あらすじ:彼女、友人と渡り歩きつつ北海道に自走、基本、野宿で日本一周を目指すオレの徒然日記。今回は途中で出会ったショウゴさん視点の話。
俺は大学生のショウゴ、千葉に住んでいる。
愛車は
FZ750だ。
いぜんはRZ250に乗っていたのだが、限定解除したことを機にFZ750に乗り換えた。2ストも気に入っていたのだが、世界最新と言われるこの5バルブジェネシスエンジンというヤマハの触れ込みに乗った感じである。
こいつを買うためにバイトをしまくった。
念願のナナハンを手に入れたときは本当に感無量だった。
千葉は山が少なく、面白い峠はなかなかない。関東のメッカはやはり神奈川になる。
何度か早起きしてヤビツや箱根に行ったが、高速を使うためには二人乗りができない(高速道の2人乗り解禁は2005年4月から)ので、彼女は連れていけない。
ひとりで遊びに行くとなると当然、彼女の評判は悪い。
「何でクルマを買わないのよ!中古の軽自動車よりも高いじゃない!クルマなら二人で出かけられるのに!」
まあ道理であるが、踏んでも走らない、エアコンがついても効かない、外装は走る棺桶、動くパイロンといっても過言でないそんな乗り物に乗るつもりはない。せめて学生の間は友人からの借り物でいい。
そんな中、夏休みの計画でまた彼女と衝突した。
「え?北海道?何言ってんの?バイクで行くって?この暑いのに?アタマおかしいんじゃないの?」
まあ一理あるが、バイク乗りとして聖地北海道に学生時代に行っておかなければ、社会人になってからではゆっくりと回ることはできないだろう。
いま行っておくしかないのだ。今ならバイト代の残りで何とか回れるだろう。
「じゃあ夏休み遊べないじゃん。え?タンデム?そのバイクに?冗談でしょ?暑い中、荷物背負って後ろに乗れっての?ぜったいムリ、日焼けだってするし私は行かないわよ。今だってそれしかないから後ろに乗ってるだけなのに。それより私の計画を聞かずに、北海道行きのフェリーの予約を入れた方が重罪だよ。どういうつもりなの?なんで私の予定を聞かないのよ!」
うむ、それも一理あるが、夏のバイク乗りにはやるべきことがあるのだ。
「ふーん、そういうつもりなんだ。じゃあ、北海道行ってる間、サークルの集まりで九十九里に行って勝手に男女仲間で盛り上がってくるから勝手にすれば!さよなら!」
今から映画を見ようと近くのGEOで借りてきた彼女の趣味で選んだビデオはどうするんだ...まあいいか、ここまで怒らせたら当分口をきいてくれないだろう。こういう時は時間を空けた方がいいのだ。経験上。
それより北海道行きである。初の本格的なソロツーリングになるので、準備をしなければならない。とりあえず彼女のことはおいておいて2週間の旅程と地元観光地スポットのリストアップをしなければならない。
脚本が微妙に甘ったるすぎる彼女が見たいという映画をみながらそんなことを考えていた。
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さて結局彼女とは仲直りせず、そのまま北海道に到着した。主な旅程として岬めぐりを中心に各地の観光スポットを巡ることにした。
旅程もあまり長くはないので、道央道南は捨てて、道東と道北を中心に回ることにした。
一応野宿セットも持ってはいるが、非力なセットで一応雨風がしのげるという程度、できれば安宿を渡り歩きたいと思っているが、手持ちが心もとない。
まあ何とかなるだろう。
今回の相棒、ヤマハFZ750というバイクは本当によく走る。RZと比べればもちろん重いのだが、北海道のような直線レイアウトが多い道では本当にどっしりと楽だ。エンジンもともかく良く吹ける。45度前傾エンジンが良質な前後バランスを獲得したとカタログにあったが、ともすればピーキーなパワーの出方でフロントが浮き気味になるRZと比べると上り峠でのフロントの接地感が段違いである。
落ち着いて振り回せる感じがとてもいい。
ここ最近はどのメーカーも、猫も杓子もレーサーレプリカで高性能なエンジン、高いバックステップに窮屈な乗車姿勢、フルカウルでまんまレーサーを公道に持ってきました、というオンロードバイクが多い。
俺もレプリカに興味がないわけではないが、こういう流行りに迎合するようなバイクには乗りたくないと思っていた矢先に、まさにスポーツツアラーというデザインのFZ750が発売されたのだ。この手のバイクは耐久レーサーっぽくGSXの「オバQ」デザインに端を発する丸目二灯フルカウルがメジャーなのだが、こいつは違う。なんと角目二灯のハーフカウルである。こんなデザインのバイクは最近見たことがない。スズキカタナ以来の唯一無二である。
