2019年10月05日
TEST Drive! Audi A6 Avant 55 TFSI quattro S line S tronic ①
偶然の幸運に恵まれて、Audi A6 Avant 55 TFSI quattro S line S tronicという車を2泊3日お借りすることが出来た。
ぼちぼちATやDCTの安楽車を探そうかと言うこのタイミングで、縁が薄いアウディ社、そしてAvantボディと言うのは自分のチョイスとしては最も遠い選択肢でもあることから、有難くオファーをお受けした次第。
初日の夕方に車両をお借りしたのだが、代理の営業さんが忙しいらしく、エンジンのかけ方、鍵の掛け方についてドリルが終わると…さっさと送り出したい様子が伺えた。
9末に近いしね、それはそうだろうなぁ…。
慌ててETCの場所を聞いてカードを放り込み…雰囲気を読んですぐに退散することにした。
----------------------------------------------------------------------------
お借りした直後の初見の感想は”こんな車が身近にあるのは悪くない”というものだった。
トルクフルで密度感のあるエンジンと見切りの良いボディ。
すっかり夕闇に包まれた中で見るA6のインテリアは中々見ごたえのある雰囲気を醸し出していた。
この手のLED装飾を始めたのは現行Sクラスからだと思うが、薄いブルーにセットアップされた照明によって背後から照らされたQuattroの文字は、新しい車に乗っている気分を高めてくれる。
たかだか照明なのだが、それに騙される自分もいるわけだ…。
(実際はもっと綺麗です…)
LEDの2本の線に囲まれたセンターコンソールの中には大きなタッチパネル式の画面が2段並んでいる。
両画面ともタッチパネル式と言うより疑似クリック感を伴う仕様で、慣れればどうということは無いのだろうけど2泊3日で違和感が無くなったかと言えばそうでもない…触ってると指紋だらけになるし。
何が違和感かといえば、ツルツルのパネルを押して、クリック感を感じる迄に生じる指先の固定感の無さ…パネルがツルツルすぎて指先が僅かに滑ることがその主因だろうと思う。
メーターパネル内もAudi社が得意の全面液晶パネルとなっている。
あれこれついているのは分かるのだけど、さっぱり分からない…ので、首都高に上がって空いているPAで取扱説明書を読むことにした。
近場のインターを探して入り口に向かい、ゲートを通過すると驚くほど空いている。そのアプローチを再度確認して、グッとアクセルを踏み込んでみた。
恐らくそのように躾けてあるのだろうが、3000回転を超えると急激にターボが効くような特性を与えられている。
肌理が細かく質の良い加速感…良いユニットだ。
新しいV6ターボエンジンはもしかすると新型マカンと同じユニットかもしれないけど、刺激のあるというより豊穣感に重点を置いた品質を醸し出している。
短い直線でA6の方向性に見当をつけながら、クアトロを信じてそのままの勢いで本線につながるカーブに侵入した。
シートはラグジュアリー系なのでサポート感は決して強いものではないが、かなりの横Gや傾きを感じつつ車が外側に持っていかれる。
それをアクセルで制御しながら本線に向かってノーズを向ける。
いけない…スピードを出しすぎたかもしれない。
GT3でこれほど「車の抵抗」を感じた場合は、それこそとんでもないスピードに達しているはず。
少し反省しつつスピードメーターに目をやると…思ったほど出ていない。
ん…あぁ、そういうことか。
その後は首都高の流れをほんの少しリードするようなスピードでC1を何周か走った後に辰巳パーキングへ。
相変わらず辰巳パーキングは混んでいた。
本線に戻る直線に近い場所にはカメラ小僧(動画小僧?)が陣取って、時折来る珍しい車をカメラに収めんとスタンバイしている。
しばらくの間彼らを見ていたのだけど、実に楽しそうだ。
初めて車を買う年齢が30代半ば、初めて買う車の優先するポイントが家族構成なった今、彼らを見ていると実に微笑ましい。
