
前回のチェックの結果、キットは図面にかなり忠実であることが分かったので「今回の製作は意外と早く終わるかもw」と思いましたが、その後詳細の確認を進めていくと、いろいろ気になることが出てきたり、面白そうなアイデアが浮かんだりしたので、やはり今回もじっくり取り組んでいくことになります。
特に今回はほぼ全編考証に特化しているので、工作はほとんどありません(苦笑)
舷窓を開口するため、位置を特定します。
「日本の軍艦別巻」図面では戦車庫と艦尾楼の両側にあるとされています。
しかし実艦写真を見ると特に艦前半部は図面と大きく異なるとともに、多くのバリエーションがあると分かったので、それらを表に纏めました。
戦況が悪化してからの設計なので元から舷窓数は少ないですが、更に減らされた艦があったのは少し意外でした(兵士を大事にしない日本軍)。
今回の製作では140号は佐世保、159号は日立向島の建造なので、それぞれ133号、151号と同じ配置にすることとします。
ということで、艦尾楼へ施工。
問題はここから。
戦車庫両側へ施工する前に、舷窓をどの位置に開口すべきか検討するため、その内側がどのような作りになっているか調べます。
「二等輸送艦の全貌」に掲載された「主要性能説明書」とTwitterフォロワーさんから頂いた所要部断面図によると、戦車庫甲板は中央に車両を1列に並べ、その両側は2層に別れていて、上段は兵員室、下段は補給倉庫となっていたようです。
舷窓は兵員室にあったと思われますが、その兵員室の構造が分かりません。
戦車庫内を撮影した写真があれば確定するのですが、いくら探しても出てきません。これは戦車庫が窓のない閉鎖空間のため、当時の撮影機材では露出不足で撮影が出来なかったのではないかと考えました。
となると、図面勝負しかありません。
「昭和造船史別冊」図面では↓のような表記があります。

この破線が兵員室の床と天井だろうと推定し、高さを測ると約2m。舷窓はこの部屋に設置されたと考えました。
しかし、図面にはその間にもう1本の破線があります。また所要部断面図ではこんな表記がありました。

図面には無意味な線は入れないはず。いったいこれは…。
そこで兵員室の面積と収容人員数から1人あたり面積を算出してみることにしました。
戦車庫甲板平面図(以下「平面図」)と断面図では兵員室の一部が通路とされているようなので、それらも計算したところ、以下のようになりました。

兵員室が1層または2層の場合、装備を含めた兵隊さんは座るどころか、立っているスペースさえありません。おかしい…。
では3層ではないか?
先程の破線はいずれも兵員室の床を示し、断面図もそのような表記だと解すると、表は↓のようになります。

1層あたりの高さは1mしかないので、兵隊さんたちは体育座りをしなければなりませんが、この広さなら収容人員数を押し込むことができます(再び兵士を大事にしない日本軍)。
同時に検討したのはこの兵隊さん達の出入口。
平面図にある↓の表記が、甲板上にあるハッチの位置と符号したのです。

先程の断面図では、通路が中段から下段にかけての高さ2mで書かれています。よってその2層の兵隊さんは通路を通って上甲板に上がったのでしょう。なお通路部分に壁があったのかは不明ですが、重量軽減や工数低減を考えると柱のみだったと考えました。
平面図には兵員室の下にある補給倉庫にもハッチ状の記載があるので、兵隊さんは補給倉庫から戦車庫甲板を経由して艦外へ出ることも出来たと思われます。
戦車庫甲板と補給倉庫や兵員室を隔てる壁がどのような姿になっているかも資料がありませんが、少なくとも構造壁ではないはずなので、入口付近のような縦横の補強材は入っていないと考えます。その考えを裏付けるように「戦車等の繋止固縛は(中略)戦車庫内にては両側縦壁を利用し、戦車に横支柱を当てるを要す。横支柱を当てる際は(中略)戦車庫両側縦壁にては兵員室間横壁又は防(土偏に堯)材位置を利用する等、本艦構造物と睨み合わせて其の位置を定め、支柱を当てたる為本艦構造に歪を生じせしむる等のなき様注意するものとす」との記載が「主要性能説明書」にあります。
よーし、これで戦車庫のつくりが分かったぞー!!!
はー疲れた(笑)
ようやく工作に移れます。
工作の状況報告はまた次回(爆)
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Posted at
2023/03/14 21:41:56