去年の秋頃、八王子市内の某林道。
厳密には林道の本線から分かれた支線の林道の一つという感じ。
都内林道制圧を目指し、今回は八王子市内を中心に色々と回っていた所。
自分のは事前リサーチ無しに、街道沿いからっぽい道の入り口を見つけて手当たり次第に入っていく手法でやっていた。
お昼下がり。
おてんとさんはそろそろ沈む準備をするかしないか位の時だった。
「おー、ここもぽいねぇ」ズンズンと林道を進んでいく。
すると進んだ先でまた道がいくつか分かれているのに気づいた。
それぞれ林道の名称が付いてて、あーいわゆる支線の林道みたいなものかな?と察し。
ただ3,4本位生えてるうち2,3本が封鎖されていた。
最近どうもなんの理由も無くやたらめったらに林道を封鎖してるような傾向を感じてならない自分にとって、この行った先封鎖の悲しさよ。
もうっ!( *`ω´)
ってな訳で残り一つの封鎖が無かった道に入って行った。
3,400m走って行くと、目の前の道を土砂崩れが遮っていた。
せっかく奥まで入って、こんなそんな、、、
普通の冷静なジムニストは(多少冷静じゃなくても)、ここで仕方無しと引き返すのが普通でしょうが。
なんせ若気の類。
「ジムニーに走れぬ道はない!」「土砂の上を登って行けるっしょ」と謎の判断。
それに普通なら、一度車を降りて足で確認するとかするものを、そこまま突っ込み。
後で降りて分かったんですが、土砂ってのはズルズル滑って来るから土砂なんですよね〜。
おまけに、履いてるのはノーマルのつるてか禿げチャビンのうんこタイヤ。
その結果!
最初は上手い具合に土砂を登って行くジムニー。
所が、土砂の頂点に届いた瞬間!
、、、ズズズズ、ズザァー!
わぁ〜流れる〜!
土砂ごと崖に目掛けて流れ出す!
慌ててジムニーを前へ後ろへ動かす度にジムニーは流れてゆく。
そして遂に左側前後が崖から落ちてしまった、、、。
もはやバックしても進んでもそのまま。
この瞬間、圧倒的な絶望と後悔に包まれる。
崖は数秒から数分毎にズズ、ズズ、と崩れて行く。
車内では少しでも動くとまた崖が崩れる音が聞こえる。
自分は車でここを抜け出す方法から、自分自身が車から逃げ出す方法を考える事に切り替えた。
が、それも僅かな一時。
自分はそれも考えをやめた。
自分が少しでも動けば崖は崩れる、動かなくても時間が経てばジムニーごと落っこちる。
既に(自分の目線からは)垂直な感覚、助手席から下を見てみる。
眼下、感覚的に50mはありそうな、(実際は多分20〜30m)崖の下には小川が流れてる。
自分は察した。
「これは、死ぬな」
動いても落ちるし、何もしなくても落ちる。
そしてこの高さなら、確実に死ぬ。
自分は抜け出す方法から、終活に切り替えた。
つまり死んだ後はどうすべきか、という事だ。
まず、死んだ後、自分の遺体は外から容易に引っ張り出せるようにしなければならない。
つまり、シートベルトは外した方が良いだろう。(カチッ
それから落ちた衝撃で車内がとっちらかるよりまとまっていた方が良いだろう。
尚且つ、自分の身体自体が衝撃で変形したり、潰れたりした時に、他の備品が汚れちゃならない。
ましてやこの山の中。
行方不明になってから発見されるまでどれくらいか時間が掛かるだろう。
とか考えながら色々やっていざ、よし、これでおけ!
あとは瞑想にふけながら落ちるのを待つだけ、、、
所がいつまで待っても車が動かない。
落ちていかない。
試しに若干車を揺らしてみたけど落ちない。
これはもしかして、セーフ??
そこでゆっくりとドアを開けて外へ出る。
あれ、落ちなかった、死ななかったのか、、、、。
一気に脱力。
自分は改めて車を見てみた。
見ると危機一髪、車は崖っぷちでどうも車下のデフ周りが上手い具合に引っかかってこれ以上落ちなくなってたらしい。
おまけに崖縁に生えてる木のお陰もあり、それらが上手い具合で引っ掛かってそれ以上落ちなくなっていた。
おっと、脱力してる暇はない。
えーどうしようか、、、。
先ずは、警察に連絡。
とはいえ山中の林道で携帯は圏外で繋がるはずもなく、そこから麓まで歩いて行き、連絡。
林道の一角と伝えたものの、立派なクラウンセダンが二台体制で来られたお陰で林道入り口で四苦八苦。
その後警察救助隊の人も来て、10人以上体制でジムニー引き上げ作業を行いました。
普段は多分市街地周辺を主にパトロールしてるはずで、こんな山の中は林道アタックで見慣れた自分とは違い、警官の皆さんは新鮮な様で。
「小川綺麗だなぁ〜、、、」とか、ノーヘルの原付が麓をビーンと走ってるのを見て「平和だなぁ〜笑」と呟きながら作業開始。
所が作業は初っ端から難航。
ロープを山側の木にかけて手前で人海戦術で引き上げる方法でやりましたが、思いの外重すぎて引き上がっていかず。
若い警官と屈強な警官が集まって器具をグイグイやりますが、これでは時間だけが掛かってしまう為に不能と判断。
麓まで一度降り、素直にレッカーを呼ぶ事に。
レッカーは資材が足りないので後日という事に。
帰りは近くの高尾駅までパトカーで送ってもらう事になった。
その中で色々と会話。
警「なんであんな所行ったの〜?」
僕「いやー、まぁ趣味の一種でして、、、」
警「一応訊くけど、自殺とかじゃないよね?」
僕「(死ぬとは思ったけど)勿論違いますよ」
警「死ぬ為に山の中入る人とかいるからね」
なるほど、、、
警「まぁああいう所自分らさえも行きたくないから、気をつけてね〜」
僕「あ、はい。すいやせん、、、」
警「でも運良かったね〜。あれ落ちてたら」
僕「いや〜、死んでましたね。多分」
それから高尾駅で京王線を乗り継ぎながら帰りました。
後日、レッカー代はある特殊作業が多くを占めるため、10万はまず超えるだろうという話が。
所が、どうもレッカー屋さんが上手い事手配してくれたみたいで、今んところ何の請求も来てません。
普段最高に運が悪いのに、こういう所では悪運が強いのは自分の特徴なんすね、、、
おわり