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むらっち2のブログ一覧

2017年01月08日 イイね!

第三章・登場人物追記

第三章・登場人物追記



大事な登場人物を載せ忘れてました^^;










●エミー&マリー(24歳・女)
 クォーターの双子。 イメージキャラ ・ E-girls 藤井姉妹
 真田修二の側近にして、美しきボディーガード。
 ハーレーダビッドソン ・ XLCH と XR750 を駆る。
 






イラストは >「ZOOID恐怖館」 の主様より提供して頂いてます!

なんと! 館のギャラリーには 「ギャラリーDef busta」 まで!!







それではよろしくどーぞ








ごめんなすって












Posted at 2017/01/08 07:52:39 | コメント(0) | トラックバック(0) | Def busta≪デフバスタ≫ | タイアップ企画用
2017年01月07日 イイね!

Def busta 第三章 ~legacy~ 第1話

Def busta 第三章 ~legacy~ 第1話


あけましておめでとうございます。 

今年もデフバスタをよろしくお願いします(=^∀^=)











   登場人物



●下村 貴 “しもむら たかし” (24歳・男)
 TEAM SANTANAのリーダー及びGarage SANTANAの代表。
 過去に「Def busta下村」と呼ばれていた。Kawasaki Z1000MkⅡ改を駆る。

●真田 修二 “さなだ しゅうじ” (22歳・男)
 もう一つのSANTANAのリーダー。下村の後輩。

●南條 零 “なんじょう れい” (24歳・女)
 通称レイ。MBM社を母体とする新興バイクメーカーKAMUI社の若き女社長にして、南條家の令嬢。
 下村に淡い想いを寄せている。

●牧 真志 “まき しんじ” (24歳・男)
 下村の悪友。かつてはプロのキックボクサーだった。現在は高利貸業を営んでいる。

●府月 周遠 “ふづき しゅうえん” (32歳・男) 
 HN社の重役。KAMUI零の一件以来、下村に深い恨みを抱くようになった。

●岩野 剛 “いわの つよし” (27歳・男)
 Garage SANTANA のスゴ腕メカニック。

●進藤 諒一 “しんどう りょういち” (27歳・男)
 TEAM SANTANAのメンバー。職業は北海道警察の私服警官。

●坂本 仁 “さかもと ひとし” (22歳・男)
 TEAM SANTANAのメンバー。通称ドラッグの坂本と呼ばれている。

●輪道 成海 “りんどう なるみ” (19歳・女)
 TEAM SANTANAの新メンバー。3眼ライトのkawasaki KX500改(通称サードアイ)を駆る

●堀井 士郎 “ほりい しろう” (88歳・男)
 MBM社を母体とする新興バイクメーカー「KAMUI」の特別顧問。

●上場見 顎 “うわばみ がく” (25歳・男)
 麻薬のジャンキー。デリヘル店を経営者していたが、現在は数多の犯罪容疑で逃走中。

●六部 本気 “ろくべ もとき” (50歳・男) 
 通称ロブ・マジー。謎のチューナー。現在はコンビニエンスストアー(セイコーマート)の雇われ店長。










     あらすじ

「Steele Runner(スティール・ランナー)」それは、まだ不良少年だったあの頃、誰もが憧れた伝説の男。皆が彼のように成りたくて、バイクに乗り、誰もが彼の幻影を追った。
 しかし、スティール・ランナーは。夢や幻じゃない。十数年ぶりに、その名を現代に甦らせ、二代目となった、もう一つのSANTANA・真田修二。
 その真田を利用し、下村を付け狙う府月。あらゆる想いが交錯し、下村は渦中のスティール・ランナーを巡る闘いに、巻き込まれて行くこととなる。
ここに、己の想いとプライドを賭けた男達の、一大レースの幕が、切って落とされる。
 






     1.Steele Runner



 道央サーキットは、TSW(十勝スピードウェイ)の全長3,405mクラブマンコースを模倣し、建設されたサーキットであるが、各コーナーには様々な角度のバンクが設けられており、本場クラブマンコースより、2秒程度(速い)タイム差があると言われている。
 この日は、これから北海道の一大レースイベントである「Steele Runner battle(スティールランナーバトル)」が開催されようとしていた。










5番ピット、真田修二はベイツの革ツナギを着て、愛車・スペンサーカラーのCB750F(FB)を前に、ステップ回りの点検を行っていた。
跪いたその姿は、まるで祈りを捧げているようにも見える。それは、背中に大きくペイントされたチーム名 『 SANTANA 』 、Saint Ana 《 聖なるアナ 》 への礼拝にも似ていた。




「いよいよ今日、二代目スティール・ランナーの誕生ですねぇ。十数年ぶりに栄誉あるその名が復活するとは、今からわくわくしますよ」

修二の後ろから、非常に爽やかで、物腰が柔らかく、紳士的な府月が声をかけてきた。端正な面立ちで、一つ一つの振る舞いに、気品すら感じる程だった。









「府月さん…」

修二は立ち上がり、深々とお辞儀をした。


「それもこれも、全て貴方のお陰です。パーツ提供のみならず、資金まで出して頂いて…。 でも… どうして僕に、ここまでしてくれるのですか?」




「はっはっは、簡単な事です。スティール・ランナーは皆の憧れ。その初代のバイクに拘り、それを復活させ、ましてや現代のマシンと同レベルになるまで改造を施して、その名を復活させようとしている、そんな真田さんの情熱に私は心を打たれたのですよ」

優雅なその振る舞い、声の音質、府月のそれは、男であろうと女であろうと、たちまち虜にする。


「それに、今後は真田さんのように、才能ある若い方がリーダーとなり、皆を牽引する指標となるべきなんですよ」




「はあ…、でも本当に感謝しても、しきれないくらいです。こんな僕に何か出来ることがあれば言って下さい… あ、いや、僕ごときが貴方ほどの人に出来る事なんて何も無いか… ははは」




そのとき府月は “ ニヤリ ” と口角を吊り上げた。

「いやいや、真田さんのお気持ちが、本当に嬉しい。そうですね。一つだけお願いしたい事があります」




そう言い、府月はスーツの内ポケットから、一枚の写真を取り出し手渡してきた。 すると、修二は驚きの表情となる。

「え?これって、下村…さん」

「おや、ご存じでしたか?」




それは確信犯の問いだった。さっきとは打って変わり、今度は顔を歪めた、冷たい冷たい笑みとなる府月。

「今回のレースで、貴方がスティール・ナンナーとなった暁には、必ずこの男が真田さんの前に現れるでしょう。そうなった時、この男を完膚無きにまで叩き潰して欲しいのです」




一瞬言葉を失う修二。

「そんな…下村さんを…」




修二の内で下村への、あらゆる想いが交錯する。 過去の栄光、尊敬、憧れ。 そして今ある障害、義理、意地、自尊心。本当にあらゆる想いだった。




ひとしきり思慮した末、意を決し答えた。

「私怨ですか?…いや、すみません。そんなのは問題じゃないですね。彼は僕が超えなくてはならない壁であり、目標でもあった。 だけど…だけど…」




修二は急に表情を曇らせた。彼にも一抹の苦い思い出があったのだ。

「うん。そう、私怨は僕の方だ…」




修二の顔つきが変わる。

「わかりました。彼は敵だ!必ず叩き潰してみせますよ!!」

「はい。期待しております」


その言葉に呼応し、府月の冷笑は、更に冷たさを増していった。





















      

  






