
今回紹介するカタログはダイハツのアプローズのカタログです。1998年11月現在のものでカタログのダイハツロゴが現行の物に変更されています。
アプローズは1989年にシャルマンの後継として登場し、同社における最高級車という扱いでした。
それまでのシャルマンはカローラのプラットフォームを流用して独自の高級感のあるデザインのボディを載せたセダンでしたが、このアプローズはバブル真っ只中の時期に開発されたこともありダイハツの独自設計となっています。そのためこのアプローズのために新開発の1.6Lエンジンをわざわざ開発するなどかなり力の入った設計となっていました。
ボディは一見4ドアセダンに見えますが、実はトランクとリアゲートが一体で持ち上がる5ドアハッチバック(いわゆるセダン風5ドア)となっており、ダイハツではこれをスーパーリッドと呼んでアピールしていました。
このセダン風5ドアは日本ではプリウスぐらいしか成功例が無く、他にもこの時代ではGDカペラCG、90系スプリンターシエロ、E30型エテルナなどが存在しましたが全て失敗に終わっています。しかし欧州では比較的メジャーな存在であり欧州車にはこのような5ドアハッチバックが多く存在しました。そのためアプローズも(後述の事情もあってか)国内よりは欧州の方が好調でした。
またCMを見てもわかるように当初のボディデザインはフラッグシップでありながらシンプルでクリーンなイメージのものとなっており、バブル真っ只中の時代の中で質実剛健な物となっていました。評論家の中には子供が描いたクルマのようにシンプルという声もあったようです。
しかし
発売直後にATとオルタネーターが原因のリコールが発生してしまい、10月27日にリコール届けを出すのですが、、、
何とこの10月27日は東京モーターショーにおける一般公開日初日でした、、、、
これに対してモーターショーの主催者である自動車工業振興会が、「
リコール対象車を出展するのはいかがなものか」と反応したことが新聞などで報道されて悪いイメージがついてしまいました…
余談ですが、この年から長年開催された晴海から幕張メッセに移転したばかりの年でもありました。
そしてアプローズの悪夢はこれだけにはとどまらなかったのです…
同年11月には、ガソリンスタンドでアプローズに給油しようとした際に、給油口から吹き返したガソリンに何らかの火が引火して従業員が火傷を負うという事件が発生し、
さらに走行中にエンジン付近から出火し、クルマが全焼するという事件も起きてしまいました…
そしてこれを
どこぞの朝〇新聞が大々的に報道したことでアプローズは欠陥車のイメージが定着してしまい、一気に販売は低迷してしまいました…
カンフル剤として、翌1990年には特別仕様車「QR-90」を発売したり、さらに一部改良で車名をアプローズθ(シータ)に変更したりしていますが販売は一向に向上しませんでした。1992年にはフロントデザインの変更を含むマイナーチェンジを行い車名をアプローズに戻しますがそれでも販売は低迷しました。
そして1994年に一部改良で4WD車がカタログ落ちしてからは3年間何も改良などが行われず、放置プレイ状態で国内よりは好調だった欧州向けとダイハツ関係者のために生産されるような状態が続きました。
そんな中、1997年に
まさかまさかのビッグマイナーチェンジが行われます。マイナーチェンジを行うのは1992年以来5年ぶりだったため、
まだ作っていたのかというう声もあったようです。
しかしそのマイナーチェンジの実態とは……これから紹介するカタログにて紹介します・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
アプローズはシンプルでクリーンなデザインが特徴・・・でしたよね・・・・?

コンセプトのページです。フロントは
小型セダンには不似合いながら親会社のクラウンやマークⅡのごとく大型のメッキグリルがついており、悪趣味と言えるかもしれません…またヘッドライトも新しいデザインとなっておりこちらもメッキで覆われたものになっています…
ダイハツのエンブレムも背後が赤になった専用品となっており何気にコストがかかっていますね、、また背後にはバイオリンが写し出されており高級セダンのカタログ・・・のようにさせたかったのでしょう…

コンセプトのページその2です。成熟したフォルムに気品というハーモニーが響く…だそうです。確かにデビューから8年は経過しているので成熟はしているのかもしれませんが…ここまで厚化粧したものに気品は感じませんね…
しかしフロントとリアがメッキコテコテで90年代らしくやや丸みを帯びたものになっているのに対し、サイドは直線的なデザインのままであるから合っているとは言い難いです…いくら厚化粧したとはいえ元が1989年デビューであることを物語っています…
このように登場時はシンプルでクリーンだったものが厚化粧と言えるレベルでコテコテになってしまい、見るも無惨な姿となってしまったのです…ダイハツ関係者ぐらいにしか売れなくなったが故の
末期的症状とも言えるのかもしれません…
そして関係者のためにわざわざ自社生産するのも…ということに気づいたのかカムリにダイハツエンブレムを貼り付けたアルティスにバトンタッチする形で2000年5月をもって販売終了し、11年の歴史に幕を下ろしました。
それから20年経過した2020年現在でも、ダイハツ関係者のためにエンブレムだけダイハツにしたカムリがアルティスとして販売され続けています…このたため1974年のシャルマン登場から45年以上続くシャルマン→アプローズ→アルティスというダイハツ最高級車の歴史(爆)というのが何気に続いている訳です…
ちなみに中の人はアプローズ・アルティス共に一度も見たことがないです…メビウス(プリウスαのダイハツ版)なら見たことありますが…
あとアルティスも先代モデルなら前期・後期共にカタログを持っており、前期なら以前に取り上げたこともあります。
同じように「
登場時はシンプルでクリーンだったものが厚化粧と言えるレベルでコテコテになってしまい、見るも無惨な姿となってしまった」クルマとしていすゞのフローリアンもありましたね…あれも似たように売れなかったせいで15年も作られて最後は無理矢理高級車風に仕立てあげられるという末期的症状を見せてしまいましたね…
しかもあちらはプレスを変えずに上から新しいパーツを被せるというコテコテ具合がもっと酷いものでした…アプローズはちゃんとプレスから変えたのでまだマシなのかもしれません…長くなるのでまた今度語りますが…

