(DAY1)
数か月経過して休暇を取り、コロラドへ向かう。
約11時間のフライトの後に、デンバー国際空港に到着した。
気温は非常に低い。寒いとは聞いていたけど、これほどとは思っていなかった。
色々変わったものがある空港だけど、見ている暇も無く、教えられた携帯に電話して迎えに来てもらう。
やたらと広い空港を迷いながらなんとか待ち合わせ場所に到着すると、そこには泥だらけのトヨタ・タコマが停まっていて、傍らにはアウトドア服に身を包んだロバートが立っていた。
仕事をしているときよりもリラックスしているせいか、ずっと大きく見える。
「よう、長旅ご苦労さん。荷物をさっさと積んで行こうぜ」
彼のタコマの荷物を放り込もうとベッドに取り付けられているゲートを開けると、何やら長いケースが何本か入ってる。
狩猟用のライフルとショットガンだ。
どうやら練習してきたらしい。休暇中はご家族とハンティングに行くと聞いている。
自分はそのお手伝いも兼ねていることは聞いていた。
それらの長いケースを横にどけて、自分のキャリーバッグを放り込んだ。
コロラド州の延々と続く道路を数時間走行して、やや粗い道を更に数時間走行すると、牧場のような風景がいつの間にか広がっていた。
ぼうっと見ていると、彼が言うには既に自分の家の敷地内だという…。
職業柄、土地の価格の話になってしまったが、もちろん日本のそれとは尺度が全く違っていて、こちらでは金を生まない土地はタダ以下だ。
走っているうちに徐々に植生が変化してくる。標高が上がっているようにも思えるが、よく分からない。
しばらくすると西部劇の牧場のゲートのようなものが見えてきて、それを越えてしばらく走ると大きな一軒家が見えてきた。
その一軒家の隣にある大きなガレージのリモコンドアを開けてタコマを滑り込ませて照明を点灯すると、駐車場というより納屋という風景が広がっていた。
「なあ、さっさと荷物を降ろそうぜ。みんな待ってる。」
彼に急かされて自分のキャリーバッグといくつかのガンケースを抱えて家に入る。
玄関をこえて入っていくとそこには巨大なリビング。
目に付くのは本物の暖炉。
そして立派なトロフィーが数体。
壁にかかるウィンチェスターのレバーアクションが2丁。
大きなソファーと巨大なテーブルの上に広げられた膨大な量の食事。
既に来ていた彼の仲間も数人。
まさにここはアメリカだ…。
「待ちくたびれぜ、さっさとやろう」
ご家族への挨拶もほどほどに深夜まで延々と飲み明かすのだった。
彼が少し棘のある言い方をしているのは(いや、棘と思っていないかもしれないが)、僕のせいでもある。
わざわざ日本からNYくんだりまでエスコートして連れてきた日本人のために、ミーティング日程を整え、議題を整理し、それらを事前にお互いの国で揉んできたはずなのに、
「それは高いかなぁ…(根拠言わない)」
「それは検討します」
「ここでは決められません」
「持ち帰って相談します」
を連発されれば、こいつらは一体何のために来たのかという話になる。
日本での直前の打合せとは違う回答の連発に、僕の顔も青ざめるだけ。
後に、なんでこんな対応をしたのかと聞くと、迫力に押されて自信が無くなり、ここで決めて帰国する結果責任に押しつぶされたというのが本音らしい…なるほどそういうことか。
僕がそういうメンタリティを気付いてあげればよかった。
それはそうとロバートの議論の吹っ掛けに乗ってみることにした。
「そうはいっても、アメリカにもコレクターはいるだろ。それとどう違う?」
「いや、Terry、それは違う。」
「俺に知ってるコレクターは、そのほとんどが社会のためにその製品群やヒストリーを保存して後世に文化を引き継ぐという使命でやっている。だから、同じ分野には積極的に寄付もするし、助力も惜しまない。彼らもそうなのか?」
しばしの沈黙。
詳しくは知らないから断言はできないが、決してそうとは言えない。
だから、自分の意見としては、そういうケースは知らないというほかはない。
「なら、Terry、それは自動車趣味では無くて、単なる買い物自慢さ。」
「現行車を数か月で何台も買ったり、入れ替えたり…それで車の何が分かると言うんだい?」
