富士スピードウェイで3年振りの開催となったジャパン・ロータス・デイでのワンシーンだ。
パドックを通り掛かると,往年の名車ロータスで農道を疾走していそうなおっちゃん二人組。
A:また随分とデカい羽根を取り付けたでねぇの。公道でも目立ってしょうがなかっぺ?
B:いや!以前はサービスエリアでも周りに野次馬ができたけど,コレ付けてからは誰からも見向きもされなくなった。
A:なして?
B:GTウイングはド迫力だけど,他人から見たら族車のイメージがあって興味ないんでねぇの?
A:んだね。
さすが!この界隈(富士SW)で繰り広げられた初日の出暴走を知るオジ様たちだ。
今では暴走族を見掛けなくなったが,重低音のマフラー・シャコタン・ウイングは族車の三種の神器。
自分たちなりのドレスアップのつもりだろうが,どうも下品でカッコ悪い。
自動車に限らず,戦闘機,新幹線などの空力を考慮した流線形を人は生理的に美しいと感じるものだ。
ところがウイングは,逆に空気抵抗を受けることが目的。
気流を整流するスポイラーとは違い,スタイリングの観点からすればただの異物でしかない。
すなわちトータルデザインを損ねるだけのパーツなのだ。
しかし,速く走ることを宿命づけられたクルマには,スタイリングよりも空力特性を考慮したマシンが必要になる。
その美しさで知られるアルピーヌのチーフデザイナーは最後まで反対したらしいが,A110SアセンションモデルやRモデルには掟破りのウイングが標準装備される。
これは取りも直さずアルピーヌが市販車にもウイングによるダウンフォースが必要だと認めた結果だ。
このダウンフォースに早くから着目していたのがロータスだった。
1968年のロータス・49BではF1に初めてウイングの概念を持ちこみ,1976年のロータス・78でその後のグラウンドエフェクトカー(ウイングカー)の時代を切り拓く。
ところが,ダウンフォースをあまり必要としない高速サーキットでは,大きなウイングは空気抵抗以外の何物でもなかったのだ。
そこで1983年に姿勢制御をウイングやスプリング&ダンパーに頼らず,コンピューターでサスの伸び縮みをコントロールする画期的なアクティブサスペンションを発案。
これをロータス・92に搭載した。
その後ロータスが試行錯誤で悪戦苦闘する中,このシステムをパクって,いち早く完成させたのがウィリアムズだ。
「誰が乗っても勝てる」と称された1992・93年のFW14BとFW15Cでは実に32戦中30回のポールポジションで席巻する。
これに業を煮やしたFIAは,突如レギュレーションでアクティブサスを禁止し,思惑通りにウィリアムズと2位以下との差は縮まった。
しかし,代償はそれだけでは留まらず,ウィリアムズはノーマルサスのセッティングに苦しんだ挙句にイモラの地でアイルトン・セナを喪ってしまう。
コーナー進入速度が速過ぎて危険だからと禁止したことが,逆に仇(あだ)になってしまった悲劇である。
今シーズンF1で問題になっているドライバーに健康被害を与えるポーパシング現象も,アクティブサスがあれば解決する。
しかし,人間の限界を超えたコーナー進入速度や信頼性の低さなど山積する問題を解消するまでには至っていない。
市販車への転用もシステムによる重量増や高騰化で普及が進まないのが実情だ。
だから今の主流は,未だに1970~80年代に掛けて一世を風靡したグラウンドエフェクトカーである。
平たく言えば,車両底面の気流を利用したディフューザーによるダウンフォースをより多く得るために車高を低くする。
低くし過ぎると足が硬くなり,僅かなピッチングでも宙に浮きコントロール不能となるので,車高を確保してウイングによるダウンフォースで補ってやるのが一般的だ。
私は直線番長ではないので,加速力やトップスピードを犠牲にしてでもコーナリングスピードを優先した走りが好きだ。
これはまさしく,ウイングによる功罪に適ったもの。
但しそれはサーキットでのベタ踏みではなく,ナンバープレートを付けて出掛けるワインディングロードでの話だ。
すなわち最低地上高9センチ以上でフラットな路面でもなく,コーナー進入速度も100キロ以下なので,ディフューザーの効果すら怪しい。
ましてやウイングによるダウンフォースの介入など必要としない。
だからウイングを付けるとしたら,それは単にドレスアップのためだけだろう。
一気に車両のイメージを変えることができるGTウイングは,クルマのデザインに大きなインパクトを与える。
それを好むか?好まざるか?は個々の感性に委ねられるが,もしもカッコイイのを検討してても,決して奥さんや恋人に相談してはならない。
なぜならば,電光ナンバー・ムートン・長いシフトノブと同類だと思われるのが落ちだっぺ?