 俺の名前は下村貴。学生だった頃のあだ名で “ Def busta (デフバスタ) ” なんて呼ばれる事もあるけど、ほとんどの奴は俺のことを下村と呼ぶ。
2年前、北海道の旭川市で、親父が残してくれたこのショップを継ぎ、『 下村輪業 』 から 『 Garage SANTANA 』 と店名を変え、中古車の販売、整備、トランスポーターのぎ装なんかをメインとし、細々と営業している。

あ、もともとはバイク屋だったんだけど、それだけじゃ、食っていけないってことで、親父は岩野を雇い、メカニックとして育てクルマの整備を始めたんだ。で、今にいたっている。

ん?親父?ああ、親父はさ、死んじまった。その2年前にね。酒の大量摂取による、急性アルコール中毒だったと聞いている。親父は、アルコール依存症だったんだ。だけど、依存症がアル中で死んだなんて、シャレにもならんよな…。でもそれは、酒で家庭を壊しちまった、寂しい男の末路…かもな。

それで俺はというと、その頃は、帯広市のバイク屋で働いていた。親父の死に目にはあっていない。裁判所の命令でね。家庭の事情ってことで、施設に預けられ、就職した後も、滅多に親父には会えなかった。
それから、このショップとZ1000MkⅡ、あと、デスペラードジャケットを相続した。これは親父の形見でもあるんだ。

『 Garage SANTANA 』 はさ、なんていうのかな、不思議とこの店には、同じ匂いの仲間が自然と集まり、一つのチームが発足した。そして必然的に、バイクのモータースポーツにも、興じるようになり、『常勝軍団TEAM SANTANA』なんて、呼ばれるようにまでなったんだ。
それに、ときおり、刺激的な事件も起こるしね!退屈はしていない(笑)。つまり、まあ、毎日それなりに、楽しくやっている。










      



そう、この年、夏の始まりは急にやってきた。ついこの間までの寒さは、一体どこにいったのやらだ。

朝なのに、遠くから聞こえてくるセミの鳴き声は、これから暑くなることを否が応にも想像させられる。だが俺はこの時期、気温がまだ低い朝の清々しいこの時間に、Garage SANTANAの玄関前を掃除するのが好きだった。別に掃除が好きってわけじゃなくて、こんなのんびりした瞬間が、ただ好きなだけなんだ。
一つ大きく伸びをして、まだ冷気を感じる新鮮な空気を胸いっぱいに取り込むと、全身の細胞が瑞々しく活きてくるのがわかった。

そんな気持ちの良い朝、俺はムーンアイズ “ アイアンクロス・玄関マット” の埃をほうきで掃っていると、店先の歩道に一人の男が立っているのが見えた。その男は俺と眼が合うや否や、音も無く近寄ってきた。 最初は 「 客かな?」 とも思ったが、違うことがすぐにわかる。 男が近づくにつれ、俺の肌はヒリつき、背筋には寒気が走る。 それは明らかな殺気だった。

こちらもとっさに身構えたが、その男の顔を見た時、更にヤバさを感じた。その顔には表情が無かった。 笑うでも、怒るでも、睨むでも、泣くでもない、いわゆる能面のような無表情ってやつだ。つまり、これだけの殺気を放ちながら、表情を消すことができるってのは、相当な訓練を受けたか数々の修羅場を潜り抜けた猛者 ! そうとしか考えられない。




「やっべぇ ! 」

ついそんな言葉を、漏らしてしまった。その男は鋭く踏み込んできて、高速のワンツースリー、右ローキックを、コンビネーションで打ち込んできた。 が、そんな程度の攻撃をかわすのはわけもない。



「ヒョウ ! 」

ウェービングでパンチを避け、左脚でローキックをガードしたと同時に、短く息を吐き左右のワンツーと、右前蹴りを返した。




「あっ !? 」

ミスった ! 不用意に出してしまった前蹴り。それを交わした男は胴タックルに入ってくる。しかもコイツの頭は、フロントチョークを取られないような位置、つまり俺の胸元付近にあった。




『 転がったらヤ(殺)られる !! 』  本能がそう叫んだ。マウントポジションから、次々と打ちおろされる拳を一瞬でイメージしてしまった時、俺の中で完全にリミッターが外れ、戦闘スイッチがONとなった。




 これは試合じゃあないケンカなんだ ! この訳の分からない輩は、間違いなく俺を ヤ(殺)り に来ている !!

「くそったれーー !! 」




俺は体幹の強さだけでこいつの胴タックルを止め、右手で背中を掴み、左腕は相手の頭を抱えるような状態となった。

「んっだらあああぁぁーーーー」









一切容赦はしなかった。相手の頭を抱えていた左手で男の左耳を掴み、何のためらいもなく思い切り後方へ引き千切ってやった。俺の万力のような握力からは決して逃れられん !





「ぎゃああああ!!」

音をたて、耳が千切れるその感触は、雑草の束を鷲掴みにして引き抜いた感触にも似ていた。そこで男は始めて声を上げ、喚きながら俺から離れた。さっきまでの能面のような表情は人の “ それ ” に変わっていた。




「もらったぁーーー ! !」

すでに俺は相手を一撃で仕留める技を持って、確実に決める距離にいた。 極限まで捻じった右腕を肩口に折り畳み、一気に力を爆発させようとしていた。 それは、今までどんなヤツだって、確実に仕留めてきた必殺のコークスクリューブローだった。










「終わりだ」

拳を突き出す瞬間だった。視界の端に何かが映った。戦闘スイッチの入った俺の感覚は、極限まで研ぎ澄まされている。 故に、感じ取った新たなる危険だった。




「くそっ !! 」

自分の突進力を一気に相刹し、反作用になるスウェーバックで、こちらに飛んできた物体をかわす。
その物体は革のブリーフケースだった。目の前を勢いよく通過し、その後、鈍い音をたて地面に転がり、その衝撃で蓋が開いたと思いきや、中からは、大量の札束がこぼれ落ちてきた。




俺は対峙していた男から決して眼を離さないよう、バックステップで距離を取りつつ、横目で新手を確認する。 だがそこで、思わず驚いてしまった。それは、思いがけない人物との再会となったからだ。

「あん?お前、まさか…、シンジ?シンジじゃねーか !? 」




新手の男は、かつての悪友、牧真志だった。オールバックに撫で付けられた頭髪、ダークスーツに、チャコールグレーのYシャツ。それに、こんな大量の札束まで持ち歩き、すっかりと変貌を遂げていたので、ヤクザにでもなったのか? と、少々勘繰った。

しかし、コイツに関しては懐かしさというより、常にケンカをしている苦い思い出しかない。コイツはガキの頃から、キックボクシングに慣れ親しみ、いつもそのテクニックで俺をサンドバック状態にしていたのだからな。俺はまだ警戒を解かなかった。





「よう、久しぶりだな。 って、もうそんなに警戒すんなよ、ケンカは終いだ」

「あん?手前ぇ、一体どういうつもりなんだ !? 」





そんな、今にも噛みつきそうな俺を尻目に、シンジは怪我をした男の元に歩み寄り、耳の状態を確認し、こう言った。

「もういいだろ。早く手当てしてこい」




そしてその男は、シンジに一礼し、その場から立ち去った。やはりネコ科の動物のように、音もなく消える。 しかしどういう事だ?事情が全く飲み込めん。

「おいシンジ」

「ああ、待て待て、悪かったよ下村」


今度は急に謝りだした。何だっていうんだよ?