「ここアメリカは世界で最新、最大の資本主義の世界だから、財布が厚い連中は山ほどいる。そんな中で財布の厚さを自慢しあうメンタリティを披露したら、一体どう思われるか分かるだろう?」
「金、金なんてさ…日本人は…」
ロバートは蔑むようなことを言いそうになったのか口籠る。
普段は冷静で頭の回転が異常に速い男だ。ミスはまずしない。
恐らく成果無しのイベントに対する苛立ちがそうさせたのだろう。
ここ数年来、アメリカやらイギリスやらを何往復かする生活をしているのだけど、ずっと仕事だけしていたわけではなく、仕事で知り合った人やそのご家族と食事やその他のアトラクションを楽しむ機会にも恵まれた。
BBQとビールがあれば、もしくはパブにみんなで行けば自然と個人的な話が増えていく。
仕事への本音
家族の話
僕への本当の要望
お金の話
趣味の話
Etc…etc…
そして、男が何人か集まれば車の話。
ため息が出る車両もあったけど、ボロボロの「名車だった」車も多数あった。
本当に羨ましいのは、名車を所有していたことに対するものではない。
彼らの文化の厚さというか、奥深さを感じたのは、彼らの車の楽しみ方そのものに対してだ。
日本とはずいぶんと異なる。
日本の裕福な方は、名車を何台も揃えたり、あちらこちら持ちだして車トークをする位の人たちが多い。
整備は全部ディーラー、もしかすると洗車さえ自分でしたことが無い方も多い感じがする。
勿論、日本の仕事人の忙しさは世界でも有数だから、それ以上のことをする時間が無いというのも本当だろう。
「日本は狭いんだろ?911なんてどうやって楽しむんだい?」
ところが彼はそれを見て面白そうに見ているけど、関心はしていない。
「日本のカーエンスージアストってこうなのかい?」って聞くから、
結構多いよね…なんて答えると、かれは少し目を細めてきっぱりとこう言った。
「そんなこと金があればだれでも出来ることだよね。」
先ほどまである会社のバリュエーションについて激論を交わしていた時に、どうにも感覚論で物事をとらえようとする日本のクライアントに最終通告したときの冷静な目線と同じだった(続)。
基本的に世間は絶賛基調のマツダNDロードスター。
僕もNAは所有していたので、ロードスターの名前を聞くと、あの時の淡い気持ちと思い出が蘇ってくるので、同情的な感情が先に出てくる。
とはいえNDロードスターの外観デザインは、NA(ブリティッシュライトウェイト風)、NC(とそのスープアップ版)と比べると色気がありすぎ、あの素朴なエンジンとは相性が悪いのではないかと感じていた。
まあ、実際は比較的時間をかけて乗ってみないと分からないので…と考えていたら、NDRF(6MT)を10日ほど借りるチャンスがやってきたので遠慮なく飛びついてしまった。
車両をお借りする当日。
多摩川沿いの瀟洒なマンションが立ち並ぶ小道のそばで待っていると、小粒な車両が近づいてくる。
目の前に停まり、マシングレーの外装に茶色の皮内装の車を前にすると、「わぁ…」と華やいだ気分になる。
車でこういう気分になったのは実に久しぶり。
一通り説明を受けてキーを受け取る。
高速用にETCカードをセットしようとすると、言われた通りの場所に差し込もうとするがこれが中々…。
運転席の後ろ側の壁面に垂直に差し込むのだが、なんでこんなところにわざわざ作ったのか。
ちょっと嫌な感じが残ったが、気にしないで運転席に座り、駐車場の電波キーをグローブボックスに放り込もうとしたのだが…ない。
グローブボックスが無い。
なんで?軽量化?コスト削減?場所が無い?いや作れるだろ、これ。
運転席と助手席の間に小さな「倉庫」があるのだが、取扱説明書が鎮座してる。
ちょっとした荷物を入れたいし、しょうがないので車を降り、取扱説明書と車検証はトランクに放り込んだ。
さてと、気を取り直して運転席に入り込み、エンジンをかける。
エンジンは相変わらず色気とかそういうものとは遠いサウンドを奏でている。これは期待していなかったけど、まあ、そういうものだろうと思う。
クラッチは軽い。ペダルレイアウトは個人的には良好。
乗り出すときの高揚感が高まってくる。さぁスタートと行こうではないか。
ところが…街中を高速のインターに向かうために流しているとなんかつまらない。
オープンにしてもこれはタルガトップなのでさほど解放感は無い。
