なんとなく練習で書いていたダークファンタジーw
【怪人KOMASANの章】
その男は暗闇の中から音もなく突然現れた。異形の狛犬面を被り素顔を隠し、軍用のポンチョを身に纏い、背には古い水平2連の散弾銃を背負う
「なんだらぁ!テメーは!?」
とある神社の境内、少女に暴行を働いていた5人の男のうちの一人が、勇ましく挑みかかった。
が、その異形者に近寄った瞬間、とてつもなく嫌な雰囲気を感じた。
『これはマズイ』 それはその男の本能がそう告げていた。
次の瞬間、異形者は背負っていた散弾銃を構えたと同時に、なんの躊躇いもなく発砲した!
耳をつんざく乾いた発砲音は、その場にいたすべての者達を凍らせる。
異形者の前に立っていた男のシルエットがおかしい
頭があるべきところに、頭が無いのだ。 まるで糸の切れた人形だった。頭の無くなった男は膝から崩れ落ちるように、クシャッと倒れた。
「うわーーー!」「なんだー!チクショー!!」
少女をレイプしていた者の一物は恐怖ですっかりと縮み上がった。 犯罪をゲームのように楽しんでいたバカ者たちは、目の前で起きた自分たちへ降りかかるであろう惨事に、ただただ阿鼻叫喚するしかなかった。
異形の者はさらに一発発砲した。
また一人、犯罪者はその凶弾に倒れる。先ほどの男と同様に頭を丸ごと吹き飛ばされて。
血と脳漿と硝煙の臭いがあたりに立ち込める。
狛
「×△юШ〆・:/<*>-----!!!」
異形者は、とてもこの世の者とは思えないような、つんざく叫び声を上げた。
厭世、悲観、銷魂、悲観、自棄… すべて表現された、圧倒的な恐怖と絶望が表現された咆哮。
その叫びを聴いた者は恐怖で身動きが出来なくなる。
逃げようと思っても、震えた足が一歩も動かなくなってしまうのだ。
狛
「×△юШ〆・:/<*>-----!!!」
異形者がさらに吠える
「もう嫌だーーー…」
異形者の動きが尋常ではなかった。その様は疾風のようで、瞬きした時はすでに遅い
赤く光る眼で射抜かれたが最後、岩の様にゴツゴツとした拳骨が隕石のように飛んでくる
人の体が、まるでスイカのように思えた。 一発一発、拳が当たるたび、すべてを破壊してゆく
「ぎゃぁぁぁーーーーー…」
さんざんオモチャにされ、身も心もズタズタに引き裂かれた少女だけが、冷たい土の上に横たわり、ぼんやりとその光景を見つめていた。
女
「KOMASAN…」
殴られ腫れ上がった唇から、そんな言葉が “ぼそり” と漏れ出した。
すべてのお話しは “むかしむかし” から始まる。
それは約半世紀ほど前のこと… とある小さな村で身体の弱い男の子が産まれた。
そう、一時期は「永く生きられない」と医者からも見放されていたのだが、両親は必死の想いで、彼を育てた。その男の子も両親の想いに応えるよう、病魔と闘い、なんとか生き延びたのだが、あくまで “なんとか” であったのだ。
男の子は6歳となっていた。
生まれつき弱い身体はいつも気だるく、少し動くだけですぐ発熱し、鼻血を出しては、あっという間にぶっ倒れてしまう毎日であった。
そんなある日、その男の子は両親に無理を言い、重たい身体を引きずるように、とある神社の境内を訪れた。 何故? それは “ある噂” を聞き及んだ事での行動であった。
その “ある噂”とは… 「國を護る」と名付けられた、その○×△市に在る神社は、健康を与えてくれる神様が居るという噂だったのだ。いや、もっと正確に記すと、「そこに奉られている狛犬は大変ご利益があり、子供を護るため闘ってくれる神の使いである!」と…
境内にて、男の子はその狛犬を前にした時、藁にもすがる思いであった。
男の子
「どうして僕の身体は弱いの?どうして他の子達と同じように走り回れないの?僕は死んじゃう
の?何にも悪いことしてないんだよ。ねえどうして?お願いだよ…お願いだから助けてよ…」
辛かったであろう、悔しかったのであろう。男の子の瞳からは、とめどもなく涙が溢れ出していた。
程なくして、その男の子の身体に不思議な変化が起き出した。不治と診断された病が姿を消したのだ。
まるで奇跡のような出来事!気だるく鉛のように重たい身体が羽のように軽くなり、どんなに外を走り回っても鼻血など出なくなった。 度重なる投薬で、止まっていた成長が堰を切ったかのように始まり、その様はバキバキと音を立てるが如く、爆発的な新陳代謝で屈強な肉体が出来上がっていった。
そして中学に上がる頃には、大人顔負けの体躯に仕上がっていた。彼は誰よりも速く走り、誰よりも高く跳び、どんなスポーツも難なくこなし、怪我や故障など一切無縁の益荒男となっていた。
丈夫な身体を手に入れた彼は、少年期、青年期を楽しく過ごし、妻と子を得た中年期も充実した日々を送る。順風満帆とは正にこのことであろう。 このまま幸せな人生を送るはずであった…
そう、あの事件が起きるまでは!
