
今回紹介するカタログは日産のW30型ラルゴのカタログです。
このラルゴは1993年に7年ぶりのフルモデルチェンジで登場し、先代のバネットラルゴからラルゴに変わり、キャブオーバーからセミキャブオーバーへと変更されました。ラルゴとしては3代目となります。
2年前に先行してセミキャブオーバーへモデルチェンジしたC23型セレナ(バネットコーチ→バネットセレナ)をベースとしながらも先代以上に上級モデルとしての差別化が行われ、ボディは全く別のデザインの3ナンバー専用ボディとなり、日産ミニバンの最上級モデルとして高級感を前面に押し出したものとなり大きく進化しました。このボディの大型化に伴いセレナと比べてシートを大型化し、より座り心地が良く快適な空間を実現しました。
↑当時のCMです。
その後1995年に登場したエアロ装備グレードのハイウェイスターが人気となり、以降はこちらが主力となります。専用のブルーのステッカーが特徴でした。今でもセレナやエルグランドなどにエアログレードとしてハイウェイスターが設定されていますが、元はこのラルゴから始まった形になります。
1996年にグリル変更を含む大掛かりなマイナーチェンジが行われて後期型に移行した後、1997年にY32・Y33セドグロのグランツーリスモを彷彿とさせる丸目4灯ライトを装備したハイウェイスターツーリングを設定しました。
しかし1997年にさらに上のクラスのミニバンであるエルグランドが登場すると人気を奪われます。それでも安定した販売台数だったにも関わらず、1999年にセレナがモデルチェンジすると絶版になってしまいました…
個人的にはエルグランドとセレナの中間ってあっていいと思うんですけどね…(トヨタだとエスティマは似たポジションでしたし…)
C24からはステップワゴンを意識してカジュアルになっていった上、特にC25になってからのセレナは7人乗りを廃止したりとかなりカジュアル・ファミリー志向に走ってエルグランドとの間が開いてしまったようにも思います…
今のC27からは質感もだいぶ上がって本革シートや7人乗り設定したので大丈夫なのかもしれませんが…
あとこの車は整備性で最悪最凶レベルの車種とも言えます…それは後ほど…

コンセプトのページです。「ポストセダン」というキャッチコピーはまだまだセダンが主流だった中、ミニバンを売り込むために使われたものでしょうね…プレーリーとかも新しいセダンってキャッチコピーでしたから…
しかしここから5年程でだいぶミニバンやトールワゴンが増えていき今でも主流なことを考えるとまさに予言そのものなんでしょうね…
クルマ=セダンという考えを変えてみませんか。と書かれていますが今やセダンは傍流ですし…
ただラルゴはこうした箱型ミニバンの中でも高級感や走りを前面に押し出してセダンに近づけたモデルでしたし、実際RVブームによってセドグロやローレルといった高級セダンからRVへ乗り換えるユーザーをターゲットとして、乗用車から乗り換えても違和感ないようにするのが狙いだったそうです。

イメージ画像です。ミニバンでは採用例が少ないウィンドウのメッキモールを装備しており今見ても高級感があるデザインだと思います!先代のバネットラルゴと比べても上品で落ち着いたデザインですね。
実は当初、リアドアはより乗用車感覚にするよう
ヒンジドアにする予定だったそうです。結局はスライドドアになりましたが…

イメージ画像です。リアもセレナと同じ横一直線ながら丸みを帯びた高級感のあるものとしています。SX-Gは中間グレードです。

イメージ画像です。最上級グレードのグランデージです。

イメージ画像です。最廉価グレードのRX-Gです。

実用性のページです。優れた乗降性…とありますが、
今のミニバンと比べたらかなり劣ります…
というのも外観こそ今のミニバンに近いですが、フロントシートの下にエンジンを置くFRのシャシー…つまり商用のワンボックスバンやトラックと同じ構造なんです…
簡単に言えば
商用バンのシャシーにミニバンのボディを載せたようなもの…といったところでしょう。
まあ先代のバネットラルゴは完全にワンボックスバンの乗用車仕様でしたし、今の完全に乗用車になったミニバンに至るまでの中間といったところでしょうね。この時代だと箱型ミニバンは貨物車の延長線上というイメージをようやく払拭しようとしかけていた時代ですから…
日産の場合、今のようにセダンやハッチバックなどの乗用車のシャシーをベースに箱型ミニバンを作るようになったには1999年登場のC24セレナからになります。

デザインのページです。セレナと差別化すべくメッキグリルを装備し、グリップタイプのドアハンドルを装備しています。また当時の日産の高級車の売りでもあったスーパーファインコート(SFC)と呼ばれる塗装となっています。
サンルーフは先代のパノラマルーフからパノラマビュートップという名称に変わりました。フロントがチルトアップ式なのは変わらないですがリアがスライド式から固定式に変更されました。
またパノラマビュートップ装備車には3色に変更出来る
エロランプ大型ルームランプも装備しています。