足は例の日本車独特の柔らかさを躾けられていて、路面のデコボコとシンクロしないオブラートに包まれたような振動が運転席を経由して体に伝わってくる。
これだと車がドライバーに遠慮がちに距離を取ってるように感じてしまう。
それに低回転でのエンジンのツキが悪いことといったら…。
どうしてもアクセルを開かせたくないのだろう。これはちょっと燃費を意識しすぎて燃料絞り過ぎなのではないか。
何とか試しつつ美味しいところは無いかと試行錯誤していると、自分の意図に沿った走行をするためには3000回転を下回らなければいいことが分かってくる。
そのようにするとシフトダウンも気持ちよく決まるようになり、ようやく小粒で活発な気分のよい車に感じるようになった。
目黒の入り口から首都高へ。
ここから環状線を回って筑波サーキットに行こう。
その日の首都高は流れが非常に速い。
左の車線でさえ結構なペースで走っている。
オープントップの1500と違って流れに乗れないようなエンジンではないから、出来るだけついていこうとするが、
比較的きついカーブの旋回中に「???」となってアクセルを緩めてしまった。
この車、当たり前のことだが直線はまあ普通に走る。
ただ性能的に直線番長を楽しめるわけないから、コーナリングがその神髄だろうと勝手に思っていた。
だがそれは少し違う。
80キロを超えたあたりからフロントの足回りの感触がもやもやしてきて、さほど高くないある速度付近を超えるとガクッと外側に倒れ込むような仕草を表す。
なにこれ…自分のせい?
もう一度同じコースでコーナリングするも同じ挙動。
確かにNAの走行性能は?な車だったけど、あれは30年近く前の車だしなぁ…これでは現代のスポーツカーとは言えないだろう。
この車に400万出すなら、もっとまともな足廻りの車がヨーロッパ車にはいくらでもある。
マツダ社はなんでこんな味付けにしたのだろう。
駐車場に車を停めて、もやもやした気持ちを抑えきれず某エンジニアに伺うことにした。
彼は開口一番僕にこう問う。
「公道では結構攻める走りをしますか?」
これはコンプライアンス的な観点から否定的なニュアンスを込めた言い方だ。
そりゃそうだろう、スポーツカーでしょ、これ。
「実はもっと街中にセッティングを振っているんです。そう感じるのは普通です。」
なんでもロードスターのシャシーセッティングは、すでに4種類もあるそうだ。
一番おっとり系がS。
その次にしっかりしているのがSレザーパッケージ系とVS。
その上がビルシュタインを装備したRS系。
さらに上が輸出用の2リットルシャシーと車高調整式ビルシュタインを装備したNR-A。
なるほど、それはそうとしても、ダンパーの減衰がなんで線形に変化しないのか、実はブッシュがグニャグニャなんじゃないの等とぶーたれてると、なんと概ねそうだという。
その後なんでそういうセッティングになっているのか伺ったが、がっかりな内容なので書くのは控える。
ただ、自分に合うNDロードスターはNR-A以外に無さそうではある。
あ、そうそう、マツダと言えば人馬一体講座で正しい着座位置について講義することがあるのだけど、機会があれば聴講することをおすすめします。
ただ、そういう静止状態の着座位置にこだわり、視線の移動を少なくしたいマツダにして、なんで運動状態でロードスターのファブリック系のシートはああなんだと聞くと、どうやらそろそろ新しいシートが仕上がるみたい。
新シートはマツダの新商品群用に取り込むという話だからそう遠くない時期に装着されるだろう。なんでも尻から背中にかけてきちんとホールドするポルシェ系の座り心地を再現しているそうな。
それならば走行中に視線が上下動したり、柔らかすぎて腰の座りの悪いシートによって腰が緊張し、腰痛が発生するなんてことは無くなるだろう。
それとソフトトップに2リットルが載るというのはメニューとしてはあるみたい。
海外には既にあるわけだから、いつでもできるメニューではある。販売刺激策の一環として実施されるのだろう。
ただしそれはいつと聞いても「さすがにそれがいつとは言えん」と仰っておられた。
NR-A、どこかに乗れる車があれば乗ってみたいなぁ。
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