
久しぶりのブログアップです(^^ゞ
今日は
「小惑星探査機『はやぶさ』の生みの親、川口淳一郎プロジェクトマネージャーの講演会」を聞きに行ってきました。
場所は、愛知県岡崎市にある「自然科学研究機構」。会場には駐車場がないとのことだったので、近くの東岡崎駅前の立駐へ停めて、歩いて行くことにしました。
しかし!場所がよく分からない(T_T)
事前にネットで調べたときのわずかな記憶を頼りに歩き続けますが、気が焦る(`ω´)・・・・・
いつしか歩みは小走りに、そしてマラソンへと変わっていきました。
急がねば。
以前に見
たはやぶさのカプセル展示のときは会場1時間前でも100人近くが並んでたからなぁ。
やっと着いたのは開演40分前。
どうやら席にはまだ余裕がありそう。よかったよかった(;^_^A
講演会:分子科学フォーラムは、毎回開演前にティータイムと称して、会場前ロビーでジュースやお菓子が振舞われます。せっかくなので私も疲れた体を癒すため、少しいただきました。
そのとき!
すぐ横を川口氏が通り過ぎました!
おおっ、本物だぁ\(◎o◎)/
テレビなどに出てくる有名人を見るのは、15年位前に名古屋駅のホームを大きな荷物をしょって一人で歩いている出川哲郎以来です。
やはりオーラを感じますね(^。^)
さて、いよいよ開演。
「分子科学フォーラムということですが、今日の話は分子とあまり関係がありません」などの言葉が最初にあり、場が和みます。
続いてはやぶさ計画の概要、イオンエンジンの構造など技術的な話しがあった後、いよいよはやぶさ7年間の旅の話しに入ります。
はやぶさ計画は当初、小惑星ランデブー計画として、NASAと共同で行われる予定だったそうです。
しかしニアシューメーカーと呼ばれたその計画はNASAにパクられてしまいました。
「これは我々としては大変悔しかったんですね。同じように計画を立てながら、彼らにはすぐに実現できるが、我々にはできない。そう思ったんですね。それでもうやぶれかぶれだということで、小惑星に行ってサンプルを持って帰ってくるという計画を立てたのです。これが『はやぶさ』というプロジェクトのきっかけだったのです。」
あらら、もっと高邁な理想から来たものかと思いきや、感情のもつれからできた計画だったんですね。
「ただ、NASAと同じことをやってたのでは、我々は決して追いつけない。オリジナリティを発揮しなければならない、そう思ったんですね。」
なるほど。中小企業の生き残りみたいなもんでしょうか。
しかしそうこうしているうちに、日本が最初に発想したイオンエンジンの実用化の部分でまたNASAに先を越されてしまう。
しかし川口さんはそのときこう思ったそうです。
「逆に手ごたえを感じましたね。NASAが一生懸命やらなければならないように我々が追い込んだんだと。」
うーむ、これもひとつの男の美学か。
しかしNASAもえげつないですね。
いま、NewHorizonという衛星が冥王星を目指しているそうです。これは単に通り過ぎて写真を撮るだけ(着陸などはしない)だそうですが、NASAのプライドは「太陽系のすべての惑星にはアメリカが最初に到達した」という実績を作りたいがためだけにやっていることなのだとか。
「でも冥王星は太陽系の惑星じゃなくなっちゃったんですよね」(一同爆笑)
「もうひとつ我々の癪に障るのは、ニアシューメーカーは小惑星に到達して燃料が無くなってから、その表面に着陸させたんです。でもその衛星には観測装置などひとつも積んでいない。これは『世界で最初に小惑星に着陸したのはアメリカだ』と言いたいためだけなんです。」
んー、NASAって子供?
その後、はやぶさ打ち上げからイトカワ着陸までの話が続きます。
当初は、イトカワのサンプル採取に成功したと報道発表しました。しかしその後、失敗だったことが判明。このときは大変辛かったそうです。
それは単に間違ったことを言ってしまったということにとどまらず、このことで科学技術に対する信頼性が損なわれるのではないかということを真剣に恐れたそうです。
しかしそこで幸運だったのは、はやぶさのゴールはイトカワでなく地球だとみんなが思っていたこと。
その後、燃料漏れ、姿勢制御装置の相次ぐ停止。さらにははやぶさとの通信停止。
そこで彼らはどうしたか。
計算を続け、「60~70%の確率で、1年以内に通信は復帰する」という推論を立てました。
しかし実はこれは最大の脅威=「年度末」への対抗措置だったそうです。
なぜ年度末が脅威なのか?
