殺人事件

昼休みにノリコがやって来て言った。
「大変よ。血があるの！」
えっ、と言って僕らはみんなで現場に急行した。


「あ、ホントだ！」
ノリコが言ったように大量の血が流れていた。
「大変だ。先生に言わなくては」
僕らはドキドキした。
だって大量の血を見るのは初めてだったのだ。
「殺人事件かもしれない」
クラス委員長の僕が言わなければ。


急いで教室に戻ると担任の先生がやってきた。
僕が言い出す前に先生が言った。
「タケダ君たちは血を見たの？」
「はい」と僕が言うとクミコ先生の顔が真っ赤になった。
「ダメよ」
「だって」（殺人事件かもしれない）と言おうとすると先生は「男子は女子トイレに入っちゃダメ！」
叱られて訳がわからずに僕は大人は理不尽だと思った。


それから僕も大人になった。
でも先生はやはり理不尽だったと思っている。

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