以前にワイドショー脳と書いたけど、ワイドショーを真に受けて社会や政治にフンダララとか言っている人って、失礼だけど、ちょっと足りない人達だと思う。
それは新型コロナ流行にも言えること。
■PCR検査で疑いのない大量の人を検査してはいけない
ワイドショーでは白鵬大学の医者ですらない学者を散々番組に出して、多くの人にPCR検査を受けさせるべきとか、いい加減なことを連呼させていたみたいだけど、それを真に受けるのはどうかと思う。
まずPCR検査はスクリーニング(多くの人を検査して、陽性か陰性かを分ける)には向かない検査だということ。
PCR検査で正しい結果を得るには、事前確率を高くする、つまり「かなり怪しい人」を主に検査しなければならない。
この時期になって「PCR検査が足りなかった」とか思っている人は、ワイドショー脳だと自覚した方がいい。
■PCR検査は患者にとってメリットはない
実際、症状がある人に対してPCR検査を行ったとして、現状は陽性でも特別な治療があるわけでもなく対症療法しかできず、陰性でも偽陰性(実際は陽性なのに検査で陰性となること)の恐れがあるので、結果が陽性でも陰性でもどちらにしても隔離(自宅隔離含む)しなければならないという点は全く同じ。
患者にとってメリットがある検査ではないし、メリットがない検査を行うのはリソースの無駄な消費。
しかも検査して陰性と判断されることで、自分は大丈夫だと思い込む人まで出てくる。
須藤元気
https://twitter.com/genki_sudo/status/1248540842899341313
なんでこんな人を国会議員にしたのかというのはさておき、信頼性の低い検査で陰性となったからと言って、病気にかかってないと思い込むのは愚の骨頂。
~神奈川県民の皆様へ~
(神奈川県医師会からのお願い)
http://www.amagasaki.hyogo.med.or.jp/forciv/1889/
◆ごまかされないで◆
この新しい未知のウイルスに、本当の専門家がいません。(中略)過去の類似のウイルスの経験のみですべてを語ろうとする危うさがあります。そして専門家でもないコメンテーターが、まるでエンターテインメントのように同じような主張を繰り返しているテレビ報道があります。
コロナ流行初期、新型コロナに直接向き合う医師が、ワイドショーの無責任な報道に対して、どれだけ苦々しく感じていたのかわかるコメントです。
■海外でも軽症者にはPCR検査をしない
まずニューヨークの検査基準から。
COVID-19 Testing
https://coronavirus.health.ny.gov/covid-19-testing
・濃厚接触者
・危険地域への海外渡航者で症状のある人
・検疫のため隔離され症状のある人
・他の感染症が陰性で症状がある人
・医師と保健当局の合意がある人
咳や熱だけの軽症者は希望しても検査されません。
ニューヨークでは症状がない人までもが不安に駆られて検査を求め、長蛇の列を作りました。結果としてそれが感染を広めたという説もあります。
柳澤教授(米国日本人医師会会長)
「たくさんの人々が病院の前に並び何日もそこへ通い『検査をして欲しい』と来ていた。そこでクラスター現象が繰り返されていたかもしれない」
ですから、ニューヨークでもドライブスルー検査の基準が改められました。
『テストは予約制です。 【濃厚接触者で症状がある居住者】は、ホットラインに電話することで(検査を受けるべきかどうか)査定されます。』
とされ、誰にでも検査するようなものではありません。
次にニューヨークの病院で配られたチラシ。
NOTesting For Mild Symptoms
https://www.mountsinai.org/files/MSHealth/Assets/HS/About/MSHS_COVID-19_Mild_Symptoms_24x36.pdf
『ニューヨーク市保健精神衛生ガイドラインに従い、Mount Sinai Health System を含むすべての医療提供者は、無症状・軽症者に対して COVID-19 テストを提供しません。』
ニューヨーク市長はNBAが軽症者のPCR検査をしたことについて、医療資源の浪費だと批判しました。
ニューヨーク市長がNBAを批判 「検査は富裕層のものではない」
https://www.sponichi.co.jp/sports/news/2020/03/19/kiji/20200319s00011061104000c.html
