
昨日の続編です。
寄り目と離れ目の原動機のお話しです。
20年前のエンジンの話ですが.
バルブクリアランスの事を考えていてふとバルブタイミングが気になって1HZとTD42のを見比べて両者の違いから疑問が生じてエンジン設計のプロに話を聞くのが一番と思って話しがスタートしました。
以下は浜松のエンジンンジニアの御大からのご返答メールであります。
※一部加筆、装飾しております。
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濃い話題を ありがと
こう言う話は、楽しいのょね
まず、基本知識として
BTDC上死点前
ABDC下死点後
つまり、BTDCとABDCの間に180度のクランク角があるんです。
TD42で言うと
吸気BTDC26+180+ABDC56度
つまり吸気の作用角は262度なんですね。
頂いたデータに各吸排気の作用角WA(ワークアングル)と
吸気と排気が同時に開くOR(オーバラップ)のデータをプラスすると
傾向が見えてきます。
●TD42は
吸気BTDC26 ABDC56 WA262
OR50
排気BTDC66 ABDC24 WA270
●1HZ
吸気BTDC8 ABDC36 WA224
OR13
排気BTDC51 ABDC5 WA236
●13BT
吸気BTDC16 ABDC48 WA244
OR30
排気BTDC52 ABDC14 WA246
ここで、現れてるのは1HZが吸排気共に、
WAが狭く、且つオーバラップが狭い事です。
WAが狭いヘッドは、ポートの流量係数が良く
つまり流れやすいポートを持っている事を示します。
それでいて、
オーバラップが小さいと言う事は
部分負荷、つまりスロットル全閉周辺で
内部EGR率、つまり排気ガスがシリンダー内に混ざる率が低く、
(EGRが多いと遅燃え失火と燃焼が安定しない)
EGR量が低いという事は、
スロットルが閉じている領域の燃焼安定性が高い と言う事となり、
アクセルの付きが良いと言う事となります。
ヘッド能力は、E/Gの効率の元
能力の高い順に並べると
1HZ>13BT>TD42
と言う事でしょうか・・
それに対し
TD42は、
ORでの排気管脈動の負圧で最大出力を出してる、
レーサー的なE/G
直6E/Gの場合は、120度爆発の排気干渉を防ぎ、
オーバラップ時に排気管の負圧を持ってくるのが技となり、
TD42のエキパイが6ー2-1繋ぎとなつているのが、
その排気干渉を防ぐ技となっております。
だからこんな凝った形状とマフラーの細さの理由なのです^^
TDは、排気干渉を防ぎ最大出力を出し
部分負荷は、ヘッド能力が低いが
ヘッド内で乱れを発生させるディーゼル特有の
スワールポートとし
気筒内の乱流強度を上昇させ
オーバラップが大きく内部EGR量が多い元でも
燃焼速度を上昇させ、部分負荷の燃焼を安定させているE/Gとなりますね。
簡単にまとめますと
●1HZ
EGR少なくして燃焼速度を上げてるE/G
排ガス中のNox(窒素酸化物)が高く排ガスが通り難いE/G
●TD42
気筒内乱流強度を上げて、乱流燃焼速度を上げて、
高EGR下で低温急速燃焼させ Noxが少ないE/G
でも、ドライバビリティ乗って良いのは
1HZかな
排ガスが通らないけど・・
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このような見解であります。いかがでしょうか?
メールの後直接電話で色々と50分にわたる講義を受けましたが、文章にまとめるには私の能力では無理でありますので、気になったポイントだけちょっと追記したいと思います。
1HZは4サイクルガソリンエンジン屋が作ったエンジンで、TD42はディーゼルエンジン屋が作ったエンジンと言う印象。主流は1HZでTD42は本当に古いエンジンでフォークリフト、発電機など中程度の負荷で定回転をさせるにはいいエンジンだろうとの事です。また、TD42は内部EGRなので結果としてNoxが減らせているけどそのその為に黒鉛が発生しやすい。1HZは効率はいいけどNoxが多く排ガスを通すために外部EGR をつけないといけない。そうすると結局内部EGRも外部EGRも一緒なんだけど、ただ外部EGRの場合電子制御により負荷量に応じて微調節できる。
なるほどね。。。TD42が乗用車用の登録があるのは内部EGR量を増やしてNOxの発生を抑えるようにしたのですね。噴射時期を進角させ黒鉛を抑え、そこにEGRをほり込んでNOxを抑える作戦のようであります。ですからどうしてもディーゼルノックが1HZよりも多く、OHVと言うことも相まって勇ましい独特のTD42の音になるようであります。漁船サウンドは吸気系の慣性吸気を得るための曲げワッパのエアクリーナーと子象の鼻のように長いエアダクトが生み出す脈動音でしょう。
あの仰々しいダクト類、凝った造りの排気管関係はヘッド能力の低いTD42の性能をチューニングで向上させる為のある意味ニッサンらしい作業なのですね。逆に言うと下手に弄るとバランスを崩してしまう事が大いにありえるのですね。TD42、特に生の楽しみ方は初期性能を十分に発揮させる方向の整備と言う事になります。ディーゼル屋の渾身の力作で頑丈さがとり得のTD42は正にUDの称号がふさわしいエンジンであります。
一方で1HZはプラズマ?レーザー?どっちだっけ?面白いサブタイトルがついていますが、外観もさることながら新時代のディーゼルですね。ディーゼルの概念を打ち砕くような性能でしたが、これは設計思想が異なったアプローチからのなせた業。ヘッド能力が高くロングストロークとの組み合わせで実力を発揮、エンジン単体で何とかなる完成度なのでエキマニやマフラーは多少手抜きしても何とかしてしまう。コストダウンが可能なのですね。ただガス規制と共に活きの良さがなくなってきて外部EGR などホキ類が増えましたね。燃費も悪くなっていった感じがあります。
どうでしょうか?
何か感じる事ございますか^^y
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Y60 | 日記
Posted at
2010/12/16 08:15:48