前々回のブログの最後で艦橋の形状について検討しました。
その時はいったん結論めいたことを書きましたが、その後腑に落ちないことがあり再検討することとしました。というのも、龍田の2枚の写真はどうしても矛盾するように見えるのです。ポイントは
「艦橋前面はツライチか」です。
まずは矛盾を確認します。
●写真1
●写真2

写真1では艦橋前面はツライチに見えます。しかし写真2では羅針艦橋下に影があるので、ツライチではないように見えます。これが矛盾です。
次に矛盾の説明方法を検討します。
案1・13年から16年の間に艦橋の再改装があった
この案なら2枚の写真の整合が取れます。丸スペシャルNo46には龍田の行動記録が掲載されており、S16.5.10~16または同年8.6~20の呉入渠の折に改装したという考えです。
しかし羅針艦橋前端をわずかに変える必要性が考えられませんし、艦橋以外も含めてこの時期に何らかの改装工事が行われたということも確認できませんでした。よって不採用。
案2・羅針艦橋前端下部に突き出したフラットスペースがあった
艦橋前面はツライチだが、何らかの機器を置く必要から1枚板のスペースが艦橋前面に設置されており、その影が出来ているという考えで、これも2枚の写真を矛盾なく説明できます。しかしそのフラット上に何を設置したのかという問題が出ますし、同様のフラットは他艦に見られません。これも不採用。
案3・写真2の影は画像のシミなどである
丸スペシャルの記事の中でも龍田の艦橋前面はツライチとの表記があり、燕雀さんの作例やハセガワ版龍田の最新キットでもそのようになっています。であれば影が出ることは有り得ないので、影に見えるものは実は影ではないという考えです。
しかし私にはその部分はシミなどでなく影に見えますし、同じ写真の他の部分に同様のシミなども見受けられません。これまた不採用。
案4・写真1又は2の見方が誤っている
写真1の見方が誤っていれば前面がツライチでないことになり、写真2の影が艦橋中央部ではないならツライチとなります。これは前々回ブログで検討しましたが、私には「写真1は光の加減や画像の粒子などの関係で段差が写っておらず、写真2のように艦橋中央部に段差がある」と思えます。
案1から3の検討により写真1、2が矛盾しないとするには無理があると思います。また写真1より2の方が比較的鮮明で撮影も新しいので、写真2を優先すべきと考えます。
その上で改めて写真2を見ると、艦の右斜め前からの撮影と断定できるので、艦橋前面180°のうち120°くらいは見えています。
また羅針艦橋下の影は艦橋中央に下向きの半円として落ちているように見えます。司令塔前端と羅針艦橋下端が接している場合、艦橋中央から両側に小さな三角状の影が二つできるはずですが、そうなっていません。
燕雀さんのブログ(http://www.enjaku.jp/2014/07/tenryu-class-15.html)では羅針艦橋前端両側が丸みを帯びていたのではという意見が記載されていますが、これはその影が艦橋中央ではなくその両脇にある場合に当てはまると思われます。
以上のことから「龍田艦橋前面はツライチでなく、羅針艦橋前部下で一段下がっている」と推定します。
しかしまだ課題は解決されません。というのは燕雀さんのブログで示されている司令塔直径及び羅針艦橋平面サイズの通りに工作しても、適切な形状が再現できないのです。
燕雀さんは、司令塔直径は天龍艦橋写真とアジ歴(アジア歴史資料センター)所蔵の天龍新造時の艦橋図面から3.5mmと算出されています。
●写真3(燕雀洞より転載)
●図面1(アジ歴より)
さらに羅針艦橋の平面サイズを写真3などから↓のように推定されています。
●画像1(燕雀洞より)
実は先日、燕雀さんから天龍型製作用に使われた図面を頂戴することができました!
改めてお礼申し上げます<m(__)m>
そこには艦橋の平面図が階層ごとに描かれていました。それがこちら↓
●図面2
写真3のように司令塔と羅針艦橋は前端とその後ろ2箇所で接するよう、先ほどの寸法通りに線が引かれており、天龍龍田ともこのとおりに製作すればよいはず。しかし2つをどう配置してもそうなりません。
試しに1/700の10倍で線を引いてみました↓
●図面3
寸法は1/700の数値です。青線が燕雀さんの指示通りのものですが、ここまで拡大すると円形(司令塔)と1箇所しか接することができず、両側に隙間が空いてしまいます。試しに司令塔直径を4mmに変えてみましたがダメでした。
何故だ!?(坊やだからさw)
何が違うのか検証します。
まず疑ったのは羅針艦橋壁面の折れ角。
参考にしたのは軽巡多摩と駆逐艦矢風。多摩は天龍型の後継艦、矢風(峯風型)は天龍型と同じ八四艦隊計画時の設計です。
●図面4

多摩矢風とも35°、燕雀さん作成の天龍型は35.5°でした。私の計測誤差もあると思うので、問題なし。
次に確認したのは羅針艦橋前面サイズ。
↓は峯風型駆逐艦・澤風です。
●写真4(Wikipediaより)
前面は天龍型と同じ3枚のガラス窓になっています。矢風の図面でこの幅を計測すると1/700で2.6mm。燕雀さんの数値は2.2mmで、これを700倍すると1540mm。矢風は1820mm。どちらを取るかは趣味の問題とも思われます。
今回は窓1枚当たりの幅は約60cmあるだろうと想定し、矢風のサイズを適用します。
ただその場合、艦橋の幅がさらに広がってしまいます…。
もう1つ検討したのは司令塔の形状。
艦によっては真円でなく横長の楕円だったもの(戦艦など)もあります。天龍は写真や図面から真円と断定出来ますが、龍田は写真も図面もありません。
あくまでも私見の域を出ませんが、旧海軍では艤装員長(=初代艦長予定者)が艤装を考え指示していたそうなので、図面では円だった司令塔が楕円に変更された可能性もないとは言えないと思います。また写真2を成立させようとすると楕円の方が都合が良いのです。
例えば次のような会話があったかもw
航海長
「今度の龍田さぁ、司令塔の形を戦艦みたいにすると舵輪握ってても気持ちいいよねぇ」
艤装員長
「おぉ、そうだな。そうしちゃうかw」
ただしその場合、直径3.5mmのまま横長にすると天龍の司令塔よりもかなり大きくなってしまいます。そこでほぼ同じ面積となるよう、司令塔の直径(a)を4パターン設定してそれぞれの面積を算出したところ、どうやら直径2mmが最も適切に思えました。
そこで円形のカーブを直径2mmとしつつ、引き伸ばした部分の距離をそれぞれ下表のように設定することにしました。
こうして作った図面がこちら↓
こうすると艦橋前面に影が一つ出来、さらにそのすぐ後ろあたりで羅針艦橋側壁と接することとなり、司令塔の面積も天龍とほぼ同じになります。
はー、長かった…。
これでやっと心置きなく艦橋製作に取り掛かれる…はずです(^^)
※今回の考察は燕雀さんが苦労して出された結論に弓を引くような内容となってしまいました。
様々な情報を頂戴している燕雀さんから見れば、不愉快な内容かもしれません。
あくまでも泡沫モデラーの妄言と読み捨てていただければ幸甚に存じます。
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Posted at
2021/05/08 15:13:15