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2026年式CX-5 L感想文:萩原課長は22年ぶりにマツダを救うか? - CX-5
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ノイマイヤー
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マツダ / CX-5
L(EC-AT_2.5) (2026年) -
- レビュー日:2026年10月2日
- 乗車人数:4人
- 使用目的:その他
おすすめ度: 3
- 満足している点
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1.良心的な価格設定
2.機能面は進化
3.後席の快適性
4.低速域のマイルドな乗り心地
5.パドルシフトの小気味よさ - 不満な点
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1.先代比で寂しい内外装質感
2.2000rpm付近のE/Gノイズが耳障り
3.大きめの凹凸で内臓がブルブルする
4.10km/Lいかない燃費
5.ディスプレイ依存の操作系と退屈なメーター - 総評
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2026年に登場したCX-5は単なる3代目ではない。
2021年に公表された商品計画を見る限り、
3代目CX-5は当初から存在は約束されていなかった。
しかしマツダはCX-5を全面改良させる決断を下した。
なぜなのか。
その答えを探すうちに、私は1994年の「萩原課長のカペラ」に行き着いた。
●新型CX-5は本来存在しなかったのか
2012年に登場した初代CX-5は魂動デザインとスカイアクティブ技術を全面採用した新世代車であり、マツダの最量販車種へ成長した。当時のマツダはやみくもに数を追うのではなく、全世界の2%の顧客(当時のマツダの欧州シェア)に振り向いてもらえる様なクルマ作りを行い、確実な固定客を獲得する戦略だった。2020年当時のマツダ副社長の藤原氏がベストカー誌のインタビューで「販売台数至上主義ではなく、世界シェア2%の支持を確実に得ることが重要」と語っている。
―そして2026年、いまのマツダを取り巻く状況は悪い。
2018年頃から唐突にプレミアムなブランドを打ち出すようになった。独創的な技術を熱っぽく語る理系的な方針を転換し、化粧品のようにイメージやデザインによって付加価値を与えるような戦略になった。当時のカタログを見ても、自動車好きが気になるような技術的解説がいつの間にかお洒落なイメージ写真に置き換わった。
2019年発売のマツダ3/CX-30はHCCIを実用化したマニアックなスカイアクティブXを投入したものの、価格差の大きさもあり期待ほど市場に浸透しなかった。
また2021年10月にマツダが公表したSUV商品計画では、次期CX-5の導入は示されておらず、CX-5について明記されていたのは現行型の継続的な商品改良だった。この時点ではCX-5の全面改良が対外的な中期計画に組み込まれていなかった可能性がある。
2023年、CX-5代替の受け皿として期待されるCX-60を発売した。直列6気筒E/Gを搭載したFR車であり、私を含めた好事家ウケしそうな要素を持っていたものの、自社開発のトルコンレスATのマナーと突き上げのきついサスセッティングで大きく評判を落としてしまった。せっかく新規で起こした「ラージ」後輪駆動P/Fに直列6気筒ディーゼルE/Gを積んだのに、CX-5への代替は思うように進まず、実用派に向けて「スモール」のCX-30も用意していたが、期待する結果にはならなかった。
さらに、3列SUVのCX-8も「ラージ」のCX-80に移行しようとしたが、いずれも販売が好調とは言えない状況が続いており、プレミアムの本丸だったラージSUV群はマツダの経営を揺るがし始めた。
CX-5/8の顧客が求めていたのはプレミアムそのものではなく、実用性と技術・デザインの両立だったのだろう。少なくとも2021年時点では次期CX-5は商品計画に明示されず、今回の全面改良は事業環境や市場の反応を踏まえた判断だったと私は見ている。
言わば2026年に発売された新型CX-5は「令和最新版の萩原課長」だ。萩原課長というのは、1994年にデビューしたカペラの広告キャラクターのことだ。バブル期の5チャンネル政策や税制改定によるミドルサイズセダン大型化に伴って生まれた「クロノス兄弟」の商業的失敗により、マツダが急造した5ナンバーサイズのセダンが「萩原課長のカペラ」だった。

萩原課長のカペラは5ナンバー枠に収めながらも、クロノス同等の余裕ある室内空間を確保していた。小型枠でも立派に見えるように「大きく見せる」デザイン手法は当時の私ですら非常に古臭く映った。わずか3年という短期間しか販売されず、後続の「ひも人間カペラ」に代を譲ったが、萩原課長のカペラは、あのカーグラフィック誌も「久々のめっけもん」と評するほど良い意味で力の抜けた佳作であり、1996年に初代デミオが爆発的ヒットをするまでの間、影で苦しい台所事情のマツダを支えたのである。
・・・新型CX-5に話を戻そう。新型CX-5は開発コンセプト「新世代エモーショナル・デイリーコンフォート」のもと、顧客一人ひとりの「したい」を叶える5つ星という観点をセールスポイントにすべく開発された。

具体的には歴代の好評点「魂動デザイン」と「人馬一体の走り」をさらに磨き上げるとともに、ホイールベースを115mmも延長して後席・荷室スペースを拡大した。また、現代の車らしくコネクテッド機能はもちろんのことインフォテインメントも充実、最大15.6インチの大型センターディスプレイおよびマツダ初のGoogle搭載のディスプレイオーディオを装備。最新の先進安全技術(ADAS)やドライバー異常時対応システムを進化させた。
実際に乗ってみると、SUVらしい視界の良さと水平基調で広々感が感じられるだけでなく実際に広い。普段、狭苦しいデミオの後席でいがみ合う子供達も大喜びだった。
一方で、2.5LのMハイブリッド×6ATの走りの味・質感には疑問符がついた。マツダらしいハイテク感はスカイアクティブZ(フルハイブリッド)を待つほかないという感じだった。
さらに従来、センス良く高見えしていた内外装CMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)は、新型では厳しい台所事情を想像させた。
しかしながら、車両本体価格は税込330万円からと良心的なので多少ガッカリしたとて、それが失望や怒りに繋がらない点は評価できる。こうした価格設定もマツダの「顧客を逃がしたくない」という焦りが伝わってくるようだ。
新型CX-5は5月21日の発売以降、1ヶ月で10000台を突破し、月販目標台数2000台の5倍となったことで販売店も一息つくことができたようだ。上位グレード「L」が65%を占め、新規顧客比率も47%に達している。マツダのシェア向上に寄与するという意味で好ましいが、マツダが新型CX-5で囲い込みたい既存ユーザー達はもしかするとスカイアクティブZ(フルHEV)待ちなのかも知れない。実は先代CX-5は発売1ヶ月で16639台の受注(月販目標の6.9倍)を得ており、勢いだけでは先代に負けている。これも私が、ファンはスカイZを待っているのでは無いかと考えた理由の一つだ。
マツダもディーゼルに対する期待は知っている。CX-5にディーゼルがどうしても欲しい顧客のために
新型発売後しばらく旧型の受注を受け付けるような配慮まで見せた。現状の好調はディーゼルまでは不要という人たちがCX-5に魅力を感じた結果だと考えられるが、長期的な成功を考えると二の矢(スカイZ)を成功させることが必要だと私は考える。