「俺は、いや、俺達はな、数年前から札幌で高利貸しをやってんだ。相手が誰であろうと、どんな奴であろうと、きっちり取り立てる。それがモットーだ。だけど、そんなアンダーグラウンドな世界じゃ、理屈が通じない場合もあってよぉ、俺達はどんな奴にも負けない力が、どうしても必要になる時がある」

シンジはそう言いながら、地面に散らばった札束の埃を払いながら、ブリーフケースに納めていった。

「先代から…、いや、オヤジからこの稼業を受け継いだ時によぉ、俺を慕ってついて来てくれた若い奴が3人もいてな」




この場合の “ オヤジ ” は実父ではなく、組長、社長、カシラ、まあ、そんなとこだ。

「今の奴は黒崎ってんだけど、俺が育てた中でもとびきり優秀なんだ。取り立てに関しても、腕っぷしに関してもな」

「だからって、なんで俺に殴りかかってくんだよ?お前から借金した覚えなんて無ぇぞ」

「ああ、そこなんだ。黒崎はな、あまり自分の感情を表に出す奴じゃ無ぇんだけどよ、お前に会いに行くって俺が言ったとたん、どうしてもお前と立ち合いたいって頑として譲らず、ここまでついて来ちまったんだ」




シンジは頭を掻きながら、困った表情を見せた。

「ま、なんて言うか、俺がお前の事を大袈裟に話し過ぎたのかな。一度でいいから本気の “ Def busta下村 ” と闘いたい。って言い出してな… でも、まさか、こんななぁ… 手痛い授業… いや…」


言葉を選ぶ。




「いや、いい勉強になったな。お前みたいなバケモンが現に存在してるってな」

「おい ! なにを勝手に… テメッ… ああ… くそ…」


どうにも後味が悪過ぎる。




「わぁーってるよ。アイツだって覚悟の上だ、文句は言わん。でもお前、最後に狙ってたのは右のコークスクリューだろ?そんなん貰っちまった日にゃあ、黒崎がぶっ壊れちまうからなぁ、途中で水入りさせて貰ったんだ。 しかし…」




シンジは一瞬口ごもった。

「しかしソイツは、元々俺の技だろ。それを俺とのケンカの中で盗んだうえ、自分の技として完全に昇華させちまいやがってよぉ… 全く嫌な奴だよお前は」

「おい、そんな事よりお前はいったい何をしにきたんだよ?」

「はっは、そうだ、それそれ。お前、真田修二を覚えてるか?」

「あん?真田って、俺達の後輩だった、あの修二の事か?」

「そう、その修二だ。高校時代お前が作ったチーム 『 SANTANA 』 で、唯一バイクの走りでお前に付いていく事が出来た、天才と呼ばれたあの男だ」

「おう懐かしいな。元気にしてんのか?あいつは」

「ああ。元気どころか、今あいつは二代目のスティール・ランナーに成ったんだぞ」




スティール・ランナーだと !? 一瞬我が耳を疑った。その名は、俺達がまだ、街の不良少年だったあの頃、誰もが憧れた、伝説の男の名前だ。皆が彼のように成りたくて、誰もが彼の幻影を追った。




『まさかあの修二が…』 俺の中で、何度も何度も、修二の無邪気な笑顔が、反すうされては消えていった。








つづく








Posted at 2017/01/07 11:27:08 | コメント(2) | トラックバック(0) | Def busta≪デフバスタ≫ | タイアップ企画用
2016年12月29日 イイね!

第二章あとがきのようなもの

   あとがきのようなもの


 さて、第二章は如何だったでしょうか?途中、暗いストーリー展開となり、気持ちが沈んじゃったよぉ~!。なんて方がいらっしゃいましたらごめんなさい。しかし、終盤は下村が再登場し、ぱっと華が咲くように、清々しく締めくくれたのでは!?などと、当方はそう感じております。

 あっ!そうそう!!実はですね、この第二章には裏設定と申しましょうか、もう一つの物語、パラレルストーリーが存在します。それは、下村が本当に死んでしまう設定が当初あったのです。

 と、折角ですので、ここでそのストーリーを少々ご紹介させて頂きます。

 成海がひと冬の修行を終え、源三とペンション内で会話した後の、なが~~い中編の内容となります。あのあと成海は、一人で色々なオフロードのレースに出場します。勿論それは上場見をおびき寄せる作戦であります。案の定、上場見一味が喰らい付いてきます。で、そんな輩をとことん排除してゆく成海なのですが、それと同時に彼女の心はどんどん荒んでもいきます。しかしながら、嬉しいことも!?その様々なレースを通し、凄いテクニックを持つセロー225乗りの少年と出会います。その少年は、心が荒んで来て怖ろしい雰囲気を醸し出す成海に、一つも物おじすることなく懐いてきます。当初、少々困惑するものの、そんな彼を仲間として受け入る事になり、年が同じだった七菜香と付き合い出す事にもなり、遂には妹のご懐妊騒動へ(笑)

 この時点で、凍てついた成海の心は一度氷解しかけます。世間体的には17歳の妹が妊娠など、修羅場になりかねない事態なのですが、源三は息子夫婦を、成海と七菜香は両親を失っているので、むしろ新しく増える家族の誕生を喜びます。

 そして事件が起きます。あるレースを終え帰宅する成海。そこで見たのは、火に包まれるペンション輪道だったのです。しかも周囲の野次馬の中には、源三も七菜香もいません。血の気が引いていきます。そして成海は火の海の中へ飛び込んで行くのですが、驚天動地。既に息絶えた源三と、虫の息となった、お腹の大きな七菜香の姿を発見するのです。あと正体不明の死体も一つ転がっています。色々な疑問が湧きつつも、当然成海は、命がけで炎の中から七菜香を助け出します。
ここで上場見ちゃん登場です。火を放ったのは上場見ちゃんだったのです。怒り狂った成海は上場見を追いかけ、例の廃工場へと舞台が移ります…。そこでまたもや精神が崩壊しそうになる事実を突き付けられることに!なんと七菜香と付き合っていた彼は、上場見の一味だったのです!! とことん追い詰められます。肉体的にも精神的にも。

 もう誰にも止められません。まるで下村が乗り移ったような、鬼神の如き成海が大暴れします。満身創痍になりながらも、遂には虎刹拳を上場見に決め、止めを刺そうとします。そう、殺人を犯そうとしてしまいます。殺意でドス黒く染まってしまった成海。そんな彼女を救ったのは…etc。

 と、まあ、こんな感じでストーリーが流れ、驚愕のエンディングへと進んでいきます。
 如何ですか?読んでみたいという方がいらっしゃいましたら、どしどしメッセージを下さい。もしかしたら、このパラレルストーリーを書くかもしれません(笑)

 一先ず、本編は第三章の「Def busta~Legacy~(デフバスタ・レガシィ)」へ。 勿論、主人公は下村です。そしてこのストーリーこそが、当方が一番書きたかった物語なのです。しかもこの回からは、読者の皆様に、より感情移入して頂こうと、主人公の一人称で物語を書き進めております。乞うご期待です!!

 ともあれ、終盤はかなり急ぎの編集作業となってしまいましたが、なんとか年内(2016年)に第二章を書き終え、すっきりした気持ちで、新年からは第三章をお届けできます。どうか今後もお付き合いをお願いいたします。


それでは良いお年を。




2016.12吉日




むらっち2











Posted at 2016/12/29 20:37:32 | コメント(4) | トラックバック(0) | Def busta≪デフバスタ≫ | タイアップ企画用
2016年12月29日 イイね!

