処理は脳の上のほうで、「光と影・色彩」に関する認知処理は脳の下のほうで行われ、その処理は離れています。役所の縦割り行政と同じでちぐはぐが生じやすいのです。そして、2次元の「立体」・「光と影」は本当はないはずのものを無理やりつじつまをあわせてあるように認知しています。これがマチガイの素です。

立体の影の中にあるものは、明るい太陽に照らされたものより実際より暗く見えるはずであるから、それを脳が補正して、影の中のものは「明るいもの」、光の中のものは「暗いもの」として認識します。　これがAのマスが暗く、Bのマスが明るく見える理由です。

ドレスの場合も同じです。とても明るい逆光の中で、ドレスが影になるような状況の写真ですね。影の中のドレスの色はもっと明るいはずだからと無意識に脳が明るく見える様に処理します。そのときその補正が大きいひとは、ドレスが白と金色だが、影になっているので青みがかって見えるのだと脳が誤解します。補正が小さいひとは、ドレスは青と黒であるけど、すこし明るい光の中で実際より明るく見えていると脳が誤解するのです。

fMRI（機能的核磁気共鳴イメージング）を使った研究では白金（WG)のひとの方が、青黒(BB)のひとよりドレスを見たときの脳の関連領域での活性化が強く起こっていることが示されています。

Schlaffke, L et al: The Brain's Dress Code: How the dress allows to decode the neuronal pathway of an optical illusion. Cortex 2015;73:271-5 より。

このような人間の視覚の特性を理解すると、みなさんがクルマの色を選ぶときに重要なことは、

カタログやディスプレイの二次元画像でクルマの色を決めない。

ということです。カタログ写真をとるプロ・カメラマンは「光と影・色彩の魔術師」であり、美しく見えるライティングで何枚も写真をとり、その中から最も魅力的なものを選びます。白金と青黒ほどは違わなくても、思ってたイメージとちがったという悲劇を避けるためには、実際にディーラーに行き、その色のクルマをみること。できればショールームではなく、外の光の中でみることが重要です。もし、その色のクルマがなければ、あるところまで出かけて行ってみるくらいの努力が必要です。長年付き合っていくクルマですから、本当に満足できる色を買ってください。もっとも白や黒を買うなら、目をつぶって買ってもOKです（笑）。


「MINI原人色彩論」関連ページ：
色彩論1 （車の塗装色） (2016.12.18)
色彩論2 （特殊な視覚能力） (2016.12.21)