2026年夏に広島市へ遊びに行ったのだが、広島電鉄乗り場前にCX-5が展示されていたのを目撃した。「広島から走る歓びを世界へ」という言葉がCX-5の成功が広島圏の地域経済にとって重大な関心事であろうことを暗示している。
先代までのCX-5が好きだった人にも新型CX-5が刺さるかどうかはどちらとも言えない。これまでドライに燃費とリセールだけで車を選べないマイノリティ達がCX-5を支持してきた訳だが、新型では質感や独創性が薄れたことで「マツダらしさが足りない」と嘆く意見が出てもおかしくない。しかし、毎日一緒に暮らすからこそ「もうちょっと実用性が」という現実を知ったユーザーには、「そう、これこれ」と気づける愚直な改良もあり、本当にキモとなる部分は安易にコストダウンしていない点は高く評価されるべきだ。
総合評価としては現状★3。苦しい台所事情の中でもマツダらしい誠実さを感じるが、技術的なフックが欲しい。新型CX-5は初代のスカイアクティブDのように市場を驚かせる技術的飛躍もない。しかし、顧客が何を求めているのかを見つめ直したという意味では、むしろ近年のマツダで最も重要な一台かもしれない。令和版萩原課長の最終評価は2027年に登場するスカイアクティブZ搭載車が成功するかどうかによって決まるだろう。

- デザイン
- 3
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●エクステリア:プロポーションが変わってもCX-5に見せる
新型CX-5のデザインコンセプトは、「Wearable Gear(ウェアラブル ギア)」。非日常の演出よりも、日常に重きを置いて人の役に立つSUVであると私は理解した。

全体的なシルエットは変わり映えしないように見える。しかし、実際はホイールベースが115mmも延長されて変わり映えしないのは、そこにデザイン的配慮の効果だ。シルエットを相似形的に拡大させることで、スポーティなスタイルと広い室内空間を両立。つまり、全高も上げて全体的なバランスを取り、Frエンドを50mm厚盛りすることで先代のようなロングノーズ感を維持した。そしてホイールベースを伸ばしながら、Frドアに特徴的なプレスラインを入れることでFrホイールからフェンダー見切りを挟んでFrドアまでの連続面に見せている。結果、全長が伸びたのに錯視効果によって先代に近いプロポーションを醸し出した。
Frエンドは分厚くなった分、グリルが高い位置に上がり力強さを感じさせる。やり過ぎるとCX-5らしくないのでバンパー下部のブラック部分でバランスを取っているが、グリルから両側にウイング上に駆け上がってヘッドライトと繋がり、斜め前から見るとCX-5だとすぐに分かる。

Rrはライセンスガーニッシュを拡大してボディと統合した構成は先代同様だ。バックドアガラス下の張り出した面が見所で立体感がある。ここを板金で作りながら、以下の大部分をライセンスガーニッシュ覆ってしまい再び下端は板金で覆われている。この構造はナンバー灯を目立たせず、板金の成型性を樹脂ガーニッシュがカバーして助けながら連続感のある意匠が実現出来る点がメリットだ。
ボディ四面の車体色面積を黒いモールで減らすことでワイドかつ伸びやかな印象を与えている。マツダは全体的に外連味(けれんみ)の無いシンプルなデザイン案を選択し磨いたという。
ボディカラーは伝統のソウルレッドやマシーングレーを用意しているが、目玉は国内向け新色のネイビーである。反射してキラキラ光るマイカを微細化し、反射の均一性を向上し、マイカの向きを揃いやすくすることで光が当たった時は鮮やかに見え、そうで無い部分の深みが強調して見えるようになるという。セコい話だが、ソウルレッドのようなOPT価格なく選べる点は実際に購入検討している方にはお伝えしておきたい。

このほか、質感表現はクロームメッキやSUSをやめた。ベルトラインやドアフレームも先代ならSUS製だったのに黒樹脂になってしまった。ラジエーターグリルも従来ならメッキが使われるような部分をメタリック調塗装で済ませていたのは少し寂しい感じがした。
●インテリア:引き算の美学(マテリアル含む)
昨今のマツダのインテリアはクラス水準よりも高見えするリッチな素材選びや表面処理が特徴だった。我が家のデミオも未だに競合に負けていないと思わせる高級感に満足している。
新型CX-5は考え方を大きく変えた。加飾による足し算ではなく引き算の高級感という難しいテーマに挑戦したのだ。ステアリングはCX-5が頭出しの新設品でマツダ初の静電スイッチを採用している。

インパネは2トーンカラーの水平基調でドアトリムとの連続感によって拡がりが感じられる点が美しい。水平線がしっかり見えるのでロールが分かり易く車酔いの抑止効果がるという効果も期待できる。また、現代の身だしなみの一つでもある全面液晶メータを採用したことでナビ画面中心の表示など表現の自由度が高まった。(意匠は疑問だが…)
しかし、新型CX-5の内装に関する最大のトピックは超巨大15.6吋センターディスプレイ(最上級以外は12.9吋)の採用である。いままでのマツダは画面のデカさ競争から一歩引いていたのに一気に日本製競合車のトップに躍り出た。マツダには「画面が競合より小さいから」と失注したトラウマ体験でもあるのだろうか?と勘ぐりたくなる豹変ぶりだ。

大画面なら、例えば駐車中のTVの視聴などの場面で後席からでもよく見える。CX-5はさらにオーディオやナビに加え、空調の操作も液晶操作として物理スイッチを廃止した。流行的な観点では進んだが実用性は退化した。実際に試乗中に空調を操作しようとしたが、親指で支えながら人差し指で狙うのが本当に難しい。物理スイッチ廃止で浮かせたコストを使ってマツダは何をしたか?
彼らは空調/オーディオ/ナビを操作できるように音声認識を鍛えた。「OKグーグル、エアコンを22度にして」と話しかければいいらしい。我が家のデミオで声認識精度に苛立った経験を考えれば技術の進化を感じるもが疑問だ。というのも、音声認識は一人で運転するときは使ってもいいが、家族や友達を乗せているときに気恥ずかしい。ましてや子供が寝ていたりすれば、声を出すのもはばかれるシーンだってあるだろう。
人間工学的に真摯に取り組んだマツダにしては随分と割り切って目新しさを追った感がある。ステアリングスイッチがあるとはいえ、日本以上にハイスピードドライビングがある欧州でもこれは受け入れられるのであろうか。個人的には物理スイッチが欲しい。
内装のCMFは基本的に要素を減らした引き算デザイン。ただ、色使いのセンスは未だに衰えておらず、黒を基本にGでホワイト/ブラック(OPT)、Lでスポーツタンが選べる。CX-5はカラーの選択肢が豊富な方であり、好ましい。