Def busta 第二章 ~Recovery line~ 第九話(最終)

Def busta 第二章 ~Recovery line~ 第九話(最終)  

     10


ヘルメットを脱いだ成海は、一つ大きく深呼吸をした。
そのプレハブ造の工場の裏は、大きな山がそびえ立ち、樹木が生い茂る。さらに周囲は廃車が壁さながらとなり、迷路のようになっていた。もう逃げ場はどこにも無い。









「上場見…」

成海の全身が総毛立つ。ゆっくりとした動きで下車し、工場の内部に歩み入った。





工場内は、吹き抜け構造2階建てで、広々としている。少々薄暗く、機械を扱う工場独特の、鉄と油の“つんっ”とした匂いが鼻についた。しかしそれは、子供の頃から慣れ親しんだ匂いでもあり、少しだけ、成海の心を落ち着かせる。

そこから『ひゅぅぅぅっ…』っと、空手の “ 伊吹 ” を一息吐き、五感を研ぎ澄ませ、これからの戦いに備えた時だった。薄暗い工場内の更に一層闇の深い場所から、人の気配を感じた。そしてそいつは、不気味な空気を身にまとい、音もなく “ ぬらり ” と現れた。

その姿に成海は少々 “ ぎょっ ” としたが、すぐに平静を取り戻す。そこにいたのは、ミイラ男さながら、顔の全面に、包帯を巻きつけた男だった。そして、その口から発せられる、不快な波調の声だけは、忘れたくても忘れようがなかった。










「ひーーっひっひっひ」

長い舌をベロリと垂らし、下卑た笑い声が工場内に響く。




『上場見 !! 』 もう間違いなかった。全身が身震いする『どんなにこの瞬間を待ち望んだ事か !? 』 身体にアドレナリンが湧き出し、力が溢れ出てきた。

「会いたかったよ…。上場見」

「ひっひっひ。お嬢ちゃんよぉ、そんなに俺の事が恋しかったのかい?俺もなぁ、お前を忘れた日なんて無かったぜぇ、この砕かれた顔が、疼いて疼いてよぉ ! ひーーっひっひ」

「ああ。アタシも、アンタが恋しくて恋しくてねぇ・・・。 一刻も早く止めを刺してやりたかったのさ !! 」






そう言うや否や、成海は一気に走り出し、その勢いで “ ふわり ” と宙に舞い、飛び蹴りを見舞った。しかし、それを軽くかわした上場見は、後ろ手に隠し持っていた鉄パイプで、成海の頭部へ一撃を飛ばす。が、成海は何の躊躇いもなく、右腕でブロックし、その一撃を弾き飛ばしてしまった。
鈍い音。そんな音と共に、上場見は鉄パイプを持っていた手に、痺れに似た感触を感じていた。




「ああ~~ん?プロテクターか?小癪なヤツめ」

「ハンッ ! 同じ轍は踏まないよ !! 」

なんと、M65フィールドジャケットの袖に下には、KADOYA製の丈夫なアームプロテクターが、しっかりと装着されていたのだ。





「ひーーっひっひ、好きだぜぇ~~成海ぃ~~」

そんな上場見の、興奮した声が響いた時、表でパトカー複数台の電子サイレン音が、けたたましく聞こえてきた。

「ああ~~ん、なんだぁ!?ったくよう。人の楽しみを邪魔しやがって」




なんとも、ガッカリした様子の上場見だったが。

「おい、やれ」




左手を軽く掲げ、誰かに合図をしたとたん、突然工場のシャッターが、勢いよく下ろされ、太い閂が掛けられた。そして、どこからともなく、潜んでいた3人の手下達が現れ、吹き抜け構造の2階へ向け、むき出しの鉄階段を駆け昇り、そこに用意してあった、大量の火炎ビンに火を点け、2階窓から、表に積み上げられていた廃車に向け、次々と投げつけた。

火炎ビンの中身は、揮発性の高いガソリンだった。辺りはあっという間に、火の海となり、爆発的に燃え広がった。




「ひーーっひっひ。どうだ成海ぃ、綺麗だろぉ!?これで邪魔するヤツは、一人もいないぜぇ~~」

「…アンタは狂ってるよ…」

「ひーーっひっひっひ」




そのとき外で、ひと際大きな爆発が起こった。

















     11


手下の一人が階段を降りてきて、上場見の近くに佇んだ。

「ひっひっ、ガンセキィ~、お前もお嬢ちゃんと遊びたいのかぁ~。いいぜぇ、たぁ~っぷりと可愛がってやんなぁ、弱ったところで、俺がなぶり殺しにすっからよぉ~」




そのガンセキと呼ばれた男は、見た目通り、分厚い筋肉に覆われた体躯を持ち、首にいたっては、その長さが分からないほどに太く、肩も巨大な筋肉で大きく盛り上がっていた。
無言で “コクリ ” と頷く。

「ガンセキはよぉ、しゃべれ無ぇんだ、だからコイツの想いをよぉ、身体で受けてやってくれよ成海ぃ、ひーーっひっひ」




上場見がそう言うや否や、ガンセキは成海めがけ、凄い勢いで肩から突進した。でかい割に、素早い動きをしていた。が、成海はそれ以上のスピードで避ける。
体捌きで相手の右側面に “ ひょい ” 交わし、肝臓めがけて、右前蹴りを入れようとしたのだが、上場見がすぐ近くに踏み込んできて、鉄パイプを振り降ろしてきた。

「しゃああーーー ! 」




またしても、それを腕で受ける成海。

「ハン、そういうこと !? 」




そこから2人の波状攻撃が始まる。右に左に2人が入れ替わり、絶え間なく成海を強襲する。
上場見の鉄パイプが振り下ろされ、それを捌く、ないし腕で受けると、次は死角となる場所から、ガンセキの大振りな拳か、体当たりが飛んでくる。
大半は交わすことができたが、少しずつ攻撃も貰っていた。しかし、そんな状況にありながらも、成海は驚くほど冷静だった。それは “ ある覚悟 ” を決めていたから他ならなかった。

やがて “ その機会 ” は訪れた。2人の呼吸が乱れはじめ、攻撃の手が緩んだ瞬間を逃さなかった。ガンセキの大振りな右拳をわざと受け、その勢いを利用して鋭く回転。そこから体重をのせた、中段の後ろ回し蹴りを、腹部に叩きこむ。雪山で鍛え上げられた、成海の重たい蹴脚は、ごついガンセキの体躯を “ くの字 ” に折り、さっきまでの激しい動きを、瞬時に止めてしまった。それだけ強烈な一撃だった。

もんどりをうつガンセキ。それから上場見の鉄パイプも捌き、懐近くまで一気に踏み込んだ。そこは超ショートレンジの間合い、指を軽く曲げ、虎指という右掌底をつくり、その一番硬い手根骨で、鼻を下から押し上げるように、人体の急所“人中”を打つ、最大の禁じ手『虎殺拳』による打撃だった。
鼻骨、涙骨、蝶形骨、上顎骨、下鼻甲介、口頭骨の顔面頭蓋を破壊して、呼吸器系を潰してしまい、相手を絶命たらしめる、禁断の技だ。
極限まで捻じられた体幹が、足、膝、腰、背中、肩の順で瞬時に開放され、螺旋の爆発的な力となり、掌が射出される。










「殺(と)った ! 」

最高のタイミングだった。それが成海の覚悟 !! 殺人をもいとわない、覚悟の一撃。
鍛えに鍛えた蹴脚は、強い打撃を生み出す。そしてこの技を、確実に極めるための土台だったのだ。




