大和ミュージアム(以下「大和M」)というのは愛称で、正式には「
呉市海事歴史科学館」と言います。

一般には
1/10スケール大和の模型が有名ですが、造船技術を中心に呉の戦前戦後について展示されており、非常に奥深い素晴らしい内容となっています。
その中でのライブラリーは当時の貴重な資料を含む様々な資料を集積していく場所であり、科学館機能の核とも言うべき施設です。
先日ライブラリーを訪れる前に、「ライブラリーとは」でググってみましたが、あまり詳細な解説がされたものは見つけられませんでした。従って、ここではそのライブラリーについて、モデラー目線寄りで少し詳しく書き残しておこうと思います。
まずは基本的な事柄から。
ライブラリーの利用時間は9時から17時まで。利用料金はかかりません。場所は4階海側にあるので、1階入口左のミュージアムショップ奥を左へ進みEVで上がります。
書籍等閲覧スペースは数10席あり、その他にデジタルデータ閲覧用のPC席が4つあります。壁は全面ガラス張りで、座席から港の様子が見られます。
館内は飲食禁止ですが、4階の自販機コーナー前でなら水分補給は許されています。
所蔵物は書籍等の紙媒体と、写真・図面等の電子媒体の2種に大別されます。
書籍等は開架書庫に配置され自由に閲覧できますが、貸出しやコピーサービスは行われていません。書庫は3列なので、冊数的には数百冊程度といったところでしょうか。蔵書は軍艦に関するもの、太平洋戦争中の人物関係、そして呉市史などで、光人社NF文庫や学研の太平洋戦争史シリーズもほぼ揃っていました。驚いたのは「日本海軍艦艇公式図面集1(空母・千代田/陸軍M丙型空母)」などの希少絶版本まで散見されたことです。なお閉架書庫の有無は確認していません。
一方で残念だったのは、蔵書に直射日光が当たってしまい色褪せがかなり進んでいたことです。せっかくの貴重な蔵書なので、その近辺だけでも遮光カーテンを引くなどの対応が望まれます。
また造船に関する技術的な書物はあまり見られません。大和Mは単なる戦争博物館ではないので、軍艦以外も含めた造船にかかる学術書なども集積されていくと、よりアカデミックなライブラリーになりそうな気がします。
写真・図面等は4台のPC(うち2台は写真用、残り2台は図面等用)で自由に検索・閲覧ができます。
混雑時などは30分ごとに次の人と交替することになっています。土日は多くの来客があるか尋ねましたが、はっきりした回答はありませんでした。
検索画面は大和MHPにて確認できます。検索結果で出てくる写真のサムネイルは大和MHPでも確認できますが、写真中央に「大和ミュージアム」の文字とロゴが入った状態で表示され、右クリックもできず拡大表示もできません。現地のPCでもサムネイルは同様の表示ですが、私が閲覧した際には拡大表示するとロゴ等がないものが表示されました。写真のラインナップはHPも現地も同じように思えたので、事前に拡大確認したいものをチェックしておくことが可能です。
図面は青焼き状態で表示されます。船体平面図などの場合、データが3つに分割して表示されますし、冊子の資料はページごとにデータが分割されています。
資料で個人的に目に止まったのは以下の通りです。
軍艦と鋼材、駆逐艦縦強度計算資料、機関重量・燃料消費、消火防火(空母関係)、防御Ⅰ(弾片、機銃弾)、軍艦大和基本計画資料、大和設計の苦心、旧日本海軍の対魚雷船体防御研究経過概要等について(原稿)、空母及巡洋艦損傷状況調査報告、初期の呉海軍工廠、鋲及コーキング記録、昇降式短波檣使用電探第三次
また任意のデータを有料で印刷してもらうこともできます。(
料金及び印刷サイズはHPで確認して下さい。)
印刷したものをSNS等で利用する場合、事前にライブラリーへ許可を求める必要があります。
なおデータ一つあたりの料金なので、船体平面図なら3枚分のお金が必要です。これを船首から艦橋の1データのみという印刷依頼が可能なのかは確認していません。
ただ、印刷した写真等には裏面に資料番号と大和Mの印シールがあるだけで、艦種艦名や資料名・撮影日時や場所などは一切表示されません。

印刷申込書のコピーはお願いすれば頂けますが、艦名や資料名が分かるだけなので、その他の情報が必要なら別途端末で調べてメモする必要があります。
特に多くの枚数を印刷してもらう場合、その作業負担が大きいので、少なくとも端末で確認できる情報はシールに印刷できるようシステム改修されると、依頼側受注側ともに負担が減らせるとともにサービス水準も上がると思います。
図面の場合、例えば駆逐艦は1/50のものがA3サイズ3枚に分けて印刷されますが、印刷物の縮尺は不明です。
加えて、かなり縮小印刷されるため図面上の細かい文字は確認できない場合があります。よって必要な文字情報は印刷後、端末で拡大表示してメモする必要があります。また青焼き状態で印刷されるのでその上にメモする場合、見づらくなります。以前は白黒反転させたものを印刷してもらえたようで、その状態だとメモが取りやすいので、可能ならば青焼きと白黒反転の選択ができると有難いと思います。
また図面や資料はそのリストがHP上に無く検索もできないので、全て現地での確認となります。多くの人は大和Mへ頻繁に行けるわけではないので、サービス水準向上と端末利用時間短縮の観点でリストを公開して頂けると助かります。
課題と要望まで記したので長文になってしまいましたが、現状でもライブラリーは素晴らしい施設であり、艦船モデラーにとってなくてはならない拠点のひとつです。
今後の更なる発展を願わずにいられません。
※上記文面及び画像の一部は本ブログで公開することについて、事前に大和Mに確認を取りました。
Posted at 2021/11/02 21:48:41 | |
艦船模型 | 趣味