インテリアのイメージ画像です。
このインパネは個人的にかなり好みなんですよね~ミニバンのインパネって実用車であるが故に無味乾燥で地味なデザインの物が多いんですが、このラルゴのインパネはセダンやクーペのインパネと言っても通用するようなラウンドタイプのデザインで、運転席を包み込むような造りになっていてそこが好みです。
今のミニバンではウォークスルーを考慮することが多いのでまず有り得ないデザインですが、これは運転席の下にエンジンを置いているが故にウォークスルーが不可能なためこうなったと言えます。
そしてエンジンがすぐ近くにあるため本当にうるさいです…特にディーゼルは…まあこれはこの時代のミニバン共通ですけどね…
しかしこれによりエンジンの上にドカーンと大型コンソールがあるため、整備性では最悪最凶レベルとなった訳です…
デカいコンソールを外し、重い運転席・助手席のシートを外し、さらに多数のビスで止められたフロアパネルを外さないとエンジンにアクセス出来ません!!
当時のミニバンはワンボックスのシャシーに無理矢理ミニバンのボディを載せたものが大半だったので、整備性悪い車種が多かったですがその中でも間違いなく最悪な部類でしょう…

インテリアのページです。
メーカーオプションで
スーパーサウンドシステムを設定しており、一体型コンポに6スピーカーを装備しています!また標準ではカセットデッキで懐かしのCDプレーヤー単体機はがグランデージに装備されます。
しかし、
最廉価グレードのRX-Gまさかのラジオが標準!カセットすらありません…
差がデカい…
パーキングブレーキは足踏み式です。当時のミニバンではあまり多くなかったのではないでしょうか…C23セレナもステッキ式でしたし…
あと画像はエアバッグ非装備車ですがこの場合はB13サニーと共通のステアリングとなります。

インテリアのイメージ画像です。
先代にあった7人乗りは廃止されましたが、大型アームレスト付きのシートになるなど進化はしています。よく見ると3グレードそれぞれで2列目のシートが全く違うんですよね…コストかかってます…

インテリアのページです。エアコンは前後独立式で後部のエアコンはリモコンで操作出来ます。これは今のミニバンにも欲しい機能ですね…何かこっちの方が高級感ある気がします。
シートアレンジは回転対座・フルフラット・3列目の跳ね上げ(マルチアップ)が可能となっています。後のモデルでは2列目のテーブル機能や横向き機能も装備されるようになりました。

GTパックのページです。その名の通り走りを極めたグレードで、ミニバンなのにスーパーHICAS装備となっています!!
HICASとは電子制御の四輪操舵機構、つまり前輪のみならず後輪も含めて全てのタイヤをかじ取るもので、スカイラインでお馴染みの装備でしたが、重心位置が高めであることからセレナやラルゴにも設定されていました。
しかしミニバンにまで四輪操舵を設定していたのは日産だけなのでここでも走りにこだわる日産らしい
ド変態要素が感じられますww
また電子制御サスも装備しており、コンフォート・スポーツの2つのモードから選択出来ます。これはライバルのトヨタもミニバンにTEMS(トヨタの電子制御サス)を設定していたりしていましたね…

メカニズムのページです。
左上にあるのが
諸悪の根源のセミキャブレイアウトの図です。
乗用車感覚のドライビングポジションとありますが、、、よくそんなこと言えるよな…とは思います。だってエンジンの上に運転席はある時点でどう考えても位置が高いし…乗降性向上とありますがもちろん悪いです…
確かに先代であるバネットラルゴよりは進化してはいますけどね…あれは完全にキャブオーバーのワンボックスなのでトラックと同じように乗り降りする必要がありますから…
そしてボンネットを空けても当然ながらエンジンはありません…スペアタイヤにジャッキなどが入っています…知らない人が見たら絶対ビックリするでしょう…
エンジンは一新され、1世代前のガソリンエンジンのCA18や旧式ディーゼルのLD20は廃止されて、ガソリンエンジンは直4・2400ccのKA24型エンジンを、ディーゼルエンジンはCD20Ti型を設定しています。
KAエンジンは搭載車が限られたエンジンで、180SXの北米向けの240SXが最初の搭載車でしたが他にもプレーリー、ダットサンなど一部の車種にしか搭載されなかったエンジンです。CDエンジンは80年代~90年代にかけてほとんどの日産の小型車のディーゼル車に搭載されていました。
トランスミッションは全車4速ATのみで、パワーモード・スノーモードも設定されています。4WDはフルタイム式となっています。

安全性のページです。コーナーセンサーをグランデージに標準装備しておりこれはかなり進んだ装備と言えるでしょう。車体が大型のミニバンならではとも言えます。
エアバッグが初めて設定されましたがまだ全車オプションとなっています。この時のものは専用ステアリングだったのに対し、1995年のマイナーチェンジでエアバッグが標準装備となった際は汎用タイプに変わってしまいました…

グレード一覧です。前述した通りまだハイウェイスターはありません。最上級グレードのグランデージ、量販グレードのSX-G、最廉価グレードのRX-Gの3種類を基本に、グランデージとSX-GにはGTパックが設定されます。

カラーバリエーションとオプションです。個人的にはセピアベージュにダークグレーの2トーンが好みですね~
オプションはカタログ持っていないのが残念ですが、ムートンのシートカバーと電動カーテンは中々いいなと思いますね~今のミニバンにも欲しいです。

主要装備・主要諸元です。

裏表紙です。