最新の機構をあえてレプリカではないデザインのこのバイクに載せてくれるヤマハ。このバイクを買ってよかった、こいつが北海道ツーリングの相棒で良かったと心から思った。
地球岬という室蘭の岬に着いた。
ゆっくりと駐車場に入ると、目立つ紅白のいでたちのオフロードバイク乗りがいる。熊本ナンバーか...随分と遠いところから来たものだ。敦賀からフェリーだろうか...と、彼が見つめるその視線の先には悪目立ちするド派手な関西弁の二人組がいた。
「おう、またがりたい奴はまたがってええで、特別や!」
「ハマちゃんは太っ腹やな!」
「まあな、はっはっは!」
またがってええで、っつー上から目線が既に気に入らねえ。
別に関西弁に悪いイメージもないが、こういう奴が関西弁をしゃべっているとどうして成金ボンボンが上から目線で喚いているという風に感じてしまうのだろう、不思議だ。
「なんだろな、あいつら、イラつくな」
思わずオレの口から出た言葉に振り返ったその紅白ライダーは、熊本県人とは思えないほど色が白く、歌舞伎役者のような面持ちのヤツだった。
「こんにちは、どちらからですか?」
にこやかに人懐っこく笑いながら話しかけるその表情にはヒトコロガシの匂いがプンプンするが、悪いやつではなさそうだ。若い。下手をすると高校生ではないかと思う。間違いなく俺よりも年下だろう。
「俺はショウゴ、千葉から来た。君は熊本からか?俺は習志野ナンバー。」
目を輝かせて熊本ナンバーが言う。
「習志野ナンバー!僕は習志野ナンバーが日本で一番カッコいいんじゃないかと思うんですよ、文字のデザイン的に!僕はHと言います、よろしくお願いします」
変わった奴だ...。
習志野ナンバーなんて関東ではチバラギ扱いされる田舎ナンバーなのに。
九州人だからそういう感覚もないのか。初見でみればカッコいいという人もいるのかな、と変なところに感心した。
その後、地球岬の先端までそのHと一緒にいくことにした。
地球岬という名前ほどの「地球」感はないが、広々とした海と空はいかにも「岬」という感じで解放感にあふれている。
まあこの手の岬では千葉が誇る銚子の犬吠埼も中々なのであるが、彼女とタンデムツーリングした思い出があるので今は思い出したくない。
「君はこの後どっちに向かうんだ?」
Hに聞いたところ、北上して道東、道北に岬をめぐりつつ向かうという。驚くほどに行動が似ている。少し話してしばらく同行することにした。まあソロでも問題はないが、仲間がいるに越したことはない。悪いやつでもなさそうだし。
が、Hは野宿派だったようで、今日の宿はどこのキャンプ場にするか聞いてきた。
「いや、とりあえず今日は近くのライダーズハウスに泊まるつもりで連絡をしてある。どうせごろ寝だから予約なしでもいけるはずだ。風呂もついている。一緒に行かないか。」
一瞬だけちょっと微妙な表情をしたHだったが、笑顔で一緒に行きますという。
道東知床方面に向かうので北に進むことになる。
HはXLR250BAJAというツーリング向きの大きな2灯ヘッドライトがついたオフローダーに乗ってついてきた。道はほとんど真っ直ぐではあるが下道でありそんなにスピードを出せるわけもなく、車格の違いは問題にはならなかった。
ほどなくして夕方になり、目的地のライダーズハウスに到着した。
ホッとしてライダーズハウスに入ると
「ナカジ!オレの着替え持ってこいや!」
という声...マジか...なんであいつ等がココにいるんだよ...。
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2021年4月に主人公Hがライダーズハウスに到着して既に4か月w
ロードムービー展開にすると公言してから何にも書いてませんでしたが、最近ドラマを見て書く気が復活w
でも、そのまま主人公視点だと飽きるので、サブキャラを掘ることにしました。
ここ数回は主人公Hとショウゴの視点を入れ替えながら書いていこうと思います。
もう前回のお話を忘れた方のためにも関連URLに前回のお話貼ってありますので、?と思った方はどうぞ。というか自分自身も読み返さないと何書いたか覚えてないww
伏線張ったとか書いてるけど、どれが伏線なんだww?
自分自身を解析しながらノロノロ書いていきます。