インテリアのページです。8年間使われたインパネを捨てて新しい造形のインパネになりましたが、やはりこちらも違和感バリバリの木目調パネルを貼られています。

インテリアのページです。やはりわざとらしく?バイオリンのケースが載せられています、、またこの1998年の一部改良で内装色はベージュからグレーに変更されています。

アプローズの最大の特徴であるスーパーリッドの紹介です。他のセダン風5ドアとは異なりどう見ても4ドアセダンにしか見えないのにちゃんとハッチゲートを備えており、セダン風5ドアは不格好と思われがちだった当時の日本市場のニーズにも応えたものとなっていました。
そしてハッチバックであるために普通のセダンでは出来ないようなリアシートを倒したり、何とフルリクライニングまで可能!となっていました。恐るべき実用性です、、、
フロントシートと合わせてフルフラットには出来なかったようですが、それでもこれなら何とか車中泊もこなせそうですね!それが売りとは言え外観からは全く想像出来ないですが…

メカニズム・装備のページです。エンジンは直4・1.6LのHD型と呼ばれるもので、先にシャレードに搭載された1.3LのHC型エンジンをベースにストロークアップで拡大したものとなっています。アプローズ用に開発されましたがロッキー、
おっパイザーにも搭載されていました。
なおロッキーと言っても、もちろんCMで窪田正孝が出て
ソニポンとか言ってる新自由SUVではありません。相原勇さんが「
おニューのロッキーだい!」と言ってたクロカン(死語)の方です、ハイ、
そしてメーカーオプションでこれまた当時では高級車のごとくマルチAVナビシステムが設定されています。当時は普通にこのクラスでこのような高級なマルチナビを設定することはまず無いはずです。
CDは勿論のこと、なんとカセットも再生出来たりします、、他にも文字多重放送もあったりと時代を感じさせますね、、
しかも確か
アプローズ専用だったはずですし、わざわざダイハツのロゴまで入ってます、、コストかかってますね、、
ただし本当の高級車のマルチナビのようにエアコンの制御や車両情報の表示までは出来ません………

グレード一覧と主要装備・主要諸元です。SXとSLの2グレード体制となっています。なお1998年にはダイハツ90周年記念で限定200台で本革シート装備の特別仕様車であるSXリミテッドも発売されています。

裏表紙です。

ここからはオプションカタログに入ります。

ゴールドエンブレムだったり、クラウンのごとくクォーターエンブレムまで設定されています…成金趣味を言わんがばかりの設定ですね…
純正BBSアルミホイールはまさかの22万9500円!!流石純正なだけあってかなりのお値段です…注文した人いたのでしょうか…

インテリアも中々で、
最高級カーペットは75600円もします、、、さらにリクライニングレバーの周りをウッドにするという意味不明なパーツまで…

携帯電話のハンズフリーキットがあるのはこの時代にしては中々先進的な気もします。流石高級車(笑)を目指しただけあります(爆)
しかしピラーの脇にあるのはちょっと使いにくそうですね…ステアリングスイッチまでは流石に出来なかったのでしょう。
デジタルホン(ソフトバンクの前身)の白黒画面の携帯が時代を感じさせますね…勿論第2世代(2G)の携帯のみ対応でFOMAなど第3世代(3G)の携帯は使用出来ません、4Gのスマホなんて勿論使えません。おまけに2Gの電波はもう使えなくなっているので現在ではこのハンズフリーキットは使えないです。
今やクルマのハンズフリー機能もスマホでBluetoothですから時代の変化を感じますね…

オーディオ/ナビのページです。オーディオは意外にも2DINオーディオの設定が無いですね。なおテレビチューナーはワンセグではなくアナログのUHF/VHFのみ対応のため現在では視聴することが出来ません。
ところ1DINCDオートチェンジャーとMDデッキのアサヒというメーカーは聞いたことが無いです…ビールでもあるまいし…
ご存知の方はコメントをくださると有り難いです…

裏表紙です。ナンバーフレームは現行車の物と変わらない気もしますね。