この写真はその個体ではありませんが、先日のアズールの話に関連して、昨日はそれと同じ年代のロールスロイス・シルバーセラフをドライブする機会に恵まれました。このシルバーセラフは1998年に登場して、ロールス社の紆余曲折の渦に巻き込まれて僅か5年のモデルライフで姿を消してしまいました。
が、その後のファントムやゴーストよりも私的にはロールスロイスらしい佇まいを持った最後のロールスロイスという印象があります。昨日乗った個体はシルバーグレーで紺内装というビジネスライクな組み合わせでありまして、これは最初のオーナーだった演歌界の大御所中の大御所が移動用として汚れが目立たない仕様を選んだそうです。次のオーナーは飲食業界では著名な実業家で、小傷や内装の罅割れから見て、セラフを足がわりとしてかなりシビアな条件で使っていた事が窺い知れます。
車内に入ると、ドア内張りや運転席の縁にかなりの罅割れや、ウッドパネルにも若干クラックが走っていたりと可哀相な状態でありました。
走り出してみると、BMW製のV12エンジンは極めて快調に2.6t近くのボディを軽々引っ張ります。足回りも最近アキューム交換を終えたばかりで、ヘタれた印象は皆無です。ただステアリング関係だけが多少メンテが必要なようで、ロールス特有の羽のように軽いフィーリングを失っていました。
通常12万㌔を走行すれば、ボディ関係にも何らかの疲労が見えるものですが、ドアの開閉時から走行中に至るまで劣化はほとんど気にならないレベルであります。昔のロールス・ロイスで「室内で一番大きな音は時計の針を刻む音です」というのがありますが、それなりに各部の音は室内に入って来ます。ただ、それは私的には決して不快な騒音ではなく、機械が仕事をしている証と考えればむしろ心地よくも感じます。
最新のゴーストになると影を潜めたロールスロイス特有のカーブの挙動はそのままで、作法というか若干慣れが必要ではありますが、ステアリングの切り角とパワーを乗せるタイミングを見極めるのは結構楽しかったりします。ブレーキは昔のままのフィールなので、通常の走行でも制動距離には相当の余裕を持つ必要があります。
一時間程度のドライブの中で、いつも通る路地に入ってみたのですが、このセラフは巨体が信じられない程に車両感覚の掴み易い車です。正直この感覚はジャガーやレクサス以上の掴み易さで、乗って10分もすればどこでも入って行く事が可能です。恐らくはメーカーもこの辺りを計算済みで、恐らく歴代のどのモデルに乗っても同じものだと思われます。
セラフ=熾天使という最高位の天使というネーミングを持ち、クラシックな乗り味を継承した最後のロールスロイス。「腐っても鯛」と言ったら怒られそうですが、こういう車はメンテ費用を注ぎ込んだ後で、車そのものがダメになる事は絶対に無さそうです。
先日のアズール、埼玉にある現物を来月中旬に見に行って来ようと思います。
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2012/05/25 11:15:16