1944年7月25日に藤永田造船所で完成した桑は、大戦の趨勢に合わせた設計の松型駆逐艦五番艦です。
敵潜掃討部隊に編入された後、捷一号作戦が発令されると小沢提督率いる日本海軍最後の機動部隊の一員として参戦、無傷で内地に帰還しました。
その後、レイテ島オルモック湾への第7次輸送(第3梯団)時に米大型駆逐艦3隻及び魚雷艇の集中攻撃を一身に受け、艦橋左に被弾後、二番主砲あたりにも直撃を受けて火災が発生、火は後ろから前へ燃え広がり左舷へ大きく傾斜した後、僅か9分で撃沈されました。
今回はその最期をジオラマ化したものです。

電飾もやりました。
炎がゆらめきます。
細部をご覧下さい。

沈没前には左舷に30°傾斜し艦尾から沈んだそうなので、作品では25°傾けてあります。このため喫水線下をスクラッチしました。

一番主砲は早くに沈黙したそうなので、周囲に少数の薬莢と倒れた乗組員を配置。沈没前は艦橋前の一番機銃のみが発砲していたそうなので、銃撃している様子を再現しました。
この他、艦上各所に乗組員を配置し、倒れた人の周囲にはマニキュアで血を表現しました。

乗組員は若干のオーバースケールですが、正確性より存在感を重視しました。
キットはヤマシタホビーの「竹」です。最新キットゆえ、若干の追加工作で松型の勇姿を再現できます。ディテールアップにあたっては、桑は写真がほとんど残っておらず図面もないため同型艦を参考にしました。
主な工作は以下の通りです。
艦橋内部及び防空指揮所の再現、前後マストの作り直し、短艇・ダビットの精密化、ナノドレッド機銃への換装、爆雷装備のエッチング化及びスクラッチ、舷窓開口箇所の修正、空中線の展張、甲板上の箱やリール等の追加、手すりの自作 など
考証の過程で前マストのヤードが3脚の後ろ2本に取り付けられていることが新たに分かりました。
ジオラマは透明プラ板の枠内に石粉粘土を詰め、その上にメディウムを3度塗り重ねました。
海の色はロイヤルブルーの上からクリアグリーンを重ねてあります。
また目立ちませんが左舷舷側から油漏れを起こしている表現もしてあります。

黒炎は盛り上げたメディウムをクリアオレンジなどで塗り、内部にLED7個とランダム点滅用回路2個を仕込んであり、炎のゆらめきを表現しました。
なお炎上箇所は当時の乗組員の証言を参考にしています。

ネームプレートはDAISOアルミ板に透明シールを貼って作りました。
金属の質感がいい感じです♪
【製作後の感想】
自己満足度かなり高めです(´ω`)
ポイントはやはり揺らめく炎と濛々と上がる黒煙、そして乗組員の血です。いずれも初の試みでしたが、予想以上の出来になりました。
光をゆらめかせる回路の効果は高く、メディウムで作った炎との相性は抜群です。
黒煙は少し濃すぎると言われそうですが、多少オーバーな方が断末魔的な表情になるのではとも思います。
血はグロテスクな表現ですが、あえてそこに踏み込むことで戦争の悲惨さが少しでも伝わればという意図です。
考証面については、竹製作時に松型は研究し尽くしたと思っていましたが、舷外板の溶接痕の違いや13号電探取付位置など、新たな知見も得られました。今回は図面や写真に加えて乗組員の証言も参考にしましたが、やはりその方がよりリアルに作れる気がします。
毎度のことですが、スーパーモデラーさん達の作品に比べれば多くの点でまだまだ稚拙です。特に水柱は私の力でリアルに作ることは不可能と感じました(二度と作らないと思います)。
しかし軍用艦船は単に「かっこいい」「勇ましい」だけではありません。
人殺しの道具です。
「戦争の悲惨さ」というテーマはしばらく前に作った空母天城や戦艦榛名でも同様に取り扱って一定の結果を出したと思っており、今回は更に1歩前に進めたかなと思っています。
これは今後の艦船製作でも一貫していきたいと思っています。
少し重いテーマの作品ですが、この想いが少しでも皆様方に伝われば嬉しいですね。
◆製作記のまとめ
船体のチェック
舷窓の考証など
船体の工作
船体・艦橋などの工作
船体の塗装・艦橋の工作
各部のディテールアップ
ジオラマベース製作その1
各部のディテールアップその2
ジオラマベース製作その2
ジオラマベース製作その3
ジオラマベース製作その4
ディテールの追加
最終仕上げ
駆逐艦桑(完成編その1)
駆逐艦桑(完成編その2)
Posted at 2022/02/10 22:07:09 | |
艦船模型 | 趣味