だが甘かった、次の瞬間だった。成海の爪先から脳天まで、強烈な衝撃が突き抜けた。更にその後には、肉の焦げる匂いが、鼻腔をついた。それは電圧を上げた、改造スタンガンの電撃だった。ガンセキが成海の首筋に押し当てていたのだ。




「チクショー、あと…あと少し…」

倒れながら上場見を睨んだ。




「ひーーーっひっひ」

上場見は間髪を入れず、倒れた成海の膝に鉄パイプを叩きつけた。




「ああっ !! 」

激痛が走る 『 …くっ…し、しまった… 』 膝を砕かれた。




「ひひひ、惜しかったなぁ。でもそろそろお別れだ。楽しい時間は、あっという間だなぁ、成海よぉ…」

それから上場見は、鉄パイプをゆっくりと頭上に掲げた。












   12


その頃、工場の外では、警官隊がごった返し、大混乱を招いていた。

「消防隊はまだなのかーーー !? 」

「早く火を消せーーー !! 」

「そっちにも引火するぞーーー !! 」

「駄目だ ! 全然近寄れない !! 」




もはや烏合の衆であった。











そうして、そのタイミングで現れたのは、進藤と謎の人物だった。

「おい、進藤、さっき話した “ アレ ” をやるぞ ! 早く用意しろ !! 」

「な !? お前はバカか?そんな事できる訳ないだろ !? 」

「あん?バカはお前だ ! 成海に何かあってからじゃ遅ぇんだよ !! 」




その言葉を聞き、少し考えた進藤は、意を決し「よし ! 」 と短く答えた。
それからその2人は、一端その場を後にしたかと思いきや、今度はY33セドリックの覆面パトカーに乗り、勢いよく突進してきた。

そう、乗っている !? 一人は冷や汗を流しながら、運転席に座る進藤。そして、なんと、もう一人の姿は、クルマのルーフ上にあり、まるでサーフィンでもするかのような格好をして、目的地の工場を睨み付けていた。

「よぉーーーし !このまま廃車の山に突っ込め進藤 !! 」

「くそったれーー ! こんな事をして、俺は何枚始末書を書けばいいんだぁ !? 」













燃え盛る廃車の山に迫る。







「恨むぞ、下村ぁーーーー !! 」








下 村 !!









そうなのだ、クルマのルーフ上に居たのは、死んだはずの下村だった。仮に他のSANTANAが、その場に居合わせたのなら、間違いなく目を疑う瞬間だったであろう。だがしかし、それは紛れもなく彼の姿だった。
そうして、Y33セドリックはアクセル全開のまま、炎に包まれた、廃車の山に突っ込んだ。けたたましい衝突の衝撃。その勢いで、ルーフ上の下村は勢いよく、宙へ弾き飛ばされる。













その様子を見ていて慌てたのは、工場内2階の窓で、見張りに立っていた、上場見の手下であった。

「うわーーー ! こっちに真っ直ぐ来るぞーーー !! 」




「だらああぁぁーーーー !! 」

下村の気合いと共に、2階窓ガラスが激しく砕け散り、吹き抜け構造の工場内へ、3人の男達が落ちてきた。













上場見は、成海に止めを差すべく、鉄パイプを頭上に掲げていたのだが、突然の出来事に驚き、その機会を逸してしまった。




土煙が舞う工場内、そこから一つの人影が “ ゆらり ” と立ち上がり、ゆっくりと歩を進めて来た。
そして、包帯だらけの顔にも関わらず、驚きを隠し切れなくなった、上場見が呟いた。

「し…下村ぁ…」




電撃により、意識が混濁する成海であったが、その名前ははっきりと聞こえた。

「え?えっ?…下村…さん…なの?」

「死んだはずの手前ぇが、なんでここにいるんだぁーーー !? 」




動揺を隠し切れない上場見。

「テメェは確かに…、この俺がブチ殺したはずなのに !? 」





“ ニヤリ ” と笑う下村。

「はっ、ケリをつけようぜ、上場見 !? 」











「まさか !? まさか !? まさか !? 」

上場見は、完全にパニックに陥った。




そんな様子に下村は 『 ふう~ 』 と一つ溜息をつき、今度は成海に言葉を投げかけた。

「成海…すまんかったな。けど、もう大丈夫だ」




色黒で顎髭を蓄え、武骨で野生に満ちた鋭い眼付きだが、成海を見つめるその瞳は、とても温かく穏やかだった。




「ほんとに、ほんとに、下村さんなの !?

成海の瞳から涙が溢れる。





しなやかで力強く、細く引き締まったその体躯。間違いなく下村であった。
それから下村は、再度、上場見に向きを変え、ある問いを投げかけた。

「これは一体、誰の差し金なんだ !? 」

「ひっひっひ、下村ぁ~…」





上場見が吠える。

「こぉのバケモンがぁーーーー !! 」





突然手に持っていた鉄パイプを、下村めがけ投げつけたが、下村は一切動じることなく、回転しながら飛んでくる鉄パイプを、左腕で無造作に払い除けた。

その瞬間、視角となった右側後方から、サイのようなガンセキのショルダーアタックが、突如襲ってきた。 が、それに気付いた下村は、左足に踏ん張りを利かせ、右手だけでその突進を止めたや否や、万力のような握力で、岩石の肩を握り潰してしまう。

「●×△※ !! 」 うめき声と共に、苦悶の表情を見せるガンセキ。




「だらああぁぁぁーーー !! 」














下村は、周囲の空気が震えるほどの気合いと共に、強烈な左フックを顔面に飛ばす。その左拳が、相手の頬にクリーンヒットした瞬間、ガンセキはその場で宙を半回転し、頭から地面に叩きつけられた。




恐ろしいまでの威圧感を放つ下村。上場見を睨み付けながら歩み寄り、次の一撃に移行しようとした時、いきなり足元で、火炎瓶が狂おしく爆ぜた。
本能的に宙へ飛び、爆炎を交わす。着地と同時に地面を転がり、攻撃態勢をとろうとしたが、火炎瓶が次々と放たれ、そのうちに、辺り一面が火の海と化した。




それは、先ほど下村と共に、2階から落ちてきた、2人の手下の仕業だった。

「ひーーっひっひ。下村ぁ~~ !! 」










もはや近付けないほど、大きくなった炎の向こう側から、上場見の笑い声が響いた。

「一つ教えてやる。お前はなぁ、とんでもねぇお人から、恨みを買ってんだ ! お前が生きていたと知った以上、これから酷ぇことになるぜぇ~ ! 大人しく死んでた方が良かったかもなぁ~。まったく、同情するぜぇ、ひーーっひっひっひ」




そして上場見は、あらかじめ用意していたであろう、逃走用の出口から、手下と共に脱出していった。その遠ざかっていく、単気筒エンジンの音は、炎の中に取り残された下村を、まるであざ笑うかのようだった。

『 くそったれ!ダメか… 』 心の中で悪態をつく下村。追いかけようにも炎の壁が邪魔し、追跡は断念せざるを得なかった。しかも、最後の出口と思われる、その場所にまで、ご丁寧にも火が放たれていた。

だが、たとえ追跡が可能であったとしても、下村は決して上場見を追わなかったであろう。いま優先すべき事は “ 成海 ” だ。下村はいつも、仲間ことを最優先に考える。





「成海 !? 」

下村は、倒れている彼女の元へ駆け寄り、小さなその身体を “ひょい ” と抱え上げた。

「成海しっかりしろ ! 俺達も脱出するぞ !! 」




しかし、辺りは一面が火の海となっており、壁の炎にいたっては、今にも天井に達しようとしていた。その熱気はジリジリと肌を焼き、酸素が奪われ、息苦しさで目眩を起こすほどだった。