そこに白とグリーンのアヴェンタドールが爆音を轟かせつつ本線へと合流する準備を始めると、彼らの動きがせわしくなってくる…。
そんな時間が過ぎていく中で、 A6 Avant 55は全く人目を集めることが無い。
これぞこの車の特性であり、良い点でもある。
人目を集めないということは時に非常に有り難い時があるわけで、このアンダーステートメント性とその裏にある上質感は良好なコンビネーションとなり得ると思う。
だから車内で取扱説明書を熟読するという、ちょっと奇妙な光景だが社外の影響を受けることなく没頭することが可能となった。
興味があったのは最新のアダプティブクルーズコントロールとかレーンキープアシストの類。
辰巳に来るまでに、この車は上質なエンジンやしっかりとしたボディ搭載するも、コーナーを攻めるような車じゃないことがはっきりしたので、快適性を探る方向に頭を切り替えている。
操作方法を覚えて説明書をダッシュボードの下に格納し、シートベルト締めてエンジンを掛けると、シートベルトがクッと自動的に締まって、車から「調整しておきましたよ」と言われたようだった。
辰巳を出てからしばらくの間は周囲の流れに合わせてステアリングやアクセルを踏んでみる。
ゆったりとしたステアリングや見切りの言いフロント部分のデザインのせいだろうか、随分と快適に感じる。
路面のコツコツ感がやや多すぎたり、ステアリングインフォメーションが薄くて人工的な感じはするけど、これはこういう方向性を狙って作ってるのだろう。
箱崎手前で渋滞しているのは分かったから、アダプティブクルーズコントロールをオンにしてみる。そしてレーンキープアシストも。
するとどうだろう…普通に車の流れに付いていく。
しかし…右足をどこに置くべきなのだろうか。
どうしたものかと考えているうちに、車線変更時に周囲をろくに確認しない車が右から割り込んできた。
アダプティブクルーズコントロールは特に反応する様子を見せないので、スタンバイしていた右足でブレーキを踏む。
ふぅ…その後もこういうシーンが続くと、この機能を使うのが億劫になってきた。
この機能を有難いと感じる人って、いったいどうやって使っているのだろう。
アダプティブクルーズ中は前車との距離の調整にシステムがちょこちょことブレーキを踏んでいるのは、後ろのトラックが薄く赤く輝くのを見て分かった。
明らかに自分のブレーキのタイミングではないし、回数も多すぎる。
自分がこの車の後ろにいたら、下手糞すぎてイライラするか、後ろから離脱するだろう。
案の定、後ろのトラックは荒く車線変更して急加速して自分を追い抜いて行った。
トラックの運転手が自分を侮蔑する気持ちが窓ガラス越しに伝わってくる…。
相変わらず右足が落ち着かない。一体どこに置けばいいんだろう。
ブレーキの下であるわけがない。
恐らく右ひざを軽く曲げて手前に置いておくのだろうが…アウディに限らずどのメーカーのこの手の機能の危険認知能力は人間より低いので、
緊急時に手前に置いた右足がブレーキを踏むまでのトラベルを考えると空走距離が数メートルは発生しそうだ。
そして、メーカーの文言を真に受けてリラックスしている右足が緊急動作に入るまでのタイムラグを考えれば、もっと空走距離は伸びそうだ。
こう言うロジックに立つなら、右足首を曲げつつペダル類を踏まない姿勢を取ることになるのだろうけど、これこそ疲労の極地であり、滑稽でもある。
そしてこれが一番問題なのだが…メーカーが「絶対に大丈夫」と言わない以上、ユーザーは「システム上、何かが起こるかもしれない」ことを常時警戒する他はない。自分のコントロールが効かない世界からもたらされることを警戒することは、運転することよりずっと疲れにつながっていく…。
結論として、システムとしてまだ熟成すべきポイントが多いと判断したこと、お借りしている慣れていない車であることから、試乗中にこれらの機能は使わないことにした。
となると、「流麗かつ優美なエクステリアと革新的なインターフェイス」を謳い、「革新的パワートレイン」を誇る車の素性そのものと向き合うことになる…。
ブログ一覧 |
アウディ | 日記
Posted at
2019/10/05 17:49:49
今、あなたにおすすめ