初代ミドリーヌ号から乗り替えて約一ヶ月、走行距離も2000Kmを超えてエンジンも慣らしの初期段階を終えてみると、やっと良さが出てきましたね(爆)。
相変わらずステアリングホイールの太さには完全に馴染んではいませんが(苦笑)、ラヴァリナレザーが硬めに巻かれているために段々と気にならなくなってきました。しかし、スイッチトロニックのボタンが微妙に遠目になっているので、この後いくら乗っても違和感は取れないと思います(爆)。今まで試乗したどのアルピナでも感じた事は無かったので、G20固有の問題なのでしょうが。初代ミドリーヌ号はスイッチトロニックを多用していましたが、新ミドリーヌ号はさらに極太トルクで8速ATなためその必要も無いので良しとするしかありません(笑)。多分パドルシフトを選択していれば問題なかったと思いますが盲点でした(涙)。
ステアリングの滑らかな手応えも初代ミドリーヌ号に比べると一歩譲るものがあるのですが、慣らし運転の初期段階が終わって高速道路上でレーンアシストのACCを使用するようになると、それでも標準のBMWや他社のものよりもずっと滑らかな事に気付きました。
ステアリングに手を添えたままレーンアシストの具合を観察していると、代車で借りた320dxDriveや523dなどはややフリクションを伴って「クイッ、クイッ」という感じでやや小刻みにステアリングが切れるのに対してD3Sは「ズイー」という感じで引っ掛かりがなくステアリングがスムーズに切れて行くので、安心感があります。コーナリングを終えてステアリングが戻っていく際もスムーズです。
まさかアルピナ独自のレーンアシストのプログラムが組まれているとは思えませんが(爆)、標準のBMWは中立付近でのステアリングの遊びが大きいので切り始めや切り足しの挙動がラフになっているのでは、と推測しています。この挙動が荒いとステアリングを握っていても不安感があるのでACCは速度調節だけにしてハンドルは自分で切るのですが、アルピナだと車任せに出来るのでちょっとありがたいです。
他社との比較では
メルセデスベンツのA180だと動きがもっとカクカクしていてしかも正確性にも欠けるので「メルセデスベンツといえどもFFだとあまり頼りにならないなぁ」と思いましたし、C220dはもう少し上質にステアリングが切れる印象でしたがD3Sの域には達していません。Sクラスになるともっとハイレベルなのかもしれませんが、意外なところでアルピナの良さが出ています。
しかし、通常の状態で一般道を走っている時のレーンアシストは最悪です。コーナリングの際に自分がステアリングを切り込もうとするタイミングよりほんの僅かに早く、しかも唐突にハンドルが切れるので挙動も急でぐらつきます。多分標準のBMWだと直立付近はもっとダルなのでラフなハンドル制御がある程度緩衝されてそれほどの影響は無いのかもしれませんが、遊びの少ないアルピナにとっては雑なアシスト制御です。最初はキャンセルの仕方が分からなかったので、助手席の姫に「急ハンドル切らないで。運転下手になったね〜」と突っ込まれました(苦笑)。
それを除けばディーゼルのトルクの太さのため、車任せのクルージングでも快適です。ほとんど8速に入りっ放しなのですが、前車に追い付いて車速が落ちた後での再加速でも、シフトダウンせずに軽々と加速するのでストレスがありません。さすがに車速が90Km/hを下回ると7速になりますが、それ以外では8速ホールドのままで再加速にも不満はありません。
これがメルセデスベンツのA180のような小排気量車だと再加速には一気に2段から3段シフトダウンして騒々しくなった上に大した加速もしないのでストレスが溜まります。もっと上のクラスのE200(1493cc)でも同様の傾向があり、高級車だとある程度は排気量があった方が余裕のある走りが出来て良さそうだと感じました。そういう意味ではこの3L直6ディーゼルはアルピナの走りにあったキャラクターですね。高速道路を淡々と走るシチュエーションだと疲れ知らずで最高です。