素材という意味では残念ながら先代や他のマツダ車と比べて退化した。というのものインパネそのものがカチカチの硬質樹脂(先代はソフトパッド)になった。かろうじて手元に近いパネルはゴムが入った樹脂(堅いが柔らかさを感じる)素材だが、意外とソフトさが欲しい二―パッドは硬質樹脂、ドアトリムのグリップ部も硬質樹脂である。

競合を見渡すとRAV4が大胆に材質を割り切っているが、CX-5も同等以上に割り切っている。手で触れる部位が硬質樹脂というのは触る度にガッカリすることになり、触感こそ大切にすべきだったと私は思う。
来年以降発売されるというスカイアクティブZのために高意匠アイテムは残してあると信じたいが、現状は物足りない。引き算デザインは理解できても、「良いクルマは素材が吟味され、触れた感触も優しいものだ」と既に知っているから不満が残る。ただ、バブル崩壊後の反動で悲しくなるような質感表現を見てきたことを考えれば今の萩原課長たるCX-5が努力していることも認めてあげたい。
マツダの名誉のために擁護しておきたいのは、確かに安い素材を使っているのは事実だがそれによってダサく見えないように配慮はしっかりやれている。その一例がこのドアの縦柱を覆ったブラックアウトテープである。ドアを閉めた際に、黒いガラスランの先に車体色が見えてしまう部位がある。そのチラ見えを防ぐために黒いテープを貼ってブラックアウトしているのだ。CX-5はしっかりと身だしなみにお金を使っている点はプライドを感じた。

●デザイン総評
新型CX-5のデザインは基本諸元が大きく変わったのにCX-5に見えるようにしたテクニックはさすがの実力を感じるものの、CMFでは予算の都合が感じられ、人間工学的に疑問が残る大型ディスプレイや物理スイッチ削減など従来のマツダらしくない選択をしたなと今も疑問に思われてエクステリアは★3.5、インテリアは★2.5である。 総合★3つ。 - 走行性能
- 3
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デミオの修理を待つ間、30分ほどCX-5に自由に乗せてもらえることになった。8年落ち、12万kmをこえたデミオのユーザーは格好の餌食だ(笑)
家族も久しぶりの新型車市場なので興味津々だった。普段のデミオと較べると横方向への広さと超巨大ディスプレイに面食らう。SUVらしい高い視点とボリュームのある内装は明るい配色のお陰で豊かさを感じた。シートベルトを着用した際、ラップアウタがシート付けになっている変更点に気付いた。小柄な人がシートを前にスライドさせてもシートベルトに手が届きやすくなる利点があるのだが、事故時にベルトの荷重を車体では無くシート本体が受けなければならず、シート本体の強度上げる必要がありコストがかかる構造である。ステアリングが正面にレイアウトされた正しいドラポジが取れ、毎日装着するシートベルトの利便性を高めるマツダの真面目さを高く評価したい。

慣れた場所になるスイッチを操作してe-SKYACTIV G2.5を始動した。走り始めて数分で分かるのはCX-5の乗り心地の柔らかさである。近年のマツダ車の中では異例とも言える柔らかさのレベルだが、これはCX-60の乗り心地性能に対する試乗の反応に対するマツダの配慮なのかも知れない。
乗り心地性能の開発では今回のCX-5の開発の中では初めてシャシ分野へMBDが適用されたという。(マツダ技報No.78による)
MBD(モデルベース開発)とは実機・試作機を作らずにシミュレーションを最大限活用して手戻りを減らす開発手法だ。実機検証を減らすと聞いただけでは、工数削減・試作費用削減のためだけの技術であると警戒されかねないが、マツダは少ないリソースを使って複雑なE/Gの燃焼解析をやりこんでスカイアクティブ技術を磨いていった。今回は乗り心地・操縦安定性分野に拡大してMBDを適用したのだが、タイヤからサスペンション、サブフレームやボディを通じてステアリングへ繋がる複雑な系はそれ自体をモデル化することが非常に難しい。そのため、高度な評価技能を持ったテスターによる実車評価が行われてきた。
乗り心地・操縦安定性に適用するにあたり、再現が難しい「人」と、再現可能な「メカ部分」で分離し、メカ部分をMBD化して基本的素性を磨いた上で最後のチューニングを人に委ねることで課題を解決した。実際のモデル化では、非線形特性を線形的に表現、例えばショックアブソーバーの初期減衰と大入力域の特性を机上検討できるように工夫した。
予め、複数の物理モデルを数百回ものパラスタ(パラメータースタディ)計算を行い、最適化計算ソフトmodeFRONTIERによって物理モデルを扱いやすくしたサロゲートモデル(本物の代わりに使う、超高速な近似モデル)を作る。それを使って数千・数万パターンもの計算を行って近似的に解く。予め設定した性能目標に対して答えが無い場合は、どの条件を緩めるのか?あるいはその限界を突破する方法も見いだしておき、その結果を持って関係部署との折衝を行うのである。
MBDによってこうすればやれる、という実際の諸元が分かっているので関係部署とピンポイントで調整できるメリットがある。そしてテスター達も現場で諸元を調整するために、諸元を入力すればサロゲートモデル計算で視覚的に方向性の判断や作り込みの進捗を第三者に説明できるように改めた。
CX-5の場合、コイルスプリングのバネ定数を下げることで目標が達成できると分かったため、バネ定数を下げ、ショックアブソーバーの径を拡大して乗り心地をよくしながら応答性を高める変更を加えた。だから、ふんわりした乗り心地を残しつつダルに感じさせない反応も残せたのだ。
よくあるP/F流用型(共用化率N%達成とかいうヤツ)のFMCではショックアブソーバーの形状変更は敬遠したくなる部分だ。見えない部品は新設せず、チューニング違い程度に留めておいた方が投資が抑えられ、変化点に伴う変更に工数がかからないからである。サイズが拡大すると周辺部品との隙関係も確認しなくてはならず、共用化率が下がってしまう可能性もあるからだ。
しかし、今回の全面改良でショックアブソーバーの外径拡大を行った結果、乗り心地のソフトさは誰が乗っても分かりそうなレベルだ。角が無い乗り心地は私も良さを実感したが、一方で少々内臓が揺すられるような感覚があった事も付け加えておきたい。これが酷いと車酔いの原因にもなるので購入検討者は試乗して確認されたし。
今回の試乗は我が家4人だけの試乗ということで、普通のディーラー試乗よりも長距離を走らせた。
ボディサイズは1860mmと競合と同等の車幅だが、実際に小さく敏捷性が高いデミオから乗り換えると本当に大きさを感じる。途中、取り回しの確認のためにスーパーの駐車場に車を止めたが、U字型ペイントの駐車スペースでなければ本当に乗り降りが億劫になるレベルだった。1800mmを超え、1900mmに向かっていく車幅のトレンドはいつになったら下火になるのか。

