
エンジンの話。
といっても156Bのエンジンの話ではない。
こっちのほうは明後日エアフロが届くので、それに交換して直ってくれるのを祈るのみ。
もしダメならO2センサーあたりを疑うべきか?
さて本題。
先日の「美しいクルマ」の話。
みんカラでは「あなたが美しいと思うクルマは?」というテーマのあと、「あなたが名機と思うエンジンは?」というテーマがあった。
その時思ったのだが、美しいと思うクルマに関しては実際に乗らなくても判断することはできる。いや、実際に見なくても写真や映像で判断することだって可能だ。
しかしエンジンはそうはいかないだろう。
やっぱり乗ってみなくちゃ分からない。
そうなるとエンジンに関しては我々凡人は、きわめて少ない選択肢から選ばなければならない。
であれば、私が名機云々を語るのはあまり意味がないように思える。
ただ、今我が家にある2台のアルファロメオV6(3.0&2.5)に関しては
私としては非常に満足していることは最初に言っておく。
なので今日のブログは「名機と思うエンジン」ではなく、
(可能性は別として)ドライブしてみたいエンジンということで書いてみたい。
まずレイアウトだが、私は30年の運転歴の中でターボというのに乗ったことがない。
したがってターボの魅力も欠点も分からない。
そんなこともあって、自分がドライブしてみたいエンジンは3リッター12気筒である。
私のことをよくご存じの方なら「はは~ん」と思ったに違いない。
この3リッター12気筒というのは、70~80年代F-1では有力なエンジンだったからだ。
まずはコレ。

フェラーリの180度V12である。
水平対向12気筒、あるいはボクサー12という表記もあるが、
クランクケース内で空気は圧縮・膨張をせず移動するだけなのでV12エンジンである。
F-1が3リッターになった60年代からターボに移行した80年代まで
約20年の長きに渡ってフェラーリはこの180度V12を開発し続けた。
低重心という点では絶対的に60度や90度よりも有利である。
この低重心というのはレーシングカーにとっては非常に重要な要素であるはずだが、
ウイングカー全盛の時代(1979~)では空気の通り道を作れない分
明らかに不利となってしまった。
しかしウイングカーが禁止になり、フラットボトム時代になっても、
そしてターボが禁止になってもこの180度V12エンジンが復活することはなかった。
90度前後のV12のほうがパワーを出しやすいということなのか?
話が横道に逸れてしまったが、長いモータースポーツの歴史の中で
一瞬輝いたエンジンレイアウトというのもなかなか魅力的である。
そして同じく低重心というコンセプトでアルファロメオも12気筒エンジンを作っていた。

ブラックのエアファンネルに渋いゴールドのヘッドカバー、そこに赤いAlfa-Romeoのロゴ。
このあたりの演出もたまらない!
こちらは水平対向12気筒のはず。
1976年からブラバムに供給され、BT45、ラウダがドライブしたBT46にも搭載された。
そして3リッター12気筒と言えば、このエンジンは外せない。

マトラV12である。
60度V12というかなり古典的なレイアウトではあるが、(同時代のアルファV12も同様)
私が過去にもブログで書いたように「死ぬまでに一度でいいから聴きたい音」なのである。
だから、もしこのエンジンをドライブできようものなら、それこそ夢のような話である。
あまり知られていないが、ラウダが1977年末にフェラーリを飛び出したそのオフに、
リジェ‐マトラをテストドライブしている。
もちろんラウダはそのとき既にブラバムに移籍が決まっていたので
リジェに行く気なんてサラサラなかったはずである。
ではなぜリジェのテストなどしたのか???
恐らく、ラウダはマトラエンジンをドライブしたかっただけなのだろう。
(ラウダという人はそのくらいレーシングカーオタク、エンジンオタクである)
私がこれらのエンジンをドライブしてみたいと言ってるが
もちろんそれはある程度市販車用にデチューンされた・・・という仮定の話である。
3リッターで500馬力を絞り出す当時のF-1エンジンをど素人がドライブできるはずがない。
最後に、70年代F-1といえば、このエンジンを抜きには語れない。
グランプリ史上最高のエンジンと言ってもいいだろう。
フォードコスワースDFVである。

グランプリ通算155勝、タイトル獲得(ドライバー)すること実に12回。
しかしこのエンジンの素晴らしさは「金さえ払えば誰でも買えるGPエンジン」だったこと。
ワークスが独占で開発した類のモノではない。
ということは、エンジンだけ買って
自分のクルマに載せるということも不可能ではなかったということになる。
このコンパクトさなら、現実的かも知れない。
コンパクトな90度V8は「エンジンはシャーシの一部」という
コーリン‐チャップマンの考えのもとに開発された。
その考えの正しさを証明するかのように、デビューレースデビューウインを飾り、
以後20年近くに渡りグランプリで活躍した。
ただ、一方でフェラーリやアルファロメオはチャップマンの考えとは異なり、
エンジンに重きを置いたマシン設計だったと聞く。
分かりやすく言えば、エンツォ‐フェラーリやカルロ‐キッティはエンジンが主でシャーシが従、
チャップマンはその逆だったということだろう。
しかし時代と共にこの両者の考えは正解でもあり不正解でもあった。
グランプリの世界は目まぐるしく主従関係が変わり、
そして近代ではその複雑な関係がより一層複雑になった。
自分で3リッターのクルマ(GTV)に乗るようになって、
3,000㏄という排気量が身近になった。
と、同時に自分が夢中になっていた70年代のF-1も同じ排気量だったことを思うと
なんだかとても感慨深いものがある。
だから私がもっとも憧れるエンジンはフェラーリの180度12気筒であり
アルファやマトラの12気筒なのである。