私は中古車でも程度が良ければ気にしない。
しかし良かったためしがない。
いつもババを掴まされてばかりで,まさに安物買いの銭失い。
だから新車で手に入る車種ならば,迷わず新車を選ぶようにしている。
ところで,新車購入を決めたときの,あの胸の高鳴りって一体なんだろう?
昔のクルマには新車の匂いというものがあり,中にはそれを楽しむ人もいたが…
やはりファーストオーナーでしか味わえない喜びは,各種オプションを自由に組み合わせられることであろう。
オプションで驚かされたのがポルシェのときだった。
電動格納ドアミラーに始まりオートエアコンすら標準装備でないのだ。
普通のクルマにあってポルシェにないものを次々と選択していくと,これがまた法外に高い。
見る見る間に200万円,300万円と嵩んでいく。
車両本体価格は抑えてオプションでしぼり取る。これが俗にいうポルシェ式商法である。
それでもポルシェはカーボンセラミックディスクや各種電子デバイスなどの走行性能に係わるパーツを選べるだけ良心的である。
なぜならば,他メーカーのオプションと言えばエクステリアやインテリア,快適装備が中心だからだ。
例えば速度リミッターが180km/hのクルマなのに200km/h以上で効果を発揮するテールゲートスポイラー。
こうなると,もはや走行性能のためではなくドレスアップとしか思えない。
ところが先日注文したケータハム・セブンには別な意味で驚かされた。
一例を挙げると,誰でも行うライトチューンの代名詞にホイールのインチアップがある。
より大きなディスクローターやキャリパーを仕込めるようにし,ブレーキ性能を強化するためだ。
しかし,セブンのオプションは,15インチの標準ホイールをあえて13インチにインチダウンするのだ。
セブンは軽量ゆえブレーキを小さくしても制動力を確保できることに加え,バネ下重量を更に減量させるのが本来の狙いだ。
F1マシンが良い例で,13インチに分厚いタイヤを履いていることを思い返してみれば納得できる。
また,風変わりなオプションとしては,コックピットの下を7センチ深くして着座位置を下げられる。
セブンは現存する市販車の中で最も低い車高で,なおかつドライサンプまで備えているのに,低重心化のためにそこまでやるか!
他にもロールバーに補強のバーを増設したり,前輪のトレッドをナローにするかワイドにするかを選択できたり,アッパーアームやロワーアームの剛性(断面形状)も変更可能。
ここまで来るとチューンアップの領域に思うが,元々は自分で組み立てるキットカーをルーツに持つセブンならではのオプションだ。
さて,もちろんセブンにも選択可能な快適装備は用意されている。
私が注文したRパックには,フロントガラスはおろかワイパーすら付いていないが,オプションで装着可能だ。
そのままではルーフもドアもないので,もし知らない人が聞いていたら人力車にも劣ると思われるだろう。
キャビンがないのでエアコンも意味を成さず,オプション設定すらない。じゃあ真夏の炎天下はどーすんだよ?
ビキニトップと呼ばれる頭上を覆う幕で,直射日光を避けられるありがたい快適装備がある!
ラジオもCDもナビもない。それ以前に鼓膜をつんざくエキゾーストノートの爆音や,巻き込む風切り音で会話もできない。
グローブボックスもカップホルダーも灰皿もなく,煙草の火は路面に手が届くので指詰めに注意しながら流れる路面で消す。
ナビはないがマップポケットは付けられる。しかし,4点式シートベルトで拘束されて手が届かない。
他にはコックピットに潜り込む際に膝がステアリングに当たるため,ステアリングはクイックリリース式だが,あえてそれも快適装備と呼ばせてもらおう。
そう言えば,まだあった。
横出しマフラーはパンチングメタルでカバーされている。これは乗降時に誤って足が触れても大やけどを防ぎ,軽いやけどで済むように配慮された安全装備だ。
ちなみにパワステEPS,トラコンTCS,横滑り防止装置ESC,ABSなどはケータハムの辞書には載っていない。
来年で創業50周年を迎えるケータハムはコーリン・チャップマンの設計思想を継承し,伝統と格式を重んじるメーカーなのだ。
こんなシーラカンスみたいなクルマが1000万円。
快適装備てんこ盛りのGTカーが信号待ちで並んだときに,自分が正気の沙汰でないことに気付くのだろうか?
いやいやそんなことはない!仮に3倍も高いスーパーカーが並んでもマクれるマシンなのだから…
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