次に感染者が比較的少ないカルフォルニア。
What You Should Know About Coronavirus (COVID-19)
https://www.coveredca.com/covid19/
『COVID-19の懸念を含め、風邪や咳の症状の受診や治療には、遠隔医療の利用を推奨します(つまり直接診察するのではなく、電話またはビデオでの診療です)』
米国CDC(疾病対策センター)の見解です。
Testing for COVID-19
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/symptoms-testing/testing.html
・ほとんどの人は軽度の症状で、医療を受けなくても自宅で回復します。検査する必要がない場合があります。
・COVID-19のために特に承認された治療はありません。
元CDCの医師が、軽症者には検査をしない6つの理由を述べています。
Dr. Tom Frieden on Six Reasons New Yorkers with Mild Symptoms of COVID-19 Should Not Seek Care or Get Tested
https://www.vitalstrategies.org/six-reasons-new-yorkers-with-mild-symptoms-of-covid-19-should-not-seek-care-or-get-tested/
1)軽症患者が医療機器を使い果たすことで、重症患者が必要な検査ができなくなる
2)軽症患者が検査を求めて受診することで、医師や看護師、他の受診者に感染するリスクが高まる
3)感染していない場合、受診や検査の過程で感染するリスクがある。軽症患者を含む多くの人が受診することで、医療現場全体の安全が損なわれる
4)検査をすることで、あなたがやるべきことは変わらない。自主的に自分自身を自宅隔離すること。 COVID-19の症状を持つ人は、すべての人が陽性だと考えること。検査の結果がどうであろうと、あなたがやるべきこと、医師がやれることは同じ
5)ウイルスに感染している場合でも検査結果が陰性になる可能性があり、自主的に自宅隔離していないと他の人に感染するリスクがある
6)現在のところ、検査を行うことで有用な施策や意味のあるデータは得られない。陽性の人が多すぎるため、またこれは重要ではないため、保健局は感染経路の調査を行わない。養護施設や病院での集団発生の防止や中止など、現在他の緊急作業によって COVID-19 に対抗している
スウェーデンの17歳の子供ですら、自主的に自宅隔離する意義を理解して実践しています。
検査してほしいと駄々をこねたりしませんでした。
グレタさんがコロナ感染か 旅行後に症状、自主隔離―スウェーデン
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020032501322
つまり、「症状があるのにPCR検査を受けさせないなんて!」と騒いでいる人は、スウェーデンの17歳の小娘以下ということです。
■韓国ではPCR検査を大量にして防いだのでは?
韓国の防疫については、本当に反面教師としていい事例です。
詳しく書くと長くなるので、簡単に書くと、
1)当初は疑い例が検査を受けるのは義務ですらなかった
2)大規模クラスタが発生し、社会がパニックになった
3)多くの人を片っ端からPCR検査し始めた
4)病床が足りなくなり、入院できない重症患者が何人も亡くなった(医療崩壊)
5)慌てて検査基準を変更して、疑い例のみにした
現在、韓国が新型コロナの流行をなんとか防いでいるのは(再流行の話もありますが)、大きな要因としては2つ。
・徹底的なプライバシー無視、隔離違反は懲役刑、電子ブレスレッドで監視
・初期に大流行したため、欧米から渡航制限を受けた結果、逆に欧米からの第2波が来なかった。
決して韓国の防疫体制が特別に優れている、という訳ではないですよ。
台湾が死者数を抑え込んでいるのは、早い時期(昨年の12月)から情報を得ることで、中国からの渡航制限と防疫処置を行い、新型コロナの流入を防いだからですが、まともな法治国家では WHO が緊急事態宣言(1月31日)をする前に渡航制限をするのは無理な話です。
■医者もPCR検査をしろと要望を出したのでは?
