
地球温暖化は止まった。
経過はこうだ。
2020年新型コロナウイルスが流行した後、数年おきに変異したウイルス感染症の流行が繰り返された。
生活は一変した。
まず家庭内での濃厚接触がなくなった。
夫婦関係は破綻し、出生率がますます低下して少子化が進んだ。
一番危険な行為はディープキスだ。
キスをしなければ子供も生まれない。
ただでさえ寝室が女房と別だった俺は、食事さえ家族ととることがなくなった。
恋人たちも別れて結婚する人間も急激に減少した。
不倫カップルもいなくなった。
もちろんキャバクラやホストクラブもなくなり、居酒屋や風俗店も無くなった。
映画館、劇場や大規模ショッピングセンターもすべて廃業した。
自動車は売れなくなり、観光業も壊滅した。
アマゾンとウーバーイーツだけは業績を伸ばしたが、最近は配達員がいないらしい。
いくら高給でも命をかけるのは俺も嫌だ。
国民はまず家を出ない。
病院にも行かないので自宅で死ぬ人間が増えた。
その結果医師不足や病床不足も解消した。
ウイルスが毎回変異するたびに強毒化し、60歳以上の人間はほぼいなくなった。
介護する人間がいなくなったが、高齢者がいなくなったので困らなくなった。
この結果人口が激減し、日本では令和20年までに5000万人になった。
海外との輸出入も減り続けた。
食料が足りない日本は食料の輸入は続けたが、人口の減少で必要な輸入量も激減した。
世界の食料危機は解消され、餓死者もいなくなった。
食料価格もどんどん低下している。
日本では石油の輸入が減ったため、発電はすべて原発に置き換わった。
どうせ外に出ないのだから放射能漏れも怖くない。
サラリーマンの仕事はすべてテレワークになったため公共交通機関も随分つぶれた。
最初はリモートワークで通勤費も払わなくて済むし、オフィス面積も削減できると企業は喜んでいたが、そのうち社員を半分くらいに減らしても大丈夫だと気づいて大量に解雇者が増えた。
でも高齢者がいなくなって労働力人口も減ったために今のところ極端に失業者は増えていない。
少子化で新入社員も入ってこないので当面大丈夫だろう。
大量の空き家が発生し、地価も下がり続けて誰でも家が買えるようになった。
人口が減り続ける一方なので、当然GDPも下がり続けた。
でも必要な物資も減っているので不自由はない。
以前随分問題視された医療費の増加は減少に転じている。
これも高齢者がいなくなったおかげだ。
縮小均衡で経済が回るようになったのだ。
物価も下がり続けているので年収が半分になってもちっとも困らない。
年金だって受給者が急にいなくなったので掛け金が大幅に低下した。
この傾向は世界中で多かれ少なかれ同じだった。
ただ中国だけは生産人口が多いだけに失業者が急増し苦労が多いようだ。
軍拡に金を使わなくなり、尖閣にも来なくなった。
世界中の軍需産業が潰れている。
世界は平和になった。資源を奪い合う必要もなくなったのだから。
外出する楽しみや娯楽、そして人と会うことがなくなった以外は総じて人間はコロナ前より幸せになったのではないだろうか。
経済活動の鈍化とともに温暖化が止まったため、今は地球の温度は毎年低下している。
そのうち南北の極地に近い地域は人が住めなくなるかもしれないが、問題はないだろう。
約78億いた世界人口はすでに35億までに減っている。
人類が滅亡する日は遠くない。
100年もかからないだろう。
皆幸せに暮らしながら人間はいなくなってしまうに違いない。
そして地球は温暖化も環境破壊もない美しい星に戻るのだ。
環境保護団体や活動家がずっと望んできた世界がコロナのおかげで遠からず実現する。
なんて素晴らしいのだろう。
#ショートショート
#コロナに負けるな
Posted at 2020/11/22 07:31:45 | |
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