エンジンの方はまだ全然全開にはしていませんが、半分程度のアクセル開度で400Nmほどでも十分速いです。普段走りだと1500回転前後でどんどんシフトアップしてしまって静かなままで存在感がありませんが(爆)、マニュアルシフトで2000回転以上回していくと回りも滑らかな上に排気音も気持ち良いです。変な加工音は混じらない上に直6特有の「クオーン」といった澄んだサウンドになって格好良いです。
ずっと以前に試乗した直6ディーゼルのD5と一緒で快音ですね。アクセルオフでもアフターファイア音も出ないので好みです。
また、コーナリングに関しても軽やかで上質です。先代社長の「実際の車重より200Kg軽い手応えを目指して作っている」言葉の通り、ほぼ2t近い車重なのに車の挙動は200Kg以上軽い320dxDriveや初代ミドリーヌ号と変わりません。それでいて(ショックがへたったミドリーヌ号は言うに及ばず)320dxDriveと比べても乗り心地は快適です。タイヤと鍛造ホイールの差もあるのかもしれませんが、同じ道のコーナーでも初代ミドリーヌ号よりやや速いくらいのペースでもノーブレーキでスッと曲がります。
これからもっとアクセルを踏んだ時にどんな挙動になるかですが、以前の試乗で伊豆スカイラインを走った時も全くアンダーステアを感じさせず気持ち良く曲がり加速したので心配は要らないと思います。それよりは「カーブで荷物が吹っ飛んだ!!」と言う助手席の姫のクレームが出ないように運転する方が大切で、本当に飛ばすのは一人の時に限られるようです(苦笑)。
また、ブレーキは効きそのものに全く不満はありませんが、初期の効きがややカックン気味なので踏み始めや停車直前はやや気を遣います。ただこれも納車直後に比べると緩和されてきたので、もう少しフィーリングが良くなるかもしれません。
そんな感じで慣らし運転が進むにつれ、エンジンは滑らかにパワフルに回るようになり、乗り心地も良くなり、ステアリングの手応えも許容範囲?になってきた感じなので、以前のニコル世田谷の担当さんが「アルピナはスルメイカと一緒で噛めば噛むほど味が出てきます」と言っておられたのを思い出しました。
それと、ライトの進化もありがたい点ですね。2世代一気に代わったため、アダプティブヘッドライトは夜道では非常に重宝しています。レーザーライトについてはまだ出番が無いようですが(爆)。初代ミドリーヌ号のHIDライトは非常に明るくて代車よりも明るいくらいなのですが、さすがに新ミドリーヌ号の方があらゆる面で進化していますね。
その一方で純正のカーナビはあまり使えない印象です。走行中に検索の入力が出来ないのは仕方ないとして、音声入力でもあまり候補が出てこないので事前に目的地を入力しておいたり、iDriveの地図スクロールで目的地を探して新規目的地として入力したり、という手間が要ります。それは良いとしても、高速道路に乗った時にサービスエリアなどの表示が直近のものしか出なかったり、お店などの表示が少なかったり、と初代ミドリーヌ号のパナソニックのナビに大きく劣ります。
また、BlueTooth搭載なのにガラケーとの連携はおろか、らくらくPhoneも対応外なので電話操作やオーディオなどはiPhoneを購入しなければなりません。現状ではラジオを聞くだけなのが悲しいです。
運転席メーターの表示も少なく、メニュー操作もほとんどiDrive任せなのでメルセデスベンツのステアリングからの入力システムやARナビからはかなり遅れています。こうしたところを改善して欲しいのですが、最近のBMWは技術的なトピックに乏しいですね。
ただ、ヘッドアップディスプレイに関してはスポーツモード表示にすると回転計表示もされ、ディーゼルの場合は5000回転が上限なため十分使えます。また、ラジオなどの選局候補なども表示されるため、インフォティメントモニターは地図表示のまま操作出来るのはありがたいですね。iDriveを使用すると片手を離さなくてはいけないですし一旦メディア画面に切り替えなければならないので、それに比べると非常に便利です。そういう意味では、iDriveが無くなった機種に関してはヘッドアップディスプレイは必須ではないでしょうか。