乗り降りのし難さは車幅のせいだけでは無く、ドアトリムのグリップが前にあり過ぎることでドア重心に対して力点が不利な位置にあるため、ドアが重いことも理由に挙げられる。そこで肘で直接ドアトリムを押すことになるが、そうすると開きすぎたドアを止める際に掴む位置が重心から遠いので余計に力が必要だ。
昔のようにドアが軽くて小さければ、この位置にグリップがあっても問題は無かったが、現代のSUVの様に天地幅がある大きく重たいドアとなると話は変わってくる。ドアの重さ、ドア締まり性能に対してはドアチェックやウェザーストリップのエアタイトなど複数の要素が絡むが、チェックを軽くし過ぎれば節度感が不足して別の意味でフィーリング悪化を招き、ウェザーストリップに穴を開けてしまうとシール性能が悪化し、自動的にNVも悪化する。グリップの位置を工夫するだけで、現状の諸元のまま狭い駐車場での扱いやすさが向上するはずなのに勿体ないと私は思った。

さて、店舗から一般道に出る際にちょっとした事件があった。狭い道路だったのでステアリングを一杯に切って対向車線にはみ出さないように左折したところ内側になる左後輪を縁石に乗せてしまい焦った。検定中止である。
恐る恐る周囲を確認した。SUVらしくクリアランスが取れているのと真っ直ぐ乗り上げたので最悪のホイール傷などに至らなかったが、大変気を使うボディサイズである事を痛感した。ちなみにCX-5はステアリングがよく切れ、最小回転半径5.6mであるが、ホイールベースも長く内輪差を意識しなければならない。

市街地走行ではドアガラスが分割された三角窓が無いので死角が少なく右左折時の視界がスッキリしている点は高く評価できる。後席も三角窓が廃止されて、風切り音性能にも効果がありそうだ。
静粛性に関してはクラス水準以上の気遣いを感じた。基本的に飛ばさない、緩加速の市街地であれば2.5Lという余裕ある排気量も手伝って余裕がある上に、車外からの音の侵入が小さい。E/Gノイズは2000rpm付近で目立つクセがあるがそこ以外では隔壁感がある。CX-5はドアガラスが5mm程度と厚めの設定になっていることに気付いたが、最近のこのクラスはNVもそれなりに気を使っている車が増えて来ている。その中ではアコースティックドアガラスまでは採用していないが、耳位置に近い場所の高周波ノイズがカットできるドアガラスの効果がよく分かった。

工夫はほかにも見られる。E/Gノイズ対策のためフェンダーサイドの目隠し板には二色成型で作られたリップがついており、E/Gノイズの漏れを塞いでいる。また、カウルからフェンダーのつなぎ部も型成型のシール部材を着けている。或いはルーフとバックドアの継ぎ目で共鳴音対策のためにバックドア側にリップを着けているのも見つけたし、クオーターウィンドゥモールを使ってリップを生やして後席乗員耳元の風切り音にも配慮していた。
ブレーキは踏力で調整できるタイプでペダルは重めだがコントロールがし易い。停止直前の抜きが気持ちよく決まる。Mハイブリッドには回生機能があり、摩擦ブレーキの損失エネルギーの8割を回収できるとマツダはコメントしているが上手に協調させている。
(乗り心地項へ続く) - 乗り心地
- 4
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(走行性能の続き)
短時間ながら高速道路を走らせた。ランプウェイを駆け上がり本線へ。ここぞとばかり全開加速させてみたが高回転域になるとE/Gの乾いた音が車内に響いてきた。回転が上がった時の音質は乾いた感じであまり心地よい音質ではない。ずっと聞いていたい感じではないが、この感じ・・・・トヨタの2.5Lにそっくりなのだ。マツダもトヨタ流の高速燃焼を取り入れたのだろうか。それでも防音材の使い方なのかRAV4やハリアーよりも静かだと感じる。
100km/h時の回転数は6速で2013rpm(計算値)だ。同じ2.5Lで私が共同所有するプログレ(4速AT)なら2500rpm程度なので6速の有り難みは感じられるものの、2026年のクラス水準では少し高めの回転数だ。もちろん、低ければ低いほど良いとは言わないが、例えば同セグメントの1.8Lターボのフォレスター(CVT)は1650rpmだ。クルーズ時によく使う車速域とうるさく感じる領域が少しラップしているが、高速域ではロードノイズのお陰で多少は紛れてくれる。

高速道路といえども良路ばかりとは限らない。橋の継ぎ目や荒れた路面を走らせた時にCX-5の良さは輝く。アダプティブクルーズコントロールに身を任せてゆっくり目で流すなら、まさにサルーン感覚という感じが楽しめる。追い越し加速を試みたが、フルスロットル加速ではやはりE/Gノイズが気になってしまったが、このあたりは「プレミアム志向のノンプレミアム」ゆえに求めてはいけないのだろう。
初代はスカイアクティブ技術を投入したディーゼルE/Gがイメージリーダーだった。低圧縮比による軽快さを持ちながら、厳しい排ガス規制を後処理装置無しでクリアすることで安価にディーゼルが持つ高トルクと低燃費な走りを日本に紹介した。一方、ガソリン車もレギュラーガソリン仕様ながら直噴化技術で13という超高圧縮比を実現。
ノッキングさせないために4-2-1排気管を採用し、排ガスの抜けをよくすることで燃焼室の冷却性を向上させ、排気脈動を使った掃気効果により充填効率も上げていた。長々と書いたが、初代CX-5のガソリンE/Gは当時流行したダウンサイジングターボとは違うアプローチで経済性と性能を両立した力作だったが、インパクトという意味ではディーゼルには適わなかった。CX-5はノンプレミアムながらディーゼルの先進性で強烈な個性を補っていたのだ。
私自身、初代CX-5のデビュー直後に試乗した際は営業マンが慎重に「まずガソリンから乗ってみて下さい」と言われてガソリン車の気持ち良さとダイレクト感のある6速ATの走りに感銘を受けたのだ。ところが次の乗ったディーゼル車の走りに一発でノックアウトされてしまった。今のBEVと比べれば大したことは無いがガソリン車の2倍もの大トルクでそれまでのガソリン車への感想が押し流されてしまうようだった。
その意味で、今回試乗したMハイブリッド2.5Lからは魅力的な猛々しさまでは持っていないこともハッキリ感じ取った。ディーゼル車の圧倒的なパフォーマンスでターゲットを惹き付けておいて、控えめながら優れた実用性を持つガソリン車による不足感の無い走りでガッチリ逃さなかった初代CX-5を思うと、新型CX-5にはガソリン車はあるがディーゼル車に相当するキャラクターが不足しているという事を試乗でも痛感した。
新型は178ps/24.2Nmという2.5Lとしては少し控えめなスペックながら1710kgの車体を動かすには充分なトルクを持っている。ISGを使ったマイルドハイブリッドや可変気筒などを用いた複雑さを持ちながら、乗り味としてはシンプルで分かり易い。ちょっと加速時に高まるE/Gノイズが気になるというレベルである。