「ごほっごほっ…どうやって?…もう無理だよ…」

むせ返りながら、成海が弱々しく答える。




「大丈夫だ。今度は俺がお前を護る !! 」

そう言い、まだ、炎に包まれていなかったZ1000MkⅡに成海を乗せた。




それから下村は “ ぎらり ” と眼つきを鋭く周囲を見渡し、目標を捕捉する。
それは工場正面のシャッターに掛けられていた閂。




「っしゃあーーー ! 」

自分に気合いを入れ、一気に走り出し加速。それは弾丸のような勢いで、捕捉目標に迫り、そこから全力のサイドキックを放つ。

「だらああぁぁぁーーー!!」




その閂は、柱等に使用される120mm角の部材であるにも関わらず、一発目のサイドキックで亀裂が入り、追い打ちの二発目には、乾いた音を立て、見事に圧し折れてしまった。それから下村もZ1000MkⅡに跨る。




「成海行くぞ、しっかり捕まってろ」

「…はい」

成海は下村の逞しい背中を、ただただ強く抱き締めた。




「いっくぜぇーーー !! 」

その空冷モンスターは、やっと帰ってきた主の想いに呼応し、いつもより激しいエキゾーストノートを奏で、今にも焼け落ちそうになっていた、工場のシャッターに向かい、鋭く突進していった。

















     13


成海の怪我は、膝蓋骨粉砕骨折。いわゆる膝の皿が、砕けてしまっていた。
焼け落ちる工場から、見事な脱出劇をみせた下村は、そのまま、高度医療機関へ成海を運び、緊急手術を受けさせた。それは何時間にも及ぶ、大手術であった。

しかし、実はこのとき、医者は「 生命に危険が及ばない外傷である 」 との判断から、手術日を後日に回そうとしていたのだが、それに怒った下村は、かなり強引な説得を敢行。何を言われても、絶対に引かない下村に対し、遂には医者側が折れ、緊急手術となったのだ。

それから、その砕けた骨は、見事元通りに復元される。しかも 「リハビリ次第で元通り動くようになる 」 との太鼓判まで貰い、わがままを聞き入れてくれた、整形外科のドクターには、本当に感謝した。
手術後、成海の全治は、リハビリも含め3ヶ月。そんな診断が下され、当分は病院のベッドで、大人しくすることとなった。











      14


そんなある日、成海の病室には、SANTANAのメンバーである、下村、進藤、岩野、坂本が見舞いに来ていた。

坂本に至っては、クルマで撥ねられたにも関わらず、足、腰の打撲、額の裂傷程度の軽傷で済んでしまい 「 下村さんに負けず劣らずのタフボディだぜ ! 」 と、しきりに自慢をしていた。

それからほどなくして、待ち合わせをしていた、成海の祖父・源三と妹の七菜香が到着した時に、ようやく進藤の口から、今回の件について、詳しい事情が語られた。




「道警の調べでは、上場見の逃走劇の裏には、とんでもないヤツがその背後に潜んでいる事を掴んではいたのだが、その実態がいまいちはっきりとしなかった事から、下村の安全を確保することを第一に、ひとまず死んだ事にして、犯人達を泳がせたんだ」

淡々とした進藤の語り口が、悲痛な響きに変わる。




「すると、上場見の一味と思われる輩が、SANTANAのメンバーに、あらゆる危害を加えてきたため、そのまま捜査を、続行する事になったのだが、成海ちゃんを含め、他のメンバーに、とんでもない苦しみと、悲しみを与える結果となってしまった…。ほんとうに申し訳ない」

進藤は深々と頭を下げ、心から皆に謝罪した。だが、そんな進藤の 『 他のメンバーや成海に、真実を伝えられない 』 という、やり切れない後ろめたさや、長きに渡る心労を考えると、誰も文句を言う者はいなかった。




今度は悔しそうな表情を見せる進藤。

「そして、ようやく姿を現した上場見が、下村に向け 『 とんでもねぇお人から恨みを買っている 』 との捨て台詞を吐いた事から、やはり、背後に何者かがいて、ほう助している事が明らかとなったのだが、あと一歩のところで、実態は掴めず終いであったうえ、取り逃がす結果となってしまった」




一度唇を固く結び、再度ゆっくりと話し出す。

「あの燃え盛る工場。その裏口から逃げた上場見は、あらかじめ用意していたCRF450Rに跨り、切り立った裏山に逃走したのだ。もう、その時点で、警察には追跡する術が無かった…」




肩を落とす進藤。

「ここまで追い詰めたのに、一人も逮捕する事が出来ず、非常に残念だ…」

最後にそう締めくくった時だった。




「その恨まれている俺が、こうしてピンピンしてんだ、そのうちまた、ちょっかい出して来んだろ」

などと、下村が事なし気にそう言い放ち “ ニッコリ ” と笑って見せた。




一瞬、全員唖然としてしまったが、すぐに安堵に変わる。自分が殺されるかもしれない状況下で、サラリとそんな台詞を吐き、笑って見せたのだ。なんだか、そんな下村がとても眩しく、また頼もしく思えた。




「それにしてもアイツ…、上場見は…、なんでMkⅡを捨てたり、潰したりもしないで、しかも整備までした状態で、あの場に乗って現れたんだろ?」

坂本が、ずっと気にしていた疑問をポロリと漏らす。




「そんなの、深く考えるまでも無ぇよ。結局アイツも、バイクが好きなんだよ。まあ、成海を誘い出すってのも、あったかもしれんがな。うん。 バイクは良い腕してんのにな… どこで、あんなんなっちまったんだろうな」

下村が少し寂しそうに答える。それから、続けて成海も疑問を投げかけた。





「でも下村さん、お腹を刺されて、ナイフが身体を貫通したのに、どうして大丈夫だったの?」

当然、皆も興味を示す。

「はっはっは、コレな」





Tシャツをめくり、バキバキに割れた、8パックの腹筋に残る傷跡を見せた。

「こんだけ大っきい傷なんだけどよぉ、内臓は一つも傷ついてなかったんだ。複雑に入り組んでいる腸を全て交わして、ナイフが背中に突き抜けただけでよ、結果的に腹と、背中の表面を、ちょこちょこっと、縫っただけで済んだんだよ。で、その日のうちに退院だ(笑)」

これまたサラリと、とんでもない事を言い放った。




「な、こいつバカだろ !? 医者も最初は、奇跡だ ! なんて言ってたけど、こんな調子なもんだから、終いには呆れるのを通り越して、笑いながら腹を縫ってたんだぞ !! 部分麻酔じゃなく、全身麻酔にして貰えばよかったんだ。ほんっとにバカだなお前は !? 」

