前回までに艦体のアウトラインが完成したので、だいぶモチベーションが上がってきました。
今回はまず、艦の中央に配置されている魚雷発射管から艦尾方向に伸びる魚雷運搬軌条を作ります。
同軌条は港で魚雷本体を積み込んだり、後甲板下層にある倉庫から魚雷弾頭を運び出す時などに使われるもので、簡単に言えば架台を走らせるレールです。
ここで気になったのがその高さ。
ネットで作例を見ると、1mm程度の高さのあるエッチングパーツを使っているものがいくつもあります。
1mmの700倍は70cm。
高すぎないか…?
そう思いながら実際の駆逐艦の写真を見てみると…↓

これを見る限り、足首程度の高さのようです。
ちなみに巡洋艦以上に設置される航空機運搬軌条はこちら↓

ヒザくらいの高さなので、50cmくらいでしょうか。
これで高さは分かりました。
ただもう一つ課題があります。設置の平面形はどのようになっていたか。
これが同じ「竹」でも資料によって違うのです。
こちらは学研の「歴史群像No43松型駆逐艦」の折込資料にある図↓

艦尾から艦首方向に見ると「人」のような形をしています。
でも同じ書籍の別ページにはこんな図が↓

こちらは「Y」字形をしています。
さらに「丸スペシャルNo41日本の駆逐艦I」は「人」形。
「写真日本の軍艦別巻2海軍艦艇図面集II」の図面では「Y」形。
タミヤから出ている1/700「松」は大変評価の高いキットですが、魚雷運搬軌条は「人」形を採用しています。
残念なことに、実物がどうなっているか確認できる写真(竹の同型艦も含む)が一枚も見つけられません。
舷側を走る長いラインから分岐したラインの先に何かあるのではと考え、甲板下の部屋も確認しましたが、ボイラーやタービン室で魚雷と関係なさそうです。
分岐したラインの先が反対舷にまで伸びていないため、反対舷から魚雷を積み込んだ時の移動用ということでもなさそうです。
こりゃ困った。
ここから先は私の推論です。
「写真日本の軍艦別巻2海軍艦艇図面集II」の図面は公式図面から起こしたものだそうです。また「歴史群像No43松型駆逐艦」の甲板敷物図は通常目にすることがないものなので恐らく公式図面or資料から描かれたものと推定できます。
また一枚だけ手元にある竹の公試運転時の写真の舷窓の位置と数は図面と一致します。つまり図面の信用度は高いと考えてよいと思います。
よって少なくとも設計図面上ではY形とされていたと考えても不合理ではないと思います。
実は橘型の魚雷運搬軌条は「人」型とされている図面が存在します。
もしかしたら松型と橘型を混同しているのでは?
そんなことはないですよね…。
ただ、いったん出した結論をひっくり返すような言い回しになりますが、日本海軍の船の艤装は艤装員長に決定権がありました。これは艤装員長が完成したその船の初代艦長になるので、自分の使いやすいように作って良いということになっていたことによります。
つまり同型艦であっても艤装員長が違えば、配置や形状が異なるのは当然のこと。
したがって、図面上は「Y」形であっても実艦は「人」形であったかもしれません(笑)
さてこうした検証と検討の後、ようやく工作したのがこちら↓

伸ばしランナーを貼り付けて水ペーパーで削って表現しました。
ただ、ちょっと太めの印象。もう少し細いものを使えばよかったかな…。
次はアンカー収納部の工作。
こちらは陽炎型駆逐艦15番艦・野分↓

アンカーがすっぽり収まるような凹みが作られています。
次の写真は松型駆逐艦7番艦・杉。

ちょっと見づらいですが、野分同様、凹み(アンカーレセス)が作られています。
レセスタイプは舷側に突起が少なくなるので、凌波性に優れているとされていますが、松型をさらに簡易量産するというコンセプトで設計された橘型ではベルマウス型に変更されたという経緯を持ちます。
ただ、デストロイヤースターンをトランザムスターンに変更したことも含め、船としての性能に大きな影響は見られず、むしろ量産性が向上したという効果が大きかったようです。
こうしたことを踏まえての工作がこちら↓

レセスの形状は松型より前の駆逐艦とは多少異なるようですが、小さなスケールなのでアンカーが入ることを優先した雰囲気重視で適当な造形としました(苦笑)
次に艦首付近の工作に移ります。
工作に先立って、資料の確認。
艦首の甲板にはアンカーを上げ下ろしするための設備がいくつも設置されています。
アンカーレセスと甲板をつなぐ穴=ホースパイプ。
アンカーチェーン(錨鎖)を引っ掛けておくためのライジングビット。
錨鎖を上げ下ろしするためのキャプスタン(揚錨機)。
甲板下の錨鎖庫と甲板をつなぐ穴=チェーンパイプ(錨鎖管)。
錨鎖管とキャプスタンの間に敷かれる錨鎖受台。
これらも竹はおろか、同型艦の実物写真もないため、竹の図面と他の駆逐艦の写真を一つ一つ丹念に調べて、「そもそも存在したと推定できるか」から始まり、あったならば「どのような形状なのか」を推定していきます。
参考にした写真はこちら↓
陽炎型駆逐艦4番艦・親潮
白露型駆逐艦・初霜
秋月型駆逐艦8番艦・冬月
特型駆逐艦の22番艦(特III・暁型の2番艦)・響
ホースパイプはほとんど高さがなく、かなり平べったいです。
冬月の写真から、ライジングビットにはかなり薄っぺらい台座があると分かりました。竹の図面にも書かれているので、図面を信用してよいと考えました。
チェーンパイプも冬月の写真から立体的な形状が分かります。
錨鎖受台は冬月には設置されていないようですが、竹の図面にはあります。色々調べた結果、響の写真をよく見るとキャプスタンからチェーンパイプに向けて少し傾斜のかかった台が確認できました。
これらの検証の末に工作したのがこちら↓

なおこの段階では艦首フェアリーダーは未作成です。
いやー、こういう小さなパーツが付き出すと少しずつ形になってきていることが実感できて、さらにモチベーションアップに繋がりますね。
と同時に、今回で5回めを迎えた竹製作記は、徐々にマニアック度が上がっていると自覚しています。
恐らく誰も付いてきてないだろうなと(笑)
でもいいんです。
自分が楽しめればそれが一番!
これからも自分勝手に楽しむぞー♪
Posted at 2020/03/14 23:09:56 | |
艦船模型 | 趣味