PCR検査「無症状でも保険適用を」京大病院と府立医大病院が共同声明
https://mainichi.jp/articles/20200415/k00/00m/040/334000c
本当に毎日新聞などが悪質だと思うのは、記事の見出しでミスリードを狙っていること。
共同声明で要望しているのは、ワイドショーで騒いでいたような
「無症状でも保険適用して多くの人をPCR検査する」
のではなく、
「院内感染を防ぐために入院・術前患者をPCR検査するのは保険適用してほしい」
ということ。
京大医学部付属病院の要望書
https://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/press/20200415.html
これは患者のための検査ではなく、病院のための検査。
また、一時期は疑い例が増えすぎて、東京などの一部地域では、クラスタ対策のための疫学調査に必要なPCR検査まで延滞することになったのは事実だけれども、これはワイドショーが騒いだように「PCR検査が少ないから新型コロナが流行した」のではなく、「新型コロナが流行したからPCR検査が足りなくなった」という事例。
こうなってくるとPCR検査云々ではなく、社会的隔離(外出自粛要請)が必要になる。
■日本は中国由来の新型コロナ流行を防いだ
日本は日本独自と言っていい、厚労省によるクラスタ対策班によるクラスタ対策が功を奏して、中国由来の新型コロナはすでに防いでいます。
国内で感染拡大の新型コロナは欧米から 「現在は第2波」と感染研がゲノム解析で見解
https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2020/04/20200430_01.html
日本での4月からの流行は、欧米から持ち込まれたコロナウイルスだということ。中国由来のウイルスは、4月頃には検出されず、収束したと判断されている。
これは4月中旬の感染者数のグラフだけど、日本は山が2つあり、第1波を押さえ込んだあとに第2波が来ているのがわかります。
つまり、日本のクラスタ対策は、欧米からの再流入さえなければ、大きな被害を出さずに新型コロナの流行を阻止できたということ。
更に言えば、プリンセスダイヤモンド号の検疫、つまり疫病を日本国内に持ち込ませないという目的は達せられたということ。
3月に卒業旅行とやらで欧米に旅行した学生は、京都産業大学の学生だけじゃないはずですよね。
欧米での大流行が発覚するまでは、欧米から日本への渡航も制限していませんでしたし、これはもうどうしようもなかったとしか。
中国からの渡航を早期に全面禁止していれば、とか言っている人もいますが、即座に全面禁止した米国があの惨状で、渡航制限を流行地域に限定した日本は早期に収束させているんですよ。
■厚労省対策班には国民栄誉賞を与えるべき
米国では大流行を起こしたのに、日本版CDCを作るべきとか言っている足りない人もいるようですが、日本の医療体制と厚労省によるクラスタ対策は、世界でも類を見ないほど優れていたと言えます。
死亡者数を人口比で見ればあきらかですから。
日本の勝因は、
・誰でも気軽に、即座に病院にかかれる体制を確保しているため、感染初期の患者を見落とさなかった
(米国がCDCにかけている費用を、日本では国民総医療保険制度にかけていると言え、それが功を奏した形になっている)
・厚労省がクラスタ感染の特徴をよく理解し、感染の要所を抑えた
(1月15日〜16日の最初の日本の2次感染が、のちの東京の院内感染まで繋がっていることをきちんと調査している)
・責任感のある保健所と病院と医師と看護婦、医療関係者が率先して新型コロナの治療を行った
ことで、逆に日本の敗因は、
・欧米からの再流入を防げなかった(これは時系列から見てどうしようもない)
ということ。
今でもまだ、
・PCR検査が少ないから流行した
・中国からの渡航制限が遅かったから流行した
・プリンセスダイヤモンド号の検疫は失敗だった
・厚労省のクラスタ対策班は役に立たなかったから流行した
とか言っている人は、まずは自分がワイドショー脳だと自覚した方がいいですよ。