続きです。
先ほどの検証結果より、
・SCプーリーのベアリングは他のものに交換が必要
・コンプレッサー側テンショナーのプーリーのベアリングも他のものに交換が必要
・ダブルプーリーのコンプレッサー側プーリーもベアリング交換が必要
ということが分かりました。
まずは下準備です。
420Nm中華インパクトレンチのNi-CdバッテリーがヘタってきましたのでNi-Mhのバラセルを購入しました。
今は4200mAhのセルが普通に売ってますが、これを買った当時は1600mAhしか入手出来ませんでした。
セルをハンダで結合。24V仕様ですので20本ものセルを使用します。
テスターで確認。
電圧OKです。
満充電時のオートカットはデルタピーク検出式かと思ってましたが、温度センサー式でした。
怪しげな中華温度センサーを移植します。
セルの寸法が違いますので、リード線で延長します。
爆発したらどうしようかと思いましたが、無事充電完了。
オートカットもちゃんと作動しました。
これでSCのセンターボルト外しに挑みます。
WISによりますと、SCのセンターボルトはエンジンを引っ張り上げてインパクトレンチで外してくれ・・・と書いてあります。
このセンターボルトがクセモノで、ラジエターのファンに遮られてインパクトレンチのソケットを真っ直ぐ入れることが出来ないんです。
アンダーカバーを外し、こちらと、
こちらの左右エンジンマウント固定ボルトを外します。
ボンネットは通常60°くらいまでしか開きませんが、ボンネットの左側(運転席側)のヒンジにある矢印のレバーを押しながら開けると、ほぼ垂直まで開くことができます。
そして、カーポートの柱にベルトを巻きつけてパワーウィンチでエンジンを引っ張り上げます。
これをやっている最中に嫁が横切って、
「あんた、気は確かか??」
と言いながら通り過ぎて行きました。
全然気は確かではありません(爆
たった1つのボルトを外すために、目は殺気立って狂人のようになってます(爆
執念の作業です。
これくらいまで引き上げるとラジエターのファンに干渉せず、インパクトレンチでセンターボルトにアクセスできます。
万が一、エンジンがぶっ壊れても大丈夫です。

EPCで調べますと、エンジンAsseyが供給されてます。
お値段は804万2600円(税別)です(核爆
バッテリーも交換済みの420Nm中華インパクトレンチでガツガツ緩めましたが・・・
ビクともせず(撃沈
急遽、閉店間際のアストロプロダクツに向かい510Nmの超強力電動インパクトレンチを調達してきました。
ひたすらガツガツと緩め・・・
近所から苦情が出る寸前あたりでようやくボルトが外れました。。。
ふう・・・
ボルトさえ外せればあとは簡単です。
SCプーリーは引っ張ればスルッと外れます。
マグネットクラッチのクリアランスを調整するためのアジャスターシムが2枚挟まってますので、エンジンルームに落とさないように・・・
プーリー、ワッシャー、ボルト、シム、この4点が28万もするんですね^^;
とんでもなく固かったネジロックの正体は・・・
シールテープ??
2液性の樹脂接着剤?
WISでは瞬間接着剤で固定、と書いてありました。
リペアキットを見ますとシールテープ?でしょうか。
ではベアリングを外します。
Cリングを外し、
油圧プレスで押し出して行きます。
このために油圧プレスを導入しました(爆

こちらはアタッチメントです。
ベアリングは「NACHI」(株式会社 不二越)、日本製です。
型番はこちらです。
これ、特殊サイズで入手困難ですが、これと同じものを使ったら全く意味がありません。そのうちぶっ壊れます。
これに関しましては後述します。

