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2020年06月01日 イイね!

WLTC と JC08 の比較と WLTC の問題点

しばらくブログの更新をサボってました。
SKYACTIV-X の記事を書きたいなと思ったのですが、その記事を書く前に、燃費表示について記事にしないといけないかなと思って、久しぶりに記事を書きます。

多くの方は「カタログの燃費表示は実際の燃費より高いのはあたりまえ」と思っていますよね。そう、車好きには常識と言っていい話です。

「でも何で?」

と聞かれると、答えられる人ってどの程度いるんでしょうか。

■ JC08 は日本の交通事情を考慮した燃費モード

燃費を計測するにしても、色々な車を比較したい場合は、その走行パターンを統一しなければなりません。
大昔、車の燃費計測のための走行パターンは 60km/h での一定走行でした。しかしこれでは実燃費との乖離が大きいということで、1973年に10項目の走行パターンを想定した10モード、1991年に更に15項目を追加して 10・15モードという走行パターンが採用されました。
しかしそれでも実燃費との乖離が大きく、2011年には JC08 という走行パターンが制定されました。


(国交省 燃費測定モードについてより引用)

これを見ていただければ分かる通り、10・15モードより複雑になり、走行距離も長くなっています。日本の道路状況を想定し、最高速度 60km/h で時々信号にかかる郊外での状況や、最高速度 30km/h で停止時間も長い渋滞での状況、そして最高速度80km/h で高速道路を走る状況など組み合わせ、平均速度は 24.4km/h で、最高速度は 81.6km/h となっています。

■WLTC は世界標準

JC08 日本の交通事情を考慮した燃費モードだと書きました。
同様に、アメリカにはアメリカの、欧州には欧州の、それぞれ独自の走行パターンで計測した燃費モードが定められています。
それに対して WLTC は「世界の交通事情」を考慮し、世界各国で共通の走行パターンで燃費を計測することを目指したものです。


(国交省 乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試験法(WLTP)の概要について より抜粋)

JC08 と WLTC の大きな違いは、JC08 は市街地も渋滞も高速道路も全部まぜこぜにして1つの燃費だけを示していましたが、 WLTC は WLTCモードという燃費だけではなく、市街地モード(WLTC Low)、郊外モード(WLTC Midium)、高速道路モード(WLTC High)の3つの燃費も併記されることです。


(国交省 燃費の表示内容が変わります! より抜粋)

ここまで長かったですけど、みなさんご存知ですよね。
本題はここからです。

■WLTC の問題点

ここまではWLTCが導入された2年前に記事にしたとしても「そんなことはわかってるよ」と言われるような内容です。
しかし、改めて2年前のどの記事を読んでも、JC08 に対する WLTC の問題点(懸念点)が記載されていません。

ですので、改めてここで記事にしておこうかと思った訳です。

【問題点1:日本の交通事情と乖離している】

すでに書いた通り、JC08 は日本の交通事情を勘案して、走行パターンが定められています。
しかし WLTC(WLTP)は世界(日米欧印韓)の実際の走行パターンを勘案して作っていますので、どうしても日本の実情とは乖離します。

そのため、日本では WLTC で定められている、最高速度131.3km/h を想定した超高速モード(WLTC Ex-High)」が省かれています。



しかしそれで解決した訳ではありません。

私が考えるもっと大きな問題は、市街地・郊外・高速道路の走行パターンの比率が、日本の実情と全く合っていないのです。


(環境省 WLTCの国内導入について より抜粋)

この右側円グラフを見て分かる通り、

日本:市街地4割、郊外4割以上、高速道路2割以下

世界:市街地2割以下、郊外2割、高速道路3割、超高速3割以上

という交通事情の違いがあります。
日本では、車が走行する大半の時間(8割)が、市街地と郊外なのに対して、世界的には市街地を走行する距離は少なく、高速道路が主なのです。

ですが、残念ながら日本のWLTC燃費は世界標準に合わせて計算されています。

【問題点2:停止時間が短い】

皆さんご存知の通り、日本は国道でも信号が多く、多くの運転時間を停止時間として費やしています。

この停止時間ですが、JC08 では実に 29.7% が停止時間なのに対して、WLTC では 15.4% しかないのです。


(国交省 乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試験法(WLTP)の概要について より抜粋)

これも日本の交通事情と、世界の交通事情の違いが理由です。

これを受けて、トヨタは大胆にもアイドリングストップを廃止しました。

 新型ヤリスがアイドリングストップをやめた意外な理由 燃費至上主義に終止符!? それとも…??
 https://bestcarweb.jp/news/122785

トヨタの広報の公式回答は、

「スマート&ストップ(=アイドリングストップ)は、燃費改善のためのアイテムです。今回のRAV4、カローラ、ヤリスは、TNGAエンジンを採用しており、スマート&ストップがなくても、充分競合性があるためにスマート&ストップの設定をしておりません」

だそうですが、要は「JC08 から WLTC になったらカタログ燃費には大して影響しないのでやめました」ということです。さすがカタログ値を追い求めるトヨタです。

 「クルマを走らせる楽しさ」へのこだわり――マツダ・アイドリングストップ開発の哲学
 https://www.itmedia.co.jp/makoto/articles/1006/29/news004.html

「実際に、i-stopを搭載したアクセラセダン(AXELA Sedan 20E/5速AT)を借りて、金曜日夕方の都内を走ってみた(2010年6月25日16時40分~18時)。すると、1時間のうち約23分はアイドリングストップをしている。」

カタログ燃費にはほとんど影響がなくても、現実には30%以上もの停車時間があるとしたら、アイドリングストップは要らないと言えるのでしょうか。
私はアイドリングストップのお陰で、渋滞時のイライラが大きく解消したので、簡単には否定できません。

■結論

WLTC でどうやってカタログ燃費を見るべきなのかの結論です。

・WLTC 燃費は無視
・大都市圏に住む人や、買い物などに使う車は、WLTC 市街地モードを参考にしましょう
・郊外や旅行などに使う車は、WLTC 市街地モードと郊外モードの平均を参考にしましょう。
・毎日30分以上、渋滞もなく通勤に使っている人は郊外モードを参考にしましょう。

これだけで実燃費との乖離は相当抑えられると思います。
Posted at 2020/06/01 13:58:15 | コメント(0) | トラックバック(0) | | クルマ

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