E/Gコンパートメントをチェックすると、初代だとブルーメタリックに塗られていたE/Gカバーは、真っ黒な素地にコストダウンされていた。E/Gの存在が古臭く、アピールできる時代では無くなった寂しさを感じるのだが、E/Gそのものをカバーで覆うようなCX-60程のNV対策は行われていないようで、加速時だけ目立つE/Gノイズがもう少し緩和されると更にアクセルを踏んでも気にならず好ましいのだが。
しかしながら、新型CX-5は便利で快適なSUVという本質はしっかり磨かれている。特に同乗者からすればソフトな乗り心地で室内も広く、パノラマルーフで空を眺めたり、超巨大ディスプレイで動画を楽しんだり、BOSEサウンドシステムで音楽を楽しんだり。そして、ドライバー目線でもスポーティというよりコンフォート寄りの味付けなので
普通に走っているだけで「もう、運転荒いよ!」と怒られることは無くなった。
走行性能の総評としては、新型CX-5は決して悪い車では無い。コンセプトに忠実であり破綻も感じられない。純粋に運転体験としてはハイブリッドでありがちな動力源が変わる際の違和感もCX-5には起こりようがなく悪くないのだが、かつてのディーゼル車にあったスパイスが足りないかと問われれば、残念だがその通りだ。また、ちょっと発進時の飛び出し感が強いと思ったのと、E/Gノイズが局所的に目立つ回転域があり、そこさえもう少し対策できればパンチは無いけど静かで扱いやすいと言えるのになと思う。
いちユーザーの一人としてディーゼルの復活を願いたいが、マツダはスカイアクティブZ(フルハイブリッド)を来年準備しているらしく、CX-5にマツダらしい+αを求める人はそちらを選ぶだろう。
今のMハイブリッドは、従来なら2.0Lガソリン車を選んできたようなユーザーにこそ相応しいと思う。短距離走行メインでハイブリッドやディーゼルのメリットが出にくい層(実は多数派ではないだろうか?)のためのアフォーダブルな受け皿としてフォレスターと共に貴重な存在だ。また、本文で触れなかったが全車との車間距離を自動で開ける(勝手に減速する)PDAがCX-5にも装備されており、私はカットして試乗している事は忘れず書き残しておきたい。
走行性能は★3、乗り心地は★4。 - 積載性
- 4
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●明確に良くなった居住性
新型CX-5はホイールベースを115mmも延長して荷室と後席の余裕を確保した。この115mmという規模感はマツダで言えば、コンパクトハッチバックのファミリアネオ(2505mm)がミドルセダン萩原課長のカペラ(2610mm)になるほどのレベルだと言えば伝わるだろうか。デザイン的に変わったように見せていないだけで、実際に乗り込んでみれば明らかな差がある。
身長165cmの私が先代CX-5の後席に座った時に、狭いと感じた事は無かった。私が短足だから、とか普段乗っている車がコンパクトカーだからという事もあるだろうが、一般的にヒールヒップ段差が適切でアップライトに座らせるSUVはレッグルームがセダンほど無くても気持ちよく座れる傾向にあるからだ。CX-5の場合、過度にボディサイズを変えてこなかったのでクラス水準では全長も短めで、その分カタログ値としての広さや荷室容量ではライバルの後塵を拝していたのだ。

新型の後席は、明らかに広い。私などは少し前席が遠すぎると思う程のプチリムジン感覚である。
そして先代でも実現していた健全な着座姿勢も維持されており、パッと乗っただけで充分に進化が理解できる広さになっている。CX-60ではフロアの高さが気になったが、旧世代P/Fの残り幅ではないか?
背もたれ角度も適切でサイサポートも充分にあるため、好ましい。多段リクライニングやスライド機構を持つエクストレイルやCR-Vよりもシンプルな機構の割に気持ちよく座れるのでは無いかと思う。

マツダによれば、ニールームが64mm広くなったお陰で機内持ち込みサイズのキャリーケースがそのまま置けるほどのレッグスペースを実現しているのだそうだ。これなら脚も組めるし、チャイルドシートを取り付けても子供に前席のシートバックを蹴られる心配もほとんど無い。Rrリクライニングは二段階の簡易タイプになっているが、実用上それが大きく不便というわけでもない。大きく倒れた方が仮眠には便利だが、本格的なリクライニングをさせるにはシート本体を補強しなくてはならず、重く複雑になってしまう。我が家の場合はまだCRS(チャイルドシート)、ジュニアシートを二脚搭載するのでこれで充分である。CRSといえば、CX-5はドアが90度近く開くのでCRSの載せ降ろしが非常に楽だと言うことも付け加えておきたい。実際の子供の乗せ降ろしは、SUVのため床が高く、小学生の息子は自力で乗り込めたが6歳の娘は抱っこで車に乗せた。
後席にはカップホルダーやUSB端子、A/C吹出し口もあって充実しており、広さと合わせて質的にも大人の使用に耐えうる後席になっている。試乗した際は、後席から非常に好意的なコメントが寄せられているから、この広さは子供達にも分かるようだ。気になる点としてはドアのグリップが前席同様遠いことと、ドアトリム上部が硬質樹脂のままで、RAV4のようにソフト材では無い点が気になった。この部位は子供の乗せ降ろしなどで傷が付きやすい部位でありソフトだと有り難い部位である。

前席は先代同様にステアリング軸が着座した身体の真ん中に来るように配置され、ペダルレイアウトもキレイに置かれている。運転するだけで身体を捻らないと行けないモデルが多数存在する中で、これだけでも他社の同クラス競合車に対してアドバンテージを維持している。例えばフォレスターはステアリングポストが上を向きすぎていると感じたし、RAV4もステアリング軸が着座位置に対してズレている事が違和感だった。各部を少しずつ我慢させることでパッケージを成立させることは自動車では良くある事だが、マツダは運転姿勢だけはエゴイスティックと呼べるほどこだわりを持ってキレイに座らせていることは昔からよく知られている。さらに新型ではベルトのラップアウタがシート付けになったことでシートを前寄りにスライドさせてもシートベルトを着用しやすくなっている点が進化している。

運転席周りはスッキリした水平基調のインパネが目立つが、収納も抜かりない。センターコンソールは左右どちらからも開けられるようにリッドが中央で二分割されている。またグレード別装備だがグローブボックスでは内部に照明がつく。携帯は置くだけ充電のトレイに放り込めるし、カップホルダーもシフト操作を邪魔しない場所にある。
また、CX-5としては初めて採用されたパノラマルーフによって室内は更に明るく広さを感じる。これまた子供からのウケが大変良かった。実際、私も手回し式ムーンルーフ付きの車に乗っていた時はシェードを開けて明かりを車内に取り込んでいたので気持ちはよく分かる。
CX-5のパノラマルーフはルーフの全幅がガラスになるタイプでは無く、ルーフの中央部に穴が開けられてそこにガラスがはまり込むタイプが採用されている。外から見た時に全幅がガラスになってる方がスタイリッシュに見えるものの、くり抜き型の方がルーフパネルを一つの金型の中で抜き分けて製造できるため型投資額が安くなることと、単純にパノラマルールのシステムが小型に作れることで軽くて安いというメリットもある。作る側の視点になれば、全幅タイプは車外側から組み付けるが、くり抜き型は室内側からユニットを組み付けることになる。室外付け、室内付けとして分類しても良いかもしれない。いずれにせよCX-5は室内付けが採用され、開放感と共にコストと質量のバランスも取ったと考えられる。
●ベビーカーが縦に積めるラゲージ