ダブルプーリーのコンプレッサー側プーリーのベアリングを外します。

こないだ応急的に入れたメタルシールドのベアリングです。
最後にコンプレッサー側テンショナープーリーのベアリングを外します。
このベアリングのラバーシールがショボく、グリスがダダ漏れです。
(画像は拭き取った後です)
リベットを外します。
無理やり押し出すとプーリーが歪みますので、リベットの頭を削っていきます。
頭を削り落として、
ポンチで軽く押すと、
外れます。
5か所ありますので同じように。
結構大変です。
リベットが外れたらプーリーを分割します。
カッターの刃を両側から軽く叩きこんで、
このようなものを使い、かるーくハンマーで叩きこんでいきます。
少しずつ回転させながら、プーリーを変形させないように丁寧に分割します。
(変形したらアウトです)
外れました。
残ったほうのベアリングを外します。
ベアリングの外形よりも若干大きな筒を使い(偶然にもウチにありました)、
プレスでベアリングを押し出します。
無事外れました。
外したベアリングです。
左:SCプーリーのベアリング
右:コンプレッサー側テンショナープーリーのベアリング
ラバーシールを外して内部に充填したチキソグリスの量を確認してみます。
ほぼ漏出し、2割程度しか残ってません。
こちらも同様に2割程度しか残ってませんでした。
では、ベアリングを対策品? 高負荷に耐えられるもの、グリスの漏出が少ないものに組み替えていきます。
ベアリングは内部のグリスをチキソグリスに入れ替えますので、ラバーシール仕様で種類の豊富なNTN製を選択しました。
さらに、グリスの漏出防止・内部への塵の侵入が少ない「接触型」(LLU)を選択しました。

SCプーリーのベアリングの規格を調べます。
これ、調べてもどこにも載ってません。
外形75mm

内径45mm

幅32mm
これと同じサイズのものは入手困難ですが、幅が16mmのものでしたら簡単に入手可能です。
外形75mm、内径45mm、幅16mmのベアリングを二枚重ねて使用すればジャストフィットです。
規格でいいますと、6009が相当します。
まとめてみますと、
・SCプーリーのベアリング⇒外形75mm、内径45mm、幅16mm 形式6009LLU 2枚重ね
・コンプレッサー側テンショナーのプーリーのベアリング⇒外形47mm、内径17mm、幅14mm 形式6303LLU
・ダブルプーリーのコンプレッサー側プーリーのベアリング⇒外形40mm、内径17mm、幅12mm 形式6203LLU
となります。
ベアリングの規格表は
こちらです。
ベアリングはモノタロウで購入しました。
すべて在庫ありです。
ではグリスをチキソグリスに詰め替えていきます。
このような針のようなものを隙間に突っ込み、ベアリング球とベアリング球の間のくぼみを探します。
ラバーシールを絶対に破らないように慎重に・・・
くぼみが分かったら外輪近くまで針を突っ込んで上に引き上げます。
するとこのようにラバーシールが外れます。
ラバーシールの内側はメタルの薄いプレートで補強されてますので、なるべく変形させないように丁寧に外します。
変形してしまったら、指で平らになるように曲げて戻します。
取れるグリスを掻き出して、
残りはブレーキクリーナーで除去します。
温度差による水滴がつきますので、エアブローして水分を完全除去し、乾燥させます。
グリスがすべて除去できました。
SCプーリーに使用する6009LLUベアリングですが、深溝玉軸受け・両側接触ゴムシール型・メタルリテーナーですので、余程のことがないかぎりゴムシールを突き破ってベアリング球が飛び散るということはないかと思います。
さらに、2枚重ねしますのでゴムシールが2倍! それだけグリスの漏出も抑えられるかと思います。
グリスは勘で8分充填がベストと判断しました。
SC側ベアリングも同様に。
左:旧ベアリング
右:新ベアリング
60092枚重ねで全く同じ寸法になります。
高速回転にてグリス漏出試験を行います。
驚くべきことにNTN製LLUではグリスの漏出が全く見られませんでした。
その分、回転時の抵抗があり少々硬いですが、ベアリングの消耗=グリス切れ のケースが殆どですのでE/Gルーム内での高温・高負荷時でのグリス漏出がどれくらいあるのか楽しみです。

こちら、SCテンショナープーリーのベアリングです。
左:純正トルコ製 6303
右:NTN製 6303LLU
ラバーシールの形状から見て純正トルコ製ベアリングも接触型ラバーシールのようですが、ラバーの厚み・強度が全く違います。
これではグリス漏れも仕方ないかな・・・という感じです。
SCテンショナープーリーにベアリングを圧入します。
例の筒を使用します。
サンドイッチ状に挟み込みますので、例の筒を2個使用して圧入します。
この際、ネジ穴がピッタリ合うようにしなければいけません。
ネジ穴の位置が合っていればM5のビスがすんなり入ります。
サイズはM5 首下10mmです。
固定の順番は、M5ビス⇒ステン ワッシャー⇒プーリー⇒ステン スプリングワッシャー⇒ステン ナット にしました。
裏側。
テンショナーにはギリギリ干渉しないようになってます。
ダブルプーリーのコンプレッサー側プーリーにベアリングを圧入します。
こちらの圧入にも例の筒を使ってます。
Cリングで固定して完成。
裏側。