進藤が呆れて言った。




てめぇ、人のことをバカバカバカバカ。いい加減うるせーんだよ !! 」

「なんだとバカ ! バカにバカと言って何が悪い !? って、あっコラ !! 」

そこで、下村と進藤の、取っ組み合いのケンカが始まった。しかし、本気で殴り合ったりはしていない、どこかじゃれ合っているようなケンカだ。




「もう~、病人の前で、何やってるッスか2人とも !? ほんっっとにバカっすね~」

岩野が口を挟んだ瞬間だった。




「なぁ~~にぃ~~~ !? 」

下村と進藤が口を揃えて、今度は岩野に飛びかかった。




「ああっ ! なにやってるッスか !? バカっすよ、2人ともバカっすよ !! 」

進藤は、暴れる岩野を押さえつけ、そこに下村が、岩野の両頬をつねり上げて、顔を大きく横に引き伸ばした。




「バカっすよ ! バカっすよ ! !」

岩野の些細な抵抗であった。




そんな様子を見ていた成海が、急に 「 ぷっ ! 」 と、小さく吹き出した後 「 あはははは 」 大きな声で笑い出した。

「なんなのよもう、なんて人達なの !? あはははははは」




それは、ずっと冷たく閉ざされていた、成海の心が氷解し “ 憎しみのウロボロス ” から解き放たれた瞬間だった。




「ナルちゃんが笑った」

それを見た七菜香は涙を流し、源三の腕に抱きついた。




そして下村は、何度も頷きながら、優しい眼差しで、成海を見つめていた。が、両手の力は緩めないどころか、更に力を込めて、岩野の顔を、横に大きく広げた。




「あがががが、アーーカ ! 、アーーカ ! 」

もう岩野は、まともに喋れなかった。




「あはははははは」

尚も愉快そうに笑う成海。また以前のように、向日葵のような笑顔が咲きほこった。




その場にいた、全員が同じ気持ちだった。下村という太陽に照らされ、皆が元気になり、希望の灯が点されたのだと。

GREAT DAYS。それは 『 審判の日 』 などではなく、成海とSANTANAを繋ぐ線 ( line ) を取り戻した ( Recovery )した 『 最高の日 』 となった。




その時、病室の窓の外から、夏の始まりを告げる、セミの声が聞こえてきた。











第二章・完





Posted at 2016/12/29 20:08:44 | コメント(1) | トラックバック(0) | Def busta≪デフバスタ≫ | タイアップ企画用
2016年12月28日 イイね!

Def busta 第二章 ~Recovery line~ 第八話

Def busta 第二章 ~Recovery line~ 第八話


GREAT DAYS(審判の日)








    4


『 BIEI RALLY GREAT DAYS 』 は4日間にわたり、様々な林道と公道を駆け巡る、クロスカントリーラリーである。初日は天気に恵まれ、晴天の気持ち良い朝に幕を開け、地元民も大勢集まるなか、盛大な開会式が行われた。

その後オフシャルが、出場選手達への簡単なブリーフィングを行い、レーススタートとなるのだが、それは、大会事務局から事前周知された『ラリー概要』からなる、文書を、理解した上でのことだ。




  『 BIEI RALLY GREAT DAYS 』 概要

BIEI RALLY GREAT DAYSは、一般公道を利用する競技であるため、道路交通法規を遵守すると共に、地域社会に配慮する必要がある。

SS (競技区間)では、一般車両の進入を防ぐなどの対策が施されているが、リエゾン(移動区間)では、一般公道や市街地を走行することもあるため、車検取得など、交通法規に準じた、厳しいレギュレーションを設ける。重大な交通違反を犯した者は、即失格とする場合もある。

スタートは、一台ずつが一定の間隔でスタートする、タイムトライアル形式で競技を行う。スタートする順番はゼッケン順だが、前日のゴール時間順、または前日までのリザルト順などとする。

SS (競技区間)では、所要タイムが少ない順に順位が確定される。ただし途中設けられた、CP (チェックポイント)を通過できない場合や、その他レギュレーションに違反した場合は、ケースごとにタイムペナルティーが課せられ、そのステージごとの総合計と、その日までのスタートからの累計によって、順位を決定する。

リエゾン(移動区間)に設けられるCP (チェックポイント)では、設定タイムより早く到着した場合にも、ペナルティーが課せられる。

事前に走行ルートは発表しない。レッキやペースノート作りは禁止とする。その代わり、『コマ図』と呼ばれるルートブックを、当日に配布し、ラリー用トリップメーターの距離とコマ図のイラストから、ルートを読み取り目的地を目指すこと。


                 以上





と、このような感じである。

今回、成海のサポートに着いたのは、岩野と坂本の2人であった。進藤は観客に紛れ、辺りの様子を窺うことにした。そして相も変わらず、仏頂面の坂本であるものの、バイクの整備やタイム計測など、黙ってサポート隊としての仕事をこなしていた。

このラリーに出場してくる、選手のほとんどは 『 年に1回のお祭りを楽しみに来ている 』 そんな雰囲気であるが、ごく一部、本気で上位を狙う連中のなかには、相当な手練れも存在している。

特に、岩野からレース前に紹介された、オフロードの師匠という、左門豊作を彷彿とさせる容姿の “ 武田達人(たけだたつひと) ” なる人物は、相当な経歴の持ち主で、世界中のラリーレイドに出場する、プライベーターのラリーストであり、パリ・ダカールラリーを始め、 ISDE ( International Six Days Enduro ) や、国内の MFJ CPU ENDURO で、数々の輝かしい成績を納めているのだ。







ラリー開始後は、予想通りの展開となった。KTM400EXCを駆る武田の走りは凄まじく、穏やかな風貌とは打って変わり、攻撃的なライディングで、他の追随を許さず、SS (競技区間)でのタイムアタックは、常にトップを独走状態となり、次々とレースを消化していった。












    


SANTANAのメンバーにあっては、あらゆる期待と不安が、複雑に入り混じる事となった今回のレースであったが、その実、上場見が絡むような特段変わった事は何も起きなかった。が、しかし、ことレースにおいて、手を抜かない彼等は、大番狂わせを起こそうとしていた。

当然ダークホースはSANTANAだ。最終日となる4日目、なんと成海は、その身につけた、祖父譲りのテクニックを駆使し、順位を2位にまで浮上させていた。トップを独走する武田を、完全に射程距離に捉えていたのだ。

最後のリエゾンが終わり、ファイナルクロスと称される、SSのタイムアタックでは、トップを走る、この百戦錬磨の手練れ、武田の背中に、自分の息がかかりそうなほどタイム差を詰めていた。

逃げる武田、その後を追うSANTANA。 その瞬間、成海は本当に楽しかった。ただ、目の前の強敵を追い詰め、速く走る事に没頭できたのだから。

この時、復讐の旅路の途中にある成海ではあったが、皮肉にも、レースの楽しさや、バイクで走る楽しさを再認識することとなってしまったのだ。









    



結局、本ラリーは総合点での勝負となる。強敵だった武田を、最終のSSにおいて、遂に抜き去る事ができた成海であったが、当初の目的は違うところにあったので、終始軽視していた、リエゾンでのペナルティーがひびき、結果は3位に終わった。 
そう、本来の目的が違った…。 それはSANTANAだけが知る事実…。




しかし、武田や他の参加者達は、女性ながら、成海のガッツある、そのライディングに、盛大な賛辞を送った。

「岩野、お前、とんでもない新人を連れてきたなぁ。遂には追い抜かれちまった。いや~、まいった、まいったぁ(大笑)」





武田は、照れ隠しにおどけてみせたが、次の岩野の言葉に、思わず驚愕してしまう。

「武田さん。輪道の名前で、誰かを思い出さないッスか?成海ちゃんは、サードアイ輪道のお孫さんにして、直弟子なんスよ」




それを聞き、驚きの表情で凍りつく武田。

「なんだって !? まさか… そんな… サードアイ…」




武田は次の瞬間、黙って成海の両手を握り、深くお辞儀をしてきた。一瞬困惑した成海であったが、武田のその行為は、祖父に向けられた、敬意であった事を知る。

「サードアイ輪道は、私達のヒーローなんだ。彼に憧れて、オフロードバイクを始めた。まさか貴女が、その血筋の方であったとは…。どうか、お爺様によろしくお伝え下さい」




なおも最敬礼をする武田。
全力を出し切り、本気で闘い、勝敗が決した後にあっても、お互いを称えあえる相手に出会い、成海は感動を覚えていた。そして、バイクで走る楽しさまで、再確認させられ…。