ラゲージも先代と比べ拡大された。ローディングハイトは727mmで18mm下げて重量物の積み下ろし性を向上させた。絶対値としては高めだが、ローディングハイトを闇雲に下げるとねじり変形に対して弱くなり操縦安定性に影響が出ることもある。また、スタイリング上もバンパー見切りが下がるとその分バックドアが厚ぼったくなってバランスが悪くなることもあり、CX-5の場合は高めだが、その中でも先代よりはレベルを上げたという感じだ。
荷室容量はVDA法で466Lと先代より+43L向上した。このクラスともなると荷室も相当実用的なサイズがあり、ベビーカーを縦向きに積んだ上で旅行カバンを積むこともできる。また、デッキサイドのレバー操作で後席シートをワンタッチで倒せば車中泊もできるデッキサイズがある。また、私が注目したのはデッキサイドが硬質樹脂ではなく
カーペット素材で覆われており、Rrから抜けてくるノイズ対策だけで無く荷物によってデッキサイドトリム自身が傷つかない、或いは荷物を優しく覆うという意味で必要な場所にしっかりコストがかけら得ていると感じた。
新型CX-5の居住性や荷室は高く評価できる。運転姿勢はきちんと取れる上にパッセンジャーから不満が出るような窮屈さも無く、ワガママに荷物が積み込める点は競合と較べても高いトータルバランスを見せている。 - 燃費
- 2
-
●敢えてプチ電動化に留めるマツダ
日本市場では純然たるガソリン車がどんどん減っている。このままBEVシフトに突き進むかと思いきや日本では純ガソリン車をHEV化するプチBEVシフトが進んでいる。欧州や中国では国策でBEVシフトが進められたが日本ではユーザーの選択に委ねられている。現在でもBEVには130万円もの補助金が支払われているものの、BEVが主導権を握れていないのはBEVを取り巻く環境もあるが、主に「ユーザーの選択」の結果だと考えられる。
日本ではBEVに対して真剣にやっていないという批判や海外よりも遅れている、というオールドメディアのバッシングもあったが結局、いまの日本はHEV止まりである。
その中でマツダは当初から内燃機関寄りの自動車メーカーだった。スカイアクティブの思想として
内燃機関の効率を限界まで高めたうえで電動化に着手した方が最小限の投資で電動化にたどり着けると説いていた。マツダの企業規模では内燃機関の開発を止めてBEVのみの会社に移行するくらいの覚悟を持たないと他車に伍したBEVを作ることも難しかっただろうが現実的ではない。事実、BEVのリーディングメーカーを自認する他社でも強力な海外との競争に負けて再び内燃機関を使う方向性に収束しているくらいなので、マツダは当面需要がなくならない内燃機関を磨いて時間を稼ぐ作戦は現実的だった。
その意味で新型CX-5もまた電動化E/Gのみとなったが、それでもISG(モーター機能付き発電機)によるマイルドハイブリッドにとどまる。モーターのスペックは4kW(5.4PS)/60.5Nmと控えめだが24V電源で駆動され、発進時のアシストをするものの燃費というよりもE/Gでは仕方のないレスポンスの遅れを補うために瞬間的に使っているという。モーターは主に減速時の回生のために使い、0.24kWhの24V Liイオン電池に充電される。マツダによれば減速時に捨てているエネルギーの8割を回収できるとしているがその電気はアイドリングストップ時の電力や発進時に使われる。これにより普段の走行中のオルタネーターの発電抵抗を減らすことができるという理屈である。かつてはi-ELOOPというキャパシターを使った回生システムを持っていたが、それと比べれば容量の大きい電池を持ち、発進時のアシストを行う点が異なる。
更に可変気筒という技術を使っている。1981年のキャディラックが世界に先駆けて採用し、日本では1982年の三菱ミラージュ(MD)で実用化された機構である。排気量が大きい車の場合、高速道路巡航時などほとんどその実力を使わない場面では気筒休止を行い、排気量を実質的に下げてしまう。残った気筒は負荷が高くなるが、その分しっかりパワーを発揮させることで効率を上げる。追い越し加速など車両側が必要と判断したときには休止している気筒を復活させて排気量なりのパワーを使うという考え方である。当時は切り替え時のショックや温度差によるオイルスラッジの増加などの問題と、思ったより燃費が伸びないという費用対効果に見合わないとされて一般化されなかった技術だが、新型CX-5ではISGとの組み合わせにより休止からの復帰時のショックを和らげるなどの工夫がある。
80km/h程度で低負荷時には2気筒(つまり1250cc)になっていると言うが、恥ずかしながらその境目を見破ることはできなかった。
前置きが長くなったが、CX-5のWLTCモード燃費は14.2km/L~15.2km/Lということで2.5LのSUVと考えれば破格と言えるのではないか。前置きで示したような種々の工夫の積み重ねなのだろう。
●もう少し伸びて欲しい試乗時燃費

さて、短時間ながら我が家が試乗した際の燃費は燃費計ベースで9.6km/Lだった。30分強試乗した結果に過ぎないので所有して共に暮らしている人の実態と異なる可能性はあれども、私は思ったより悪いと思った。
カタログ値はあくまでも参考とはいえ、達成率は63.2%と高くない。私の過去の経験から最近のクルマはカタログ値の8割くらいは走る感覚からすると12.2km/L位は期待したい。盆や年末年始の帰省などの長距離移動では燃費は伸びそうだ。重い車というのは加減速が少ないこういった場面の方が燃費的に伸びるからだ。高速モード燃費は17.2km/Lとあるのでそれくらい出れば御の字だ。
燃料タンクは56Lなので
13.76km/L(8掛け)×50L(警告灯が点くまで)=688km
と想定される航続距離的には十分納得できるレベルは確保されている。
私の実家では奈良から埼玉に帰省していたので実際に600km程度走っており、高額な高速道路のSAで給油せず辿り着ければ大変ありがたい。
実際に所有した人は近所のちょい乗りの様なシチュエーションではセカンドカーの軽に乗った方がいいかなと思える。このクラスのハイブリッド車たちは概ね20km/L前後走り、国産ブランド同クラスでは貴重な純ガソリン車のフォレスターも12.7km/L程度は出ている事を考えると、もう少し伸びてほしい感もある。しかし、私が普段乗ってるRAV4も2LのMTなのに同等の燃費なのでまぁ耐えられないというレベルでもないが・・・。