それと、車体が大型化した上に4WDなので仕方がない面もありますが、最小回転半径が5.7mと大きくなっているのも不満点です。さらにE91に比べるとフロントオーバーハングが伸びているので、数値の差以上に大回り感があります。ボンネットの見切りも良くないため、新旧ミドリーヌ号ではまるで3シリーズから5シリーズに乗り換えたくらいの差です。
年に1回出かける岐阜のお店は片側2車線の国道の交差点で右折レーンからUターンして向かうのですが、新ミドリーヌ号では一旦左にちょっと寄せてからでないと曲がり切れません(爆)。直前にいたミニバンが同じ事をやった上に曲がり切れず切り返していたのに比べればマシ(多分ハンドルの切り方が下手だったのでしょう)ですが。
メルセデスの新型Cクラスは大型化しているにも関わらず最小回転半径が5.2mな上に後輪操舵モデルだと5.0mまで小さくなっているのに比べると真摯な努力をしていないように思えます。G20でも後輪駆動のセダンは最小回転半径が5.3mと変化ないのにツーリングの後輪駆動モデルは5.4mと大きくなっているのも不思議ですね。また、ディーゼルモデルは全車が4WDなので必然的に最小回転半径が5.7mに伸びているのも残念ですね。
さらに、ドアにアシストハンドルが無かったり、シート先端を伸び縮みさせる調節レバーが出っ張っているため助手席の姫からは「スカート履いていると引っ掛かる事があって最悪!!」と不評です。シートの先端調節機構なんて一旦アジャストしたら場合によっては箱替えまで触らない部分なのに何の配慮もされていないですね。
おまけに雨上がりにトランクの荷物を降ろそうとしたら、テールゲート付近が水浸しになっていました。
これはアルピナではなくて完全にBMWの責任ですが(笑)、リアバンパーのテールゲート部分の上面がほぼ水平になっているので溜まった水の逃げ場が無くなっています。おまけに現在の駐車場所は微妙に前下がりになっているので、水が前の方に溜まってしまって拭き取らないといけません。更に、テールゲートと荷室の開口部の段差が小さいため、ラフに水を払うと車内に飛んでしまってストレスです(爆)。初代ミドリーヌ号(E91)では一度もこんな事は無かったので、余計に腹が立ちます。細かな事ですが、これはG21型3シリーズツーリングの設計ミスですね。オーナーの皆さん、いかがでしょうか。
BMWも見た目の格好良さだけ追求して、こうした使い勝手につながる部分は考慮していないというのは、LCIモデルの運転席メーターを見ても良く分かります。もちろん車庫保管されている皆さんはこうした苦労とは無縁なのでしょうけれど。
BMWに限らず、最近の自動車はデザイナーの好き勝手をそのまま製品化した印象があり、実際の使い勝手を無視したような部分が散見されるのは残念ですね。CADなどでささっとデザインして、実際に出来た製品をきちんと吟味していない気がします。運転席回りのディスプレイに関しても、物理スイッチが減った上にタッチパネルに手を伸ばさなければならず、それでいて反応が悪くて誤動作しやすいと運転に支障が出ると思います。iDriveの方がブラインド操作が出来た上に操作の確実性もあるのにモデルによっては廃止されているのは考えられないですね。そう考えると、ジウジアーロ御大の作品はスタイリッシュな上に実用性も十分に加味されており、本当に天才的な作品ばかりな気がします。
自分が長い時間運転していたらとてもこんなレイアウトはしないのに、という例が多い印象がありますが、もう自動車がそういう製品で無くなってきた、という事なのでしょうか。以前のBMWだったら「スイッチなどの操作系の感触にまで拘っています」などと宣伝していたのですが、自動車は人間が乗り込んで操作する機械だという観念が薄れているのでしょうね。
それならそれでシートの座り心地などをしっかり吟味して欲しいですが、見た目スポーティなだけで感触は良く無い生地だったりしてこちらも劣化しています。もっと価格の安いフランス車の方が上等な座り心地ですね。これからもっと自動化が進んで人間が操作する部分はどんどん減るだけに、こうした方向性は残念ですね。まあ、多分この次はBMWにはしないのでもう関係無いですが(激爆)。