みんカラを拝見しているとクルマ用両面テープ購入時に重視しているポイントは,接着力と使用温度範囲の上限側の数字が多いようです。
お値段の方は,二の次,三の次という感じでしょうか?
というのもカー用品店やホームセンターのカー用品売り場にある両面テープは,ほぼエーモン工業が独占しているから。
同じようなメーカーとしてはフジックスがありますが扱っている店は限られますし,ましてやエーモンとフジックスの両方を置いている店はそうそうないでしょう。
他のメーカーと比べたくても,他に置いてないのですから選びようがありません。これでは非現実的な値段でない限り,お客さんは渋々とはいえエーモン製品を買うしかありませんから,買ってもらえそうな値段の上限に価格設定をするのはビジネスとしては当然でしょう。
当方のイメージとしては大型ホームセンターの建築用テープ売り場(≠カー用品売り場)と比べて,カー用品店のエーモンのは1.5倍~2倍という印象です。
こういうのは両面テープに限らず,エーモンの工具やパーツ類なども同じ。特段,ええもんとは思えないふつーもんでも,そういう点では随分いいお値段です。
値段の話は以上として,今回は接着力のことを書いておきます。(使用温度範囲の件は後日)
クルマ作業で使うような両面テープの場合,テープメーカーは「荷重の目安」を数字で示しています。
エーモンは数字を一切商品パッケージに載せていませんし,訊いても数字は教えてくれません。そういう態度をとっていることやこれまでにどのような経緯があったのか?想像は出来ますが,当方が詮索したからといって数字が出てくるわけではありません。
当方はテープや接着剤の専門家ではありませんので,以下の内容には誤りや勘違いがあるかもしれません。
一般には接着力が性能と思われがちだと考えられますが,両面テープの場合,接着力と保持力の2つが性能を測る指標になります。当方が理解したのは,接着力というのは接着剤自体の性能。保持力というのは両面テープとしての性能だと受け取っています。
テープの試験方法はJIS規格で決まっており,何種類かの試験方法があります(JIS Z 0237 粘着テープ・粘着シート試験方法)。粘着力は180度もしくは90度の引きはがし,保持力はおもりによる試験となっています。超強力両面テープにおいては,せん断試験もあります(試験機はJIS B 7721 引張試験機・圧縮試験機を使う)。
なお(規格上は)すべての試験はステンレスを用いて行います。
両面テープのレビュー記事において,荷重の目安としたのは保持力で,せん断接着試験,90度引き剥がし試験は接着力になります。(荷重の目安はおもりを取っ替え引っ替えして行う)
従って,クルマ用として使う場合の実環境に近いのは,荷重の目安の値ということになります。
住友3社のデータシートをみると同じ製品体系で(同じ接着剤で)基材の厚さが違っているものがあって,その場合,基材が厚い方の試験値がよくなっています。これは基材が力を吸収しているものと考えられます。接着剤の接着力だけが両面テープになった時の性能ではなくて,基材も含めた性能が保持力になっているのだと思います。
スコッチ パワー両面ロールテープ 超強力(PV-1,12mm幅)の名前で一般売りされているのは,3M VHB Y-4952と思われます。エーモン 超強力両面テープ(プラスチック用)No.N889(エーモン最強の車内小物用)もY-4952と思われます。
PV-1の荷重の目安は,ステンレスどうし1000g,ポリプロピレン(PP)どうし550g,ポリエチレン(PE)どうし500gとなっています。(12mm幅,テープ2cm当り)
(PPの)内装ダッシュボード付近に両面テープで装着されることが多いETC車載器は重さが100g程度ですから(単純計算では)このテープなら約4mmで足りることになります。
ダッシュボード側の材料の性質や表面仕上げの違いなどもありますから,これでは余裕がないので,実際には,もう少し必要だとは思いますが。
テープ選びという点からみると,この場合,PPで100g+余裕分の保持力が確保できるテープならそれで良いということになります。(余裕に高温時の性能低下は加味する必要なし。詳細は温度の記事参照)
2cmで550gといったら,かなりの保持力だと思います。これはペットボトル1本です。さらに,ステンだったら1000gもあります。
なにが言いたいかというと,テープの性能は十分ある。
やみくもに接着力(→保持力)が強いテープを求めるのは,いかがなものか?
「あんたの言っている保持力っていうのが,世間一般では接着力なの」ごもっともだとは思いますが,テープメーカーは接着力と保持力を分けていますので,商品説明を読む際には分けてもらった方がよろしいかと思います。
自動車メーカーの工場や(サービスマニュアルがはっきりしている)ディーラー整備工場にしても,なんでもかんでも超強力テープを使っているわけじゃないと思います。1円単位のコストを削るためには,スペックを満足するなら高いテープでなくて,分相応なテープを使っているとみるのが妥当だと思います。
なお,3Mが公表している試験値は72時間(3日間)経過後のものです。貼った直後は30%程度の性能だと3Mはしています。貼り方としては,貼った直後は負荷をかけない,もしくは負荷を低減させるのが望ましいと思います。また,テープ本来の性能が出るように作業の手順にも気を払う必要があると考えます。
テープメーカーが示している試験値の素材は,一般的な素材そのものによるものです。スチールの場合は,素材そのもので利用されると思いますが,ステンレスやアルミでも表面仕上げがあれば接着力に影響することもあります。同様にポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)も表面加工(ダッシュボードのシボ加工等々)が接着力に影響することもあります。金属や樹脂の場合,塗装されていることもあって状態よっては接着力に影響したり,接着は出来ても塗装の方がはがれてしまうこともあります。汚れ落としはエタノールで行うことになっています。実際に貼り付ける素材や条件は様々なので試験値の通りになるとは限りません。
▼参考リンク
・3M テープ・接着剤製品 よくあるご質問
http://www.mmm.co.jp/tape-adh/faq/
・ニトムズ 両面テープの接着と保持の違いは何ですか?
http://www.nitoms.com/q_a/qa01.html#q0104
▼関連リンク
・エーモン工業の両面テープ(2010.11.5)
https://minkara.carview.co.jp/userid/766725/blog/20288286/
Posted at 2012/03/30 20:03:30 | |
両面テープ | 日記