今後出るスカイアクティブZはリッター20km/Lの水準に載せられるだろうか。競合車を見回すとその水準にないと競争力が足りないという評価を下されるだろう。競合車と戦える燃費を確保したうえで走りの楽しさやフィーリングの自然さがあるか、もしくは競合を超える様な低燃費を実現してカタログ値で戦うのか。
スカイXで期待を煽り過ぎた失敗から今回はほとんど情報を出してこない。TVKの「クルマで行こう」の中ではスカイZはガソリンとディーゼルの良いとこ取りです、という開発責任者のコメントもあったがそれすらスカイXと類似しており心配になってしまう私がいる。
いまのCX-5を評価するなら★2.4
この排気量のマイルドハイブリッドであり、車重を考えれば健闘しているが、このクラスのSUVとしては競合性で疑問が残る(カタログ値程度には伸びてほしい)。 - 価格
- 4
-
●価格設定も競争力のひとつ
新型CX-5の目玉の一つは価格設定だ。下記に示した通り、330万円という開始価格はマイルドハイブリッド車とはいえ、このクラスのSUVの中では破格のプライスである。例えばフォレスターは385万円、エクストレイルが409.2万円、RAV4が450万円という開始価格の中では明確に安い価格設定はそれだけでも特徴になっている。

その特徴はユニット系が2.5Lの6速AT一本でFF/4WDが等しく選べることと、グレード体系が整理されて上級からL/G/Sという3種類に整理されている事が挙げられる。
従来は2Lのガソリン車は20S系と呼ばれ、ディーゼルはXDと呼ばれ、さらに安全装備を充実させた特別仕様のプロアクティブなど様々な仕様があることでユーザー目線で選びにくいものになっていたとマツダは分析した様で全面改良を機に見直した。
最廉価のSは外観上17吋ALホイールが特徴で内装は本革ステアリングや全面液晶メーターや12.9吋のディスプレイや8スピーカーオーディオが備わるので実用上、買わせない!というほどの嫌らしさが無いのが取り柄である。アルミホイールさえヤフオクで新車外し品のマツダ純正アルミホイールでも履かせればそれっぽく乗れてしまう。
中間のGは分かり易い最量販(狙い)グレードである。外観上はシグネチャーLEDランプと切削19吋ALホイールやルーフレールが備わるので見た目がグッとSUVらしくなる。
内装はシート生地が合皮のコンビシートとなり、運転席はパワーシートとなって、パワーリフトゲートやヘッドアップディスプレイが備わることで
グッと現代的な装備水準に上がる。リバース連動ドアミラーやシートバックポケットなど地味ながら便利な装備も備わる。
Sからの価格差は22万円。ざっくり見積もって17→19吋化(11万円相当)、ルーフレール(3.3万相当)、パワーシート(5.5万円相当)、パワーリフトゲート(7.7万相当)、ヘッドアップディスプレイ(2.2万相当)で29.7万円分の装備が追加されている事からも追加内容が魅力的であればお買い得感がある。
また、GではEXパッケージというセットオプションが選択できる。(22.8万円)
・ホワイト/ブラック内装(4.4万円相当)
・安全装備充実(ハンズオフアシストなど7.8万円相当)
・助手席パワーシート(1.7万円相当)
・BOSEサウンドシステム(7.7万円相当)
・アラーム(2.1万円相当)
・Rrシートヒーター(2.5万円相当)
・RrLEDマップランプ+USB端子+グローブボックス内照明(1.1万円相当)
ほか
20.4万円相当+内装色変更料(4.4万円)=24.8万円相当
価格が分かるものだけでも2万円お得な設定になっている。しかし、実は内装色変更は部品の原価自体は色が変わるだけでベースとさほど変わらない。作業工賃がかかるかと言えば、組み立て工場で最初から違う色の部品を組み付けるだけで済むから。もちろん、部品種類が増えることで部品置き場や識別手段が必要になるのだが、それらは表に出るコストではない。つまり、4.4万円はマツダにとっては相当利益率が高いと思われるオプション費用じゃないか?と私は思う。これが、合皮巻き表皮に変わるなど材質変更を伴えば理解もできるが、実質的に20.4万円の装備を22.8万円で買うのだからマツダにとっては是非とも選ばせたい仕様のはずだ。
ちょっと擁護しておくとホワイトを目を引く一方で汚れやすい部位は黒にしてあるのは、2010年代からホワイト内装を積極的に取り入れてきたマツダらしい工夫であり、ついつい選びたくなる魅力はちゃんとある。
最後の最上級Lは内装色以外のEXパッケージ相当(20.4万円相当)の内容が全載せになるほか、アダプティブハイビーム(4.4万円相当)が追加され、アルミホイール(2.2万円)のブラック塗装、モール類のブラック塗装仕様(約2.2万円)になる。幾分かスポーティに見せる変更点だ。
またシートがメモリー機能付きレザーシート(15.4万円相当)となる。さらにセンターディスプレイが15.6吋の大型に変わる(8.1万円相当)。前席のシートベンチレーション、パドルシフト(2.2万円相当)やアンビエントランプ(約1.7万円相当)が備わる。
Gと比べて価格が分かる分だけでも56.6万円分の装備が追加されるので、55万円という価格差は適正な範囲であると言える。
メーカーオプションは、4.4万円で内装色をスポーツタンに変更できるほか、パノラマサンルーフ(11万円)がある。内装色の色替えに関してはGのEXパッケージと同じく、少々割高感のあるオプションであるが、真っ黒な内装は殺風景なので、ついつい選びたくなってしまう悩ましさがある。デミオを新車で買ったときは本革内装の中で2色の中から好きな色を無料で選べたが、新型CX-5は高見えする内装色は高い、という少々世知辛い価格設定になってしまった。レクサスだって内装色は無料で選べるのに・・・・。
このように装備品を細かく分析していくと、お買い得グレードは標準のG、もしくはLだと考えられる。初動で最も人気があったのはLとのことだが、最初に最上級グレードが選ばれる傾向はどの車にでもあり、今後はそのお買い得さからGも増えてくるのではないかと考えられる。
個人的としては田舎暮らしで道路が暗いのでアダプティブハイビームが必要なため、Lを選ぶことになるが、外装のテイストはGの方が好きである。(何でもかんでもカラードというのがあまり好きではない)
私が友人にCX-5を薦めるなら、敢えてGを選んでおいて追加費用無しで買える新色のネイビー辺りを選びたい。残価を考えるとLのロジウムホワイトにパノラマルーフ載せあたりがディーラー的お薦めになるのだろう。しかし、せっかくお買い得価格が特徴なのだから、上手なグレード選びを行いたい。
価格競争力は高い ★4.25を進呈したい。 Gに対してもう少しオプション設定の柔軟性が欲しい。EXのセット内容をもう一つくらいに分割しても良いと思う。またアダプティブハイビームは地方在住者にとっては安全性に大きく寄与するのでMOPでも良いので設定して欲しい。 - 故障経験
-
ここでは余興がてらリセールについての思考実験と簡単な未来予想を行いたい。
●燃費とリセールで負けてもCX-5を選ぶ理由
このクラスを代表するベストセラーはRAV4であり8月度も4500台近く売っている。RAV4の特徴と言えばHEVの圧倒的な低燃費と長年の信頼が生むリセールバリューの高さである。一方で新型CX-5は圧倒的な価格と装備のバランスや実用性が特徴である。そこで燃費性能とリセールバリューの差を金額で計算して比較した。条件はどちらもハイブリッド車のCX-5 L(4WD)と RAV4 Z(4WD)である。
まず、5年間保有(年間走行距離1万km)、5年後のリセールを基に5年間のトータルコストを比較した。同じ排気量、近接したタイヤサイズのため、各種税金や消耗品の経費は大きく変わらないであると仮定して計算からは省いた。故障修理に関しては5年間の間はどちらも特別保証期間内であり、修理費はかからないものとする。