それに、ずっと仏頂面をしていた坂本も 『 3位なんてビリと同じだけどよぉ、最後のSSは…。あの武田さんを抜いちまうなんてな。凄く良かったよ 』 などと、少し照れながら、成海に賞賛の言葉を贈った。

あの事件以来、ずっと孤独だった成海。それは、冷たく閉ざしてしまった心に、少しだけ、温かい光が差し込んだ瞬間でもあった。












   


夕刻、表彰式も無事に終わり、帰り支度をしていた時だった。

「おう、喉乾いたろ?なんか飲み物買ってきてやるよ」

坂本が珍しく気を利かせ、成海にそんな事を言った。




「うん。頼むッスよ」

岩野が、小走りに駆けていく坂本の背中に、そう言葉を投げかける。




「成海ちゃん、坂本を許して欲しいッス。あいつは心底、下村さんに惚れ込んでたんスよ。だから行き場のない悲しみを、成海ちゃんに向けてしまったんス。どうか許して欲しいッス」





愁いの表情の成海。

「許すもなにも…もう充分わかってるよ。アイツ、本当は優しいヤツなんだよね」




そんな成海に、岩野は何度も頷いてみせた。
その時だった。少し離れた場所で、タイヤのスキール音が激しく鳴り、次には女の悲鳴が聞こえてきた。

顔を見合わせる成海と岩野。嫌な予感がした。全力で走り出し、その場の人だかりの中へ割って入る。そこで見たものは、頭部から血を流し、無残にも倒れている坂本の姿だった。




「坂本ぉーー ! しっかりするッスよぉーー ! 坂本ぉーー !! 」

岩野が叫びながら駆け寄った。

「一体何があったんスか !? 」




するとギャラリーの一人が答える。

「いや、急にあのクルマが走ってきたかと思ったら… その人を撥ね飛ばして…」




その男の指さす方向には、坂本を撥ねたと思われる古いセダンが一台停まっていたのだが、運転手の姿は既に消えていた。




「チクショー ! まさかこんなタイミングで襲われるなんて !! 」

周囲を見渡す成海。

「チクショー、チクショー…」




注意深く、全神経を張り巡らせる。更に注意深く、注意深く…。
そして野次馬の向こう側に、一台のバイクを見つけた。

「あっ !? 」

そこで見たそのバイク !? そいつは聞き覚えのある、空冷4サイクル・モンスター、KERKER KR管の野太いエキゾーストノートを響き渡らせた。




「…Z1000MkⅡ…」

成海の眼が大きく見開かれた。

そのバイクに跨った人物は、フルフェイスのヘルメットを被っていたが、すぐに誰だか分かった。瞬間、その男は右手で“来い”というジェスチャーをしてみせた。




「上場見ぃーー !! 」


成海の心が、どんどんドス黒く変色していった。




「岩野さん、アタシはアイツを追うから、坂本さんをお願い ! 」

そう言うや否や、一直線に走り出す成海。が、上場見は、激しくタイヤスモークを吐き出しながら、その場から走り去る。

「チクショー !! 」




次は成海の番だ。スクランブルインターセプト。サードアイに跨ると同時に、キック一発でエンジンに火を入れ、一瞬でその場から、離陸するかのように、KX500を発進させた。











   


同時刻。旭川市の某所。そこはスキー場近隣に立ち並ぶ、ログハウス風の山小屋群である。そんな場所に進藤の姿があった。

その昔バブル期に、別荘として建て売りされた、70㎡程の小さな住宅の一つである。その他にも数軒その存在が確認できるが、どれも使われている様子はなく、既に忘れられた遺産である。静寂に包まれた廃屋達。それはまるで、おとぎ話に出てくる魔女の棲家のようだった。







進藤は随分と急いだ様子であった。彼は、目的と思われる山小屋に辿り着くと、入口のドアに、合図のノックを、最初に2回、その後に3回と分けて叩き、室内に入っていった。

陽が落ちかけ、薄暗くなった室内。そこにはランタンが置かれており、一人の人物が、天井の梁にぶら下がり、見事な肉体美の上半身を露わに、何度も懸垂を行っていた。しかし明かりは “ ぼんやり ” としていて、はっきりと顔が見てとれない。




それから進藤は、その人物のトレーニングの邪魔にならないよう、ゆっくりと話しかけた。

「遂に上場見が動き出した。それに睨んでいた通り、バックには相当なヤツが絡んでいそうだ」




その人物は、進藤の言葉を聞きながら、更に数回懸垂を続け、ある一定回数に達したとき、ようやく梁から手を離し、床に飛び降りた。少し呼吸が荒い。

「そうか…他の連中は?」

その男の声、それは低音ながら、澄んでよく響く声だった。





「坂本が車で撥ねられた…。まさかあの場で、そこまでするとは…甘かった…」

進藤は悔しそうに下唇を噛む。




「成海は?」

「成海ちゃんは…。いま彼女は、上場見と思われる人物を、バイクで追っている。それに、俺の方から所轄署にも通報を入れたから、警官隊も総出動し、あちこちで検問を張っている。確保は時間の問題だと思うが…」




一瞬言葉に詰まった。

「いや、これは俺の勘だが…。それだけじゃ終わらない気がする。まだ上の許可は下りていないが、いますぐ一緒に来て欲しい」




暗がりで、薄ぼんやりとしか顔は見えないが、その人物が “ ニヤリ ” と笑ったのがわかった。












   


2台のモンスターマシンによる追跡劇。成海は遂に、上場見を追い詰めた。追っているそのバイク、それは下村のZ1000MkⅡだ。 他の人間が、易々と乗りこなせる代物なんかじゃない。暴れる車体を押さえつける強靭な下半身と、卓越したバランス感覚、更には、指先に繊細なアクセルワークを要求してくる 『 空冷モンスター 』 なのだ。同じ “ 時代遅れの化物 ” を飼い馴らす成海には、よく分かっていた。











事実、アクセルを開けるたびに、あらゆる場所で、派手なテールスライドを誘発し、立ち上がりでは、いたるところで、ポンポンとフロントタイヤを浮き上がらせる。その溢れ出すパワーとトルクは、速いどころか、逆に 『 乗り難さ 』 という足枷が、容赦なく乗り手に襲いかかってくるのだ。

それでも上場見は、そんなバイクを辛うじて操作しながら、旭川市街で派手なカーチェイスを繰り広げ、郊外の山麓、ある解体屋の工場に逃げ込んだ。


















つづく



Posted at 2016/12/28 18:43:50 | コメント(0) | トラックバック(0) | Def busta≪デフバスタ≫ | タイアップ企画用

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「91時限目 第2弾!カントク冒険隊! 神の湯へ http://cvw.jp/b/381698/45694253/
何シテル?   12/11 14:56
☆Youtubeで動画投稿してます。  「カントクの時間」です。よろしければ寄って行って下さい。 https://www.youtube.com/chann...
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2020/05/23 23:46:46
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チョットここで、アーカイブ~♪ 10  もう二度と見られない此の光景・・・ 2 
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