この和国においても、ストリートチルドレンと呼ばれる孤児が増えている事実がある。
皆、様々な理由から親を亡くし、頼る人もなく、行政の管理が行き届かず、路上生活を余儀無くされる子供達だ。そんな不幸な状況を見かねた民間の企業、神社や仏閣、諸々の教会は彼等に共同の住まいを与え、昔ながらの寺子屋のように各々で教育を施した。
しかし失業者がどんどん増える世の中、養いは決して充分とは言えなかった。
彼は心を痛めていた。言うなれば自分も神社に助けて貰った一人として、少しでも役に立つ活動をしたい!と思っていた。
それからの彼の行動は早い。週末になると妻と子を伴い、各神社へボランティアに行った。
やはり如何なる時も、ボランティアの存在は貴重である。炊き出しに始まり、物資の搬入、仮設住宅の設営に必要家具の作成などなど、仕事は多岐にわたり、人手はいくらあっても足りないくらいであった。
彼の妻と子も文句一つ言わず、一生懸命に働いた。いや、むしろ、この立派な父親と共に働く事が誇りにさえ感じていた。
そして事件が起きる…
善行をする者も居れば、悪行を行う者が居るのは世の常。このストリートチルドレン達を狙う通り魔事件が頻発する。
「嫌な事件だ。保護が行き届いていないような弱い者を狙うなど卑劣極まりない!俺が居れば
そんな奴等は懲らしめてやるのに!
ボランティアが終わった、ある神社の境内で、彼が妻と子にそんな話しをしていた時だった、突然後頭部に例えようのないくらい強い衝撃を受け、倒されてしまった。
彼の頭蓋骨は粉砕骨折し、脳にも強いダメージを受け、身体の自由が奪われた。本来ならここで失神しようものなのに、彼の意識はハッキリしている。何故か?それは頭蓋が砕けたことにより脳圧が上がらなかったため、失神できなかったのである。
更に悪夢が続く。5人の男が視界に入った。あろうことか、その5人組は彼の目の前で彼の妻に乱暴を働き、用がすんだ途端あっさりと首を絞め殺害してしまった。次は子供だ。怯える我が子の表情が目に焼き付く!
『やめろ』 叫びたいのに声が出ない!身体が全く動かない!
『やめろーーー!』
まるでサッカーボールだった。その5人組はヘラヘラと笑いながら、彼の子の腹部を何度も何度も何度も蹴り上げ、遂にはいたぶり殺してしまった。
「おい、さっさとこんなとこ燃やしちまえよ」
『!?』
信じられない発言が飛び出した。
『まさか神社を燃やすというのか!?』
そのまさかだった。一人が社に火を放つ! 木造の社を炎が舐める。そしてあっという間に軒まで燃え上がり、どんどん火勢が大きくなる。
「が…が…」声が出ない。
「あれ?なんだこのオヤジ!?まだ生きてんぞ」
「なにやってんだ早く潰しちまえよ」
『なに!?潰すだと!?』
それから、犯人の一人が手にしていた、大型のスレッジハンマーを狛犬像に3度打ち込み、像の頭を落とした。
「こんなモンでいいかな♪オレ一度こうやって人のアマタを潰してみたかったんだ(笑)」
破壊した狛犬の頭を、頭上高く持ち上げながら男が言う。
『くそっくそっ!やめろーー!』 言葉にならない無言の慟哭…
数秒後、彼の頭部は、石でできた狛犬像の頭で叩き潰された……
いつの頃からであろうか、まことしやかに囁かれる 怪人 『KOMASAN』 の噂話。
背に水平二連の散弾銃を背負い、顔は頭からをすっぽりと覆う狛犬面で人相を隠し、暗闇の中からいつの間にか現れ、ストリートチルドレンと神社を護る怪人…
彼は容赦がない! 圧倒的な暴力を用いて悪行を行う犯人達に怒りの鉄槌と天誅を下す!!
彼は容赦がない! 彼の暴れる姿を目撃したある子供は、恐怖のあまり引きつけを起こした。
彼は容赦がない! 憤怒のその姿は悪魔にも例えられた。
彼は容赦がない! ただただ寡黙であるが、時折叫ぶ獣の咆哮にも似たその声は、悲しみの慟哭 に聞こえる…
彼は容赦がない! その燃えるような瞳からは血の涙を流す…
狛犬さん…狛さん…コマさん…KOMASAN… いつの頃からか、子供達が名付けた彼の名前…
ただ一つはっきりとしている事実がある。それはKOMASANが、誰かを探しているということ
5人の悪漢…、いや、5人の
外道!殺戮者!
彼は容赦がない!!覚悟しな!!!
かみんぐす~ん『KOMASAN』
つづくかもしれないw