最後にSCプーリーにベアリングを仕込みます。
ブレーキクリーナーやシンナー等で洗浄し、
油圧プレスでベアリングを圧入するのですが、注意点があります。

SCプーリー(ステン製)とクラッチ板(鉄製)は矢印の板バネ3枚で結合されてます。

横から見ると分かりやすいですね。
この板バネは、

こちらのゴムブッシュ(3ヵ所あります)によって、

クリアランスが確保されてます。
※このゴムブッシュによるクリアランスが、後ほど紹介しますが、アジャスターシムによるクラッチクリアランスの調整に影響してきます。
よって、SCプーリーにベアリングを圧入する際は、ゴムブッシュを潰さないようプーリーを若干引き上げて間にワッシャー等を挟みます。
写真には写ってませんが、後ろ側にもワッシャーを挟んであります。
1枚目のベアリングを圧入。
続いて2枚目も圧入。
Cリングで固定します。

ゴムブッシュにはラバープロテクタントを吹き付けて保護、延命します。

こんなところからも・・・

裏側からも・・・

ラバープロテクタントが浸透して乾くまでしばらく寝かせます。

クラッチ面を清掃して、
オーバーホール完了です!
各ボルトは中等度固定のネジロックを塗布し、ある程度乾燥させておきます。
電磁クラッチ側のクラッチ面も清掃し、ベアリングの内面を保持するシャフトには軽く5-56等を吹いておきます。

こちらがマグネットクラッチのクリアランスですが、WISでは0.35mm~0.45mmと指定されてます。
新品のガタのないベアリングに入れ替えた場合、板バネが常にゴムブッシュを押さえつけてますので、恐らく0.5mm程のクリアランスになっているかと思います。(使用状況によりますが)
私の場合、一番狭いところで0.45mm、一番広いところで0.5mmでした。
測る場所によってクリアランスのバラつきがあるのは、先ほどの各ゴムブッシュの誤差(寸法差)です。

このクリアランスが意外に重要で、
簡単に仕組みを説明しますと、負荷がかかるとマグネットクラッチリレーがONとなり電磁石に磁力が発生し、プーリー側のクラッチが引き寄せられます。
普段はアイドル状態のプーリーがクラッチミートとともに板バネを介してコンプレッサーのリショルムスクリューを回転させます。
仮にクラッチクリアランスが広すぎると、板バネの曲げ歪みが多くなり、最悪の場合破断する可能性があります。
クリアランスが原因かどうかは不明ですが、実際に板バネの破断例があります。
55エンジンを日本一酷使されている(笑、HMGさんの記事に破断例が掲載されてます。

こちら既出画像ですが、デフォの状態ではアジャスターシムが2枚入っており、奥が0.2mm、手前が0.1mmとなっています。

アジャスターシムのサイズは外径55mm、内径45mmです。
無くしてしまった場合はモノタロウで同じサイズのステンレス製のアジャスターシムが入手可能です。
0.15mmというマニアックな厚さもあります。

私の場合、0.1mmのアジャスターシムを1枚抜き、一番狭いところで0.35mm、広いところで0.4mmとなるように調整しました。
そしてトルクレンチで締付けます。締付けトルクは60Nmです。
これで、SCプーリーと、
コンプレッサー側テンションプーリー、
ダブルプーリー装着完了!
Vベルトを戻します。
完成!!
これから走行テストです。
2時間ほどぶん回してきました。
結果、
E/Gカバーへのグリスの飛散、全くなし!
E/Gルーム内に飛び散った形跡もありません。
各プーリーをチェックしましたが、
今のところ目に見えるグリスの漏出は、
全くなしです♪
この3点に関してですが、
Dで交換しますと
・SCプーリーリペアキット 284655円
・ダブルプーリー 77175円
・コンプレッサー側テンショナープーリー 52710円
計414510円 + 工賃
上記の方法(DIY)ですと
・SCプーリーのベアリング NTN6009LLU 1個 949円 × 2 = 1898円
・ダブルプーリー(コンプ側)のベアリング NTN6203LLU × 1 = 313円
・テンショナープーリー(コンプ側)のベアリング NTN6303LLU × 1 = 400円
計2611円 (爆
これで、純正以上のパフォーマンスと耐久性が得られれば中々の激安メンテではないでしょうか^^