新車価格ではCX-5が安いが、燃費とリセールバリューの良さで逆転し、5年後のトータルではRAV4が37万円以上安い計算になる。カーマニアではない一般人の方がリセールや燃費を気にする理由が計算してみればすぐにわかる。冷静かつ定量的に金のかからないクルマとは「燃費が良くてリセールの良いクルマ」ということになる。(勿論、減税適用されたり、税金が安かったり消耗品が安いなどの条件も存在する)
しかし、よほど新しい物好きでない方や気に入ったクルマと長く暮らす(長期保有)となると話は別である。例えば10年間保有ではリセールの差が小さくなるので車両本体価格差が効いてくるのである。

10年後の総経費で比較するとCX-5 LはRAV4 Zを逆転こそできないものの3.5万円差に縮まる。今の乗用車は保有期間が延びている傾向にあるが、長く乗るスタイルの人にはCX-5の様な車もハイブリッド車と同等の維持費になるということだ。
この5年残価率は、中古車として人気がある方が高くなる傾向にあるので、趣味性が高い車やSUVは高い傾向にある。また、工業製品としての信頼性やブランド力も関係しているのだが、CX-5はマツダの中では残価率が高いモデルであるため、今回の試算ではRAV4と善戦している。しかし、かつてのマツダはマツダ地獄(知らない方はネットで調べてみて欲しい)と呼ばれるほどリセールバリューが低く、5年残価率も他車よりも低めだった。
1994年時点の4年残価率と2005年、2026年現在の5年残価率を比較した。('94/'05残価率は月刊自家用車の記載内容を元に計算し、'26年残価率はガリバー公式サイトの値を使用した。厳密な比較では無いが傾向は分かる)

表から分かるのは、1994年時点のトヨタとマツダの残価率の差は大きいが2026年の差異は小さくなっている事実だ。マツダの残価率が上がった理由の一つは過度な値引き販売を改め、商品力強化に努めた結果である。リセールバリューを維持すると言うことは燃費競争や価格競争と同じくらい大切なことなのである。
例えば2000年式トリビュートは5年残価29%だったが、2026年式CX-5では5年残価率は55%にまで向上している。これは1994年時点のマツダのリセールバリューを知る当時の人たちには信じがたい数値であろう。勿論、中古車市場のタマ不足やらSUV人気の影響もあるが、2010年頃から続くマツダの商品力強化と上述の販売政策の変更の効果もあったと私は考える。
●スカイアクティブZをいくらで販売すべきか?
先ほどまでの思考実験はマイルドハイブリッドのCX-5とストロングハイブリッドのRAV4を維持費で比較していた。2027年には、スカイアクティブZなる新E/Gがストロングハイブリッド仕様として発売することがアナウンスされている。
先ほどまでの結果を考え、マツダが5年残価でRAV4と肩を並べるためにはいくらで販売しないといけないのかを考えてみたのでお付き合い願いたい。
ざっくりだが、一般的なE/G車をフルハイブリッド化すると+30万円程度は高額になる。スカイXの時は68万円も高くしてしまって我々を驚かせたが、さすがに同じことはやらないだろう。そこでスカイZ上級仕様のFF車の価格をL(407万円)+50万円=457万円と仮定する。(実際にはもっと高そうだが)
燃費はストロングハイブリッドを名乗る後発ゆえ、このクラスのSUVとは言えどもWLTCモードで20km/L程度は走らないと競争力が保てない。マツダの中でもマニア層をターゲットにした車では無いので大きく遜色の無い燃費性能を謳う必要があると私は考える。残価率はハイブリッドによって上がることを期待したいが、初物技術のため厳しめに据え置くと、5年後の総経費でRAV4の12.5万円高となった。
つまり、5年後の経費をRAV4とトントンにするためには
本体価格を429万円に引き下げる(マツダにとって自殺行為)か、燃費を28.4km/Lまで引き上げる(このクラスでこの性能は現状は無理)か、
或いは残価率を58.1%まで改善する(すぐに効果が出ない)しかない。
残価設定型ローンに限り残価率を高めに設定するという販売政策もアリだが、最もありそうな作戦は「RAV4よりもデザインが優れている、走りの質感が高い、運転が楽しい」という金額に表れない価値に訴えかけることである。

私が予想したスカイZの上級仕様(仮にZLと呼ぶ)の457万円は競合車とバッティングし、比較されやすい価格設定だ。できれば、G相当+αの装備内容を持つZG(仮称)を430万円くらいで用意してもらいたい。現状の新型CX-5も先代までの表層的な豪華さは無いものの、必要な部分が改良され、必要なところにはコストがかけられていると感じる。その事をしっかり見込み客に説明し、納得してもらえるようなセールス活動が求められるだろう。かつて私が指摘したようなマツダの紙カタログのようにイメージ先行の抽象的なアピールでは説明不足で弱い。しっかりと内容の良さを説明した上でスカイZには、例えば欧州向けのアコースティックドアガラスを設定してNVのレベルを格上げするとか、内外装の加飾を増やしてマイルドハイブリッドで弱点だと感じたCMFを改善するといった手段を考えて欲しい。コダワリのある技術を語りつつ、顧客に分かる燃費以外の実利を用意しないと同じ土俵で競合と血で血を洗う戦いになってしまう。そういった情緒に訴えかけて行かないと、「RAV4の方がお得かも」という定量評価の結果に流されてしまうかもしれない。

これはCX-5の価格設定の時代進化を示す。こうしてみるとCX-5は比較的穏やかな上昇トレンドになっており、買う側からすればありがたい。新型は値上げしているが、競合車よりも割安だったためそれが悪目立ちしなかったこともマツダにとっては良かった。しかし、こうしてみると、マツダ自信がラージ系で利益を求めに行きたくなってしまう理由も分からないではない。CX-5はお買い得な車として知られているから、価格を上げにくいだろうから、ラージ系が必要だったのだろう。
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