JAXAも予算があります。予算は年度で区切られています。翌年度に予算をつけてもらうためには可能性を言わなければならない。そうした背景の中での一種のプロパガンダだったそうです(笑)
しかし通信が復活しなければチームの士気は下がります。
そこで川口さんは、可能性のある解を求めるための研究会を意図的に増やすこととしたそうです。もうひとつはポットのお湯を毎日入れ替えること(場内爆笑)。
おりしも年末。東京にある飛(とび)不動尊へ、みんなでお参りにも行ったそうです。
「こういうときだけ信心深くなりますね」(場内爆笑)
まさに、人事を尽くして天命を待つ。こうしたマネジメントの結果、わずか46日後に通信が復帰します。
しかし1bit通信のみ。
「太陽が右に見えたら何秒後に返事を返しなさい。そうするとちゃんとはやぶさから返事が返ってくるわけです。1からはやぶさにしつけをし直す気持ちでしたね。これを繰り返すと重要な情報がだんだん分かるようになってきます。」
このあたりからちょっとウルっときちゃいますね(^^ゞ
しかしまた試練が。
イオンエンジンの中和器の故障です。
あと4ヶ月で地球に帰れるのに。
「運命は残酷だと思いましたね。でもバイパスを作ることで見事に復活させたのです。」
「そのときどこに行ったかというと『中和神社』です(場内爆笑)。まさか中和神社なんか無いよねと聞いたら、ありますって言うんでこれは行かなきゃならないと。」
「ちなみに神頼みは私の個人的行為です。JAXAとしてではありません(場内爆笑)。」
「しかし神頼みの前には、ちゃんとやるべきことをやったのかという確認が必要でしたね。」
そしていよいよ、はやぶさファンが涙した名文
「はやぶさ、そうまでして君は」のくだりに続きます。
カプセルを無事地球に落下させるにははやぶさを地球に向けなければならない。だがはやぶさにはもう姿勢制御するエンジンも燃料も残っていない。つまりはやぶさを殺すことになってしまう。このことはすでに2006年時点で分かっていたことだそうです。
1bit通信で「手を握り返す」交信を続けて、しつけを行って、それでも殺さなければならない。
しかしプロジェクトのメンバーは分かっていました。はやぶさの真の目的はサンプルリターンなんだと。
そしてカプセルは無事地球へ。でもメンバーははやぶさの最後に、地球を見せてやろうとします。
すでにはやぶさの真の目的は達成されました。つまりそこから先はボランティアです。それでも誰もそれを止めなかった。そこで撮影されたのが有名なラストショットです。
カプセルにははやぶさ本体との電源をつなぐための「へその緒」(アンビリカルケーブル)がきれいに残っています。
カプセルは地球に降り立つと見つけてもらうためにビーコンを発信します。さながら産声のように。
いよいよ講演も終盤。
NASAではスターダスト計画で、テンペル第一彗星に衛星を接近させる予定としています。米国版はやぶさ計画とも言われているそうです。でも着陸はしません。にもかかわらずアメリカは「世界初の小惑星探査計画です」と言っているとか。ホントに「世界初」とか「一番」が好きな国なんですね。
とそこで、説明用画面に例の一言が表示されます。
「どうして一番じゃなければいけないんですか?2番じゃだめなんですか?」
「どこかの国とは大違いですねぇ」
この瞬間、場内に大拍手が巻き起こりました(´▽`)ノ
現在、日本にははやぶさから切り離されたカプセルが全国を巡業しています。
でもアメリカを含むどの国にも、宇宙に行ってきた衛星や宇宙船の本物が展示されているところはないそうです。これは誇っていいと。
そしてこの大プロジェクトの成功は、やはりチームワークとそれを支える高いモチベーションあってのものなのだそうです。
「大事なのは技術よりも根性なんだと言いたい。それと幸運も大事です。でもこのまま終わると幸運だけになってしまう。だからこれからが大事なんです。今日来ていただいている方には若い人も多い。ぜひ大いに背伸びをしてください。高い目標を持ってください。ぜひそういう挑戦をしてください。」
その後、若干の質疑応答を行い、川口さんのすばらしい講演は終わってしまいました。
予定時間を20分以上も超過したにもかかわらず、あっという間に終わってしまったという印象でした。
講演の内容は多岐に渡っていましたが、本当に興味深いものばかりで、また日々の生活の場面場面にも敷衍することができるような、含蓄のあるお話でした。
本当に聞きに行ってよかったと思いました。
もう1回、同じ内容でもいいから聞きたいなぁ。
Posted at 2010/11/06 00:13:40 | |
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